妙高西部 天狗原山、金山、裏金山 2005年5月28日

 


 焼山と雨飾山の間にある長野/新潟県境稜線上には、あまり有名ではないが金山、裏金山という2000mを越えるピークがあり、その近くには天狗原山という、これまた2000m以上の山がある。このうち、天狗原山と金山には登山道があって、小谷村から妙高高原村に抜ける林道の途中に登山口があるのは、以前、妙高火打に強行日帰りで登った帰りに確認している。しかし、金山から先は半分笹に埋もれた稜線で、ネットで調べたところ無雪期の記録もあったので登れないわけでは無さそうだが、笹が雪に埋もれた時期に登るのが楽だろう。2005年は新潟方面は残雪が多く、5月も終わりで残雪シーズンギリギリだが稜線付近には雪棚の残骸くらいは残っているだろうと期待して出かけることにした。そしてあわよくば焼山に登ってしまおうとも考えた。ネットで調べたところ、焼山は火打山経由で割と簡単に登れるようだが、裏金山まで行けば目と鼻の先であるし、1泊で往復するのもいいだろう。ま、もし登れなくても火打山にて妙高市/糸魚川市でまじめに無線をやるついでに登ればいいので深刻に悩むほどではない。ただ、この近くでは2日目に日帰りできる程度の2000m峰が残っていないので、どうせなら1泊で焼山まで片づけた方が日程の無駄がないが。

 ただ天気が問題だ。今週は寒気が入って大気の状態が不安定なことが多かったが、金曜から再び寒気が入り、土曜夜も雷雨の予報が出ている。日中は天気がいいらしいが、森林限界を超える稜線上の雷の怖さはよく分かっているので二の足を踏んだ。結局は、出発直前まで予報を聞いて日帰りで裏金山までにするか1泊で焼山まで足を延ばすか決めることにして、装備はどちらでも対応できるように準備した。だが、天気予報では日曜日は曇りとのことで、天狗原山からの下りでガスった中をだだっ広い地形を正確に追えるか自信がなかったので、焼山は諦めて裏金山日帰りと決めた。

 アプローチであるが、ネットで調べた結果、林道は6月下旬にならないと開通しないとのことで驚いた。おそらく今の時期でも金山登山口まで雪は消えているだろうに。ゲートがあるのか覚えていないが、手で開けられるような車止めなら入れるところまで車で入り、施錠されたゲートなら最初から歩くことにする。もう残雪期というには遅いが、1ヶ月後の6月下旬開通とは恐れ入った。日影になる部分だけは遅くまで雪が残るだろうが、金山登山口は標高が低いし南向きだからおそらく林道上に雪はないであろう。

ゲート前スペース 施錠されたゲート

 豊科ICを降りて信号が少ない県道をちまちま走ってから国道148号線を北上、電光掲示板には「国道148号線 中土トンネル 事故通行止」と出ているではないか。信号待ちで地図を見ると小谷温泉に分岐する直前のトンネルのようであるが、トンネルに入る手前から中土駅経由で細い道が小谷温泉分岐まで延びているので迂回できそうだ。そのまま走行を続けると電光掲示板は「国道148号線 中土トンネル 交互通行」に変わり、通行が再開されたようで心配なさそうだ。現場では糸魚川方面の車は私が考えていた迂回路に誘導され、トンネルは大町方面に向かう車の一方通行のようだ。迂回路から国道に出る交差点で直進すれば小谷温泉方面で、道幅が細く信号で交互通行のスノーシェッドを通過して県道を上がり、小谷温泉集落の先で村営雨飾荘を通過すれば林道入口だ。車止めのチェーンがかかって山菜取り厳禁の看板がうるさいくらい立っているが進入禁止の看板はなく、チェーンは施錠されていないので開けて入る。しかし天狗原山、金山を源流とする沢を渡る橋に施錠されたゲートがあり大した労力節約にならなかった。カーブにある廃林道?道ばたに車を止めて酒を飲んで寝た。

 翌朝、起きると道の反対側にジムニーが止まっていたが釣りだろうか。飯を食って出発準備をしていると2人の釣り人がゲートをくぐっていった。私もそれに続くが登山靴にピッケルが刺さったザックの重装備である。さすがに真冬用の防寒具は置いていったが、雪の状況が全く不明なので重い12本爪アイゼンも担ぐので夏山装備と比べればずっと重い。今回は天気が良さそうで日焼け防止に麦わら帽子の登場であり、まだ朝で寒いからシャツを着ているが、登りはじめて体が暖まればTシャツにズボンの裾を膝までまくり、雪が出てくればアイゼンにピッケル、それに麦わら帽子という、自分でも笑えるようななんともチグハグな格好になるなぁ。でも機能的には優れた格好なのだが。

デブリで塞がれた林道 林道そのものはいい道 金山登山口

 

 ゲートは橋に設置されており両側は空中なのでゲートの下を潜って通過する。このゲート、山菜取りシーズンなので施錠されているのかと思ったら、なんとその先のヘアピンカーブでデブリが押しだし、ゲートが無くても車では通過できなかったので、本当に通行不能でゲートが閉じられているようだった。マジで6月エンドにならないと除雪や落石除去をやらないのかもしれない。金山登山口までの林道のほとんどの部分は南斜面を通るので雪はなかったが、ヘアピンカーブではデブリの押し出しや残雪があるし、所々では小規模な斜面崩壊で路面を土砂が覆っている部分もあった。

 2つめのヘアピンカーブで地形図では山道が尾根沿いに記載されているので林道歩きを省略できるかと期待し、林道支線に入ったが尾根に向かう林道はすぐ終わって何かの施設があるだけでその先に踏跡は無かった。尾根を巻くようにつけられた林道が他にあったが、あまり期待できないと判断して元の林道歩きを続行した。舗装の上にはブナの花の残骸?が降り積もり、ブナは新緑真っ盛りでそれはそれで目を楽しませてくれた。

 約1時間の歩きで金山登山口到着。もちろん雪はなく、登山道が完全に出ているし藪も延びていなくてしばらくは淡々と夏道歩きでよさそうだ。体に触れる藪は皆無でブナ林の中を順調に高度を上げる。下手をするとすぐ雪が出てきて夏道が分からなくなるのではと心配していたのだが1500m付近まではほぼ夏道が出ていて問題なかった。

標高1500m付近で一面の残雪 時々夏道が現れる 雨飾山がまだ高い

 

 標高1500m付近で左手から上がってくる太い尾根が合流し進路を右に変えるが、傾斜が緩んでだだっ広い地形になると同時に一面の残雪が現れ、夏道が完全に消えてしまった。広範囲の残雪なので夏道の痕跡を探すのはかなり難しく、目印も無いので手探り状態だ。まあ、雪があるからどこでも歩けるので適当に登ってしまってもいいが、どうも雪があるのはこの谷だけで、尾根に上がると雪が無くなる可能性が高く、夏道を逃すと藪漕ぎになってしまいそうだった。しょうがないので地形図を見て夏道はこのあたりだろうと適当に歩くと、太いブナの幹に名前が彫られているのを発見、どうやら夏道の沿って歩いているらしいことが確認できた。一部雪が融けて水芭蕉が顔を出している部分でも短い区間だけ夏道が出ていた。この時期限定かもしれないがルート左手に小さな沢が流れていて水が補給でき、登りでは使わなかったが下山時に冷たい水を飲んだ。

尾根に上がると雪が消える 1741mピークは岩峰 カタクリの群落が迎える

 

 尾根ではなくタダの斜面を登るようになると雪が無くなって夏道が現れる。それを辿ると小さな尾根を乗り越えて雪で埋もれた谷に降りて再び急な登りで雪が無くなる。地形図でも分かる1700m地点だろう。1741mピーク付近は雪が付いていたらどうしようと心配だったが完全に雪は消えて西側を巻いている夏道を淡々と歩けた。ピークは扁平な岩峰で東側はすっぱりと切れ落ちている。この辺りはカタクリの花が満開だった。関東では3月下旬くらいに咲いていると思ったが2ヶ月遅れだ。

 ピーク直下で通過時間をICレコーダに録音しようとしたらバッテリー切れ表示が出ているのに気づいた。この電池は今使っているICレコーダ購入当初(約2ヶ月前)に電池を充電して入れっぱなしだったからだいぶ長持ちした。単4ニッケル水素電池1本でこれだけ使えれば充分だろう。もしかしたら前のICレコーダのように低電圧特性が悪くてニッケル水素電池だと容量を使い切らないうちに電池切れマークが出てしまうのかと思い、MP3プレーヤにその電池を入れてみた。私が使っているMP3プレーヤはRIOのSU10という機種だが、こいつは単4ニッケル水素電池で10時間強動いてくれ、しかも電池容量いっぱいを使い切れる優れものだ。動いてくれるかと試してみると動くことは動いたが、1曲でダウンしたのでICレコーダはニッケル水素電池をフルに使ってくれるらしく、今後も安心して使えそうだ。単4ニッケル水素電池はMP3プレーヤ用に予備が2本あるので問題なし。

標高1760mで突如一面の残雪 二重山稜の谷に夏道があるらしい

 鞍部に下って再び登り始めると突如として雪が現れ、目に見える範囲でずっと雪が続いている。夏道は完全に埋もれ、2重山稜になって夏道は分からないが、地図を見ると谷の中を歩くようだ。しかし雪の起伏が激しく、途中で雪の壁に突き当たるとよろしくないので左手の尾根上を歩いた。谷が急に右に進路を変えるところで左の尾根直上に上がり、目の前の急な尾根に取り付くことにする。おそらく1830m付近だろう。いよいよ傾斜がきつくなってきたのでアイゼンを付けてピッケルを手に握り、藪を避けて雪が続いている部分を選んで登り始めたが、下山時にここを通過したら僅か10mほど左手に夏道が出ていたのだった。我ながら間抜けであったが、それだけ読図の結果が夏道の位置と接近していたわけで満足すべきと言えようか。

1949mピーク(土は雪崩の跡) 1949mピーク左を巻く

 急傾斜をよじ登ると再び緩い地形になり、正面には草付きで雪が落ちた1949mピークが立ちふさがる。ここは直登不可能なので地図上では夏道も左を巻いており、私も豊富な雪を利用して適当に巻くことにする。夏道がどう付いているのか目印も皆無で全くわからないが、こうなったらいつもやっている道無き残雪の山歩きと何ら変わらないので、夏道は無視して歩きやすい場所を選んで歩けばいいだろう。夏道があろうと無かろうと残雪があれば同じだった。

巻き終わって主稜線に出る 天狗原山を見上げる 雲の上には白馬岳

 

振り返ると地蔵山、乙妻山 1949mピーク 希に夏道が出ていた

 

 雪崩の跡を乗り越えて斜めにトラバース、深いシラビソ樹林をトラバースしながら主稜線を目指し、鞍部付近で主稜線に戻るが、見上げる尾根直上は雪が落ちて藪が出てしまっているので再び左を巻くことにする。こちらは傾斜は緩やかだし雪は豊富だして夏は分からないが残雪があるうちは歩きやすい。雪が連続し、かつ藪がない場所を探してつないで標高を上げていくが、目印の類は見あたらなかったが、希に地面が見えているところで夏道を見かけたので、大体夏道と同じルートを歩いたようだ。尾根上ではないので帰りに気を付けるべき場所だろう。

東に下る県境稜線 天狗原山直下。もうちょっと 焼山と火打山

 

 そのまま快調に高度を上げていくとようやく傾斜が緩んで稜線上に立ち、尾根上を歩けるようになった。雪はますます増えてほぼ藪は雪に埋もれるようになった。東から凄い傾斜で県境尾根が立ち上がって合流したが、下山時は何も考えずに歩けば今歩いてきた尾根に乗るので問題なかろう。ガスられたら県境稜線に乗るのはかなり難しいと言えよう。

天狗原山山頂(背景は焼山)

 この辺が山頂かと思ったらまだ先に高まりがあり、GPSもそちらが山頂と示している。なだらかな雪稜を登り切ると木1本標識1本無い、見事な雪面だけの天狗原山頂に到着した。夏道がある山なので登山口と同じような標柱があるとばかり思っていたので意外だった。それとも雪で埋もれているのだろうか?(後でネットで調べたら標識はなくお地蔵さんが山頂の目印らしい)。背後のすぐ近くには真っ白な金山、その右手にはでかい焼山から火打山、妙高山と続く。焼山の雪もかなり消えていて、地形図に記載された点線がある辺りは砂礫が出ている。天候そのものはいいのだがまるで夏山のように小さな積雲?がぷかぷかと浮かんで山にまとわりつき、特に南の視界を遮っている。登りの途中では地蔵山や乙妻山が見えていたのだが今は雲の中だ。西には五竜から朝日岳まで後立山が聳えているが、特に南部では雲の高さが高く2500m以下は雲海に沈んでいた。赤男山は1ヶ月前に見たままで稜線にデブリが着いたままなのには驚いた。こりゃ、初夏に登れば残雪で藪漕ぎしないで登れるかもしれない。

 さあ、無線だ。こんな状況だろうと今回はポールとアルミDPを持ってきたのでピッケルを刺してそれにポールをくくりつけた。SSBでは強い局がいないのでCQを出すと新発田市より声がかかった。同じ新潟県でもかなり距離があるが強かった。

金山との鞍部へ下る 鞍部から見た天狗原山 金山南ピーク
金山北ピーク 金山のMWV標識 金山から見た裏金山(焼山の手前)

 

 さて、続いて金山である。ここは近いので楽勝だろう。鞍部への下りはアイゼンを効かせて雪の上を一直線に下り、振り返るとスキーのシュプールの跡が見られた。スキーなら楽しいだろうなぁ。鞍部からなだらかな稜線を適当に上がり、これまた一面の雪原を自由気ままに高い場所目指して歩く。かなり平坦な稜線なのでガスられるとちとやっかいかもしれない。金山山頂付近はだだっ広くてどこが山頂なのか不明であるが、地形図の通り北側ピークに陣取った。ここには登山口と同じ黄色い標柱があるらしいが埋もれてしまったようでその頭も見えなかった。近くのシラビソに文字が消えた青いM大ワンゲルの標識(なんか久しぶりに見たなぁ)があるだけだった。

 ここまで来ると焼山は手の届きそうな範囲で、これなら日帰りできるかなぁと考えてしまうが、富士見峠からの登りと金山までの登り返しを考えるとかなりきつい計画になるだろう。それにどうせ無線の都合もあって火打山に奥積さんを連れて行きたいから無理をする必要もないだろう。裏金山は焼山に重なって見えている。まだ距離があるなぁ。

 ここでも無線運用、志摩市移動で強い電波が出ていたので助かった。金山までは夏道があるので6mの電波が出ることもあるだろう。

金山から見た2106mピーク 金山直下の雪壁を下る 北から見た金山

 

 さあ、最終目的地の裏金山へ出発だ。ここからはアタックザックに荷物を入れ替えて軽装で往復しよう。金山の下りはじめは地形図ではなだらかだが、今の時期は雪が巨大な階段状に着いて、部分的には絶壁で下れない。稜線上は無理なので左に逃げて傾斜が緩やかな場所まで迂回したり、傾斜が急でもすぐ下が藪で滑落しても止まる場所を選んでアイゼンを蹴り込んでバックで下った。まあ、傾斜が急でも左右が広くて谷底へ転落することはないので、クズバ山のような緊張はなくルンルン気分で下れたが。登りの時に備えて歩幅を狭くしてステップを切るのは忘れない。

2106mピーク向かって北上 2106mピーク手前 雪が消えた2106mピーク

 

 雪の段さえクリアすればもう危険個所はない。左手は既に藪が出てしまったが稜線東側はまだ雪が張り付いており、細かなアップダウンがある雪棚を歩いていく。ネットの記録によると笹の中に踏跡があるらしいが目印は見あたらなかった。もしかしたらこの雪だなに押し倒された笹の下にルートがあるのだろうか? 2106m手前鞍部付近で10mほど雪棚が消えて笹を突破するが、続きの雪田がやや下の方にあったので行きは良かったが帰りは逆目の笹をかき分けることになるのでちょっと苦労した。

 2106mピーク付近も雪が消え完全に笹藪だったが、これがまた志賀高原の黒湯山のような頑丈な笹(というより竹に近い)でアイゼンを履いたままの藪漕ぎは苦労した。もしこんな藪が続いていると裏金山へは相当な体力が必要だろう。雪にありついてほっとする。このピーク付近も目印は見られなかった。

2106mピーク直下から裏金山を見る 稜線南側直下は草付き 鞍部の雪棚は割れかけていた

 

 ここで進路を東に変えて、今度は尾根南側に移った雪棚を快調に歩く。最低鞍部付近では雪が割れているが雪がつながっているので隠れたクレバスに注意しながら前進した。この付近では雪棚が稜線からずり落ちて尾根の植生が見えたが、先日の忠次郎山帰りに歩いた尾根のように、雪棚が着く南側直下は低い笹や草付きなので、おそらく夏道ルートはここに着いているのだろう。だとすると残雪期終盤に歩いても雪の下なので夏道はお目にかかれないわけで、目印が見えないことも納得できる。ま、推測なので本当にそうであるかわからないが、この植生だと無雪期は尾根風下側直下が歩きやすいのは間違いない。

鞍部付近から見た裏金山  金山山頂部は藪 裏金山山頂(標石あり)

 

焼山への稜線も雪棚が残っていた

 裏金山山頂に向けて雪棚の上を歩いて緩やかに高度を上げ、GPSを見てそろそろいいだろうと山頂直下で笹藪に突入、ここはさほど濃くない笹なのでかき分けるのは簡単だが時々灌木が混じるのでそれを迂回しながらガサガサと藪をかき分けて進むと、笹の高さが低くなって膝くらいの高さになると最高点に到着した。標識は無いが境界標石?が埋まっており、周囲を見渡してももう高いところがないので間違いなく裏金山山頂だ。南側直下まで雪が残っていたので、無理に山頂に直登しなくても、少しだけ藪を突破して山頂を巻いて登った方が楽だったようだ。ま、藪の距離は大したことがなかったのでさほどの体力浪費ではなかったが。焼山方面に続く稜線にも右側には雪棚が残っているから藪漕ぎなしで富士見峠まで行けそうだった。

 いつの間にか天気が下り坂になってきて、ガスが漂い目の前の焼山さえ見えなくなってしまった。金山山頂もガスに隠れるようになり、天狗原山の下りでだだっ広いところが多いからあそこまでガスに覆われるとやっかいだ。あまりのんびりする余裕もなさそうで、早速無線を運用、おそらく裏金山から6mの電波が出るのはこれが最初で最後だろう。

 さあ、目的は達成したので帰るだけだ、と言っても金山までは登り返しになるので下山と言えるのかどうか。気になっていたガスも歩いていると徐々に消えていき、再び日が差すようになり一安心。金山直下の絶壁も下りでステップを切ったので難なく登り切り、一面の銀世界に私のデポしたザックだけがぽつんと放置された金山山頂に戻り、最後の昼飯を食べて出発した。もしかしたら他に足跡が増えていないかと期待したが人影も足跡もなかった。あったのはカモシカの足跡くらいだ(そういえば今回は熊の足跡はなかった)。

天狗原山のスキー跡

 自分の足跡を追いかけて天狗原山鞍部から登り返して天狗原山山頂に着くと山スキーの跡があり、いかにもここで荷物を広げて休んだと思われる跡も残っていた。本日2人目の訪問者がいたようだが既に姿はなかった。スキー跡をトレースしたら県境稜線を下っていったので笹ヶ峰から登ってきたらしい。これだけ雪があれば林道から外れればすぐに雪が使えたかもしれない。この下りだったらスキーは早いだろうなぁ・・・・。こちらはチマチマとツボ足で歩くしかない。

 登りと同様に尾根をやや外して西側を歩き、1949mピークとの鞍部から再び西に巻くが登りの足跡が薄くなって分からなくなり、適当に歩いたら少し下りすぎたようだ。見覚えのない雪が消えた尾根が現れ、GPSのマップ画面で登りの軌跡を見るともっと左を通ったらしい。それは藪尾根を乗り越えた向こう側で、2mほどの僅かな雪が消えた尾根を乗り越えると、登りでも見た1949mピーク西側直下から発生した雪崩の跡が見えて安心する。いざという時にはGPSは使えるな。再び稜線に乗り、二重山稜の真ん中の谷を下って急激に谷が落ち込む手前で左に逃げると夏道が待っていた。もうアイゼンの出番はないので外し、ザックにくくりつけた。

 再び雪原地帯に入って下っていると、予想外にこの時間に登ってくる単独男性がいた。時間が時間だから上で幕営に違いないが、ザックの大きさは私の40リットルと変わりが無く非常にコンパクトだ。声をかけると焼山登山が目的とのこと。焼山の残雪状況を聞いてきたので、地図上で登山道がある付近は雪が消えていたこと、標高1760m付近から先はほぼ雪が続くこと、金山から裏金山の尾根は2箇所藪が出ているが短距離であり問題なく歩けることなどを教えた。ツェルトを張るには木がある金山の方がいいでしょうとも教えておいた。天狗原山じゃ本当に木が無いからなぁ。明日もそこそこ天気がいいようなので焼山が楽しめるだろう。

 健闘を祈って分かれ歩き出す。登りの記憶があるし、さっきの人が歩いた足跡がくっきり残っているので迷うこともなく残雪地帯を突破、登山口の林道に降り立った。そして1時間の林道歩きでゲートをくぐって車に到着した。本日の所要時間は約10時間で、なかなか歩きがいがあった。さほど難易度が高くはないが、武内さんが濡れた藪で諦めた裏金山に登れたのだから大満足だ。

 帰りはもちろん小谷温泉。すぐ目の前の村営雨飾荘(\300)で、たぶんこれで3回目の利用か。狭い浴槽だが人が少ないので快適だ。お湯の温度が高かったが、風邪気味で微熱が出ているようだったので体の芯まで暖まってからあがった。


5:07ゲート−5:16デブリで林道が埋まる−6:04金山登山口−6:46標高1500mで残雪が現れる−7:05尾根に登り夏道が出る−7:10 1741mピーク直下−7:22 標高1760mで残雪現れる−7:40 1830m地点アイゼン装着−7:52 1949mピーク西を巻き始める−8:02主稜線に戻る−8:45天狗原山着−9:26天狗原山発−9:30鞍部−9:54金山着−10:13金山発−10:33 2106mピーク−10:43鞍部−10:54裏金山着−11:24裏金山発−11:45 2106mピーク−12:14金山着−12:24金山発−12:49天狗原山−12:55県境稜線と分かれる−13:15 1949mピーク西を巻き始める−13:25GPSで元のルートに戻る−13:30 1830m地点−13:39 1760mでアイゼンを脱ぐ−13:50 1741mピーク直下−14:05単独男性とすれ違う−14:35金山登山口−15:25ゲート


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