奥日光 宿堂坊山,三俣山,シゲト山,黒檜岳 2001年11月23日  カウント:画像読み出し不能

 

 

 宿堂坊山は栃木/群馬県境稜線上に位置し、西ノ湖西方にあるマイナーな山だ。正式な登山道はなく、西ノ湖から適当に登るのが常道だろうか。私の仲間が何人か登っているので情報は持っていたが、2000m以上の高山を優先していたため後回しになっていた。そのうちに西ノ湖はマイカー規制になってしまい時間的束縛がきつくなって足が遠のいてしまった。

 11月後半ともなればアルプスクラスは雪で私の技量では難しくなるが、藪山は藪が枯れ雪が来る前で最適期となり、3連休の時間があれば奥日光周辺でまとめて山が稼げるので出かけることにした。これが10月の3連休だったら紅葉見物の大渋滞必至で日光は敬遠しただろう。もう一つの理由は千手ヶ浜までのバス運行は11月いっぱいで終了してしまうことだ。今週を過ぎると来年春まで西ノ湖まで歩かなくてはならなくなる。ルートは柳沢林道に続く廃林道を歩いて山頂北東に延びる尾根に取り付くことにした。錫ヶ岳に登った際、尾根入口に目印があることは確認している。また、もし時間が余るようなら南下して三俣山にも立ち寄れたら最高だが、宿堂坊山〜三俣山間は昔から強烈な笹藪で有名なところで、日帰りで行けるか危ぶまれるが。

 赤沼茶屋を東に入ったところがバス停で、前夜の内に駐車場に入った。まさか宿堂坊山や錫ヶ岳登山者ではないと思うが何台かの車が私と同様に車中泊らしい。たぶん小田代ヶ原の写真撮影か西ノ湖の散策か。23日(金)、始発のバス(AM8:00)に乗って西の湖入口に向かう。出発時刻がこんなに遅いのは痛いが、早起きして歩いても時間的に大差無しなのでしょうがない。翌朝起きると、大多数の車から自転車が出現し、小田代ヶ原へだろうか出かけていった。なるほど、そういう手段もあったか。坂がきついところは無理かもしれないが、そこそこ平地が続く場合は自転車もいい。きっとこの連中は何度も通ってそのことを覚えたのだろう。

 終点でバスを降りて車道を戻り、その昔、錫ヶ岳に登るときに使った駐車場脇から柳沢林道のゲート脇を通って林道を歩く。現在は西ノ湖で工事をやっているようで、柳沢林道ではなく西ノ湖へ行く林道の方が轍がはっきりしていて本道のように見えるが、地形図を頼りに直進する。10年近く前に錫ケ岳に登ったときに歩いているはずなのだが既に記憶に無い。柳沢川が近づいてくる頃になると道が荒れて廃林道状態になり、沢を渡るポイントは水量が少なくて難なく渡渉が可能だった。左に曲がってなおも廃林道を歩くが、10年前と比較して荒れているかどうかも全く記憶にない。ただ、その時に休憩した場所(沢を横切るところ)、でっかい岩が寄りかかっている橋、その先の崩壊地点は思い出せた。

 

宿堂坊山 北北東尾根取付点

 宿堂坊山取り付き点の尾根入口付近には目印があったが、錫ヶ岳に登った当時とは別の目印だった。斜面には明瞭な踏跡があるが、この辺りは鹿の影が濃いので人間の足跡なのか鹿道なのか判断に苦しむ。まあ、鹿道でもなんでも、とにかく上に登れば山頂に到着するので深く考える必要はない。ただし下りはそうはいかないが。

 尾根に取り付いたあとは単調な尾根を一直線に登るだけ。藪が出るかと思ったら皆無と言っていいほどで笹は無く、灌木が出ても左右どちらかは疎林のままで迂回が可能だった。尾根上に踏跡は無いが藪がないのでどこでも歩きたい放題。踏跡はなくても目印も適度にあり、人間くささを感じる。10年前は目印さえ皆無だったというからこの10年で登る人が増えたのか?? 最後までそんな調子で久しぶりの藪漕ぎを覚悟していたのに遭遇することもなく、あっさりと山頂に到着して拍子抜けしてしまった。林道歩き1時間、山歩き30分の合計1時間半。

 

宿堂坊山山頂

 予想通り樹林に覆われて視界はなく、少し高いところに御料三角点、ちょっとだけ低いところに頭だけ出した三角点がある。山頂標識はいくつかあるが、目印の方がよく目立つような。雪は北斜面に僅かにあるだけ、山頂直下の一番深いところでも2cm程度で、少しでも日が当たる場所は全て消えていた。真っ白になるまでまもなくだろう。無線はハンディー機で簡単に済ませた。

 この後の行動だが、このまま帰ると12:00には西の湖に到着してしまってもったいないので、三俣山行きに決定した。ただし、問題はこの先の藪で、足尾山塊の大家である岡田さんの記録だと宿堂坊〜三俣山の間が一番笹藪が深いと書かれ、所要時間の想像ができない。最低鞍部まで高低差300m下って300mの登り返しに距離は約3km。藪がなければ1時間だが、藪の状況によっては数倍の時間がかかるかも知れない。どうにか三俣山まで行けたとしても藪を宿堂坊山まで戻るより、藪がない黒檜岳に縦走して千手が浜に出た方が距離があっても労力は少ないかもしれない。三俣山往復ならアタック装備だが、黒檜岳縦走となれば全装備を背負う必要があり悩みどころだが、日帰り装備で大した重さではないので黒檜岳への縦走に決定した。なんかいきなり山行グレードが上がるが、3連休で明日以降の時間もあるし、中禅寺湖まで下れば道は安心だし、問題ないだろう。

 

南から見た宿堂坊山(左はネギト沢の鞍部)

 宿堂坊山を出発して県境稜線の藪核心部へと踏み入れる、いつまでたっても藪が出てこない。特に宿堂坊山から最初の下りは踏跡どころか登山道と言っても過言でないくらいはっきり、ルート全般に渡って尾根が細いところは登山道並みのいい道だ。尾根が広いところや一部では笹が出てくるものの身の丈を没するのではなく、膝程度の高さで密度も大したことがない。しかもそんな場所はコース中の1割程度で、しつこいくらい目印があって迷う心配は皆無で、以前の藪漕ぎコースだった雰囲気はない。昔は栃木/群馬県界尾根縦走といえばベテランだけが許される長期の藪漕ぎ縦走であり、残雪期が最も楽だと考えられてきたが、現在では無雪期の方が楽にできるのではなかろうか。

 なぜ10年間でこれほどの変貌を遂げたのだろうか? 想像だが、鹿が笹を食べてしまったからではなかろうか。日光の鹿の増殖と食害は問題になっていて、白根山の名を冠した「シラネアオイ」は鹿に食べられて地元でほとんど見られなくなってしまった。小田代ヶ原には鹿の食害防止でネットを張り巡らせた場所があるが、その内側と外側では藪の生え具合は全く異なり、中は笹が生い茂っているのに外はきれいに刈ったように笹がない。これが山の中でも起こっているのだろう。つい最近、武内さんは三俣山から皇海山まで登っている、直接話を聞いたら全く同じ状況とのこと。私が昨年、不動沢から鋸山(皇海山のお隣)に登ったときに、以前は深い笹で覆われて下山時に道を間違えた不動沢コル付近の笹が全くなくなってしまっていてビックリしたくらいだ。たぶん白錫尾根から袈裟丸山まで藪らしい藪は無くなっているのではなかろうか。

 

三俣山山頂

 最後は笹のない疎林の斜面を登り切るとシゲト山への分岐点て、文字が消えた標識があった。帰りはここを東に進めばいい。その手前の残雪の上に新しい人間の足跡が残っており、私と同じ宿堂坊山方向から歩いてきたもので、三俣山から皇海山の方へと続いている。もしかしたら白根から袈裟丸までの大縦走をやっている人がいるのか?

 分岐点の先は膝下の低い笹原の中に踏跡があり、その先が三俣山だった。周囲は樹林に覆われて視界は無いのはしょうがない。宿堂坊山から三俣山までちょうど1時間、藪がない時の想定時間ピタリだったので、本当に藪がなかったのがよく分かる。三角点付近の笹の上にザックを横たえて座り430で交信した。

 後半戦開始。シゲト山から先は一度歩いているので、半分は勝手知ったるコースと言えよう。シゲト山まではピークをいくつか越えるがシラビソの樹林帯で藪はなく、逆にどこでも歩けてしまうので尾根を外さないように注意が必要、と言っても屈曲はないのでまっすぐ歩いていれば問題ないが。目印は県界尾根よりもぐっと少なくなるが適度に現れ、今回の山行では途中で地形図を開いて確認することは1度もなかった。

 何回もアップダウンを繰り返してシゲト山に到着。以前登ったときには標識は無かったような気もするが、今は2つくっついている。南の足尾側は立木が無く低い笹で見晴らしがよいが日光側はシラビソ樹林だなのは以前と変わらない。中禅寺湖南岸は足尾銅山の鉱毒事件に代表される環境汚染(この場合は煤煙? 硫黄酸化物の煙?)により松木沢に面した斜面の樹木はことごとく枯れて笹原に変わってしまったのだ。稜線付近は笹原なだけマシで、もっと下の傾斜がきついところは岩盤が露出しているところも多い。

 三俣山から1時間強だったので、休憩せずに黒檜まで直行することにして歩き続けた。一度歩いているはずだがさっぱり記憶が欠落しているのが情けない。尾根が細い部分は目印が無くても迷う心配はないが、広い尾根やピーク上ではちゃんとルートファインディングしないとルートを外してしまう。黒檜の一つ手前のピークで尾根が東に曲がるところでコースを外して北に直進してしまい、左に見えなければならない男体山が正面に見えて下りはじめたので気付いた。危ない危ない。のほほんと歩いていてはいけない。

 

ロボット雨量計跡から見た日光白根、錫ヶ岳

ロボット雨量計跡から見た

宿堂坊山(右)、1919m峰(手前)、三俣山

 鞍部から少し登ると以前ロボット雨量計のあった切り開きがあるが、今は雨量計はなかった。ここは樹林が刈り払われて見晴らしがいい場所で、黒檜岳山頂は樹林で覆われ日当たりも視界も悪いのでここで最後の休憩とする。錫ケ岳が盟主のように聳える。

 ここから先は「一般道」の領域で、ツェルトで幕営した黒檜岳山頂から千手が浜へと下る登山道はしっかりしているので不安はない。黒檜岳山頂付近のみだだっ広い地形でちょっとわかりにくいので目印をよく見る必要がある。千手が浜へと下る分岐には標識があり、利用者の多さがうかがわれる。ただ、私が持っている地図にはこの道の記載はないのでどこをどう歩いているのかはよくわからず、目印と踏跡に従って歩くだけだ。昔はこの道でカモシカに出会ったが2回続けての偶然はなかった。

 沢を横切るところで本日初めての登山者(老夫婦)と遭遇。バス停の待ち時間で話を聞いたが、立木観音に車を置いて阿世潟峠〜社山〜黒檜岳と縦走してきたとのこと。相手も私が初めての登山者だと言っていた。社山までなら人がいっぱい登っていそうだが、たぶん出発が早くて無人だったのだろう。ただ者ではない?

 

湖岸からの入口。標識無しなので注意

 登山道の最後は踏跡が薄くなってどこを歩くのかわからなくなるが、藪があるわけではないし、もう中禅寺湖が見えるから湖岸に向かって適当に下ればいい。登りでは目印が点々と続いているのでそれに従えばいい。湖岸の遊歩道に出て今歩いてきた方向を振り返ると、入口には目立つ目印があるので分かるだろう。

 湖岸を千手が浜方面に歩いて橋の崩壊で通行止めの看板を無視して進み、仮設の橋で沢を渡り船着き場?へ。左に曲がって舗装道路を少し歩けば千手が浜のバス停だ。わずか1分の差でバスは出発した後で、1時間後のバスに乗って赤沼駐車場に戻り、登山道で会って同じバスに乗った老夫婦を車に乗せて立木観音まで送り届けた。

 

都道府県別2000m未満山行記録リストに戻る

 

 

ホームページトップに戻る