後立山 小日向山 2005年5月29日

 


 白馬三山鑓ヶ岳南の天狗山荘東に小さな尾根があり、烏帽子岩という2000mを越える山があるのを知ったには昨年のことだ。鑓温泉付近から適当に登れば山頂に至れそうだが、おそらく藪だろうから残雪期に登るのが適当だろう。しばらく登る予定がなかったので何も調べなかったが、裏金山の翌日に登るのにちょうどいい労力かと思い、地図も何もない準備不足だが、エアリアマップを見ながら行けるところまで行ってみることにした。残雪量が不明で、雪が多いと杓子尾根のトラバースで苦労しそうで、体力的に無理と判断したら杓子尾根にある小日向山でも登ってお茶を濁して帰るのも良かろう。ただし、ここも藪だろうから雪が残っていることが条件となろう。

猿倉荘の手前、林道入口の駐車場

 白馬村で買い物をして猿倉に上がる。以前猿倉に来たときは猿倉山荘前の駐車場しかなく、シーズン中はすぐに満杯になってしまったように記憶しているが、今回行ってみると林道入口に広い駐車場が設置されており、すぐ下にもう1カ所駐車場があった。ハイシーズン中にマイカー全てをさばききれるか分からないが、以前と比較すれば格段に容量アップしているので前夜に入れば車を止められそうだ。今は大雪渓の山スキーヤーしかいないはずなので駐車場の入りは30%程度、ガラガラである。猿倉山荘前はどうなのかわからない。明日はこの林道を上がっていく。

林道の車止め。施錠された鎖 鑓温泉方面入口

 どうも微熱が出て体調不良だが、せっかく来たのだから行けるところまで行くことにして飯を食って出発だ。下界は雲に隠れて見えないが、後立山方面は晴れて杓子岳は青空をバックに聳えていた。周囲はみんなスキーを担いでおり、ピッケルを刺しているのは私くらいだ。林道を歩き始めるとすぐに施錠された鎖がかかっており一般車は入れない。それに林道の路面は荒れているので歩いた方が良さそうだ。猿倉山荘の道を合わせて登ると鑓温泉の立派な標識があって分岐を見落とす心配はない。ここからブナの山道を歩き始める。

木が埋もれて夏ルートはジャングル まだ鬱陶しい道が続く

 もしかしたらかなり上まで夏道が出ていると考えていたが意外にも早く雪が現れ、木が横倒しに埋もれかけて道を塞ぐ場面が多く、まるで藪漕ぎだ。ザックのピッケルが鬱陶しいが、スキーをくくりつけた連中はたまったものではないだろう。徐々に雪が増えて夏道が完全に隠れるとルートが分からなくなるが、多数の人間が歩くのでトレールがはっきりしているからあまり心配ない。時々デポ旗が現れる程度で、ルートファインディングが不慣れな人だと見失うかも知れない。登りはいいが下りは要注意だ。

やっと木が埋もれる 正面の谷を登る

 なだらかな台地状の地形を適当に登っていくと左手に小日向山へと続く杓子尾根が聳え始める。どうやらあの谷を登るのだろうと思える場所を見つけ、足跡がそこに向かっていることを祈るとちゃんとその方向へと続いていた。結構な傾斜の雪面にはスキーの跡が縦横無尽についているがツボ足の跡は皆無だ。今までの足跡はスキーを担いで歩いた人間の足跡で、木が無くなってスキーが使えるようになってからはスキーに切り替えて足跡が無くなるのだろう。まあ、この谷を登れば良さそうだし、上部までずっと雪が続いているようで藪の心配がなさそうなので適当に登ればいいか。

スキーなら下りは楽だろうなぁ 振り返れば白馬岳

 本格的に登りが始まるところでアイゼン装着、無くても登れそうだがあった方が気楽に登れるし体力をセーブできるので荷物にしたままより使った方がお得だろう。気持ちいい登りで快調に高度を稼ぎみるみる台地が遠ざかっていく。傾斜が急で途中から緩くなるのでその先の様子が見えないが、きっと藪は雪に埋もれていると信じながら登りやすいルートを登ると、案の定傾斜が緩んだ先も一面の雪原が続いて楽勝で歩けた。雪がないときは夏道以外は笹藪だろうな。

杓子尾根南側。僅かに夏道が出ている スキールートは夏道より下を通っている 真っ白な鑓温泉付近。左の尾根が烏帽子岩

 

 峠とおぼしきところに立って地図を確認すると、ここから尾根を回り込んでトラバースするらしく、そちらに向かって歩いていくと赤旗が立っておりスキーで下った跡がついていた。この先も一面の雪で夏道はほぼ埋もれているようだ。鑓温泉の辺りは雪で埋め尽くされ建物の影も形も見えず白一色だった。烏帽子岩の尾根は凄い傾斜で立ち上がっており、斜面は全面真っ白だ。これではトラバースは結構疲れそうだし、昨日の疲労が残ったままであの斜面を登り切る自信もなく、烏帽子岩はあっさりと諦めた。一度無雪期に偵察した方がよさそうだ。

山頂へ向けて藪に突っ込む 小日向山山頂

 小日向山まで数100mに迫っているのでこのまま山頂に向かおう。峠から見る稜線は南側にべっとりと雪が付いているがてっぺん付近は藪が出てしまっている。GPSの残り距離からしてまだ山頂は見えていないと思うが、真の山頂も藪が出ている可能性はあるかな。それは現場に行ってみないとわからないので稜線を東へ辿ることにする。急な登りもアイゼンを効かせてジグザグに登るとカモシカの新しい足跡が登っている。どこまで行くのか分からないが後を追うように登っていく。傾斜が緩むと二重山稜になり谷間には雪がたっぷりと残っていた。右手の高まりが山頂らしいが完全に藪が出てしまい、どこかで突入しなければ。できるだけ高いところまで雪が続いている場所から背丈を超える笹藪に突入、思ったより藪は濃くなく、もがくようなことはなく手で押し分けながら高まりを目指すと僅かな距離で再び雪田が現れた。もうほとんど傾斜はなく最高地点付近だが、GPSがまだ東だと表示するので雪を伝わって進むと、僅かに下ったところで藪が切れて草付きに変わり、そこが山頂だとGPSのお告げがあった。地図を見ると最高点よりやや東に三角点があるようだが、雪が消えた草付きを捜しても三角点がなかったので雪の下らしい。間違いなくこの一帯が山頂なので深追いせず、適当な木のそばに腰を下ろしてアンテナを張って無線を運用した。天気はいつのまにかガスってしまい周囲の様子が見えなくなってしまった。

 あまり運動にならなかったが骨休めと考えればちょうどいいだろう。風邪を悪化させないためにも早々に引き上げることにし、北側を巻いて藪を迂回して下っていく。このルートを滑るスキーヤーの姿は見えず、無人の雪原を勝手気ままに、しかしルートを大きく外さないよう注意しながら歩いた。木が無い雪原が終わって木が邪魔な残雪帯を歩いているとスキーを持っていない中高年軍団が上がってきたがどこまで行くのだろうか。そして林道合流点ではこれまた中高年の大集団がやってきた。う〜ん、どこまで行くのかやっぱ分からない。まさか鑓温泉か?

 駐車場に降りて着替え、時間が早いのでマイナーな大町市民浴場を目指す。七倉に向かう県道に入り、標識を頼りに右にはいると見覚えのある風景で、劇団四季の資料館を過ぎると温泉だが、いつのまにかリニューアルして真新しい建物には「上原の湯」と出ていた。昨年4月はいかにもひなびたジモティー専用といった風情だったが大化けしてビックリ。でも幹線道路から離れた場所にあるので、やっばジモティー専用かな。昨年の料金は覚えていないが今は\500、ところが本日は無料開放日との張り紙でタダで入れてしまった。どおりで大賑わいなわけだ。マイナーなままの方が良かったが、ジモティーにとっては新たな憩いの場の誕生か。

 まだお昼前で時間があるので上野原ICまで一般道を走って東京に戻った。

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