富士寄生火山 大室山 2005年3月27日

 

富士ヶ嶺から見た大室山

 大室山は数ある富士寄生火山の中でも最大と言っていいかもしれない。高さや噴火の規模で言えば宝永火口に負けるが、あれは「寄生火山」ではなく「火口」というのにふさわしく、正直言って山らしくない。それに対し大室山は離れたところから見ると寄生火山というより立派な独立峰に見え、登高欲をそそられる存在だ。しかし登山道はなく、よほどの物好きしか登らないようで、以前ネットで捜したら登山記録は発見できなかったが、2005年3月下旬に検索したら2件引っかかり、そのうち1件は詳細で参考になった。それによると山頂付近のみ笹藪で、それ以下は落葉広葉樹林の気持ちいい斜面らしい。これなら難なく頂上に立てそうだと勇んで出かけることにした。本当は残雪期の山に行きたかったが、土曜日は会社の出勤日で日曜しか動けないので近場の大室山が適度だと判断した。時間があればもっと南の寄生火山も登ってみよう。それにこの時期だと下手な山だと花粉がきつく登るのは難しいが、青木ヶ原樹海なら杉の植林は無いだろう。過去の経験から考えてもあるとしてもカラマツかシラビソだろう。

 登山口となる精進登山道と県道が交差する場所は東京からさほど遠くないので、金の節約のため大月から一般道を走る。信号の多さに時間はかかるが、富士吉田市街抜ければスイスイ走り出し、富士ヶ嶺への県道に入る。道の両側に雪が見えるが道路の凍結はなかった。鳴沢村→上九一色村に入り、それらしき標識がないか注意しながら走ったが見あたらず、展望台駐車場を過ぎると明らかに下り始め、地図で確認すると行きすぎのようだ。戻りながら目を皿のようにしながら精進登山道の標識がないか、それとこの登山道を剣道が横切っているので小さな十字路になっているはずでそのような場所がないかよ〜く見ながら走ったが発見できないまま鳴沢村に入ってしまう。こうなったらGPSと読図勝負で、地図を見ると村境から1.5kmくらいで登山口のはず、また、GPSで見ると大室山の真北よりやや西の地点に当たるが山へ最接近する場所ではないのでGPSはあまり使えない。注意しながら走ると左側に除雪された雪の置き場があり、駐車スペースが見えた。左側にそれらしい場所はここしかないのでUターンして車を突っ込んでみると、奥に向かって歩道が延びておりガードレールに車止めの見えた。標識はないがどうやらここらしい。道ばたなので車の通行がうるさいが酒を飲んで寝た。しかし、夜中2時くらいに警察の訪問があってたたき起こされる。なんでも「不審車」の通報があったとかで、青木ヶ原樹海のへんな場所に止まった車=自殺志願者と思われたのだろうか? まだまだ登り残した山があるので死ぬわけにはいかない。その後も誰か来たようだが集団だったので警察ではないだろうと無視した。どうも青木ヶ原で車中泊は目立たないところでないとよろしくないらしい。それとも、普通の精神状態の人間だったらこんなところで一人で寝られないか??

登山口の精進登山道(標識無し) 精進登山道のゲート 精進登山道

 

 あまり早い時間だと無線交信の相手がいないので、充分明るくなった6時に出発、残雪状況が不明なので軽アイゼンとピッケルを持つことにした。わずかに歩くと頑丈なゲートで車止めされた精進登山道が登場、当面工事で通行止めと書かれているが、実際は放置状態であるのは天神山周辺を登ったときに確認済みだ。かなり雪が残り歩道はほぼ一面残雪に覆われているが、多数の足跡が残されているので訪問者は多いようだ。まさか大室山への登山者のわけはなく、ネットで見たら散策コースがあるようなのでそちらの利用者だろう。それに関する張り紙もされていた。

古い案内標識。意味不明 精進登山道と分かれて2つめのゲート この標識を見る人、どれくらいいる?

 

 凍り付いた部分を避けながら緩やかに高度を上げていく。古い案内標識があるが「背負子」とは何だろう? 中には「大室」の文字があるが、以前は登山道があったのだろうか? 富士風穴は帰りに立ち寄ることにして通過し、雪が増えて道が左に曲がるところで右に分岐する林道とゲートを発見、これが地形図に書かれた、大室山東をジグザグに登る歩道だろうか。ゲートを越えるとそれまでの「いかにも樹海らしい」暗い針葉樹林からブナを中心とした背の高い落葉広葉樹林に姿が変わる。「大室山のブナ林」との看板もあるから有名なのだろうか。しかしすぐに唐松樹林になってしまい、ブナ林とはしばしのお別れだ。

カラマツ植林帯の廃林道

 樹海とは縁の無さそうな唐松植林帯を適当に登っていく。雪に埋もれた廃林道を横切るが斜面をそのまま登っていくと谷がはっきりしてきて、谷の東側が唐松植林地帯、西側は自然林だった。谷が林道らしいが東側の植林帯を歩いた。やがて傾斜が緩んで谷が消滅する手前で右側の大室山本体へととりついた。再びブナ科の樹林に変貌し、時々赤布や赤テープを見かけるようになり、そこそこ登山者が多いことを物語っている。特に赤布は真新しく、雪の上にはワカンの痕跡が僅かに残っていた。おそらく1,2週間前に登ったのではなかろうか。帰りはこの赤布を辿ればこの谷に戻ってこられるだろう。一応、尾根のはずだがなだらかでタダの斜面にしか見えないので目印があると助かる。

斜面は一貫して落葉広葉樹林 山頂直下で笹出現 大室山山頂。標識有

 

 藪のない気持ちのいい明るい樹林が続き、積雪はゼロの場所から10cmくらいの場所までまだら模様だ。朝早く気温が0度以下なので雪が締まって歩きやすいが、藪がないので無雪期の方が楽に登れるだろう。直線的に登るには傾斜がきついのでキグザグを切るが、ピッケルは無用の長物の傾斜で出番は無さそうだ。時々鹿の足跡が混じる。傾斜が緩んでくると笹が出てくるので右手から回り込むように高度を上げると、笹の海の手前に山頂があった。山頂と言っても三角点があるわけではなく、手製の山頂標識があるだけだ。でもGPSの表示でも周囲の高さから言ってもここが山頂に間違いないだろう。小さめのブナの木が目印で、周囲は樹林に覆われて展望はない。本当ならば富士山や南アルプスが見えるのだろうが。お世話になった赤布には「しのはら」と書かれていた。南の三角点まで行ってみようとしたが、山頂より南は笹が生い茂り藪漕ぎが必要で諦めてしまった。けっしてもがくような藪ではないので行こうと思えば行けるだろうが、山頂より低いところにあるしなぁとやめておいた。もし南から上がるとこの笹藪が待っているはずなので、今回のように北斜面から攻めるのがいいようだ。

 山頂で少しだけ無線をやって、同じルートで下山する。自分の足跡と赤布を参考に一気に駆け下るとすぐに廃林道に出た。帰りに富士風穴に立ち寄ってみたが、思ったより狭くて真っ暗けで入口を降りただけで戻ってしまった。ヘッドライト程度では光量不足で大型懐中電灯くらいは欲しい。そこからちょっとで車に戻れた。

 

 次はもっと南の二ッ山、永山に向かったが、途中の展望台はかなり南に行きすぎた所にあったので、鳴沢村から来た場合、左手に広い駐車場があったら行きすぎである。ここからの展望は良好で、真正面には毛無山、そしてその右には白根三山がその名の通り真っ白であった。午後ここを通過したら空気が霞んで全く見えなかったので朝のうち姿を拝めて運が良かった。

5:53車−6:06林道分岐−6:26谷が終わり斜面に取り付く−6:56山頂着−7:42山頂発−8:03林道−8:10富士風穴着−8:19富士風穴発−8:25車


 

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