幕営の勘所 2007年12月15日版(作成途上)

長所

小屋が無いところでも宿泊可能。小屋の整備が進んでいないちょっと寂れたルートでは幕営必須の場合も多い。
宿泊費が安い。相場は\500〜\600/1人/1日。
夏山シーズンの山小屋でみられる地獄の混雑は無い。自分のテントの広さがそのまま自分専用スペースになる。

行動時間の制約が緩やか(自炊の場合)。小屋の飯の時間に行動時間の制約を受けないし、早朝に動き出しても隣近所に迷惑にならない。

緊急時、どこでも寝られる。ある意味一番重要かも。ただし国立公園内は指定された場所以外は幕営禁止だそうです。まあ、緊急時はそんなこと言ってられませんが。


短所

荷物が重くなる。ちなみに夏山の場合は増える装備はおよそ以下の通り
テント:1.5〜2kg、マット:約300g、寝袋:約1kg、コンロ&コッヘル:約500g 合計約3kg

悪天(雨、強風)時は気力が萎える。私の場合、テントを持っていっても悪天時は素泊まりに変更してまう。過去に2回ほど経験あり。雨が降っていなくても風が強いと単独ではテントを張るのが困難。場合によってはテントの骨が折れることも。

夏でも朝夕は意外に寒いので防寒具必携。たまに小屋に泊まるとなんて暖かいのだろうと感激する。冬は寒い。たった布1枚でも風が無いので体感温度はずいぶんマシだが、ほぼ外気温と同じなので山小屋の快適さとは比較にならない。


ツェルトとテント(ツェルトの利点、欠点)

軽くてかさばらない。これが最大のメリット

立地条件によってはポール不要。ステーを木に縛ればOK。ストックをポール代わりに使用する手もある

テントより狭いが単独行なら問題なし

断熱性はテントと変わらない

風雨に弱い。特に風。これが最大の弱点

ポールを使う場合、一人では張り綱の長さ調整が面倒


 以上のようにツェルトは小型軽量が最大の武器であるが、耐風性はテントと比較して相当劣る。天候に不安が無い時ならば使えるので、雷雨の心配が無い春や秋の好天時に持っていくのがいい。樹林が多い藪山なら風が防げるのでピッタリかも。でも、アルプス級の山では天候が不安定で風が吹くのは当たり前、森林限界で風除け無しなのでテントの方がよい。私の場合、森林限界の山ではツェルトを持っていくことは無くなったし、夏山でツェルト泊まりの人を見かけることは稀である(ただしゼロではない)。

テントについて

今やドーム型テントが主流。自立するので設営が楽だし、高さがあるので快適。

単独行の場合は大きさは1〜2人用で問題なし。

ドーム型でも、ゴア製で防水性がありフライを使わなくていい1枚構造と(フライは付属するが使わなくてもいい)、防水性が無い内張りと防水性がある外張りの2重構造の2種類がある。私は1枚構造のゴアライトを使用している。

1枚構造は軽量。防水性に問題なし。ただし、テント表面に露がついたり雨で濡れたりして表面に水の膜ができると、ゴアでも水蒸気の透過性が無くなりテント内がかなり結露する(外の雨がしみこんできたと勘違いするくらい)。また、雨が降った場合、出入りするとテント内部に雨が入る。だからフライも付属されるわけ。結露を我慢すれば、雨が降らない限りはフライを張る必要は無い。私は予報で雨になりそうな場合は山に行かないのでフライは持っていかない。夕立程度の短時間の雨なら外に出なければいいのでフライが無くても問題なし。10年くらいこのスタイルで通しているが、不都合が出たことはない。

2枚構造は少し重くなるが結露がなく快適。内張りは耐風性、防水性は低いが水蒸気の透過性は抜群で結露は無い。外張りで防水を担当する。よって晴れていても基本的に外張りが必要。

1枚構造/2枚構造のどちらがいいかは一概に言えず、個人の好みで決めればいいでしょう。

1〜2人用でこのような構造があるか分からないが、夏を考えると入口が2つあるといい。夏の日中にテントを張って天候が晴れの場合、暑くて中に入れない。入口が2つあると換気がいいので快適に昼寝できる。


テント設営場所

直接風を受けない場所を選ぶ。例えば樹林に囲まれている場所とか、稜線の影とか。風の有無は快適さに大きな影響を与える。同時に避雷対策にもなる。特に森林限界を超えた場所では雷が鳴ると危険なので、何もないところにぽつんと張るのはやめたほうがいい。

雨が降ったときに水がたまったり水の通り道にならない場所

トイレに近すぎないこと。風向きによっては匂う。

平らな場所ででごつごつした石が無いこと。砂地が理想。

水場があること。無いと水を担いでこなくてはならないのでよけい重くなる

小屋とトイレの間とか、夜間でも人通りがある場所付近を避ける。静かに寝たいし、張り綱に足を引っ掛ける人もいるので。


テント設営のコツ

ペグが刺さる地面が望ましいが、石が多い等でペグが刺さらない場合はペグを地面に置いた上に大きめの石を乗せてテントを固定する。雪の上に張る場合はペグを雪に埋めて踏み固める。

もし地面が水平でない場所に設営する場合、テント入口を低い方にすること。これでテントに出入りするときに砂利等がテント内部に入るのを防止できる。

風がある場合、入口が風下側になるよう設営する。そうでないと悪天時に外に出るときに雨や雪がテント内に吹き込んでしまう。ま、天気が良ければあんまり関係ないけど。

ペグは基本的には4隅だけ打てば問題ないが、風が強まると思われる場合はすべての張り綱を張るのがいい。これにより風を受けたときの骨組みの変形を防止でき快適さが増す。


小屋におけるテント泊の手続き等

まず幕営の手続きをする。幕営者全員が行く必要は無く代表者1名が行けばいい。普通は名前、住所、人数、テント数、宿泊日、行程等を書く。もちろん料金を支払う。小屋によっては手続きをすると料金支払い済みを示す札を渡すところもあるので、受け取って自分のテントにぶら下げておくこと。こういう小屋は夕方にテント場を見回りに来て札がないテントから料金を徴収するので、手続きをしなくてもあっちから来てくれるのである意味便利かも。

料金はテントの大きさに無関係で人数と宿泊日数で決まる。そもそも幕営手続き時にテントの大きさを書いた経験はたぶんない。通常は1人1日あたり\500(北アルプス)か\600(南アルプス)。私が使っているテントは2〜3人用だが2人分の料金を請求されたことはない。

小屋とテント場が離れている場合は、手続きと同時に水とアルコールの確保。手続きに行くときに水筒等をお忘れなく。

水場が無く天水等で水が有料の小屋では、宿泊者は水はある程度の量まで(それとも無制限?)無料と思うが、幕営者の場合はすべて有料で必要量を買う必要あり。相場は\100/リットル。1994年だか95年の大渇水時は北アでは幕営者に水は販売しない小屋が出現した。

テントを張る場所を決める。基本的には先着順なので空いている好きなところに設営すればいいのだが、場所が狭いところなどでは自分のテントの大きさにあった場所を選んだほうが他人に迷惑にならない。大学パーティー等は大人数の大型テントの場合が多く、広い敷地でしか張れないので、そんな場所が少ないテント場で広いところに1人用テントを張ったのでは大パーティーがかわいそう。いくら先着優先とはいえ、自分のテントの大きさにマッチした場所を選ぶべき。

テントを設営したら自由時間。飯を食う時間も寝る時間も自由。ただし基本的に小屋への出入りはしないのが暗黙の了解事項で、トイレは屋外のしょぼいトイレということも多い。もちろん乾燥室など使ってはいけない(そういう料金は小屋泊まりの料金に含まれる)。幕営料金は場所代というよりトイレの使用料と考えるべき。

幕営手続き時に札を受けたとった場合は、出発時に返却する。札の発行が無かった場合は何の手続きも無く出発。出発時間は任意で夜中に出ていってもいいし、のんびり出て行ってもいい。

小屋で購入した缶ビールの空き缶くらいは小屋に置いていっていいが、基本的にごみは持ち帰ること


マットについて

銀マットはかさばるが軽くて断熱性もよく安価なので、まずは銀マットをお試しあれ。ちなみに私は銀マットしか使ったことがない

エアマットはたたむとコンパクトになること、でこぼこの吸収性に優れているのが有利な点だが重いのと高価なのが難点。私は使ったことはない。

銀マットの断熱性でも雪の上で幕営すると冷えるので、もう1枚マットがあるとよい。夏は1枚でOK。

 

コンロについて

単独行ならガスが軽量、お手軽でお勧め。

ガスの場合、過去の経験上、テント内で使用しても問題ない。私の場合、10年以上そうやっているが、危険な目にあったことはないし、一酸化炭素中毒で気分が悪くなったことも無い。テント内は風も吹かないので強風下でも炎が安定する。ただし、コッヘルを倒してお湯でやけどする方が発生確率が高いので、コンロ周辺に物を置いたり動き回ったりしないこと。ガソリンの場合、万が一気化したガソリンがテント内に充満すると爆発の恐れがあるので、煮炊きは外でやったほうがいい。

夏山でもアルプス級の山ではボンベは寒冷地仕様がよい。特に朝は冷え込んでガスの気化が悪くなり、通常品では使用中に火力が落ちる。

ボンベの大きさは3種類くらいあるが、夏山単独行なら一番小さなもので大丈夫。冬は水作りで燃料を食うので大きめのボンベを持っていくこと。


酒について

酒は水分が大部分で重く持って行くのが大変なので、できるだけアルコール度数が高い酒を少量持っていき、幕営地で水を調達して水やお湯で割って飲むのが効率が良い。

市販で最もアルコール度数が高いのはウォッカで、私は97%のものを持っていく。100cc持って行くと25度の酒に換算して400cc持っていくのと同じアルコール量。

ビールだったら金はかかるが山小屋で購入可能な場合が多いので持ち上げる必要なし。

晩酌の必需品であるコップは、コッヘルでも用は足りるが金属だと放熱性がよくお湯がすぐに冷えてしまうため、樹脂製が安くて軽くて断熱性もありお勧め。夏山でも夜は寒いのでお湯割りがいい。


ちょっとした注意点

テント場が狭い場所では早めに到着すること。快適な設営場所から埋まっていくので遅い到着ほど快適さが失われる可能性が大。例えば小屋や水場から遠いとか、稜線からかなり下ったところとか、地面がでこぼこしたところやもろに風が吹き付けるところ等。今までの経験では唐松小屋、奥穂高山荘、北岳山荘、南ア茶臼小屋、光小屋はテント場が混雑し、遅く到着した人はかわいそうだった。もちろん時期にもより、夏山ピークのお盆が一番厳しいだろう。

ゴアテックス製テントは基本的にフライシートは不要。ただしフライが無いと雨のときの出入りでテント内部に雨粒が入る。夕立しか想定しないのならフライは不要。

撤収時、テントに水滴がついたままだと付着した水の重さ分重くなるので、タオル等で水滴を除去してからテントをたたむこと。撥水スプレーをかけておき、撤収時にテントを振って水滴を落とすのも1つの方法。

無人の藪山で幕営しても動物に襲われることはまず無い。鹿は草食性なので心配皆無だが、塩分に飢えているので調味料等は外に出しておくと食べられてしまうことがある。笹原の中にテントを張っていると夜中に鹿がゴソゴソとテントの近くまで笹の中を歩く音が聞こえることもある。熊は雑食性だが人間のことをエサだとは考えておらず、山の中の熊は人の気配がするところには寄り付かない。よほど食い物の匂いを撒き散らさない限りは心配無用。

一面の笹原の中でポツリと笹が切れた場所があった場合、”鹿の便所”の可能性があるので匂いをかいで確認すること。鹿の小便は強烈らしくそこだけ笹が生えない。中ノ尾根山北側鞍部で幕営したときはこれだった。匂いを抜くために川でテント底面を洗って長期間乾燥させたりと大変だった。

寒い時期に幕営する場合、夜間に水が凍ってしまうのでペットボトル等はシュラフに入れておくほうがいい。-5度くらいなら部分的に凍る程度だが-10度になるとかなり凍ってしまい、飯を作ろうとしてもボトルから水が取り出せなくなる。


便利グッズ

ラジオ

幕営でなくても山に入るには必需品。天気予報を聞くにはAMラジオのほうが便利。携帯電話がつながらない場所、FMラジオが聞こえない場所でもAMラジオだけ聞こえることは多い。

携帯音楽

プレーヤ

お気に入りの音楽を山の中でも楽しめる現代ならではのツール。重さは3,40gしかなく単4電池で10時間以上動くので1泊なら登山中に聞いていても予備電池1本あれば充分。ラジオも単4で動作するものにすれば予備電池を共有できる。

ろうそく

ろうそくは古典的ツールだが意外に便利。使ったぶん消滅し無くなるのでごみは出ないし軽くなる(元が軽いが)。電池消耗は無いし残量が目でわかるのでテント内照明に最適。また、少ないが熱も出るので夜間照明兼暖房になり便利。時間はかかるがろうそくの炎でお湯を沸かすことも可能で、テント内でチビリチビリと晩酌しながらお湯割用のお湯を作るのにも利用価値大。照明用にはできるだけ高い位置に設置するのがいいが、炎の熱によるテントの損傷等も考えてペットボトルの上に立てる程度が安全で実用的(テープで貼り付けて転倒防止)。何にせよ火事には注意。

 

 

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