鈴鹿 御在所岳、鎌ヶ岳、国見岳 2005年3月20日

 

 御在所岳と言えば鈴鹿山脈の中心地と言えるだろうか。ロープウェイがあり手軽に山頂まで達することができる山であるが、下から登ろうとすればそれなりの労力が必要である。武平峠から登るという方法もあるが、今の時期は鈴鹿スカイラインは冬季通行止めで入れないので麓から歩くしかない。ついでに鎌ヶ岳も登るので三角周遊コースを巡るのもいいだろう。登山口については吉原さんに教えてもらった湯の山温泉の車道どん詰まり。最初に三ツ口谷から鎌ヶ岳に登り、武平峠経由で御在所岳に登り返し、体力と時間に余裕があったら三国岳を往復してから一ノ谷新道を下れば車に戻ることができ効率がいい。

車道終点駐車場

 吉原さんと喫茶店でだべったあと登山口の駐車場に向かう。太い道を辿ったらロープウェイ駅に行ってしまい、石畳の細くて急な道を直進したら目的の道だった。かなりの傾斜でグングン高度を上げていくが、冬は凍結して私の車では上れなかっただろう。どん詰まりはスカイラインのすぐ脇で、ガードレールがなければそのまま乗り入れられるくらいだ。10台程度駐車できる広場には車が既に1台あるが中身は空っぽだったので、山の上で宿泊だろうか。端の方に車を置いて酒を飲んで寝た。養老公園で大量の花粉を浴びた影響が残り、薬を飲んでも効き目が無く鼻づまりのまま不快な一夜を過ごすことになったのはしょうがない。

 朝起きると隣の車は消えており、朝飯を食べていると登山者の車がやってきた。天気は予報に反して曇りで風が吹いて寒い。周囲に杉は見えないので花粉は大丈夫かもしれないが、どうも体がだるい。風邪気味なのか。それとも花粉の影響か? 養老山くらいで筋肉痛になるほど足がなまっていたのは予想通りだが、動きに支障が出るほどの筋肉痛ではないのでそのまま歩き出した。

 最初は舗装道路を歩いたが、エアリアマップを見ると左手の谷に沿って登山道があり、そっちから三ツ口谷へ分岐する登山道が出ているので、車道を歩いていたら分岐を見落としてしまう。左手に下る道があり、小さな谷を渡る橋も近くに見えるので、それが登山道だろうと行ってみると標識があり一安心。車道に沿って上がっていき、大きな砂防ダムを巻いた上で三ツ口谷への分岐があり、足跡に導かれて谷に入る。

 出発時には感じなかったが、歩き始めてから体調がおかしいことに気付いた。花粉症は歩き出したら良くなって鼻も通るようになったが、だるさがでてきて喉の痛みと鼻の奥の乾燥が感じら、どうも風邪の前駆症状のようだ。今日は日差しがなくて寒いから心配だ。この後、登っていくとだるさが増していき、まだ鎌ヶ岳の登りの途中だというのにもう帰ろうかと思うくらいだった。幸い、軽アイゼンでの通過が恐い急な雪面で緊張したらだるさを忘れてしまったが。

三ッ口谷入口 長石尾根ルートへ合流する踏跡

 谷筋には予想通りたっぷりの残雪があり、谷に沿って雪の上に踏跡が続いていた。昨日の養老山とは大違いだ。軽アイゼンがあると歩きやすいが、まだ無くても歩けるのでそのまま我慢して歩く。やがて谷が2分し、巻道とか標識が立っている箇所があったが何を意味するのか不明なので直進する。やがて滝が見えてどう歩くのかと思ったら右手の急斜面にルートは逃げており、雪がちょっとだけ残った斜面をグイグイ登る。ちょっとだけ嫌らしい箇所だったがまだアイゼンなしでも行け、突然巻道に出ると再び平穏なルートに戻り、滝上部の谷に出られた。


 そこから踏跡が分散するようでどこを歩くのか分からなくなるが、左手の斜面に目印と踏跡が見えたので低い笹の中を登っていくと尾根上に立派な登山道があった。どうやら長石尾根ルートに乗り移ったようだ。エアリアマップでは三ツ口谷ルートの最後は赤点線で他のルートに吸収されることになっているので、ここで長石尾根に乗っても大差ないだろう。

 ガレ場に出ると視界が開け、背後には御在所岳ロープウェイの駅が見えるし、目の前には急斜面の向こうに鎌ヶ岳山頂らしき岩の積み重なりが見える。樹林に入ると一面の雪に覆われ、傾斜がきつくなるところから上は一面の雪でアイゼンなしでは危険であるので6本爪の軽アイゼンを付ける。しかし、この傾斜でこの固い雪面では滑るとタダでは済まないだろうから本当は出っ歯の12本爪とピッケルが欲しいところだが、できるだけ木の多いところを選んで滑落したときに備える。案の定、雪面に残った足跡は12本爪アイゼンにピッケルを刺した穴で、アイゼン無しの靴跡はなかった。

 そこを登り切ると雪は消えないが傾斜が緩んで危険箇所を脱した。出発時に、北斜面を登るので念のためにピッケルも持っていこうか悩んだのだが、この時ばかりは後悔した。やっぱり鎌ヶ岳のような急峻な山をなめてはいけない。まだこんな場所があるかも知れないし、下手をするとピッケルなしでは危なくて歩けない箇所だってあるかもしれないとビクビクしながら歩いたが、山頂直下も問題なく歩けて、上空が開けると偽ピークに騙されることもなくひょっこりと山頂に飛び出した。

鎌ヶ岳山頂(背景は御在所岳) 鎌ヶ岳→武平峠の下りはじめ

 山頂は南北に細長く、雪庇の残骸が残っていた。遮る物がないので見晴らしは素晴らしく、峠を隔てた正面にはなだらかで広大な御在所岳山頂部、左手には雨ヶ岳だ。昨日も霞んで遠望が効かなかったが今日も同じで濃尾平野が霞んでみるだけだ。西側の山々は土地勘がないので同定不可能だった。日差しが無くて西風が強いので体感温度は低く、風を避けられる場所で無線を運用した。

 下山であるが、山頂直下の急傾斜がくせ者だ。ルートの取り方と植生、残雪状況によっては下れないことも考えられるので、恐る恐る覗いてみると相当な角度で落ち込んでおり、鎖があるが雪に埋もれていた。こりゃまずいかなぁと思いながら他に道がないか捜してみたが、やはりここだけのようだ。雪を避けて慎重に下り、右手の極小さな尾根を下って雪を迂回すると、あとはさほど危険を感じる場所は無かった。今は朝早い時間で気温が低く雪が締まってアイゼンが必要だが、残った足跡の主が歩いた時間は日中のようで雪が緩んで靴の底がくっきりと雪に残っていたので、本来は危ないルートではないようだ。断続的に雪が出てくるがもうアイゼンが必要な場所はなく、早々にザックにしまった。御在所岳の登りは南斜面なのでアイゼンの出番は考えられないし。

武平峠

 武平峠は車道を横断するのかと勘違いしていてトンネルで下を抜けていたとは知らず、鞍部には登山道しか無くて驚いた。登り返しは昨日の疲労も残っているので意識してペースを落としてゆっくり歩き、時々振り返って鎌ヶ岳との標高差を目視する。雪は思った以上に残っているが緩んでいるのでアイゼンの出番はなかった。

「舗装道路」から見た御在所岳東ピーク 「舗装道路」から見た御在所岳西ピーク

 登り切って傾斜が緩むと車道のような場所に出るが、残雪に覆われているのでそうなのかわからない。少し登って左に回り込むように下ると広い道に出て、歩いていくと雪が消えた箇所からはアスファルトが顔を出しているではないか。舗装道路だったのだ。ここから見ると御在所岳は2つのピークからできており、右手のロープウェイ施設があるピークと正面のピークだ。どうやら正面ピークが山頂らしく、直下で山頂を示す標識に導かれ舗装道路から外れて登るとすぐに山頂だった。

御在所岳山頂

 山頂はかなり広く、真ん中には1等三角点と山頂標識。三角点周囲には囲いがあるので三角点の近接写真は撮れないのでズームで撮影した。残雪は豊富で、北斜面は一面の雪面だった。見る限りでは隣の国見岳まで雪が続いている。鎌ヶ岳は意外に小さくなってしまい、直下で見た時のような迫力がない。冷たい西風が強く気温は1度。観光客は寒そうだが、こっちはついさっきまで歩いていたのでTシャツ姿で場違いのようだ。この格好では体がすぐ冷えてしまうので防寒着を着込み、風が避けられる場所で無線を運用した。

国見峠 国見岳山頂

 まだ時間があるので国見岳にも行ってしまおう。地図を見ると国見岳とは反対側のさっき歩いた舗装道路に下る無駄が多いルートなので、残雪を利用して国見岳鞍部まで直線的に下ってみることにする。リフト乗り場隣がとってもいい斜面だが、係員の目の前でルート外を歩くのもはばかられるので藪を適当に突っ切り、少し下った場所でその斜面に出ると、どうやらスキーのゲレンデらしかった。立木が無くて展望も良く残雪の上をザクザクと下っていく。しかしゲレンデは国見方面には行ってないので途中で進路変更、樹林帯を鞍部めがけて適当に下っていくとトレールに出会った。あとはそのまま歩いていけば良く、南斜面なのにほとんど雪に埋もれた登山道を登り、花崗岩のザレ場を乗り越えると山頂の一角だ。国見岳はなだらかな山頂で、どこがてっぺんなのかはっきりしないがGPSが場所を教えてくれる。山名事典が指定する山頂は南側のピークで登山道から外れているが、ちょっと木が邪魔なだけで藪漕ぎはない。花崗岩が点在するなだらかな山頂で標識もなかった。おそらく北側のピークが一般的な山頂なのだろうが、地形図を見てもどちらのピークも同じ等高線が通っているのでどっちでもいいのだろう。適当に無線を行った。

東ピークの雨量レーダ 一ノ谷新道入口。雪の壁 一ノ谷新道から見たロープウェイ

 帰りはトレールを辿ると気象レーダのあるピークに到着、しかしこれがわかりにくく、一ノ谷新道入口に行きたかったのだがピークに行ってしまった。ここからは違うルートが出ているのでピーク北側を巻くようについている道を歩いて公園へ、ここではたくさんの子供がソリで遊んでいる。レストハウスらしき建物の横に一ノ谷新道の標識があり、雪の急斜面に踏跡が下っている。ちょうど雪庇状になった吹き溜まりのようで、下りではアイゼンがあった方がいいので装着、しかし20mくらいでそれも終わってアイゼンをしまった。この雪の斜面で登ってくる人1人を見かけたが、他に人は登ってこなかった。時間が遅いからなぁ。

 南斜面なのでその後はほとんど雪はなく、樹林帯をグングン高度を下げていく。昨日の筋肉痛があるので下りでは足が痛むが大きな支障はなかった。杉花粉は全くないわけではないがあまり感じることもなく車道に出た。ちょっと下ったところが駐車場で満車になっていた。ロープウェイを使わず足で登る人もけっこういるようだ。以前入ったことがある湯の山温泉の「ヘルシーパル湯ノ山」で暖まり、明日の竜ヶ岳へと向かった。

 

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