奥秩父 乾徳山,笠盛山,黒金山,トサカ,牛首 2004年9月12日

 

乾徳山から見た黒金山、笠盛山

乾徳山から見た牛首

乾徳山から見たトサカ

 

 乾徳山と黒金山は10年くらい前に徳和から登ったことがある。後藤さんと一緒であったが後藤さんは遅れに遅れて私が黒金山に到着してもまだ乾徳山にいなくて、鎖場で落ちたのではないかと本気で心配したものだ。今回は黒金山の南、西、東に位置する場所にある笠盛山、トサカ、牛首が山名事典に記載されたため、まとめて片づけに行くことにした。奥積さんを塩山に送ってから日帰りで行ける山となるとこのくらいが限度であろう。

 今回の登山口は楽ができそうな大平牧場とした。標高1300mちょっとの高さがあるので徳和から登るのと比較して300m強儲けがでる勘定で、登りだけでも4,50分は得をする。ただ、登山道の状態は不明で事前にネットで調べてくれば良かったと後悔する。ただ、エアリアマップでは記載されているので藪ではないだろう。

大平牧場登山道入口を見おろす 林道脇の登山口

 国道からの分岐が夜だとわかりにくく、標識が見あたらなくて地図を頼りに林道に乗り移った。夜間で車の往来はなく、細いが舗装された道をガンガン登っていく。コンクリート舗装だが部分的にヒビだらけの区間があり、パソコンが壊れないよう1速にギアを落として登っている時間が長かった。やがてまともな舗装に復活し、大平山荘の駐車場が現れる。ここは利用客専用だろうとそのまま直進、牧場を抜けて林道脇に立派な登山口標識を発見したが駐車スペースが無く、そこまでの間も駐車余地は全て駐車禁止の看板が出ているので牧場まで戻り、牧場内の登山口反対側の草地に車を乗り入れた。なお、登山口の先で林道工事を実施しているので、休工日以外は林道に入らない方がいいだろう。

 夜間は全く車の通行はなく静かだった。たまに外に出ると鹿の警戒する鳴き声が響き、上空は満天の星空で自然のまっただ中にいるのを認識する。酒を飲んでぐっすり寝た。

廃林道の水場 乾徳山直下の鎖場

 翌朝は快晴、朝飯を食って出発だ。どうもこの牧場は既に廃業したようで、牧場内の建物は崩壊していた。牛も見えないし、牧草地は草ぼうぼうで牛が食べた形跡は見られなかった。林道に出るまでは朝露で濡れたススキが鬱陶しいが、その後は立派な登山道になり廃林道を歩くようになる。途中に水場があって重宝だ。すぐに徳和からの道と合流し、廃林道ではなく尾根通しの踏跡でショートカットして高度を稼ぐ。

 やがて草原地帯に出て視界が開ける。ここが扇平のようだ。下界が見えるが霞んで視界が悪く、富士山もぼんやりとしか見えない。これじゃ乾徳山での展望は期待できないか。再び樹林に入り登り続けると巨岩が出てくるようになり、巻いたり越えたりと目印を頼りに進んでいく。鎖もあるが使わなくても登れる程度にホールド、スタンスがあった。そして最大の山場は山頂直下の長い鎖場で、ここだけは鎖のお世話になる。朝露で濡れた登山靴では摩擦が効かないので手は鎖を握り、足は岩の亀裂につま先を突っ込んで確保する。あまり恐怖感は感じないで済む程度の高度であり、適度なスリルを楽しめると言えよう。

乾徳山山頂 乾徳山から見た南ア(鋸岳〜聖岳)

 鎖を登りきったところが山頂で、本日の山頂で唯一の展望が待っていた。やっぱり空気がよどんでいる感じはあったが高い場所は澄みきって甲斐駒から聖岳まではっきりと見えた。霞がかかっているが笊ヶ岳の双耳峰も見えた。富士山は中腹より下は霞の中だった。これから向かう黒金山、トサカ、牛首も見えているがやや雲がかかっている。ここは無線運用も済んでいるので写真だけ撮影して先を急ぐ。

 まだ岩場が続いて梯子が出てきたりするが危険箇所はなく、難なく巻道分岐に到着する。帰りは鎖場渋滞に巻きこまれるのはゴメンなのでこちらから下ろう。この先も昔歩いたルートだが、ここから先は一挙にグレードダウンし踏跡程度になってしまった。特に奥秩父はシラビソ樹林で藪がないからどこでも歩けるので、ほとんど道があるような無いようなである。前に来たときはそんな記憶はなかったが、この10年で寂れたのだろうか。ま、藪がないのでどこでも歩けるし、目印はふんだんにあるので迷う心配はない。YSKと書かれた標識は短距離間隔で付けられているので(番号は100を越えていた)役立つだろう。

笠盛山山頂

 苔生した樹林帯を登り、たまに岩で開けた尾根に飛び出して展望を楽しみながらドーム状に盛り上がった笠盛山に到着、朽ちて倒れた山頂標識がお出迎えだ。ここだけ頭上のみ開けているので明るい山頂だ。6mを聞くと奥積さんが交信しているのが聞こえたので早速捕獲、本日は昨日の金峰ではなく自宅の横浜だが強かった。今日は北奥千丈岳で出るはずの滝沢さんの声はまだ聞こえず、次の場所では出ていることを祈って出発する。

 まだまだ樹林が続き、檜の尾根の下では、100mほど下ったところで発破作業があるので注意せよとの張り紙が出現、日曜だから今日は工事は無かろう。再びシラビソ樹林に入り、最後の急な登りの手前で大ダオ方面への分岐標識(標高2150m)があった。な〜んだ、山頂まで行かなくていいのかと得した気分だったが、この標高は大嘘で一登りで黒金山山頂だったから標高2000mくらいが正解だろう。

 ここで大きく左に曲がり、尾根を逆戻りするが如く下っていくが、あとで地図を見たら西への稜線は黒金山直下では顕著ではなくタダの斜面だからそう感じるのだ。道ははっきりしているが倒木が多く片づけられていないのを見ると登山道の整備はされていないらしい。ただ標識だけは立派である。昔付けられたのがそのままなのかもしれないが。もったいないがぐんぐん高度を下げていくと笹が出現、エアリアマップでも大ダオ付近は笹と書いてあるからそうだろう。ただ、膝丈の高さしかないので道が無くても酷い藪漕ぎにはならないだろう。朝露でびっしょりなのでロングスパッツを付けて歩く。踏み跡はあるが両側から笹がかぶっているのでこうしないとびしょ濡れだ。歩く人は少ないようで、所々で道が笹の海に飲み込まれてルートがはっきりしない。もう10年もしたら完全に道が埋没しそうだ。こりゃトサカの登りも笹かなぁ。

大ダオ(東から見る) 大ダオから西を見る 廃道で踏跡無し

 

 大ダオは一面の笹原だが登山道のみ笹が無かった。ここから徳和方面へ下れるが、どれほどの登山道の状態だろうか。さて、問題のトサカ方面だが、峠から先はいきなり道が消えていた。鹿道程度はあるのだが人間の道は既に消え失せて笹の海が広がっているだけだ。今まで歩いた黒金山から峠間の方がまだ踏み跡がはっきりしているので歩く人はそれなりにいるのかもしれないが、こちらはほとんどいないようだ。でも目印は付いているので皆無ではないらしい。笹が薄そうな所を選びながら適当に登っていく。ここの笹も低いがいかんせん笹に隠れた倒木が多く、足は引っかかるわ脛はぶつけるわで鬱陶しいったらありゃしない。エアリアマップでは赤点線だが、今では廃道化しているのが現状であった。

 

トサカ山頂

 笹の海は山頂直下まで続き、笹が無くなるといつものシラビソ樹林で歩きやすくなり、道もはっきりする。登山道が右に屈曲するところがトサカ山頂で、僅かに南に入ったところが最高地点のようだ。6mを聞くと今度は滝沢さんが出ていたのでコール、だいぶ呼ばれているらしい。これからの予定を伝え撤収、次の牛首に向かう。笹原を下って登り返し、樹林帯で濡れたスパッツを取って歩いていると下ってくる単独男性がいて驚いてしまった。こんな所に人がいてあっちも驚いたかも知れないな。


黒金山山頂

牛首のタル

 黒金山直下まで戻り、少し登ると山頂、北側が岩場で視界がいいのだがそちらの山はガスに覆われ見えなかったのでそのまま牛首に下る。西沢渓谷への道は黒金山から大ダワへの道よりかなりはっきりして人が歩いている気配が濃いのには正直驚いた。西沢渓谷方面に縦走する人や逆に西沢渓谷から黒金山のみ狙う人がいるのだろうか。牛首のタルまでもったいないほど下り、いよいよ牛首への登りだ。エアリアマップでは登山道は牛首を大きく北に巻いているように書かれているが、現実には山頂に割と近い場所まで登って巻いているので道がない区間は短くて済んだ。尾根を乗り越えるところでここまま尾根に取り付こうかと考えたが幼木がうるさそうだし、GPSによるとまだ距離は200mくらいあるのでここまま登山道を進み、最短距離で山頂が真南にきたところから斜面に取り付くことにした。どうもシラビソの幼木がうるさそうな斜面が続いていて、想像していたおとなしいシラビソ樹林とは大違いだった。


牛首山頂

 ベンチを過ぎ残りGPSの残り50mを見て急斜面にとりつき、いっきに山頂目指して登り始めるが濡れたシラビソの隙間を歩くのもいやなものだ。上がるに従ってシラビソの密度が増しだんだん藪漕ぎになってくるので空間を探しながらよじ登る。やがて石楠花が主体になると稜線は近く、薄い場所を選んで藪を突破、山頂の一角に出た。GPSの表示は東に30mだが明らかに東は下りになっており誤差が出ているようだ。西側は石楠花の密藪で遠くは見えないが、隙間から空の明るさが見えるので同じ程度の高さの地形が続いているらしい。まあ、ここを山頂として差し支えないだろう。

 無線を聞くとまだ滝沢さんが頑張っていたので声をかけた。もう1局甲府盆地の移動局に声をかけて無線はおしまい、下りの藪は重力に任せて突っ切り登山道に戻った。藪の往復でシラビソの枯葉を全身に浴びてしまった。下山後、温泉で洗髪したらシラビソの枯葉が出てきたくらいだ。藪漕ぎらしい藪漕ぎだった。

 さあ、黒金山が最後のまとまった登りと気合いを入れて登り返し、乾徳山方面を南下、登ってくる数人とすれ違った。巻道に入って滑りやすい下りを慎重に歩き(なぜかこの日は湿っぽかった)、今は避難小屋となったヒュッテ前を通過、再び登って往路の尾根に戻り、あとは来た道を戻って車にたどり着いた。登山口にはバイクがあって前を歩いていた人のものだった。バイクなら置けるスペースがあるな。

 山中ではほとんど日差しはなかったが牧場は強い日差しが降り注ぎのんびりできないので、林道途中の日陰に待避して着替えを済ませた。荒れた道だが空のタクシーが4台も登っていったから徳和から縦走してくるパーティーがいるようだ。暗闇と違って日中は荒れた林道も短く感じて国道に出て、昨日と同じく牧丘で入浴、タクシーから降りた登山客の姿も見られた。駐車場の車のナンバーも半分は地元以外で意外に人気らしい。

 帰りは中央道が渋滞しているので(小仏トンネルから20km)相模湖まで一般道を走って高速に乗って帰った。

 

 

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