南ア北部 地蔵岳、松峰、穴沢ノ頭 2003年10月26日

 

南ア鋸岳三角点峰から見た地蔵尾根

 

 仙丈ヶ岳から西に下る地蔵尾根は、昔は仙丈ヶ岳の長野側玄関口として賑わったのかも知れないが、今ではその座は林道が開通した北沢峠に明け渡して歩く人は少ないだろうが、今でもエアリアマップで赤点線が描かれているのでしっかりした道があるようだ。この尾根には地蔵岳、松峰の2000m峰があり、地蔵岳山頂は登山道が通っていないが直下を巻いているので苦労せずに登れると考えた。登山口は尾根末端にあるが、地形図を見ると南側の田城高原まで車道が描かれており、もしここまで車が入れるのならば大幅な労力節約が可能になる。最後まで車で入れるとは考えていないが、ある程度まで入れれば下から歩くよりはいいだろう。

 

 三峰川沿いを差が登る林道とは反対側に左折、こっちは車が通っている形跡はあるが、大曲方面とは通行量が違ってかなり荒れている。それに傾斜がきつくデコボコが激しいのでスピードが上がらない。7.5kmを30分以上かけて田城高原らしい場所に到着した。道は下り気味になり、廃車とともにうち捨てられたトイレの建物がある。その先も行ってみたがさらに道が悪くなり、2WDでは泥濘でハマる危険を感じたのでトイレ付近まで戻った。普通車はここが限界だろう。

 この付近はキャンプ場にでも整備されるはずだったのだろうか、他にもポツポツ建物があるようだ。駐車場は無いので道ばたに適当に駐車する。地図ではこの付近から上に延びる林道があるはずだが見あたらなかった。車は1台もない、本当に真っ暗で無人の地だった。熊が出てきても不思議でないかも? 静かに寝られそうなのは幸いだが。伊那のAMラジオは良く聞こえ、やはり明日は長野中部から南部は晴れと伝えていた。予想よりも台風は東を進んでいるらしい。夜になっても風は吹かなかった。

 厳冬期用シュラフのおかげで寒さを感じることはなく熟睡できた。翌朝は周囲が見える明るさになってから出発しようと考えていたので5時起床、昨日同様熱いお吸い物と弁当を食する。お湯を沸かしながらコッヘルの上に弁当を置いて暖めたのでちょっとは暖かい飯が食えた。出発準備をして外に出ると車外に出していた自転車は霜で白かった。周囲は唐松林である。

 

林道の様子。ここはかなりいい区間 林道終点。縦走路と合流する


 このまま車道を辿ってもいいが、地形図を見ると遠回りになるのでこのまま尾根を上に登ることにして出発した。すると車を止めた場所は古い車道跡であることがわかり、今では車などとても走れないほど荒れた道を辿る。ほぼ地形図通りの道筋だったが、なんと途中で沢に消えてしまう。まあ、このまま高いところを目指して歩けば林道に出るはずなので適当に歩くとなかなか立派な林道に出た。あとはこのまま林道を進む。もちろん地形図と地形を照らし合わせて予定の林道か確認するのを怠らない。林道は全般的には普通車でも走れるほど状態はいいが、数カ所で泥濘や溝があって普通車では通行不可能だった。車高の高い4WD車やバイクなら問題ない。最後に2分岐して轍のはっきりした道は左に下っていくのを右に上がるルートを辿るとすぐに終点で、地蔵尾根縦走路との合流点だ。無事もくろみ通りの場所に出た。ここからは縦走路なので安心して歩ける。

 エアリアマップでは赤点線だが、実際ははっきりした登山道で目印や古いが案内標識が設置されていて全く心配ない道である。まず最初に地蔵岳まで登り、帰りに下りながら残りのピークを登る予定なのでGPSで各山頂直下の位置を確認しながら登った。まあ、はっきりした地形なので各山の鞍部はGPSが無くても問題なかったが。穴沢ノ頭は山頂直下約150mの地点を通過し地蔵尾根に乗った。エアリアマップでは登山道が山頂を通っている様に書かれているが実際は南を巻いてしまう。

 次は松峰だが、ここは地図通り南を巻く。ずっと唐松の植林が続き、冬になって葉が落ちれば南ア中部の見晴らしが良さそうだ。巻き終わって尾根に戻り、最初のピークの登りにかかるところで唐松林がフェードアウトしてシラビソの自然林に入れ替わり、パタリと日差しが無くなりGPSの受信状況が悪くなった。鞍部からピーク2つを越えると松峰小屋分岐で、標識だと小屋まで100mと書かれていた。

 ここから地蔵岳の最後の登りで、シラビソ樹林を尾根に沿って登っていく。所々樹林の世代交代が進み、道以外では幼木の藪がある場合もあり、登山道を外れた地蔵岳の登りでこんな藪が出てきたどうしようと心配になる。しかし高度を上げると再び静かなシラビソ樹林に戻ってくれた。それどころか登山道はいつになっても尾根を巻かないで直登を続けている。所々道が不明瞭になる部分もあるが、基本的にはどこでも好き勝手に歩ける様な下草のない苔むした樹林なので何の問題もない。尾根の地形も素直で迷う心配もない。

 山頂までもう少しのところでいつの間にか踏み跡が消えかかり、目印も途切れがちになった。いつのまにか縦走路が左に逃げたらしいがどこでいなくなったのか全く分からなかった。しかし尾根上は藪もないし視界も良く、時々目印もあるしで何の心配もないのでそのまま登り、山頂の一角に飛び出した。一角と言うよりそこが山頂に見えるが、三角点は南に飛び出している。GPSでそのことは分かり、GPSが指す方向の尾根を歩くと地蔵岳山頂だった。

 

地蔵岳山頂 地蔵岳のKUMO


 地蔵岳山頂は予想通りシラビソ樹林で視界はない。三角点があって、たもとの木にはもしかしたらと思っていたKUMOがあったではないか! 武内さんはここにも付けたのだ。黒檜山と比較すれば訪れる人は多いだろうが、北沢峠全盛時代に地蔵尾根を歩く人は少ないし、登山道は山頂を通らないのだからよほどの物好きしか来ないだろう。ここのKUMOも長生きしそうだ。その他、錆びて文字が読めなくなった標識もあった。

 144,430はサブも静かで、メインで声を出しても応答はなかった。昨日より標高が落ちるので飛びは悪いだろうな。一方の6mでは今朝も吉原さんのCQが聞こえた。今日は安芸郡の経ヶ峰というところだった。天気はいいが昨日よりも空気の透明度が悪いと言っていた。こっちは樹林中なので景色が見えない。途中で見えた風景は昨日と大きくは変わらなかったが。本当なら仙丈ヶ岳がどーんと目前に迫っているのだろうなぁ。購入したばかりの温度計の表示は5℃前後、やっぱ寒いがこれでも南ア3000m峰はまだ白くない。無風で日差しがあればまだ体感温度は暖かいだろうな。残念ながら今日はちょっと風がある。

 QSOしているうちに奥積さんから声がかかるかと期待していたがそれはならず、もう1局QSOすべくワッチするとJF3XWM/3豊能郡がCQを出し始めたので呼んだ。他にはピコ6で呼んで応答がありそうな強さの電波は聞こえなかった。奥積さんをつり上げるためにCQを出そうかと思ったが、ピコ6のメータの振れで電池切れが近いと気づき、まだ2山残っているので撤収した。

 

地蔵岳南から見た中ア 地蔵岳南から見た塩見岳〜二児山


 出発前に見晴らしがいいところがないか周囲を探索すると、山頂南側がハイマツ帯になっていて見晴らしが得られた。塩見岳から中アまでの視界があって、思い出深い小黒山から二児山の尾根が丸見えだ。二児山はその名に違わず目立つ双耳峰だ。遠くには聖岳の平べったい山頂も見えていた。昨日登った黒檜山と思われるピークも見える。中央アルプスは北から南まで全て見えていた。

 

松峰山頂 松峰のKUMO


 さあ、松峰に向かおう。往路を忠実に辿り、松峰を巻始めるところで縦走路と分かれて唐松樹林を尾根に沿って登る。藪はないが枝打ちされていない唐松は横に枝を伸ばして通せんぼしているので、歩きやすい所を適当に登った。下草、笹がないとどこでも自由に歩けるので助かる。やがて傾斜が緩んで水平になり、西端にKUMOがあった。GPSを見ていないが、正確無比のKUMOがあるのだからここが山頂に間違いない。

 山頂周囲は唐松とシラビソの混合林で、葉が落ちた唐松のおかげで日差しが少しある。完全に落葉すれば少しだけ周囲が見えるようになるかもしれない。ここの登りでは目印等は全く見られず、簡単な尾根なので目印が不要なのか、それとも登る人がいないのかは定かでない。でも地蔵岳よりは来る人は少なそうだな。

穴沢ノ頭山頂

 6mはJF3XWM/3豊能郡以外は強い局がおらず、さっきQSOしたばかりだがもう一度QSOしてもらった。1エリアが聞こえないと6mは苦しい。次の穴沢ノ頭は144,430の出番かなぁ。地蔵岳ではバズがうるさかったが、この時間には沖縄が開けていた。1エリアコールの那覇市移動局が出ていて、聞いていたら大和さんがQSOしているではないか。しかし聞こえるのは沖縄の信号だけで、奥武蔵の低山は奥積さん以上に聞こえる確率は低いだろう。

 穴沢ノ頭へは尾根を辿り、鞍部で縦走路と合流し、巻きはじめで再び縦走路と分かれて尾根を歩いた。同じような唐松林が続き藪はない。地形図の点線のように手前のピークを巻いて最高点に到着したが標識も何もなく、GPSは200m北を山頂と表示している。しかし北に向かうと下りの斜面でその先にピークは見えない。どうやら緯度経度を入れ間違えたようだ。南北方向のミスなので緯度の入れ間違い、しかもどこかの桁の数値を±1間違えた可能性が高い。試した結果、緯度の10秒の桁を1減らすといい感じの表示が出て、南に50mだったのでそちらに行くと三角点があった。間違いなく山頂だ。

 ここにはKUMOは無かったが、それはコンサイス記載の山だからだろうか。唐松樹林が切れて日差しが眩しく暖かい。休憩にはもってこいで、ひなたぼっこしながら430メインをワッチしつつ6mを運用した。呼べそうな強さの局は京都市移動局のみで、1W出力で苦労したがどうにかQSOできた。2000mを切る標高では1エリアは絶望的だが、もしかしたら奥積さんが気づくかもしれないとCQを出したが応答はなかった。

 これで今週末の全日程はおしまい。下山だけだ。縦走路は南に下れば必ず交差するので太陽の方向に適当に下ると無事出てきて往路を辿り、林道を延々と歩いた。途中、ランクルが止まっていて地元民が山葡萄を取っていた。最初は茸取りかと思ったが珍しい光景だ。話を聞いたら今年の茸は不作だそうだ。夏は湿って茸には良さそうだと思うがそうではないらしい。

 その後も林道を歩き、車の北側付近からは樹林を適当にショートカットして車道跡に出て車に戻った。やっぱり他に車は見あたらなかった。田城高原は忘れられた存在らしい。荒れた林道をゆっくり下り、今日も紅葉撮影で賑わう林道を下って国道152号線に出て、中央道の渋滞ピークにぶつからないよう温泉をパスして甲州街道を南下した。でも一般道なので時間がかかり、大月付近にさしかかった頃には小仏トンネル先頭で17km渋滞、いつものルートで相模湖ICに出てから中央道に乗った。


5:54田城高原発−5:58道が消える−6:05車道−6:39林道が分岐−6:40縦走路−7:02穴沢ノ頭直下−7:05地蔵尾根に乗る−7:08松峰巻道−7:33尾根に戻る−7:56松峰小屋分岐−8:37地蔵岳着−9:08地蔵岳発−9:32松峰小屋分岐−9:50縦走路を離れて尾根を登る−10:05松峰着−10:25松峰発−10:36縦走路−10:40縦走路を離れて尾根を登る−10:50穴沢ノ頭(最高点)−10:55穴沢ノ頭(三角点)−11:17穴沢ノ頭発−11:22縦走路−11:34林道終点−11:40ジモティーに会う−12:09田城高原

 

 

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