小金沢連峰前衛 恩若峯、源次郎岳 2005年12月30日


 

兜山付近から見た恩若峯、源次郎岳の尾根

 

 2005年は11月中旬に登った南ア深南部から下界でいろいろゴタゴタがありしばらく山に登れなかったため、年末年始休暇までの約1ヶ月半は山に登ることもなかった。体調も最悪で風邪を引いて寝込むことが多くなり体力は最低であろう。でも年末年始を家でゴロゴロしているのももったいないし、近場の低山ならさほど気力を振り絞らなくても出かける気になるだろうと山梨に向かった。いつもの年ならば南ア深南部なのだが、今年の体調では2000mを越える山頂で幕営したら重度の風邪をひくのは間違いないし、今年の寒波では深南部でもかなりの積雪になっているだろう。深南部で登ってない(山名事典新規記載の山)のは大無間周辺と信濃俣周辺なので藪はなく、わざわざ雪がある時期に行く意味もないから来年春か秋にでも行けばいい。

 甲府盆地周辺の小さな山はあまり登っていないので選びたい放題であるが、トレーニングを兼ねて少し歩く距離がある山にしたい。そこで考えたのが源次郎岳だ。小金沢連峰の枝稜にあり、1400m強の高さなのでちょっと程度の雪はあるかもしれないが行動に支障が出るような積雪はないだろう。これに西側にある恩若峯を絡めて甲府盆地側から往復すると標高差1000mくらいになるだろうから弱った足には適度だろう。たぶん片道5km程度だろうから往復10km、これもまあまあの線だろう。私の通常の体力なら日帰りでも軽い部類だが、今の体力とは比較にならないからなぁ。

 エアリアマップを見ると黒破線なので茶色破線よりも少しマシなのだろうか? 年々藪っぽくなっているとの注意書きまであるが、いつも歩く山は踏跡皆無がいつものパターンであり、それと比較すれば登山道があるのも同然だろう。わりとはっきりした尾根だし、この標高では植林地帯か落葉広葉樹林で藪はあまり心配ないし、今の時期だから冬枯れでもっと藪漕ぎは無いだろうと予想し、登山道についての情報収集は全くやらなかった。地形図を見ながら最短距離で適当に登ればいいだろう。

 会社の納会を欠席して帰宅し、荷物をまとめて久々にマイカーで出かけた。近場の2日間の日帰りばかりの山登りなので荷物は少なく水は4リットルでお釣りが来るだろう。地形図は甲府盆地の山が記載された数枚を用意した。荷物を積み込んで調布ICから中央道に乗ったが、今回初めてETCゲートを利用した。11月に車載器を取り付けたがなんと手持ちのETCカードが期限切れで前回の南ア深南部山行には新しいカードが間に合わなかったのだ。今度はちゃんとカードがあるので車載器に突っ込むと認識してくれ、ゲートのバーは無事に開いた。中央道の場合は料金所渋滞はないのでETCカードの価値はやや減るかもしれないが、ハイカも販売が終わって現金払いでは渡すのが面倒だし、毎回現金を用意しなければならないので財布の中身にかなり現金を用意しておかなければならないのでその点は便利になった。もちろん割引のメリットを享受できる点も大きい。

路肩に車を止めた 果樹園の作業道を登る

 

 勝沼ICで降りて北上、恩若峯には整備された登山道がないようなので登山口の案内標識は全く期待できず、地図を見ながら適当に取り付き口を探す必要があった。なんとその地形図(2.5万図)をうちに置いてきてしまい、エアリアマップで探すことにしたが詳細な道が書かれていないのでなんとも分からない。たぶんこの付近だろうと思われるところから上に上がる道に入ったが果樹園で、夜なので地形も見えずどこいるのか確信がない。こういうときこそGPSの出番で、恩若峯の位置を入れてナビ画面にするとうまい具合に山頂のほぼ真西にいるではないか。ならばこの斜面を適当に登ればいいので車が邪魔にならず置ける程度に道幅が広がった場所に車を止めて寝た。もう冬なので果樹園も冬枯れで見知らぬ車が止まっていても果物泥棒と勘違いされる心配もない。

作業道を歩く 果樹園終点。右の樹林に入る
白く輝く白峰三山 樹林中の石垣

 

 夜は暖かかったが朝方になって気温が下がってガラスの水滴が凍っていた。それも火を使ってお湯を沸かしていたら融けたが。カップラーメンを喰ってパッキングを済ませて出発する。道は期待していないので果樹園内の作業道を登れるところまで登り、その後は適当に登ればいいだろう。すぐに車道が終わって草ぼうぼうの廃道?を登るとどこからともなく再び舗装された作業道が出現、その上で道が終わって果樹園もおしまい、周囲は広葉落葉樹林で下草はなくどこでも好き勝手に歩けるので上を目指して足を動かす。樹林の中には段々畑のように石垣が積まれたまま放置されていたが、ここまで開拓して果樹園にする構想だったようだ。なお、果樹園から甲府盆地を振り返ると真っ白な白根三山が目に飛び込んでくる。これだけよく晴れ渡っていると入山者も多いのではないだろうか。今朝のラジオでは上高地からの入山者が千数百人だそうで、馬場島から剣岳への人も多いそうだ。今年は大雪だからラッセルが大変だろうなぁ。私が登ったら凍傷で指が無くなってしまうから、冬の間は低山巡りがちょうどいい。

こんな樹林が続く 尾根に出ると踏跡があった

 

 まっすぐ登る方向には密度が高い樹林があるので右手を巻き気味に登ることにした。たっぷりの落ち葉が降り積もりとても滑りやすく、適当な棒を拾って杖代わりにして登っていく。落ち葉に埋もれた小さな沢が2カ所あったのでそれを登ろうとしたが、傾斜がきついし降り積もった落ち葉で滑るしで樹林に戻って木に掴まりながら高度を上げる。ようやく傾斜が緩むと顕著な尾根に飛び出し、反対側の斜面は檜の植林帯になり境界に踏跡が通っていた。目印も見られたので歩く人がいるようだ。緩やかに登っていくとすぐに尾根から外れて右側を巻くようになるが、GPSの表示を見る限りでは目の前のピークは偽ピークで本物はまだまだ先なのでこのまま巻いてしまって問題なかろう。もしずっと巻き続けるようならGPSで最短距離になった場所から直接突き上げればいいだろう。

小鞍部手前の道 小鞍部。目印が多数ある

 

 尾根に上がった当初はいまいち踏跡が薄かったが、巻き道に入るとかなりはっきりしてきた。登山道なのか作業道なのかわからないが、道がない稜線を歩くよりずっと楽だ。少し進路を右に変えるとやがて小鞍部に到着、そこは目印が賑やかで左手を指して「恩若ノ峯」の案内標識があった。どうやら今まで歩いた道は登山道のようだ。ここで巻き道が終わって尾根通しに標高を上げていく。本当なら眼下に甲府盆地を見下ろしながらの歩きだろうがずっと樹林が続いて視界が得られないのが残念だ。

落葉した気持ちのいい尾根が続く 恩若峯山頂

 

 肩のような小ピークを越えた次の右手の高まりが恩若峯山頂だったが、GPSを見ながら歩いたら登山道は西側を巻いていてそのまま進んだら山頂を通過しないので、適当な場所から山頂に突き上げた。この付近も落葉樹林でどこでも歩けるので登山道を外しても全く問題ない。山頂は落葉樹ではなく植林帯で日差しが無く寒い。「達筆標識」があるかと思ったが別の標識があった。そして地面にはMWVの標識が落ちていた。昭和50年代のものだったが、昔はずっとマイナーな山だったのだろうか。久しぶりに目撃したMVW標識だった。山頂には「源次郎岳」の案内標識もあり、どうやら登山道はエアリアマップに書いてあるよりまともらしい。

 休憩してから源次郎岳に向かう。ここからは源次郎岳直下までまとまった登りはなくて長い尾根を細かいアップダウンを繰り返しながら徐々に標高を上げる。植林帯有り、自然林有り、小さなピークは左右に巻いて、道はまともだが第1級というほどでもなく野性味を残していて歩いていて楽しめるルートだ。このくらいの道なら一般ハイカーでも道に迷うようなことはないだろう。作業道の分岐には虎ロープが張ってある。

こんな感じの道です。迷う心配なし 源次郎平
源次郎平から見た源次郎岳 ブナの実。たくさん落ちていた

 

 源次郎平と書かれた標識がかかった場所で樹林が切れて正面に源次郎岳が見える。鞍部に下ってからあれだけ標高を稼がなければならないのかと思わせるくらいの高さだ。明るい落葉した自然林を進み本格的に登り始めると、風化した巨大な花崗岩が点在する尾根に変化し、右に左に巻きながらグングン高度を上げる。登山道には落葉が降り積もって急な登りとあいまってズルズル滑るので、適当な枯れ枝を拾ってストック代わりにして登った。所々にブナが見られるが地面には無数のブナの実が落ちていた。首都圏でこれだけブナの実を見たのは初めてではなかろうか。まるで新潟の山みたいだった。

 山頂直下の登山道は完全に落ち葉に埋もれて私の目でもルートがどこにあるのか判別が難しいくらいだが、高いところを目指せば山頂に到着するので安全な場所を選んで適当に登った。帰りによく見ると目印のテープが点々と付いているのでよく見ればルートが分かるだろう。ただし、ピンクのテープの1つは間違った場所に付いていたので要注意だ。傾斜がきつくて危険な場所もあるので、とにかく安全な場所を選んで歩けばいい。

源次郎岳山頂 半分壊れた達筆標識

 

 急斜面を登り終わるとなだらかで明るい山頂に到着、山梨100名山の標柱があった。本日のお客はまだ私一人のようで無人だ。今度は達筆標識があったが、いつものプリキ板ではなく木製で腐食しかけて割れてしまっていたが、山頂名の文字には影までつけてある凝ったデザインだ。地面に落ちたのを誰かが細引きで棒に縛ってくれたらしい。さて、いつまで持ってくれるだろうか? ここでひなたぼっこしながらしばらく休憩した。

 下山は同一ルートなので心配することはない。杖代わりの枯れ枝でスリップを防止しながら下っていく。しばらくぶりの山なので下りで膝が笑わないかと心配だったが、コースが長い割に傾斜がきつい区間は短いのが良かったのか問題は発生しなかった。果樹園に下る道無き斜面もGPSや地図を見るまでもなくまっすぐ下っていくと登りで斜面に取り付いた果樹園終点にピタリと出た。やはり山の規模が小さいと歩くのが簡単らしい。車に戻って昼飯を食い、しばし昼寝を楽しんだ。

 

 なお、大した山ではなかったにも関わらず翌日は筋肉痛だった。我ながら悲しい・・・・。7時出発、13時戻りなので、休憩時間を含めて行動時間6時間だった。

 

 

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