尾瀬には至仏山、燧ケ岳のような有名な2000m峰の他にマイナーな2000峰がある。景鶴山はそこそこ有名になってしまったが、尾瀬ヶ原南部の白尾山、荷鞍山はマイナーなままだろう。地形図やエアリアマップを見ると白尾山へは夏道があるが荷鞍山へは道がなく、残雪期に登るのにちょうどいいだろう。

 景鶴山から下山後、戸倉で温泉に入り(尾瀬温泉センター \500 12:00〜20:00営業)、近くのスーパーで買い物を済ませ、あまりの天気の良さに明日も天気が期待できるのではと考え、あまり移動しなくて済む白尾山、荷鞍山に照準を合わせた。戸倉スキー場を過ぎて舗装された細い車道を上がり富士見下ゲート前に到着、鳩待峠とは大違いで車の姿はなく、静かな登山口だ。まだ時間があるのでノートパソコンを立ち上げてデジカメ写真を転送したりカシミールで今日歩いたルートの詳細を調べたり記録を書いたりして時間をつぶし、酒を飲んで寝た。予報だと関東の雨の降り出しは夕方とのことで、早い時間の行動なら雨の心配はなさそうだ。

 翌朝、薄雲の向こうに月の形がわかるくらいの天候で一安心。朝飯を食って出発、今回のルートはなだらかな地形のみなのでピッケルは置いていき、6本爪の軽アイゼンをザックに入れた。傘を持っていくかどうか悩んだが、予報を信じて置いていくことにする。

 ゲートを超えて林道を歩き出したが、しばらくは雪のかけらもなく車で入れれば楽できそうな道だ。十二曲というくらいだからうねうね曲がってショートカットすれば早そうだが、微妙な濃さの笹藪で漕げないことはないが昨日の疲れもあるのでそのまま車道を歩いた。途中、なぜかバイクがデポしてあったが、その先から残雪が見られるようになり、除雪した形跡が見られた。たぶん車で入れなくてバイクで入るためだろう。その先の田代原で道が平坦になり除雪用ブルドーザーとなぜかスノーモービルまで置いてあった。しかしこの付近は逆に雪が消えていた。が、回り込んで傾斜が出てくると今度は一面の雪景色となった。これが昨日の疲労が抜けない足には効く! かなり足が重く歩幅が自然と狭くなる。雪道では平坦な場所でも負荷がかかり、1時間もあるくともう帰ろうかなぁと思えるくらい足が疲れてしまった。しかしせっかく1時間以上歩いたのだし、今日の標高差は700mくらいで半分以上は登っているので撤退はあまりにももったいなさ過ぎる。気力を振り絞って富士見峠目指して歩いた。ここまで出だしから疲れたのは久しぶりで、昨日の山行の厳しさが分かった。やはり残雪期で10時間山行はきつすぎだった。

 天気は予想以上に悪く、林道が山腹を巻き始めると稜線はガスに包まれて見えなくなってきた。やっと山腹をまいていた林道から踏み跡が上がり、目の前には富士見小屋が見えてきた。小屋はまだ開いていないようで小屋の前も全く除雪されていなかった。雪に埋もれかけた富士見小屋を左に見て、進路を東へ変更する。小屋の前の標識はちゃんと方向指示案内板が付いていたので助かるが、雪がいっぱいで夏道は全く分からない。ただ、スノーモービルの走行跡が東へと延びており、何となく林道の続きがあるようななだらかな段差があった。まあ、この残雪ならどこでも歩けるからルートは気にしなくていいが。シラビソの疎林で歩くのに邪魔な木はない。この付近はガスの境目でこの上は雲の中に突入して視界がなくなるので、帰りのために富士見小屋の位置をGPSに登録した。これでガスられても小屋まで戻れるので問題なしだ。

 ほとんど水平に歩いていると富士見峠の標柱が出てきた。半分雪に埋もれており、尾瀬で見た標識のように方向指示案内板が取り外されたままだった。このまま東を目指せば白尾山なので、スノーモービル跡をたどって歩き続けた。幸い、そのルートは木に目印がついているのを時々見かけたので夏道らしい。緩やかな尾根なのでスノーモービルもどこでも走行できる程度の傾斜だから、いつ夏道から外れるか分からない。目印に気を付けながら歩き、GPSも併用してスノーモービルが左方向に外れていったところを直進した。夏道は尾根直上よりもやや南側についているようで、目印はそっちについていた。あとで2.5万図を確認したら、確かにそのように道が付いていた。風は強いままだがガスは晴れてきたので、少しは山頂で見晴らしが楽しめるかな。天候が回復すると気分も回復するようで、あれほど帰ろうかと迷ったほどの疲労は回復し、荷鞍山も往復できる元気が出てきた。

 少し傾斜が出てきたかと思うとマイクロ波中継塔が出てきた。ここまで車道があるらしいがこの雪では全くわからない。進路は左に変わるようで白尾山らしきピークが左手に見えている。風が強くて休む気分になれないのでそのまま通過して白尾山を目指した。なだらかでだだっ広い尾根になり、目印も見あたらずガスられたらやっかいな場所だが、今はガスが上がって視界が得られている。この時の記憶とGPSのおかげで帰りはすんなり歩けたのだった。

 なだらかな尾根上を適当に歩き、ピークを越えた鞍部から白尾山南斜面を巻いて荷鞍山へ続く尾根に乗った。元気が出てきて先に荷鞍山に行ってしまおうと考えたのだ。ガスは完全にあがって山頂もよく見えておりGPSの助力は不要だった。尾根はまだまだ雪がいっぱいで東よりは小さな雪庇ができていたので念のため西寄りを歩く。鞍部を過ぎて登りにかかると驚いたことに明らかに最近刈り払いされた夏道が出ているではないか! 刈られた笹の葉はまだ茶色ではなく、降雪直前に刈られたように思えた。体に触れる笹がないくらいの幅で刈り払われているので、かなり立派な道だ。こんなのがあるとはエアリアマップだって地形図だって書かれていない。こんな道があると知っていたらわざわざ残雪期なんかに登らなかったのに。

 登りにかかると尾根西側の雪が消えてほぼ夏道を歩けた。標高差100m程の登りで山頂に到着するとこれまた雪は消えて夏道がむき出しだった。そして驚いたことに夏道は南の尾根に続いているではないか。どうもスキー場から道があるらしい。誰か無雪期に偵察してみないかなぁ。山頂の三角点も出ており、不思議なことにGさんの標識が2枚もかかっていた。付けられた木は違うが標高も同じだし、いったいなぜ2枚もあるのか謎だ。

 南風が非常に強く、人間はハイマツの陰に隠れてDPを張ってワッチ、強い局がいないのでCQを出すとJA1ZV木村さんの登場だ。八王子にはそこそこの強さで飛んでいるようなので奥積さんから声がかかるかと期待したがそれはなかった。天候の崩れは未だ小さく太陽の輪郭が見えるくらいだが、徐々に悪化するのは間違いないので長居しないで撤収した。
 白尾山への最後の登りは少し西に寄りすぎたようで最後は急斜面になってしまい、アイゼンを付けるのが面倒で笹藪と雪の境目を笹に掴まりながら登り切ると僅かに出た夏道だった。この頃になるといつのまにかガスに包まれ視界が無く、太陽の位置も見えなくなっていた。これでだだっ広い尾根だからGPSが無いと方向に自信が持てなくて歩き回るのが恐ろしくなるが、GPSがあると山頂の方位がバッチリ、しかも残雪で相対的に木が低くなり衛星受信状況は良好で矢印は正確な方位を示す。尾根がやや屈曲しているので直進できないが、周囲を見ながら尾根上と思われる場所を外さないよう、しかもGPSの矢印に従って歩いて残距離を順調に縮めていく。最後は左から回り込むように白尾山山頂に到着した。

 山頂はなだらかな雪原でどこが最高点なのかはっきりしないが、ほぼ残距離ゼロの地点にGさん標識があった。他には標識は見えない。風が強いのでアンテナ方向が東京方面になるような木の配置を捜し、しかも風よけになる木を選んで風下に陣取る。ガスが吹き付けるのでシラビソの葉に露が付いて風で飛ばされ雨のように落ちてくるのが難点だが、木の近くでないと今度は寒い強風地獄だ。ワッチすると強い局が数いたが、せっかくなので8J1ITUをコールしておいた。暗い天気でCQを出す気分ではなく、今にも雨が降り出しそうな雰囲気だし、粟野町移動のJI1EQQ/1牧野さんのQSOを聞いていると雨が降り出したとのことで急いで撤収した。

 帰りはやはりガスった広い尾根なので、自分の足跡を見失うと方向が掴めない。私の足跡は荷鞍山に下ってしまうのでその先はルートファインディングが必要となり、なぜか目印がない高原状の尾根を外さないよう気を付けながらGPSで小屋の位置を確認しつつマイクロ塔を目指す。風よけの意味もあって尾根直上よりやや北側を巻き気味に歩き、マイクロ塔直下で登りの自分の足跡と遭遇した。この間はGPSと方位磁石で歩いたが、GPSの残距離が減っていくのを見ると自分のルートが正しいことがわかりとても心強かった。晴れていればGPSの手助けは不要だが視界がない時のGPSは効果抜群であることが改めて体験できた。

 足跡が出てくればもう心配はなく、ほどなく目印も現れ淡々と歩くだけで小屋に到着できた。ガスは濃くなり視界は数十mまで低下し、接近しないと小屋が見えないほどになっていた。そういえばこの尾根を下山中、スノーモービルが5,6台登ってきたのでルートはなおはっきりして助かった。それにトレールも固められて少し歩きやすくなっていた。これくらいなだらかな地形だと好き勝手に走れるだろう。まあ、林道で車に追い越されるような気分であまり快くはないが。

 林道の下りは思ったより傾斜があって楽に歩けた。水平になると残雪歩きは疲れる。例のスノーモービルが置いてあった地点では1,2台が無くなっている代わりにガソリンのポリタンクが置いてあった。その下の林道には数カ所に分散して車が置いてあり、スノーモービルを運搬してきた台車もあった。地元民なのかゲートの鍵を持っているんだな。雪が消えて淡々と林道歩きする頃になって雨がポツポツ落ちてきて、車に到着する頃には本降り寸前の雨量になり、いいタイミングで下山できた。もちろん登山口の車は私の1台だけだった。

 帰りの時間が長いので車中で昼飯を食い、あまり汗をかかなかったので温泉は昭和村まで我慢して一般道を走り、眠くなった頃に温泉に入って目を覚まし、再び辺鄙な一般道で東松山まで走って関越道で帰った。


 今回は2日間で登るにはきつい行程で、月曜日になっても疲労が抜けず会社を休んでうちでゴロゴロしていた。やっぱり残雪期は疲れる!


所要時間
4:27富士見下ゲート-5:01スノーモービル-6:28富士見小屋-6:34富士見峠-6:54マイクロ中継所-7:03荷鞍山の尾根を目指す-7:07荷鞍山の尾根に乗る-7:11夏道が出ている-7:35荷鞍山着-7:58荷鞍山発-8:26白尾山稜線に出る-8:31白尾山山頂着-8:56白尾山山頂発-9:02ホワイトアウトのだだっ広い尾根-9:06マイクロ中継所-9:20富士見峠-9:22スノーモービルとすれ違う-9:27富士見小屋-10:05休憩-10:14出発-10:23軽トラ-10:26スノーモービル-10:28ジモティー車-10:46富士見下ゲート

 

荷倉山、白尾山 写真集

 

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