富士寄生火山 片蓋山,長尾山,弓射塚,イガトノ山,天神山 2002年11月2日

 

片蓋山 1468m 鳴沢


 富士山寄生火山に登るのはこれで2回目になる。最初は宝永山の帰りに静岡側の3山を登ったが、道路脇と言うこともあって意外に簡単に登れてしまった。今回は富士山を挟んで反対側の北西斜面に集中した寄生火山を狙ってみることにした。富士天神山スキー場で有名な天神山周辺は、車道から近い場所に5つも固まっているオイシイ地域で見逃す手はない。国道から天神山スキー場の案内看板を見て県道に入り、スキー場入口右側に一般車両通行止めと看板が出ている舗装された林道があるのでそちらに入る。ここも1度通ったことがあるのでバッチリだ。ただし竜ヶ岳同様雨で諦めたのだが。今回の天気は申し分なく、昨日の雨でまだ少し藪が濡れているかもしれないが、どうというほどではないだろう。

 前回無人だった天神峠には何台も車が置かれていたが、まさか登山客とも思えないからおそらく茸取りだろう。そのまま直進して十字路に出れば片蓋山は間近だ。直進する道はユニコーンで車止めされているが手でどかせば入れる。歩いても大した距離ではないので、交差点近くの路肩に駐車して歩き出した。GPSの表示では山頂まで数100mだった。

 車止めの林道はダートに変わるがいい道だ。右手の山が片蓋山なので適当に斜面に取り付いた。幸い、稜線までシラビソの植林帯が続き、下草もなく快適に高度を稼げた。稜線に上がると踏み跡があったから、正式なルートがあるらしい。西に僅かに進むと樹林帯の山頂だった。ただし、少し隙間があって日当たりのいい場所も確保できた。珍しくも標識があり、裏を見たら新潟産の日本酒のラベルだった。でも、ラベルだけではただの紙だから、白い樹脂板の裏にわざわざ貼ったのか。珍しい作りだった。

 DPを張るのに方角確認のため磁石を取り出したら動きがおかしい。S極が底面に当たってしまい回転しないのだ。たまにこんな不具合が起こるが、たいていの場合は叩くと治る。しかしいくらしつこく叩いてもいっこうに現象がおさまらない。どうやらこれが青木ヶ原の磁性溶岩らしい。地面付近の溶岩がN極になっていてS極が引かれたのだろう。山頂近辺だけでちょっと下ったら正常に働くようになっていた。逆に言えば磁石が効かないのは僅かな範囲のようだ。この日の寄生火山巡りで方位磁石がおかしかったのはここだけだった。

 さて無線。430メインで一声出して山ランメンバーの応答がないことを確認し、メインをつけっぱなしにして6m設営。DPを木の間に張ってワッチするとスペイン語でQSOしているJA局が聞こえていた。どうやら南米がオープンしているようだ。こりゃ国内向けのお客は少ないぞ。それでも国内向けにCQを出している相模原の局がいたのでコールした。最後にJS3ISQ中川さんが聞こえないぞ〜と言ってるとのQSPをもらった。そりゃそうだ、富士山の裏側だからなぁ。

 帰りも適当に斜面を下り、林道に出てすぐに車にたどり着いた。

 

長尾山 1424m 鳴沢

 

 次は長尾山。天神峠のすぐ西側で、労力は片蓋山と同程度だろう。峠の駐車スペースに車を止め、入口付近だけに生えた笹をかき分けると、下草のないきれいな落葉樹林帯が続いていた。淡々と登ると稜線で、西に歩いたところが山頂だった。三角点のそばにはさっきと同じ標識が。こいつも寄生火山巡りやったんだな。どんな人物だろう? MTBとのサインがあるが、まさかコールサインではなかろう。

 430で一声の後で6m運用開始。CQを出すと早速奥積さんが呼んでくれた。やっぱり富士山に邪魔されるから強くない。今日はこんなロケばっかりだから明日に期待してくれと宣言した。

 峠に戻り、昼飯を食って再出発した。次は弓射塚。富士山精進登山道から南に外れたピークで、今日登る山では峠から一番遠いので最初に登ることにした。先の2つのピークは幸いにも藪がなかったが、今後も藪がないとは限らない。北側から最短距離で攻めるのが正攻法だ。登山道(廃林道)がジグザグるところで直進するのが最短のようで、廃林道の登山道がジグザグったところをまっすぐに入った。幸い、笹は薄くてすぐに下草のない樹林帯に入った。涸れ沢を越えて溶岩の小尾根に取り付いて高度を稼いだが、やがて笹のお出ましだ。進む毎に深くなり、いつのまにか激藪となってしまった。しかも、進行方向の笹の海の中でガサガサ動いている物体もいる。恐ろしいから口笛吹いたり手を叩いたりしてこちらの存在を知らせようとしたが、鹿と違って逃げ出す様子もなかった。

 さあ、どうしよう? GPSによると山頂まで300m、方位は南西。しかし尾根は直線的に山頂に向かっているのではなく南を向いている。しかもガサガサの主はその方向にいるのだ。この藪を300m以上漕いだら1時間ではたどり着かないだろうし、出直した方がいいかなぁ。どこかで藪が切れる可能性もあるので、北西方向へトラバース気味に下っていくと、うまい具合に藪が無くなってカラマツの植林帯に変わった。こうなれば一直線に登るだけで、最後に軽い雑木の壁を抜けたらなんと山頂直下を走る林道(廃林道かも?)に飛び出した。東側から上がってきているようで、私が斜面に取り付いた場所よりも上まで廃林道を上がり、右に分岐する林道を見つければ藪無しで登れそうだ。まだ植林されてさほど年月が経過していないようで木が低く見晴らしがよかった。少し登ると細長い尾根状の山頂で、また例の山頂標識があった。

 開けた場所に移動して運用開始。430で一声出してメインをワッチしながら6mでCQを出し始めた。すると「山ランメンバー・・・・JO2・・・・」の声が430から聞こえたので急いでハンディー機を手に取り応答すると、JO2TAI河村さんだった。サブに移って話を聞くと、朝方登ったばかりの竜ヶ岳にいるという。なんときわどいニアミスだ。私の時は無人だったが今は大賑わいだという。その昔は道が無くて撤退したんだけどねぇと話をすると、河村さんも静かな山だと思っていたとのこと。辰年に有名になったのか。明日は小金沢連峰の大峠周辺と笹子雁ケ腹摺山の予定で、3つの雁ケ腹摺山とも登れればと言っていた。明日の内に名古屋に戻るようだった。

イガトノ山 1485m 鳴沢
 相手が河村さんだから無線は満足。次はイガトノ山。目の前に見えており、楽勝で行けそうだがまたあの笹が出てきたら・・・。まずは富士登山道に戻らなければならない。最短コースは行きの逆だがあの笹はもうイヤだ、少々回り込んで出よう。藪との境界を下り、適当な所からピーク目指して藪に突っ込んだ。藪が切れると登りで歩いた溶岩の小尾根で、すぐに登山道に出た。左手がイガトノ山だからどこか登りやすそうな所から適当に登ればいい。GPSで方向と距離を確認しながら、藪のないところで左手斜面に取り付いた。赤テープとか遭ってもしかしたら山頂まで踏み跡があるかと思ったらそんなオイシイ話があるわけもなく、登る気配がないので上を目指した。既に距離は100mちょっとしかないから、高み目指して登るだけでいい。またもや埃を頭から浴びながら笹藪を強行突破すると、これまた突然林道に飛び出した。ほぼ山頂と同じ高さで稜線上に道があり、ここが山頂でもいいかなぁと思わせるが、GPSで確認すると50mほど先なので林道を歩くと、なんとスキー場リフト終点が。古ぼけて文字が消えた「天神山」山頂標柱があったが地図上の天神山はここではなく、ここは間違いなくイガトノ山だ。季節外れのゲレンデで安心して無線を運用した。

天神山 1420m 鳴沢
 スキー場ゲレンデを遠慮気味に下り、途中から左手の樹林の稜線へ取り付いてみたが、またもや笹藪出現で尾根を歩けず東に逃げ、ゲレンデと藪の境界近くに踏跡を見つけたのでゲレンデに沿って登る。これで山頂まで楽勝かと思ったら、山頂直下のリフト乗場から上は道無しで、再び猛烈な藪であった。少しでも藪の薄いところを攻めようと北側から登ってみたが、どこもあまり状況は変わらずこれまた笹の超激藪。GPSの20mの表示を頼りにもがきにもがいてもがいて最高点へ達すると、なんと南側から微かな踏み跡があるではないか! くそ〜 判断を誤ったか。半分笹に埋もれているものの、激藪と比べれば高速道路と言えよう。

 無線終了後踏跡を辿って南下し、鞍部から西に下ると林道に飛び出した。おそらくイガトノ山で出会った林道の続きだろう。もう笹との格闘には辟易したので林道を歩き、天神峠より少々北側で舗装道路に出た。


 このようなわけで、今回は思いっきり笹藪と格闘してしまったが、弓射塚については廃林道を利用するか、北西斜面で植林地帯を探して登ればおそらく笹に遭遇することはなさそうだ。イガトノ山、天神山はこれまた廃林道を使えば楽勝である。皆さんの健闘を祈る!

 

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