上越国境 忠次郎山、上ノ倉山、大黒ノ頭 2005年5月14日


 

 上ノ倉山は10年くらい前に三国スキー場から日帰り往復したことがあるが、その年は春先の気温が高くてガンガン雪が融けてしまい、大型連休前には2000m近くまで登らないと残雪が無いというろくでもない状態で、ほとんど笹藪漕ぎばかりで残雪期の山とはとても言えなかった。藪漕ぎで疲れ切って時間切れになったため忠次郎山までたどり着けずに上ノ倉山で撤退となった苦い経験の山だ。その後、山名事典に大黒ノ頭が記載され、ここは通過はしたが無線をやっていないので再訪する必要を生じ、忠次郎山と合わせて登ることにした。日帰りで登るにはアプローチが短い三国スキー場以外は考えられない。

 大型連休最後に近い5/6金曜日、立山からの帰りに三国スキー場を偵察しに行ったら、まだゲレンデ下部に雪が残っており、10年前とは比較にならないくらい雪がありそうなので、これなら稜線は1週間後でも雪はあるだろうと安心した。問題は大黒ノ頭直下の急な登りで、以前登ったときは全く雪が無くて笹に掴まって登ったが、今回は急な雪面を登らなければならないだろう。10年前はピッケルなど使う場面を考えもしなかったが、今回は12本爪アイゼンにピッケルの完全装備で挑戦だ。まさか連休中のクズバ山よりヤバいなんてことはないだろう。ルートは前回と同じで尾根通しでいくか、それとも湯ノ沢沿いに上がって県境尾根に直接到達することにするか、残雪の状況を見て決めることにした。地形図を見る限り湯ノ沢は傾斜は緩く滝は無さそうだし、たとえあってもどちらかの岸に高巻きできるだろう。県境尾根は北斜面を登ることになるので、ある程度標高が上がれば雪が出てくるだろうから沢歩きは長続きしないかも知れない。出発直前にネットで調べたら、県境稜線の三坂峠というところまでスキー場から夏道が開かれたとのことだが、その峠はどこの鞍部を示しているのか分からなかったが、稲包山の西側らしいので利用できそうだ。ただし、雪に埋もれて分からない可能性が高いだろう。

三国スキー場駐車場

 週末は寒気が入って曇りがちの予報だったが、日本海側は少しはいい方向らしいので出かけることにする。たぶん上越国境の山々は雲の中に没しているだろうが、往復とも同じ道を歩けば足跡を追えば帰りのルートを間違わないし、最終兵器のGPSがあるので視界が無くともどうにかなるだろう。ただ、ガスっているとデジカメの出番が無く、HPを作成するときに非常に寂しいページになってしまうのが残念だ。メッシュ予報だと午後3時以降は北関東を中心に雨の予報が出ており、できるだけ早い時間にやっつけた方が良さそうだ。

 月夜野ICで関越道を降りて17号線を北上、三国トンネルを抜けて苗場スキー場で左に入る。細い舗装道を登り切った終点が三国スキー場だ。入口はロープがかけられて進入禁止になっているが、柵の一部を開けて中に入って奥の方で寝させてもらおう。既に営業を終了してから1ヶ月以上経過しており、無人の三国スキー場は静かで快適に睡眠できて非常によろしい。まさか「同業者」がやってくることもないだろう。

三坂峠経由稲包山登山口 雪に覆われた廃林道 湯ノ沢を渡る。丸木橋は休業中

 

 翌朝、湯ノ沢左岸の廃林道をスタートする。入口には三坂峠、稲包山の案内標識が立っており、思ったよりもまともな道らしいので、前回のコースとは違って直接県境稜線を目指すことにする。残雪の上に足跡が付いているのでこの時期でも利用者がいるのかとおもったら、雪が連続するようになると足跡が途絶えた。山菜取りの人だろうか? しばらく廃林道が続くので雪に埋もれてもルートはわかり、やがて湯ノ沢に降りて渡渉する。この時期は丸木橋はかかっていなかったが雪解けシーズンでこの水量なら雨で増水しない限りは簡単に渡渉できるだろう。

雪に埋もれた沢を登る

 渡ると小尾根を左に巻いて小さな沢に当たるが、この先は雪で真っ白で夏道が埋もれてルートが分からない。三坂峠の夏道は歩いたことがないのでルートを知るはずもなく、どうせ雪でどこでも歩けるからと沢に沿って上がることにした。雪は締まって快調、標高が上がると沢も雪の下に埋もれてしまう。このまま稜線に到達できると安心しきっていたが、標高が上がると逆に周囲の雪は無くなっていき深い笹原ばかりになる。沢の雪が切れたら藪漕ぎになってしまう。どこまで雪が続くかだんだん心配になってきたら、沢が細くなると同時に雪も細くなり、源頭部でとうとう雪が消えて深い笹藪になってしまった。予想外の展開に、これじゃリフト最上部から登った方が良かったかなと後悔の念しきりだが、今さらそうするわけにもいかず、このまま笹との格闘を決意する。イヤらしいことに昨夜の雨で笹はびしょ濡れで、上下のゴアで完全装備して藪に飛び込んだ。

 藪は薄くはないが強烈でもなく、割と簡単に漕ぐことができた。ものの数分で稜線に到達、その先はガスって見えないがもう高い場所は無いような雰囲気で、おそらく県境稜線だろう。武内さんの記事でもあったように、ここには踏跡は一切無く、ただの笹と灌木の藪が広がっているだけで期待を裏切らなかった藪尾根だ。ただ、目印はたくさんあるかと思ったらほとんど無くて、たまに色が抜けた赤布があり、もっと頻度が少ないが木に打ち付けられた白いプレートがある程度だ。残雪は南側に僅かにへばりついている箇所があるくらいでほとんど無い。あとは早く雪が出てくることを祈って歩き続けるしかない。まさか今年も藪漕ぎとはなぁ。どうやら1500mピークと1510mピークの鞍部付近に出たらしい。

1510mピーク直下の雪棚 1510mピーク東を巻いて正しい尾根へ こんな目印がたまにあるだけ

 

 2連続する1510mピークは南の雪だなをできるだけ利用して藪を避けたのだが、巨岩が居座り石楠花をくぐり抜けた2つ目の1510mピークで南西に下る尾根に引き込まれてしまった。なにせガスって周囲が見えないし、GPSには西沢の頭から伸びる尾根上のルートを歩くのを想定してデータを入れているので県境稜線の細かいデータは入ってないので、読図しか役立たない。進行方位が南西になったのでおかしいと気づき、再び石楠花をかき分けてピークに登り返すと北に向かって太い尾根が伸びていて一安心だった。

いやになるような笹藪が延々と続く 1580m肩。雪が現れると天国!

 しかし安心しても藪は薄くはならない。笹を中心とした踏跡皆無の藪が延々と続き、たま〜に目印が出てくる繰り返しだ。稜線の南直下は残雪が最後まで残るようでほとんど笹なのだが、頂稜は灌木が混じって手強い藪を形成する。場所によっては右手の笹藪に逃げた方が楽な場合もあり、できるだけ藪が薄いところを選んで登っていく。イヤらしいことに下りでは時々雪が現れるが疲れる登りは雪が無く、濃い笹を両手でかき分け突き進んでいくしかなかった。1563mピークの登りも笹の海であった。

 1563mピークの下りでそこそこ雪が現れるが、登りになると雪のかけらもない。1580m肩だけは雪がいっぱいあるが、そこを過ぎればまた笹藪である。どこまで行っても雪が無く、残雪期の山に登りに来たではなくタダの無雪期藪山周遊ではないか。標高1650mを越えると傾斜が増すが植生が笹から檜、シラビソに変わって同時に斜面一面が残雪に覆われだした。これはしめた! このまま残雪が続けば藪から解放される。もう3時間以上歩き続けているので、この辺で休憩とした。ついでにアイゼンを付ける。

1750m肩直下は幼木の藪 1750m肩。シラビソ樹林で藪から開放 まだまだ遠い忠次郎山(左)と上ノ倉山(中央)

 

 出発して標高を上げていくと徐々に木の高さが低くなって幼木の藪になってくるがまだ隙間があるので通過可能、そして1750m肩に達するとそこそこ背の高いシラビソ樹林になり、笹がきれいさっぱり消えて踏跡さえ見られるようになった。やった、この状態が続けば雪があるのと変わりがないと喜び、アイゼンを外して歩いたらすぐに笹と灌木の藪に突っ込み、甘い希望を打ち砕かれた。右手の斜面に僅かながら雪が残っている場所はそこを歩く。木の切れ間から真っ白な上ノ倉山、忠次郎山、上ノ間山が見えるが、そこに至る尾根は完全に笹が出てしまい、雪田ははるか下まで後退しているのを見て落胆する。なんか7年前と変わらないではないか。

1766mピーク西側の登り。強烈な笹 1766mピークを西側から見る 1820m肩。笹+灌木

 

 1766mピークを過ぎて登りにかかると笹の中に灌木が混じり、密度もこれまでになく高くなって嫌らしい藪になるが、笹の高さは腰ほどで視界良好なので助かった。右手はスキー場から伸びる1850mピークで、鞍部付近だけ雪田があるが、県境稜線との合流肩は藪で覆われていた。さすがにこれだけ藪漕ぎを続けるとグロッキーだ。尾根合流点の1820m肩は笹50%灌木50%のミックス藪で、灌木はかき分けることができない固さで強引に突破しようとしても押し戻されるだけなので、周囲を見てできるだけ灌木の薄い箇所を選び、場所によっては灌木によじ登って突破した。前回もここは藪で苦労した場所だが今回も全く同様だった。これが雪に覆われていたらどれだけ楽できることか・・・・。

セバトノ頭登りで待望の残雪登場!

(雪田の途中から東を振り返る)

セバトノ頭山頂。だだっ広いシラビソ疎林

 灌木帯を突破すると笹だけの藪になり、踏跡皆無でもずいぶん楽になると感じるのだから慣れとは恐ろしい。そして1850m微小ピークを過ぎると今度こそ待望の残雪が現れ、見える範囲(ガスが流れあまり遠くまで見えないが)ではずっと続いていた。ちなみに前回の登山では同行者がここで藪の疲労で脱落したのだった。そしてここから残雪が現れたような記憶があるので、地形の関係で雪の残り方の境界になるらしい。

 期待に違わず今度こそは雪が続き、全ての笹や灌木から開放してくれて歩行スピードが数倍に上がっただろう。足が軽い。セバトノ頭はだだっ広いピークでどこが山頂なのかよくわからないほどで、上ノ倉山への下りが迷いやすいと周囲していたつもりが案の定南西に延びる太い尾根に吸い込まれ、右手に低い主稜線を見つけてトラバース、4分のロスだった。迷いやすい区間にはなぜか目印がないんだよなぁ。付けてくれば良かっただろうか。今回は目印の出番はなかった。

1850m鞍部から気持ちのいい雪面を登る 大黒ノ頭は目の前

 1860mピークを通過して鞍部でアイゼン装着を兼ねて休憩、ここまでなんと5時間もかかっているではないか。通常、5時間あれば標高差2000m近く登れる計算だが、まだたった1000m程度であり、藪の恐ろしさがよく分かる。大黒ノ頭はもう目の前で、標高差2000mを登るだけでいい。いつの間にかガスが晴れて真っ青な空が頭上に広がっていた。

 休憩を終えて尾根直上を避けて雪を伝わって北側を巻き気味に登り、傾斜が増すと雪も切れて膝丈ほどの低い笹原をアイゼンを履いたまま登っていく。前回登ったときは急斜面に感じだが、今回歩いたら適度な傾斜で雪が付いていても危険を感じることなく歩けそうだった。そのうち右手に雪が見えたので尾根を外して雪田に取り付き、ピーク右を巻きながら大黒ノ頭に到着した。

大黒ノ頭山頂 大黒ノ頭から見た大黒山 大黒ノ頭から見た上ノ倉山

 

 2度目の山頂だが前回の記憶はなく、目印があったかどうかも覚えていない。地形図記載ではないので標識は無くシラビソが疎らに立っているだけで東側の見晴らしはいい。北側にある大黒山までは気持ちよさそうな残雪が続いているが、上ノ倉山へは雪が切れた箇所がありそうだ。でも今までのあの笹の距離から比べれば楽勝だろう。昨夜の雨はこの辺は雪だったようでシラビソの波には雪が乗り、融けてポタポタ水滴が垂れている。そういえば雪も異常に真っ白でデコボコが見えないほどだったが、薄く積もった新雪だったのだろう。せいぜい1,2cmなので歩くのに全く支障がなかったのは助かったかな。

 既に出発から6時間近く経過し、思ったより時間がかかってしまったのでのんびりできない。まだ最大の目的の山、忠次郎山往復が残っており歩くだけで2時間近くかかるだろう。明るい内に下山できるか微妙なタイミングと予想した。無線運用を兼ねて休息し、アタックザックに最低限の品を入れて忠次郎山へと出発する。

上ノ倉山三角点峰(山頂) 上ノ倉山最高峰 上ノ倉山南端ピーク

 

 鞍部への下りで雪田が切れたので右の斜面に逃げ雪の上を歩く。再び雪棚が現れると上ノ倉山山頂まで導いてくれる。前回登ったときには「KUMO」を含めて2,3個標識があったはずだが見あたらない。まさかこんな山で掃除されたとも思えず、東側にベッタリ残っている雪に埋もれたダケカンバに付いているのかも知れない。西側は藪が出ていたので帰りに三角点探索を行ったが今回も発見できなかった。もう2度と来ることはないのでここの三角点は今後目にすることもない。

 上ノ倉山は3つコブの山で三角点峰が一番手前で山頂とされるが、真ん中のピークが最高峰である。一面の雪に覆われた最高峰は文字が消えた標識があるだけだったが、三角点峰は標識が見あたらなかったから今ではもっとも山頂らしいと言えようか。3つ目のピークはごく小さくコブと言った感じだ。

雪棚から藪が出た痩せ尾根に乗る 明瞭な踏跡も見られる ちょっとでも尾根が広がると低い笹藪

 

 ここからが問題だ。地図を見ると進路は左に変わって下っていくと尾根らしくなるようだが、今はガスって先の様子が皆目分からない。左手には雪庇の融け残りがあるのでそれを辿り、雪が消えると藪が出た痩せ尾根になった。地形図ではそれほど痩せた尾根には見えないが顕著な尾根だし南に向かっているのでおそらく間違いないだろう。尾根が細くて歩ける部分が限られるせいか、一部に明瞭な踏跡もあった。痩せているとはいっても藪が生えているし危険を感じるほどではなく、雪が付いてもさほど問題ないだろう。下りになると低い笹が中心で帰りの登り返しが思いやられる。ガスの中から雪の白さがボーっと現れると鞍部付近で、再び雪庇の融け残りが稜線を覆い尽くして笹が埋もれて歩きやすい。

忠次郎山の登りから上ノ倉山を振り返る 忠次郎山の登り 忠次郎山山頂

 

 忠次郎山への登りは一面の残雪で楽に歩け、ジグザグを切ってシラビソ樹林を登り切ると平坦な山頂に到着、ガスっているので周囲が見えないのは残念だが、地形的にもGPSの表示でもここが山頂であることは間違いない。山頂標識はなく、赤テープが巻かれた木があるだけの山頂だった。こういう山こそ「KUMO」や「達筆標識」が似合うだろう。あ、そういえば群馬の山にはどこにでもある「Gさん標識」が無いなぁ。上ノ倉山にも無かったが、まだ登っていないのか、それとも雪に埋もれているか、まさか誰かに取られた? ここにはぜひそれらの標識が欲しいところだ。

 のんびりしている時間がないので、無線運用と食事をして下山開始。無線は遠くは愛知県からも声がかかってビックリ。関東にも良く開けているようで0.1Wの自作無線機の局とも交信できた。忠次郎山から6mの電波が出たことはないだろうし、今後出ることもないだろう。ここに登るとしたら「武内さん(既に登っているが無線はやっていないはず)」、「安中の重鎮(別名"巻き巻きの君")」、「DJF」、「CVP」くらいなものか。特に「安中の重鎮」には期待大である。群馬に拘るのならテントを背負って野反湖から往復がよろしかろう。そうでないと私同様長距離藪漕ぎの運命が待っているかも? 白砂山経由は水平距離はあるが大型連休なら藪が確実に隠れているだろうから三国スキー場から歩くより楽だと思う。

上ノ倉山最高峰から見た三角点峰 上ノ倉山三角点峰から見た大黒ノ頭 大黒ノ頭から県境尾根を下る

 

 上ノ倉山に登り返しているとガスが晴れて周囲が見えるようになり、デジカメのシャッターを押す(文中の写真は帰りにガスが晴れたときに撮影したものが多い)。忠次郎山があんな形だったのかとしげしげと見つめる。正面にはこの藪尾根を登り返すのかぁと気が滅入るピークが聳えているので、こいつだけは見えない方が良かったかも知れない。それでも笹の背丈が低いので藪は大したことが無く、上ノ倉山第3ピークに到着、あとはほとんど雪の上を歩いて大黒ノ頭へと戻った。既に時刻は13時を過ぎており、雲の高さが徐々に低くなって佐武流山の頭が雲に入ってしまった。天気予報でも午後は下り坂だったので、藪尾根でガスに巻かれない内に下山しないと大変だ。それに濡れた藪はもうゴメンだ。

 荷物を回収しメインザックをパッキング、大黒ノ頭直下はアイゼンを効かせて急な雪田も滑るように下る。迷ったセバトノ頭も登りなら上を目指すだけなので木の隙間を縫って高みを目指すと自動的に山頂を通過、雪をつないで下ると快適な雪は終了、再び笹藪との格闘が始まるが、これを乗り越えないと帰れないのでやるしかない。

 県境尾根のあの藪を戻るのはごめんなので、もっと標高が高くて雪が期待できる西沢ノ頭を目指すか、適当な斜面を下って湯ノ沢に降りてしまうか考えたが、沢に降りて下手に雪がなかったら沢歩きの距離が長いのでかえって時間と体力を消耗する可能性があったので、疲れるのは確実だがルートも確実な西沢ノ頭経由スキー場リフト終点を目指すことにした。それに西沢ノ頭は山名事典に記載されているし。

1850mピーク南の鞍部。地面が出ている 細かいアップダウンの尾根から1850m峰を振り返る 尾根南側は笹、左は矮小な樹木

 

 1820m肩では行きと同様灌木の大歓迎を受け、あちらこちらで跳ね返されながら隙間を見つけて格闘する。抜けると鞍部付近で地面が出て幕営適地が2カ所現れ、前回はここに赤布が大量に捨ててあったのを思い出す。やっぱりここで幕営したのだろうか。1850mピークへの登りも1級の藪で、僅かに残る雪を頼って東から回り込むように山頂を目指すが、直下はハイマツ、灌木も混じってジャングルジム状態の藪で始末が悪い。こんな場所にも目印がぶら下がっているが踏跡は皆無である。

 ピークを越えその先の尾根に入ると森林限界の様相で石楠花、ハイマツ、灌木、笹がミックスした藪だ。尾根南側直下だけは遅くまで残る雪庇の影響か、純粋な笹なのでできるだけそこを歩く。融け残った雪棚が使える場所は高速道路のようだが長続きしないで再び藪尾根に戻る。1852mピークは山頂東側稜線上にも雪が残り歩きやすかったが、雪が消えると一面の笹藪で、これが登りだったらと考えるとぞっとする。下りなら重力の助けがあるので笹藪など目じゃない。

1852mピークから1800m鞍部を見下ろす 1800m鞍部から1852mピークを振り返る 1830m肩。最初は低い笹だが直下は石楠花混じりの地獄の藪

 

1730m鞍部から見た西沢ノ頭 横に生えた檜が密集した強烈な藪

 雪棚の残る1800m鞍部を通過して登りにかかると、1820m肩は笹+石楠花で足が地面に着かない背丈ほどの強烈な藪で、背が高いので枝を踏みつけることもできないで枝を手で押し分けられる場所を探す。突破すると純粋な笹になって助かったと思うのもつかの間、1830m肩周辺もさっきと同様の地獄の藪で「歩く」というより「もがく」との表現がピッタリだ。どうにか西沢ノ頭へ続く尾根に乗り雪が出て助かったと思ったらこれも長続きせず、今度は横に寝た檜の密集地帯の歓迎を受け「空中散歩」を強要される。1730m鞍部でやっと雪の上を歩けるが、西沢ノ頭の登りがこれまた凄い藪に見える。雪を頼って尾根を外して北側を歩いたが、雪が消えて斜面に取り付こうとしたが、主に檜の幼木が密集したあまりにもの凄い藪で気持ちが萎えたので、とりあえず尾根直上を目指す。しかしあまり状況は好転せず、地面が見えない藪の中に突っ込んで少しの隙間を見つけて両手で枝を押し分け体を突っ込む繰り返しだ。いつの間にか熊避けの鈴を藪に奪われたが捜すことなど不可能で諦めた。

藪が切れた西沢ノ頭山頂

 山頂直下になるとハイマツの海の上に薄い踏跡が出てくるからそこそこ入山者がいるようだ。西沢ノ頭山頂は森林限界を超えて周囲は檜とハイマツに覆われ、中心部は地面が出ており三角点が鎮座していた。真っ赤に錆びたハンマーが落ちているが何に使ったのだろうか? 振り返るとだいぶ雲の高さが低くなってきたようで1850mピークはガスの中だった。最後の休憩をしながら無線をやり、最後の食料となったカレーパンをかじって燃料補給。

 もう登りはないので多少の藪なら恐くはないと出発する。西沢ノ頭から先は頻繁に赤布があり、山頂直下は横に寝た木の下に潜って隙間を進んでいく。いい傾斜の下りだし、たまに雪があるので今までよりはずっとかどる。ただ、あまり調子に乗って雪を下りすぎると尾根を外してしまうので稜線から離れすぎないよう絶えず注意が必要が。できるだけ残雪を利用したので赤目印のルートを外して下ったようだが、とにかく尾根を外さなければ問題ない。藪は徐々に笹が増えてくるが下りなので支障はない。

1650mピーク手前で右を巻く 1650mピークの巨岩 この尾根も一面の笹

 

 1650mピークとの鞍部は雪棚が残っており、ピークに登るのも面倒なので右側を巻きながら南に延びる尾根に乗り移ることにし、雪を外れて笹藪に飛び込む。ピークには前回も目撃した巨岩が鎮座しているのが見えたがいい目印になる。枝尾根も一面の笹に覆われ踏跡皆無だが点々と赤布がぶら下がっているのは前回と変わらない。ほとんど雪は消えてしまい、笹藪と傾斜でこの時期にここを登りたくはない。この尾根からさらに南東へと派生する枝尾根にリフト終点があるが、危うく見落とすところを目視でリフト終点が見えたので助かった。ここまで来ればゴール間近で最後の笹を分けるとリフト駅に飛び出した。やっと藪から解放された!

最終リフトから尾根を振り返る 最終リフト駅 ゲレンデ上部以外の雪は消えていた

 

 ゲレンデもてっぺん付近はまだまだ白く、前回より2週間時期は遅いが残雪は多いようだ。それでも稜線であの状況では、例年だと4月の中旬までに登らないと、セバトノ頭より東では藪漕ぎが待っていることだろう。ゲレンデも傾斜が増すと雪が無くなり、下りでは雪があった方が足への負担が軽減されるのでちょっと残念だ。まだ雪解け直後のようでワラビも草も出ていない土のゲレンデを下ると1台だけぽつんと止まった車が見えてきて、予想外に12時間もかかった山行の幕が閉じた


4:42三国スキー場−5:14湯ノ沢を渡る−5:56雪が無くなる−6:00県境稜線−7:01 1560mピーク−7:27 1580m肩−8:16 1750m肩−8:53 1820m肩−9:14セバトノ頭−9:37 1860m(休憩)−9:51出発−10:29大黒ノ頭着−10:57大黒ノ頭発−11:08上ノ倉山三角点峰−11:16上ノ倉山最高峰−11:20上ノ倉山3つ目ピーク−11:23痩せ尾根−11:31鞍部−11:41忠次郎山着−12:20忠次郎山発−12:45上ノ倉山3つ目ピーク−12:48上ノ倉山最高峰−13:00上ノ倉山三角点峰−13:10大黒ノ頭着−13:16大黒ノ頭発−13:26 1850m鞍部−13:48セバトノ頭−13:56藪突入−14:05 1820m肩−14:18 1850mピーク−14:35 1852mピーク−14:51 1780m肩−14:59鞍部−15:15西沢ノ頭着−15:21西沢ノ頭発−15:38 1650mピークから南尾根に入る−15:48スキー場リフト−16:13三国スキー場

 

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