毛勝三山周辺 大明神山 2006年5月3〜4日

 

 

 昨年の大型連休は立山周辺を登ったが、その中で大明神山も予定に入っていたが西大谷山を優先して登ってしまったため日程不足で登れなかった。ここも登山道がないので残雪期しか登れない山で、今年こそは登ろうと計画していた。昨年、西大谷山の2日前に登った早乙女岳で出会ったジモティーに、明後日に西大谷山か大明神山に登ろうと考えていると話したら驚かれてしまい、大明神山も恐ろしい山なのだろうかとの不安があったし、大唐松山のように撤退はなるべく避けたいのでネットを調べたり地形図を見ながらルートは慎重に考えた。

 単純に考えるともっとも大きな北西尾根(大明神尾根と言うらしい)だろう。なんせ登山口は片貝第4発電所導水管最上部なので、道路が冬季通行止めでなければ発電所まで車で行けるし導水管の巡視路があるだろうからそこまでは藪漕ぎしないで高度を稼げる。ただし、欠点としては長大な尾根なので日帰りできるかギリギリの線だろうし、最後の登りが急で、この標高だと樹林もほとんど無くもしコケたら命に関わる可能性が高い。また、ネットで調べたら大明神山山頂直下で雪庇の壁があるというのも気になることだ。その記事では雪庇の高さはせいぜい1mくらいでピッケルで掘って突破できたようだが、2年前の嘉平治岳のような雪庇が垂直だったらアウトだ。いやらしいことに今年は記録的な大雪で残雪も多く、下界から見た剣岳は昨年は真っ黒だったのが今年は真っ白で驚くほど、劔沢の2つの小屋も大雪で傾いたり雪崩で壊れたりで営業できないほどなので、間違いなく例年よりでかい雪庇が出ていると考えた方がいいだろう。

 こうなると別ルートを考えなくてはならないが、これもネットの調査でいい解答があった。山スキーの記事であったが北西尾根の一本南側の西尾根を使ったものだ。この人は山スキーに適した傾斜が緩い尾根ということでここを選択したくらいなので、さほど凄いところはなさそうだ。地形図を見ると取り付きは片貝川を外れて南又谷に入り小沢出合だ。ここまで林道があるし、もっと奥に発電所があるので、おそらく林道は除雪されているだろうと推測した。だとしたらアプローチは2kmほど林道があるが歩いて30分だし問題ない。尾根の傾斜を確認すると、最初から1000mくらいまでと1700m〜1750mがかなりきつい。1000mまでは樹林が濃いだろうからどうにかなりそうだが、1700m付近はいやらしそうだ。ただし大唐松山と違って痩せ尾根ではないので恐怖感は緩和される可能性がある。北西尾根も同じ程度の傾斜がある区間もあるのでどっちも危険度は同程度だろうし、ならば距離が短い西尾根の方がいいだろう。

 上越国境付近の大倉山に登った当日に車を飛ばして立山駅まで足を延ばし、翌日(4/30)の天気の様子によっては室堂周辺の簡単な山を片づけようとしたのだが、初日は朝だけ雨(天気予報では曇り朝夕雨)で、車で寝ていたら天気予報が好転して午前中は晴れで夜雨、午前中の降水確率0%になっていた。ただもう午前10時で出かけるには遅すぎるため登山は諦めて大明神山の登山口を確認すべく片貝川を遡ると、なんと第2発電所で冬季通行止めで施錠されて車で入れない。いつ解除なのか書いていないので不明だが、連休中に開いてくれるのだろうか。いや、開かないと考えて計画を立案すべきだろう。

片貝川沿い林道のゲート 南又谷はここで右に入る

 

 翌日も室堂を狙ったが、今度は朝からどんよりした曇りで下界では風も強く、登ってもガスっているのは確実でパス、この日の夕方から雷を伴った雨でとんでもない天候となって上市町の丸山公園(水道、トイレ付き)で沈殿していた。この天気は翌日の昼まで続いたが、午後から雨が上がり、翌日から天候が数日間は好天が続くとの予報になり、大明神山を片づけるチャンスと上市町のアルプスの湯で風呂に入って目の前のスーパーで買い物を済ませ、大明神山向けて車を走らせた。ゲート前には長崎ナンバーと八王子ナンバーの2台の車だけで、八王子ナンバーの横に止めた。ちなみにこの2台は私が翌日下山した時点ではまだ戻ってこなかった。

林道分岐。こっちは除雪されていない 林道にはこのくらい雪が残っていた

 

 もう午後3時を過ぎているが今日は林道歩きだけ終わらせる予定で、せいぜい2時間程度と予想されるので問題なく、大ザックにピッケル、ワカンをくくりつけてテクテクと林道を歩いた。完全に雪は消えて車の走行が可能、これならゲート開けてくれたらなぁと考える。片貝川の水量はかなり多く轟音を立てて流れていた。片貝川を離れて別の林道に入るところにはご丁寧に標識があったのだが、なんとそっちの林道は除雪されていない! 入口はたっぷりの雪で覆われたままで、もしこのままの状態が続くと尾根取り付きまで相当体力を搾り取られるのは確実で、今日のうちに歩いて正解だった。その後雪が消えた区間もあっただが、おおむね2/3くらいは雪に覆われたままだった。残雪の林道の場合、斜面と同じ傾斜で道が埋もれてトラバースに危険が伴う心配が一番イヤらしいのだが、幸い、この林道はそのような危険個所はなく淡々と雪の上を歩けた。デブリが押し出した上を歩く場面も危険はなかった。

小屋があった。使えたらいいのになぁ 小沢を渡る橋の手前で幕営

 

 杉林に入ると残雪が増えてルートが不明になるが直進すればいいようだ。私設の小屋らしき建物を通過すると南又沢を渡る橋は近く、目的の尾根末端で幕営予定地だ。しかしこの尾根は法面が急すぎて末端からは取り付けない。取り付き場所は後で考えることにしてこの付近が広い平坦地になっているので幕営することにして地面が出ていないので雪の上にテントを設営した。沢に下って水を汲んでおく。酒を飲んで寝たが、標高550m程度なのであまり寒くならなかった。しかし朝になっても雪が締まらなくてよろしくなかったが。酒を飲みながら取り付き場所を考えたが、次の橋からなら傾斜が緩むのでそこから尾根に乗ることにした。

この先の林道も残雪に埋もれる 南又谷を渡る橋の手前から斜面に取り付く
橋の手前に巡視路入口がある(行きには気づかなかった) 取り付きから尾根を見上げる

 

 朝飯を食おうとするといつも2個持ってくる餅が1個しかなく、しかたなくそれでラーメンを作った、カロリーが200kCalくらい減ったであろうか。まさか別の原因でもっと悲惨な目に遭うとはこの時点では想像だにできなかった。ザックにはワカンを入れてアイゼンを装着して歩き出した。しかしこの先の雪に埋もれた林道もアイゼンを使う必要もなく次の橋に到着し、左の杉林の残雪を拾いながら尾根にはい上がることにする。地形図通り傾斜が緩やかなので適当に登るとすぐに平坦地に出て、これが尾根かと思ったが600mのコンタが広い部分であった。登っていくとだだっ広い斜面のままで尾根は左だと分かって左にトラバース気味に登っていくとこれが傾斜がきつくて残雪の上だと滑ったら止まらないので地面が出た部分を拾って左に移動し、どうにか目的の尾根にたどり着いた。まだ標高は低いので昨日の雷雨等はここでも雨だったようだ。標高が上がって新雪が積もっていたら重い雪のラッセルになるのでイヤだなぁ。逆に山頂でも雨だったら今の気温なら雪が良く締まったままで非常に歩きやすいだろう。

尾根は歩きやすそうだった ところが濡れた藪が出てくる
傾斜が緩い場所は残雪を利用 標高930mで最後の藪を突破、以後藪はない

 

 いつのまにか杉の植林地帯は終わって落葉広葉樹の自然林に変わっていた。ただし尾根上は自然に生えていると思える杉が存在しており、獣道らしき筋も見えた。これなら楽勝かと思いきや、少々笹が出てきたり横に広がった「根曲がり木」が尾根上に立ちふさがってたちが悪い。しかも昨日の雨で杉の葉や笹の葉がたっぷりと水を含んでいるので触れるとずぶぬれになってしまうので、ピッケルでたたき落としながら進む。尾根の右や左に残雪が出てくるようになるが、傾斜が急すぎて恐ろしくて歩く気になれず、傾斜が緩いときだけ藪を避けて残雪を使ったが、止まりそうにない傾斜では藪尾根を進んだ。さすが地形図を見て傾斜がきついなぁと思った通りであった。この部分に雪が無くて助かったのは昨年のクズバ山と同じであった。ただあれよりは傾斜が緩いな。目印は要所要所に残した。他の人が付けた目印は見られない。

気持ちいいブナ林を登る まだまだ登る

 

 標高930mを超えると最後の藪を突破し、傾斜が緩むと同時に一面銀世界とブナ林に化けた。どうやら第1関門を通過できたようだ。地形図を見る限りはしばらくはなだらかな尾根が続くはずだ。雪は良く締まってアイゼンががっちり食い込む。部分的に急な区間もあるが尾根が広いために恐怖感は感じない。標高1050m地点で初めて赤布を発見する。ここから右に小尾根が延びているのでそこから登った人の物かもしれない。しかしこの尾根も上部は凄い傾斜だぞ。

ブナの木にある「熊の座布団」 いくつもあった 熊の足跡。指までくっきり
熊の木登りの爪痕が残るブナの木。こんなのがいっぱい

 

 この付近は人間の存在を示す物より熊の存在を示す物の方がずっと多い。「熊の座布団?」と呼ばれる熊が木の上に陣取るときに作る鳥の巣の大型化したような物があちらこちらに見られるのだ。数は全部で10個以上はあったと思う。ブナの木の枝を折って作られている。おまけに幹に熊が木登りして付いた爪痕が多数あるブナの木もいくつもあった。存在を主張するように昨日付いたと思われる足跡もあり、下りでは今日付いたばかりの新しい足跡もあったが。残念ながら生の熊の姿は見られなかった。去年みたいにデジカメで撮影できたらよかったのだが。

熊ではなく人間の足跡登場 赤布は3カ所で見られた

 

 1292m標高点は僅かにピークになっており小休止する。この付近からはっきりと人間と分かる足跡が現れた。その前はかなり融けてしまって人間なのか熊なのか判別できなかったが、ここまで来ると明らかに登山靴等の形状が残っていた。今は雪が締まって全く潜らないので私の足跡は残らないが、この人が歩いたときはかなり湿った雪が積もっていたようで潜って穴になったところもあるし、団子になった雪を落として盛り上がった部分になったりだ。この大きさから推測するとワカンの団子ではなかろうか。私は今年の槍穂前衛の黒沢山でこいつに遭遇して体力を搾り取られた。ちなみに標高がもっと上がると間違いなくワカンの跡と分かるようになった。

朝日を浴びながら締まった雪を楽しむ 先人の足跡がはっきり
徐々に樹林が薄くなってくる いよいよ急傾斜地近づく

 

 標高1300mの緩やかな尾根は杉の巨木が林立し、その上部で傾斜がきつくなるがまだまだ序の口で、尾根が広いので問題なくアイゼンを効かせてグングン登れる。こういう気持ちのいい尾根が続くといいのだが。ワカン跡はまだまだ続いており、この分では大明神山山頂まであるらしい。足跡の向きを見ると上り下り両方向なのでここを往復したらしい。人数までは定かではないが、上部の足跡の感じでは2人以上は確実だろう。

ここが最大傾斜地点 1750mを超えると傾斜が緩み樹林が無くなる

 

 標高1700mまで来ると今回の核心部である急斜面になる。下から見ると「ここ登るの?」という傾斜であるが、先人の足跡がはっきりと残っており勇気づけられるのと、大唐松と違って尾根が痩せていないので多少は恐怖感が和らげられる。でも滑ったら私には止められないのは間違いないので怖さが無くなることはない。でも、先人の足跡というのは精神的に非常に大きな支えとなり、これなら行けるのではという思いが強くなってくる。なんせここが最後の関門であり、この先はなだらかな稜線が続くのだ。また来年というには遠い山であり、慎重によじ登り始めた。先人の足跡の窪みは非常にありがたく、そこにアイゼンで蹴り込んでピッケルはシャフトいっぱいまで雪に突き刺して亀の歩みで登る。こりゃ帰りはバックで下るしかないなぁ。上部が一番の傾斜で緊張するが、時間にして5分もかからないで核心部は通過したらしく、傾斜が緩んで上部にちょっとだけ気が見えるだけの広大な雪原が広がるようになった。ここが1750m地点だ。

雄大でなだらかな尾根が続く ワカンの跡が残っている
後ろを振り返る。平野部は一面の雲海 お隣の北西尾根

 

 1853m肩まで来ると稜線漫歩の素晴らしい世界で、南には大猫山の稜線と、その向こうには立山、劔、北には大明神尾根とその向こうに駒ヶ岳の稜線、正面はベットリと雪をまとった釜谷山がど迫力だ。大明神山そのものはまだ手前の稜線に邪魔されて見えていないようだ。稜線はまず左にカーブし、雪庇になりかけているが張り出していない雪綾の上を歩く。先人の足跡はますますはっきりと残り、同じように雪稜の上をワカンで歩いたようだ。稜線上は1カ所だけ岩が出ているのが見えたが、実際は尾根の南側で稜線上ではなく、岩をよじ登らされることはなかった。

足跡がいっぱい もうすぐ山頂

大明神山山頂。雪庇が張り出し北に寄れない。

背景は毛勝山(左端のピーク)

大明神山から見た剣岳
大明神山から見た西大谷山の尾根 大明神山から見た早乙女岳
大明神山から見た駒ヶ岳、僧ヶ岳 大明神山から見た毛勝山、釜谷山(右端)
大明神山から見た駒ヶ岳〜滝倉山の稜線 大明神山から見た猫又山周辺

 

 右にカーブして緩やかに上っていくともう山頂は目前だ。僅かに雪が割れて藪が出ている部分もあるが1m程度で問題外、やはり無雪期は笹藪のようだ。これを過ぎると木もなくなり平坦な雪原に出た。GPSで確認するともうちょっと先が山頂のようで、そこまで到達して山頂とした。一面の雪原なので視界を邪魔する物はなく360度の大展望だ。東側には毛勝山へと続く尾根が白銀に輝いてまぶしいくらいだ。時間があれば行ってみたい気もするが、毛勝山は既登山だし、連休中はまだ登りたい山もあるので無駄に体力を消耗するわけにもいかない。南に目を向けると大猫山から猫又山へと続く尾根が延々と続き、その向こうには去年よりはるかに白い剣岳、去年と白さは変わらないように見える立山、大日岳、早乙女岳から大熊山の尾根が見える。昨年登ったクズバ山から西大谷山の尾根も見えており、クズバ山は去年よりずっと白く、もしかしたら今年は藪は全部埋もれているかもしれない。ただ、あの急な尾根で雪が付いたままでは私の度胸では撤退だろうが。左手に目を移すと僧ヶ岳、駒ヶ岳から滝倉山への尾根が続く。遠目に見ただけではやばそうなところがあると思えないが、ネットで検索して記事を読むとけっこう危険な場所があるらしく、私の今の実力ではまだ無理だろう。それなりの実力をつけて経験を積んでから駒ヶ岳から往復することになるだろう。昨年登った清水岳の猫又山から猫ノ踊場も見えていたが現場では同定はできず、下山後写真を見ながらカシミールで展望を確認したら見えていることが分かった。雪が帯状に消えた山が見えていたがそれが雪倉岳とは思わなかった。富山の平野部は一面の雲海で見えなかった。下界では曇り空だろうが山頂では雲一つない快晴だ。

北西尾根。これじゃ最後は雪の絶壁だろう 雪洞の跡

 

 北側は雪庇が張り出して崩壊してクラックが入っていることもあり近づけず、大明神尾根から上がってくるところが乗り越えられる程度の雪庇の高さなのか確認はできなかった。ただ、帰りに雪庇が無くなった場所で北側に寄ってみたが、どうもそんな生やさしい高さではなかったようだ。それに大明神尾根からの足跡は無かった。まあ、あまりに古いと融けて消えてしまうが。先人の足跡はここまでで終わっており、毛勝山までは行っていないらしい。また、大明神尾根との周遊ルートも取らなかったようだ。雪庇から南に離れた安全な場所に雪洞が残っており、足跡の主はここで1泊したようだ。この足跡の残り方、雪洞のはっきりした形からして、連休前半の29、30日あたりに登ったのだろう。昨日の雨は山頂でも雨だったようで新雪で埋まることもなかった。

 4時間以上歩いたので腹が減り昼飯を食おうとザックをまさぐったが飯がない! なんとテントの中に置いてきてしまったらしい。テント出発時は無事に山頂にたどり着けるか心配で歩きに使う用具は慎重に準備したのだが飯まで気が回らなかったらしい。せっかく非常食まで準備したのに置いてきては意味がない。しょうがないのでウェストポーチのあめ玉だけで我慢する。まさかこんなところで強制ダイエットさせられるとは・・・・。無事山頂到着&昼飯抜きの報告を知り合いに送ろうと携帯電話を出したが、このロケーションにして圏外だった。絶対に富山の平野部は見えているはずなのだが。しょうがないので休憩しながら430を運用して下山することにした。

 標高900m以下で藪が出てくるところまでは視界が得られて先が見えるし、雪の上に先人の足跡が残っているので(早朝の雪が締まった時間に歩いたので自分の足跡は残らない)、ルートファインディングの必要はなく安心して歩ける。1800mから1750mは登りの時にはバックで下らないとダメかなぁと思ったがここは前向きで楽々歩け、核心部分の1750mから1700m地点の急斜面だけはバックで下った。登りで付けた自分の足跡がいいスタンスになった。その後はルンルン気分で歩いたが、日中になって雪が緩み踏み抜くことも多くなったので、せっかく持ってきたワカンを体力作り用具にしないためにも登場いただくことにする。これがけっこうな効果があり、とたんに踏み抜きが無くなって歩きやすくなった。朝の雪が締まった時間帯にはワカンの出番はないが、日中はこれだけ使えるとは久しぶりの体験だった。

 登るときに見かけた赤布数カ所を過ぎても先人の足跡は私が登ってきた尾根に続いていた。どうやら全く同じコースから往復したらしい。傾斜がきつくなって藪地帯に突入すると尾根がいまいちはっきりしなくなるのでルートは要注意だ。こうなることを予想して目印を付けながら登ったのだが、あまりたくさん付けなかったので1カ所左に尾根を外してしまった。やたら傾斜が急になったし、右手に尾根が見えてしまったので外したことが分かり、時間的損失は数分程度だっただろう。

ここから藪に突入する まさか他に登ってくる人がいるとは!

 

 正しい尾根が分かってほっとしたのとは別に驚くべきことがあった。なんとその尾根に人の姿があったのだ。こんな所を登るのは絶対に普通の登山者ではないがどんな人物だろうと肩まで登り返して急な尾根を下ると、なんと単独ではなく5,6人ものパーティーだった。しかも半分が女性でビックリ。あまりに急傾斜で私は敬遠して藪の中を登った雪渓を何事もなく登っていくくらいなので経験は豊富らしい。どうやら毛勝まで行くらしいが、ゲート前にはたくさん車がいたのにこっちには人が全くいないと不思議がっていた。そりゃ普通毛勝に行くのならこんな所から登らないぜ。当然ながらあちらは幕営装備で、たぶん大明神山でお泊まりだろう。この先の尾根の様子や踏跡の残り具合など伝えておいた。こんな尾根で絶対に人に会うことはないと思っていただけに熊に会うより驚いた。熊に会う確率の方が絶対に高いと思う。

送電線巡視路に出る 鉄塔から適当に斜面を下る

 

 この後は尾根を外すことなく、主に藪の中を下った。もう藪は乾いているし、下りだから灌木でも力押しで突破が可能だ。そのまま正確に尾根を辿ると標高700m地点で突如として刈り払いされた道が現れた。たぶん送電鉄塔の巡視道の一部だろう。尾根上にでっかい杉の木があってトラバースするところにはご丁寧にトラロープまで設置してあるが使用するほどではなかった。巡視道らしき道はそのまま尾根上に続いているが、左手直下に鉄塔が現れたのでここから左に下ることにする。もしこのまま尾根を直進したら両側が絶壁で下れない。どこかで安全な場所に下れるようルートが付いているはずだが、それは雪がないときの話で雪が残っているとトラバースなどできなことが考えられるので、登りと同じ場所に下るのが正解だろう。杉の植林帯を下るともくろみ通り橋のたもとに出ることができ、そこには巡視路入口の看板があった。なんだ、ここからだったのか。

 テントに戻って昼飯にありつき、虫干ししながら飯を食って少々昼寝。まだ快晴が続いて顔が日焼けしそうだ。ワカンを履いて緩んだ雪の林道を歩き、長い直線区間で雪が消えてワカンを外して歩き、片貝川沿いの舗装された林道に出れば1時間の歩きでゲート着である。途中、今日は片貝山荘に泊まるという3人の中高年男女とすれ違い、ゲートでは私と同じくらいの年齢の男性が出発準備中だった。私が出発したときは3台だけだった車は10台以上に増えており、県外ナンバーがほとんどだった。

 天気予報では土曜日まで好天らしく、3日後の土曜日にもう1山稼ごうと考えて明日は室堂で簡単な山に登り、金曜は完全休養日が良かろう。立山駅に向かうついでに上市町のいつもの温泉に入り、いつものスーパーで買い物を済ませて駅駐車場に車を止めた。


5/2
16:43ゲート−17:34林道分岐−18:17目的の尾根末端

5/3
5:03テント−5:12橋手前で左の樹林に入る−5:18平坦地−5:37尾根に乗る−6:24 標高930mでコンスタントに雪が出てくる−6:45 1060m肩−7:22 1292mで休憩−7:38出発−8:50 1835m地点−9:29大明神山着−10:18大明神山発−10:35 1830m地点−10:46急傾斜地を抜ける−11:00 1350m地点−11:05 1292m地点−11:21 1220m地点−11:27 1070m地点−11:39藪地帯−12:12鉄塔−12:17林道−12:25テント着−13:34出発−14:10片貝川沿いの林道−15:00ゲート



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