奥日光 日光白根、白檜岳、白根隠山 2004年9月4日

 

 

 日光の2000m峰は大鹿落ノ頭という赤薙山〜女峰山間ピークを除いて全て登っているが、日本山名事典によって日光白根周辺の白根隠山、白檜岳の2山が追加となった。正式な登山道はないが、白錫尾根の踏跡が通っているので大したことはないはずで、日帰りとしては適度に楽しめそうな山である。9月の後藤さんとの合同登山では後藤さんの体力からして日光白根はちょうどいいし、無線運用場所としても一流なので、日光白根と絡めて登ることにした。ついでに奥積さんも誘ったのだが、「奥積伝説」どおりに当日は雨の予報で、私のように山登りに行くのなら雨でもどうにかなるが無線運用では雨は大敵であり、又の機会となった。後藤さんは雨なら車の中で寝ているだろう。翌日は大鹿落ノ頭に登れば日光の2000m峰は完全制覇となる。

 金曜夜10:30出発、関越道を走って沼田で降りて金精峠を目指すが標高が上がるに従ってガスが濃くなり視界不良で速度が落ちる。霧で見えないが菅沼らしき平坦地を過ぎて右手にドライブインが出てくれば菅沼登山口で、駐車場先を右に入るとダートの林道が始まり、道幅が広がって駐車場と兼用である。車は1台もない寂しい状況だが静かに寝られるだろう。朝のお天気がどうなるか分からないが気にしても良くなるわけでもなく、軽く酒を飲んで寝た。

 翌朝5時に起床すると金星が輝いているのが見え、予報がいい方に外れているのがわかった。予報ではお昼過ぎからにわか雨といっていたのでできるだけ早く運用を初めて早めに運用を切り上げるべく、後藤さんをせかして先に出発させ、私はゆっくり朝飯を食ってから出発した。無線の荷物は私が全部担ぐが、いつもの通りで後藤さんを追い越すだろうから後藤さんを先に行かせるのは当然だ。日光白根は森林限界を超えており、アンテナを立てるにも支える物が無く、ステーを張らなければならないが、これは1人で行うのは至難の業で、後藤さんと山頂到着時間を合わせないと無駄な時間を過ごすことになる。

 寝ている間に3台車が増えており、出発準備中にさらに3台ほどやってきたが、以前と比較すると登山者数は明らかに減っている。やはり天気予報の影響か、それとも丸沼のロープウェイの影響だろうか。ロープウェイの始発は8:00であり、我々の感覚からすると遅すぎて使えず、最短コースの菅沼登山口しか選択はできなかった。

 このコースを歩くのは3回目だが、あまりはっきりした記憶は残っていなかった。だが百名山なので第一級の登山道で、地図を出して確認する場所はなく登山道を辿るだけでいい。最初は林道で、でかい案内地図看板で右手の登山道に入るがしばらくは水平歩行、やがて水がない緩やかな沢を歩き、右に折れ曲がって樹林の登りが始まる。既に標高は1800mあるのでシラビソ樹林で、冬は日が当たらなくて寒いが夏場は涼しく登れる場所だ。一気に高度を稼ぐかと思ったら道がジグザグに付けられて思いの外時間がかかる。一直線に斜面を上がれば阿弥陀が池まで1時間といったところだが、傾斜が緩くて楽なのはいいが、いつものペースで歩いたら池まで1時間半近くかかってしまった。

 阿弥陀が池に出ると待望の白根山が目の前に出てくるが、いつ来ても感動的な眺めだ。まさに巨大な溶岩ドームで、今までの風景とは世界が違う。おまけに既に紅葉が始まっており、草付きは黄色くなりかけているし、一部のダケカンバは葉が黄色く色づいていた。天気はいいし、来たかいがあった! 電気柵で囲まれた鹿の食害保護エリアの草も既に枯れかけており、夜間はけっこう冷えるらしい。

 池から白根への直登コースを取り、座禅山との鞍部に登ると驚いたことに座禅山への登山道があるではないか! 以前登ったときは道など無くて鹿の糞があちこちに転がる斜面を適当に登ったが、丸沼ロープウェイ開設と共に登山道が整備されたらしい。座禅山は既登山なのでパスして白根本体への最期の登りに取りかかる。ようやく傾斜が急になって効率よく高度を上げていく。ここで後藤さんに追いついたが15分のアドバンテージを1時間半守り通せたのだから、後藤さんにしては上出来だろう。これで山頂ではすぐにアンテナ設営に取りかかれそうだ。小石がゴロゴロのやや歩きにくい登山道で、最初に登ったときはだいぶ落石を落としたが、今となってはそんなへまをするわけもない。最後はかなり急な岩稜帯の登りで、雪が着いている時期はイヤらしそうだ。そこを突破すると傾斜が緩い尾根に乗りピークを通過、まだここは正確な山頂ではなく北側ピークで、目の前には本当の山頂が横たわっている。ここで本日の先頭登山者を追い越す。20m程度下って登り返せば溶岩の塊の山頂に到着だ。

 天気は早朝よりも悪化して雲が増えたがまだ日差しがあり、関東平野まで青空が見えている。西風がやや強く寒いので防寒着を着る。湿気が多いのか周囲の山には雲がからみついて、目の前にあるはずの皇海山、上州武尊、尾瀬の燧ヶ岳や至仏山ですら見えなかった。でも遙か遠くの富士山はてっぺん付近が雲海の上に浮かんでいた。八ヶ岳は見えていたが楽しみだった南アは見えず。北ア方面も雲が出て見えなかった。話題の浅間山は最初は見えなかったが姿を現してくれ、山頂付近に白い雲のような物が張り付いていたが、雲なのか噴煙なのかはっきりしなかった。

 一通り眺めを楽しみ、後藤さんの到着を待って西側尾根にアンテナを設営する。前回も運用した場所で、山頂と高さは遜色が無く、登山道から外れていて人が来ないので無線には最適なポイントだ。岩陰に隠れて風を避け、アンテナが回らないように紐をポールに巻き付けて固定する。私はここでは無線の必要はないので後藤さんの運用を隣で聞いていたが、さすがロケーションは良好で茨木市などは1エリアと同等の強さで、奈良、京都、滋賀、大阪の固定局ともQSOできた。JA4JAC/4、JR5EPQ/5(共に詳細な移動地は覚えてない)も呼んできた。前回と比較すれば時期が時期なので飛びが良く、満足行く結果だった。

 あまりのんびりしていると山歩きの時間が無くなってしまうので、下りの荷物運びは後藤さんに任せて出発する。白根から南下して直接白檜岳に登ろうという魂胆だが、普通、白錫尾根は白根隠山経由の尾根から登られ、県境尾根を直接歩くルートは聞いたことがないし、ネットで検索してもヒットしなかった。ただ、白根直下は草付きで藪はないだろうし、大半のコースはシラビソ樹林で藪もないと予想した。それに奥日光では笹があっても鹿の食害で10年前よりひどく薄くなっているのは体験済みで、ほとんど下りなので笹があっても大丈夫だろう。

日光白根南斜面を下る 日光白根から見た白檜岳 日光白根から見た白根隠山
2353m峰から見た白根山 2240m窪地 東から見た2353m峰と2250m鞍部

 

 広い台地状の地形を抜け南斜面に入ると地図通り尾根はなくだだっ広い斜面でガスられたらやっかいな場所だ。幸い、今日は視界良好なので2353m峰向かって適当に下っていく。草付きの斜面で好き勝手に歩けるので鞍部めがけて一直線に下った。鞍部手前からシラビソ樹林に突入したが予測通り藪はなく、木の間を縫って歩ける状態だった。踏み跡も目印もないので適当に南を目指して歩くだけ、鞍部を越えて急斜面をよじ登ると溶岩ピークが点在する広い山頂で、最初の1個だけよじ登って展望を楽しむ。あとは小ピークは巻いて南を目指して歩き、急斜面を木に掴まりながら下ると低い笹の中に鹿道が刻まれ、西側には砂地がある鞍部(2240mの窪地)が出てくる。鞍部西側で尾根がつながっているのでそこに乗り移ると初めて目印が現れたがどこからやってきたのか。


白檜岳山頂 白檜岳から錫ヶ岳に至る尾根入口

 ここから上は尾根がはっきりし、鹿道と思われる踏跡を適当に辿って登っていけばいい。相変わらずシラビソ樹林が続き、所々で南アの笹山で見たような幼木立ち枯れ地帯もあり、鹿の食害の影響かな。鹿の糞はあちこちで見られるが姿も鳴き声も聞かないのは寂しいかぎりだ。高度が上がると脛ほどの笹が出てきて半ズボンでは少々歩きたくない様相だが、すでに傾斜が緩んで白檜岳山頂近しの雰囲気なのでそのまま突っ切ると笹の平坦地に飛び出し、すぐに山頂だった。

 白錫尾根の踏み跡は意外にはっきりしており、南に屈曲する部分にはいくつもの目印が付けられ迷うことはなさそうだ。やっとまともな道に出てきたのでもう心配ないだろう。手製の山頂標識が1つだけあり、その手前で運用、後藤さんを捕まえた。もうちょっとで撤収とのこと。

白根隠山山頂

 まだ笹が続くのでロングスパッツを装着、笹が低いのでこれで充分だ。はっきりと道筋が付けられたなだらかな笹尾根を東に下るといつのまにか笹が切れて岩稜帯になり、西側を巻いて再び尾根に乗ると草付きの気持ちいい斜面の登りだ。標高は白檜岳と変わらないのにこっちは樹林がないのはどうしてだろうか。地面にはいつくばって生えているのはハイマツでもダケカンバでもなく、なんと檜だったのには驚いた。ほとんど芝生のようである。時々雨粒が落ちてくるようになり、傘をさすかささないか悩むくらいの降りだった。まだ前線は関東南岸にあるはずで、無線では相模原でも雨が降ってないと言っていたので前線本体の雲ではなくにわか雨らしい。

 一つピークを越えた向こう側が白根隠山山頂で、ケルンが積まれただけで標識はないが見晴らしがいい。6mを聞くと既に後藤さんの電波は聞こえず撤収したようで、東筑摩郡の移動局を捕まえて終わりにする。DPはケルンに乗せただけだが充分飛んでくれた。やや雨が強くなり、ザックカバーをかけて傘を差して出発したが、すぐに止んでしまった。

謎の掘っ立て小屋 避難小屋内部

 草付きの稜線を辿り、避難小屋への登山道と合流する近くで樹林に入る。尾根上に太陽電池パネル2枚が設置された怪しげな掘っ立て小屋があったが何のための建物だろうか。前白根からの道と合流するところには、今歩いてきた尾根を指して「錫ヶ岳」との案内があり、白錫尾根もメジャーになったんだなぁと思わずにはいられなかった。

 グングン下って白根から降りる道と合流した場所に避難小屋があり、中身を見てみると20人くらいは入るであろう広さがあって使えそうだった。ま、今では丸沼からの日帰りが主流だろうからあまり使われないだろう。水場は無いと聞いていたが、五色沼まで下ると沢があって水が得られるようだ。小屋からは遠いので不便だが、下から全部担ぎ上げなくてもいいのはお得な情報だった。五色沼にたどり着いて右に行くと沢があるらしい。

 五色沼の水辺を時計回りに歩いて阿弥陀が池への登りにかかるが、帰りに登りが出てくるのは精神的に疲れるのはいたしかたない。五色沼の水で濡らしたタオルで汗をぬぐいながらゆっくりと登り、頭上が開けると峠が近い。数人のグループが休憩しているすぐ後ろで3頭の鹿がたむろしていたのでデジカメに納める。日光の鹿は人慣れしすぎて逃げないようだ。まさか奈良公園の鹿のように人間におねだりはしないだろうな・・・・。

 やっと阿弥陀が池に到着、しばらく休んで後藤さんが来ないか待っていたが、山頂の予想撤収時刻とコースタイムから考えるとタッチの差で先行されたと判断、下山を開始した。待っている間に南パーティーかやってきたが、大パーティーは例外なく座禅山方向に登っていったからロープウェイ組だろう。菅沼登山口に下るのは少数派であった。もう午後1時だというのにまだ登ってくる人がいて驚いたりもする。暗くなる前に下ってはこられるだろうが、にわか雨の確率が高いぞ〜

 充分休憩して体も冷え切ったので下りは飛ばし、そろそろ林道に出るという場所で後藤さんに追いついた。車に戻るといよいよ本降りの雨が落ちてきてタイミングが良かった。



 

 

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