登山で使うデジカメの条件 2007年12月版

 

 まず、今まで使ってきたデジカメ一覧、と言っても3機種だけですが。

 

型名

メーカ

画素数

質量[g]

(電池除く)

焦点距離

[mm]

電池

撮影可能

枚数

その他
EXILIM EX-S1 カシオ 124万 85 37(固定)

専用

リチウムイオン

480

2000.04〜2003.11使用

光学ズーム無し、マクロ無し

QV-R40 カシオ 400万 160 39〜117 単3×2 660 2003.12〜2007.01使用
Powershot A710IS キャノン 710万 210 35〜210 単3×2 360

手ぶれ防止機能付き

2007.02より使用開始

 

小型、軽量
 何があってもこれが最重要条件でしょう。山に持っていく荷物は軽いにこしたことはありません。コンパクトデジカメだと200g弱が多いようです。もちろんもっと軽い機種もありますので、他の機能との兼ね合いで決めればいいでしょう。

電池の持ちがいい、もしくは電池交換可能
 山の中では電池切れしても充電できませんから、枚数がたくさん撮れたほうがいいです。長期縦走の場合はそれでも電池切れはありえますので予備電池があった方がいい。この場合、単3電池サイズの充電式電池が使えるとヘッドランプやラジオ等の予備電池と共用できるので、デジカメ専用に予備電池を準備する必要がありません。それに専用電池だとお値段が高いのが難点で、デジカメを買い換えると使えないのも問題。ただし今時のコンパクトデジカメでは内蔵電池でも数100枚の撮影が可能で、長期山行以外は実質上電池切れの心配はありません。

低温に強い(電池)
 冬場の山は気温が0度以下は当たり前で、デジカメの電池の持ちが極端に短くなることがあります。これは電池の性能が低温で悪くなるためでデジカメ本体の影響ではありません。私は単3型ニッケル水素電池を使っていますが、冬場はカイロで温めないとデジカメが動きません。デジカメ内蔵のリチウムイオン電池の方がよさそうに思えますが、使ったことがありませんので何とも・・・。

マクロ撮影が可能
 高山植物等の撮影で必要。まあ、今時のデジカメでマクロ撮影機能が無い機種はありえないかもしれませんが、私が初めて購入した100万画素のデジカメにはありませんでした。

光学ズーム
 遠景撮影に必要。空気の透明度がいいときは100km以上見えることがあり、北アルプスから見た南アルプス等の風景は高倍率のカメラでないと個々の山が区別できないほど小さくしか写りません。6倍くらいあると肉眼で見るよりもずっと大きな絵になります。また、山で出会う動物の撮影にも必須。こちらが近づけば逃げてしまいますから・・・。

 今時のデジカメなら光学3倍以上が当たり前ですが、私が初めて購入した100万画素のデジカメには光学ズームはありませんでした。デジタルズームだと解像度は変わらないのであっても使えません。この分野の進歩は画素数以上に速いかも。コンパクトデジカメでも10倍以上の倍率の機種もあります。重たいデジカメでは20倍なんてものも。


画素数について
 今のデジカメは画素数が1000万を越えるものが主流ですが、普通にパソコンで写真を見る分には400万画素もあれば充分です。というのも一般的なパソコン画面は1280画素×1024画素=約130万画素で、画面いっぱいにしても400万画素でも表示し切れなくて画素を間引いて表示しています。ちなみに私のHPに掲載している写真サイズの多くは12万画素(400×300)です。画素数が少ない方が画像データも小さくなり、同じ容量のメモリカードなら撮影枚数を増やせますし、画像の圧縮度を下げて画質を向上させることもできます。また、パソコンで写真加工するする際もデータが小さい方がサクサク動きます。
 
 画素数が多いことのメリットは、画像の一部を取り出して等倍表示することで、画像の劣化無く実質的に光学ズームの倍率を上げることができることです。ただし、これにはレンズによる分解能の限界があり、レンズ口径が小さなコンパクトデジカメでは画素数を上げても元の光学影像の分解能があまりよくないため、ピクセル等倍にするとピンボケのように見えます。私が使っている700万画素のデジカメでもピクセル等倍では鑑賞にギリギリ耐えられる程度なので、1000万画素だとピクセル等倍では相当ピンボケ画像になっていると思います。光学的解像度はレンズの性能で決まってしまうので、デジタル一眼レフカメラ用の高価なレンズには太刀打ちできません。

 以上のようにコンパクトデジカメでは画素数はあまり多くても意味が無く、今時の最低ラインの600万画素あれば全く問題ありません。現行機種では存在しないと思いますが400万画素でも充分でしょう。


メモリカードについて
 メモリカードには何種類かあり、主な物ではSD、ミニSD、マイクロSD、コンパクトフラッシュ、xD、メモリースティックくらいでしょうか。昔はどの種類のメモリカードが主流になるのか皆目見当がつきませんでしたが、今では間違い無くSDカードが主流と言え、デジカメだけでなく様々な機器で使用可能です。メモリカードの種類はメーカによって異なるのでメーカが決まると選択の余地が無くなってしまうかもしれませんが、迷ったときはSDカードの使えるデジカメがお勧めです。

 SDメモリカードの容量は大きくなり価格も低下していますが、デジカメによって使用可能な最大容量が異なります。以前のデジカメだと2GBが上限で「SDHC」対応のデジカメではそれ以上の容量が使えます。SHDCカードは形状はSDカードと同じですが、大きな容量が扱えるようデータ形式がちょっと異なります。



液晶画面について

 電池消耗を考えると液晶画面は切っておいた方がいいと思いますが、露出補正はかなりの頻度で必要であり、私の場合は常時ONで明るさを確認しながら露出補正をして撮影しています。今のデジカメは液晶画面の質も良くなっていると思いますが、それでもパソコン画面の表示とはちょっと差がありますので微妙な色合いは同じとは限りません。また、直射日光の下では見にくくアングルを決めるのに苦労する場合も。コントラストが薄い被写体はデジカメ本体の液晶ではもっとコントラストが薄くてアングル確認はさらに困難。この点、デジタル一眼レフの光学ファインダーのコントラストは素晴らしい。コンパクトデジカメの光学ファインダーは使ったことがないので性能不明。でもコンパクトはレンズを通した画像ではないから、ズームしたら使えないしなぁ。



あると便利な機能

彩度設定
 彩度とは色の鮮やかさのことで、彩度が低いほど白黒画像に近づきます。今までの経験上、デジカメで撮影した画像と実際の風景を比較すると、特に植物の緑や空の青、紅葉の鮮やかさが撮影画像では不足します。彩度設定ができる場合は彩度を高くすることをお勧めします。風景撮影モードなんかは彩度が高めになっていると思います。

露出補正
 ほとんどの場合は露出はカメラ任せで問題ないと思いますが、マニュアルで露出を補正したい場面もあると思います。一般的なコンパクトデジカメの場合、人間の目で見るよりも撮影画像の明暗の差が大きく出てしまい、明暗差が大きい被写体を撮影すると明るいところが白く潰れるか黒いところが黒く潰れるかしてしまいます。その時、どっちを犠牲にするか露出補正で決めます。また、露出が明るめだと全体的に白っぽく写って彩度が低下することが多く、特に空の色は顕著に影響を受けます。そんなときは露出補正で少し暗くするといいです。

高倍率ズーム
 最近のコンパクトデジカメはほとんど光学3倍ズーム以上でしょう。普通に使う分にはこれで充分ですが、山頂から見える遠くの山を撮影する場合は高倍率の光学ズームがあると便利です。6倍くらいになると目視では明瞭に形がわからない山も画像ではっきりとわかり、家に帰ってから「写真判定」で思いがけない山が見えていたことが分かったりします。ほとんど双眼鏡並みです。たぶん10倍くらいなら望遠鏡並み? 近寄ると逃げてしまう野生動物の撮影にも必須です。ただし相手がじっとしていてくれればの話ですが。というのも高倍率になるほど写る範囲が狭くなるので、液晶画面を見てもどのあたりが写りこんでいるのか判明するのに時間がかかり、その間に動物に逃げられてしまいます

 また、高倍率になればなるほどレンズ性能の影響が現れてきます。私はカメラの専門家ではないのでよく分かりませんが、一番影響が出ていそうなのが「色収差」です。光の波長によりレンズの屈折率が微妙に異なるため、レンズの中心からずれるに従ってプリズムのように色が分散していき、見た目のピントも甘くなります。特に建物の壁と空の境界のようにエッジで目立ちます。倍率が低いときにはあまり現れませんが、倍率が高くなると影響が出てきます。

手振れ補正
 今は普通になった機能ですが、高倍率ズームでは必須に近いかも。シャッター速度が遅いときに手振れしやすくなりますが、一般的には手振れしないシャッター速度は焦点距離の逆数といわれているようです。つまり、広角いっぱいの焦点距離36mmで撮影する場合、1/36秒以下になると手振れしやすくなり、光学5倍の180mmでは1/180秒以下で手振れの危険性があるわけです。明るいところで撮影する場合はシャッター速度は速いのでさほど問題になりませんが、早朝の風景撮影になると手振れの可能性が高くなります。そんなとき、手振れ補正機能があるとシャッター速度設定で2〜3段階分の補正が効くそうです。また、薄暗い密生した樹林ではシャッター速度が1/10秒とかになることもよくあるのですが、この状態では手振れ補正無しでは三脚が無いとブレた画像しか撮影できません。

マニュアルフォーカス
 ほとんどの撮影ではピント調整は自動でやりますが、樹林を通して広がる遠景を撮影する場合なんか、そのままでは手前の樹林にピントが合ってしまいます。そんなときにはマニュアルによるピント合わせがあるといいです。または風景撮影モードだとピントは無限大になっていると思います。

ISO感度設定
 大抵はカメラが勝手にやってくれる設定で問題ありませんが、シャッター速度が遅すぎて手振れの危険がある場合、感度を上げることで手振れを防止できます。カメラの自動設定だと画質優先で感度は低めになることが多く、手動設定で目いっぱいまで上げてやればどうにか使えることも。感度を上げるとノイズが増えてきますが(といっても私の目ではあまり変化はわからない)、ブレた写真よりは相当マシです。機種によってはISO6400くらいまであるようです。


登山とデジタル一眼レフカメラ
 最近はデジ一(デジタル一眼レフカメラ)の販売数が伸びているようで、下界だけでなく山でも見かけるようになりました。カメラ(正確にはレンズか?)の基本性能はコンパクトデジカメよりデジ一の方が上で、コントラストの良さ、各収差の少なさ、ダイナミックレンジの広さ、ほぼ瞬時に完了するピント合わせなどはデジ一にかなわないようです。画質にこだわる人はデジ一でしょう。

 しかし、デジ一の最大の欠点は大きくて重いこと。最近の機種は軽くなってきたとは言っても本体のみで400g程度が最軽量で、これにレンズが付くと500gどころではありません。また、レンズが付いた状態でポケットやウェストポーチに入る大きさではないので、持ち歩くには首からぶら下げるかザック最上部に入れるかしかなさそうです。デジ一の購入を考えて知人から借りて少しの間山で使ってみたのですが、とにかく持ち運びが問題でした。ザックに入れてしまうと途中でちょっと撮影しようかどうかなぁという光景に出くわしたとき、ザックを下ろして蓋を開けて取り出すのが面倒なので撮影しないことが圧倒的に多くなり、結局は山頂以外で撮影機会があるときはウェストポーチに入れたコンパクトデジカメばかり使っていました。それではと首に掛けて歩くと、これがまたウザいったらありゃしない。ずっと一眼レフを使っていた人ならそれが当たり前なのでしょうが、ずっとコンパクト機を使っていた身としては、あの重りをずっと首にかけたまま歩くのは我慢なりませんでした。

 以上のように、私の経験ではデジ一を山で使えるのはそれなりに覚悟とこだわりがある人だけで、画質に無頓着な一般登山者が使うには機動性の悪さが目立ちます。気軽に持ち歩いて取り出せるコンパクト機の方が、山登りにはフィットしているようです。画質に差はありますが、普通にパソコン画面で見ている分にはコンパクト機でも問題ありません。

 

 

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