南ア 四郎作ノ頭(三伏峠、塩見岳、蝙蝠岳) 2006年8月3〜4日

 

 

 先に述べておくが、私のモットーの一つは「夏は藪漕ぎしない」である。汗まみれ藪の埃まみれはねぇ・・・。真夏の間は登山道があるアルプス級の山だけで藪山は休業である。

 7月は仕事の関係で浅間周辺日帰り山行以外はできず約1ヶ月山から離れ、月間130時間の残業時間で下界で疲れてしまったが、他部門の絡みで仕事に穴が開いて休めることになった。さすがに疲労が濃いので山には行かないで寝て過ごそうかとも思ったが、タイミングがいいような悪いようなで梅雨明けし、ようやく夏らしい暑い天気になるとの予報も出たことで、涼みも兼ねて山に出かけることにした。はたして体力が持つのか心配ではあるが。

 出かける場所であるが、少なくとも3日間の休みは確定なのでそれなりの山にすべきだろう。いろいろ考えられるが、昨年からの懸案であった四郎作ノ頭あたりが順当なところだろう。四郎作ノ頭とは蝙蝠岳と徳右衛門岳の間に位置する日本山名事典記載の山で、地形図には記載されていないので蝙蝠岳と徳右衛門岳は別々に登った時にも立ち寄っていなかった。蝙蝠岳は仙塩尾根を歩いたときに往復し、徳右衛門岳は二軒小屋から往復しているので、その中間の区間はスッポリと抜け落ちていた。四郎作ノ頭が登場してからどこから登るか考えたが、どこから歩いても同じくらいの労力がかかるなら展望がいい塩見を超えて行く方が楽しめるだろうと判断し、帰りのアップダウンがきついが鳥倉林道から往復することにした。

ダイアル鍵の鳥倉ゲート

 水曜日は定時退社し、荷物をまとめて中央道に乗り松川まで走った。いつもなら諏訪で降りて高遠、長谷、大鹿と一般道を走るのだが、大鹿村で土砂崩れがあって国道が通行止め、迂回路も無いため小渋川沿いから入るしか手段が無いので、高速代がかかるがしかたがない。大鹿中心部で鳥倉林道の看板に導かれて左に入り、急な登りの狭い道を上がっていくと林道らしくなる。ここは豊口山に登ったときに一度走っているはずだが記憶が消えており、案内看板のお世話になった。途中、子鹿とぶつかりそうになってビックリ。ずっと舗装が続いて無事駐車場に到着、以前は手でどかせる車止めであったが、今は大井川林道のように3桁の数字ダイアル鍵+立派なゲートに変わっていた。平日の深夜にも関わらず駐車場の空きは数台程度で予想以上に混雑していた。これじゃ週末はいったいどうなってしまうのだろうか? 空いた場所に車を突っ込んで酒を飲みつつパッキングを済ませて寝た。

 翌朝、まだ眠いが周囲が出発準備でザワザワし始めて目が覚め、5時過ぎに出発した。幕営は残雪期の山以来なので久しぶりだが、夏山ではアイゼン、ピッケル、防寒具が不要なのでえらく軽いし荷物も嵩張らず、何か忘れ物があるのではないかと心配になるほどだった。もちろん荷物は軽いほどいいが、軽すぎると心配になる。天気は基本的には晴れているようだが雲が多く、日中もこのままなのか晴れてくれるのか判断できない。登りでは曇っていた方が涼しくていいが、山頂で曇っていては間違いなくガスの中だろうから展望が無く面白味に欠ける。とりあえず暑さ対策でうちわと麦わら帽子は持っていく。

 ゲート脇から林道歩き開始で、登山口まで準備運動代わりの40分程度。谷を挟んだ反対側には除山から小日影山の尾根が聳えているが注目する人は皆無であろう。かなり急傾斜の区間もあって、よくもまあ登ったものだと自分でも感心してしまった。遠くから見てもあの平らな場所はあの辺りだなぁと思い出せるのだから意外に記憶が残っているようだ。その向こうには前茶臼山、奥茶臼山の稜線だが霞んでしまっている。

鳥倉林道から見る除山 鳥倉登山口

 

 1790mピークのある尾根を回ると砂利道になるがまだまだいい道のままで、右に大きく曲がったところが登山口であり、今年から開通したバス路線の停留所があった。準備運動を終えて唐松植林帯を登り始める。久しぶりの山登りと仕事疲れで足が軽いとは言えないし、今日は雪投沢まで行かなくてはならないので無理はせずペースを落としてゆっくりと歩いた。コース上には登山口から三伏峠までの距離に応じて1〜9の番号がつけられているが、どんな基準で決めているのかは不明である。時間なのか標高差なのかなぁ。

豊口山へ向かう尾根入口 鳥倉コースの水場

 

 高度を上げると唐松植林帯からシラビソ樹林に変わり南アらしい雰囲気に変わる。稜線に到着して右に進路を変えるが、ここを左に行けば数年前に登った豊口山で、藪もなくシラビソ樹林帯を歩いて簡単に山頂まで行けた記憶がある。三伏峠への登山道は良く踏まれて迷うような心配はない。稜線に乗ってしばらくすると北側を巻くようになり、途中に水場がある。流れは細いが水を汲むには問題ないレベルで、腕と顔を洗って休憩した。再び歩き始めて巻きながら徐々に高度を上げると塩川からのコースと合流、さらに登って三伏峠に到着した。ここは2回通っているはずだがイマイチ記憶が薄く、旧小屋はもっとボロかったような気がするのだが改修されたのだろうか。既にテントが何張りか張られており、たぶん住人は塩見を往復の最中だろう。水場で休憩したのでここはパスし、三伏山で休憩とする。Y字路を左が塩見方面、右が荒川方面。次に来るときは井戸沢ノ頭と高山なので右かな。

鳥倉コースから見た塩見岳 三伏峠小屋
三伏峠小屋テント場 塩見/荒川分岐

 

 樹林を登ると急に森林限界を超えてハイマツ帯になり三伏山に飛び出した。視界が開けて塩見岳がでかく遠く、あれを越えて雪投沢までまだまだ距離がありそうだ。朝の雲はきれいさっぱり消えて快晴の青空が広がるが、伊那盆地は雲海に覆われて中央アルプスの山々も一部ピークが頭を見せているだけで同定はできなかった。3人ほどの先客が休憩中だが静かな山頂だった。

三伏山山頂 三伏山から見た塩見岳
三伏山から見た三伏小屋 本谷山山頂

 

 休憩を終えて出発、下り始めるとすぐに森林限界を切って樹林に突入、日差しが遮られて涼しくて気持ちいい。登り返すと周囲をハイマツに覆われた本谷山で、こちらは無人である。さっき休憩したのでここは通過だが、気になる小黒山方面への踏跡の有無を確認したが、山頂周囲はハイマツの海で踏跡はなかった。たぶんハイマツは長続きせずにすぐにシラビソ樹林に変貌すると思うが、ここから小黒山を目指そうとすると最初が一番苦労しそうだ。

 ここからは標高2420mまで緩やかに下っていく。もし体力的にきつかったら中俣源頭を横切る場所付近で幕営して、水が出るところまで沢を下って水汲みしようかとも考えていたが、時間的にはまだまだ余裕があるので最低地点手前で少し長めの休憩をしてそのまま進むことにした。この辺は背の高いシラビソ樹林の中なのでいざとなったらテントを張るスペースはいくらでもあった。

 登り返しが始まり、塩見岳山頂まで約600mの標高差を稼ぐ。樹林を抜けるともう稜線にはガスがかかり始め日差しが遮られるので思ったよりは涼しいが、ほとんど無風なのでうちわで扇ぎながら登っていく。やがて塩見新道と合流するが、鳥倉ルートと比較すると踏跡の濃さの差は歴然だ。整備されていないはずはないが、今では利用者はかなり減ってしまったようだ。この前の豪雨で林道が通行可能か不明なこともあって今回は通行可能との情報が確認できた鳥倉林道を使ったが、帰りの登り返しを考えると塩見新道の方が楽だったかなとちょっぴり後悔した。

塩見新道分岐 塩見小屋

 

 そこからすぐに塩見小屋で、まだ昼前だが賑わっている様子だったがここも用事がないので通過する。小屋は思ったよりも小さく、全部で100人も入らないような感じだがどうなのだろう、と思ってネットで調べると定員30人というから納得だ。こりゃ水晶小屋に匹敵するだろう。この小屋の位置関係からすると、常人の足では初日はゆっくり起きて三伏泊とし、翌日に塩見を往復してもう1泊、3日目に下山だろう。健脚なら塩見岳日帰りは可能な範囲だが、帰りのアップダウンを考えると北岳日帰りよりはきつそうだな。私が蝙蝠岳に登ったときは鳥倉から蝙蝠岳日帰りのあんちゃんと北俣岳付近ですれ違ったが、相当バテバテでその日の内に帰り着けたのかは定かではない。

塩見小屋付近から見た塩見岳 塩見岳への途中から後ろを振り返る
塩見岳への最後の登り ガレ場をジグザグに登る

 

 塩見小屋は小ピークにあり、僅かに下ってから登りはじめ、再び僅かに下るといよいよ塩見岳本体の岩壁帯だ(行きはガスって見えなかったが帰りに見えた)。前に登ったときの記憶は薄くて岩場を登った覚えがないのだが、稜線を外れて南側を目印を頼りにジグザグに登っていくようだ。すれ違って下ってくる人の話では結構怖いと言っていたが、実際には普通の登山道の岩場なのであまり危険地帯はなく、バランスさえ崩さなければ問題ないだろう。ただ、浮き石もあるのでコースを外して落とさないよう注意は必要であろう。

 急な岩場を通過して尾根にはい上がるといよいよ塩見岳西峰山頂だ。ここは最高峰ではないが三角点が鎮座している。もう時刻はお昼近くでガスが上がってきて何も見えず、お隣の東峰だけが時々ガスの向こうに浮かび上がるだけだが、たぶん明日の朝には大展望を楽しめるだろうと期待する。手前でオバチャン3人組に雷鳥がいると教えられ、指さす方向をじっと見ていると岩のように動かず保護色の雷鳥をどうにか見分けることができた。

 最高峰の東峰はすぐ近くで狭い岩場に山頂標識が立っているだけで無人だった。標高差600mを登ったのでここで休憩、南側の少し下った岩場でひっくり返ってお昼寝だ。もしこの時間もドピーカンだったら暑くて昼寝などできないだろうがガスっていて適度の気温で快適だった。やがて三峰岳方面から男性2人がやってきてしばらくダベった。彼らは広河原から入って初日は肩の小屋泊、翌日は北岳、間ノ岳を越えて熊ノ平で宿泊、そして本日は塩見を超えて塩見小屋泊予定だが、小屋に予約を入れたらいっぱいとのことで、現場に行ってみて宿泊できるか確認してダメなら三伏峠まで行くとのこと。そして明日は鳥倉に降りて午後のバスで下山だそうだ。ずっと天気は良くて肩の小屋で夕方ポツリポツリと雨が落ちてきただけだという。明日も天気は良さそうだ。彼らの出発に合わせてこちらも出発する。

雪投沢テント場入口 先に見える砂礫地がテント場
砂礫地の先には樹林帯のテント場もある 雪投沢の水場

 

 雪投沢の幕営地は、以前に仙塩尾根を縦走したときに見ており、ハイマツ帯の中に砂礫の幕営地があったのを覚えている。分岐に標識があるか分からないが、たぶん明白な踏跡が下っているだろうから分かるだろう。すぐそこだと思っていたがぐんぐん高度を下げてからやっと分岐の目印であるの赤い棒が目に入った。ただし棒だけで雪投沢の文字も水場の文字もなかった。でもはっきりとした踏跡が下っているので間違いなく、迷うことなく下って行くとすぐに砂礫のテント場がいくつも出てきた。ここでテントを張ってもいいのだが、ここで幕営した知り合いの話では、僅かに下ると樹林帯に入ってそこにも幕営地があり、木に覆われているので雷雨の時に安心できてお勧めとのことだったので大ザックを背負ったまま先(沢筋に下るのではなく右に巻いていく)に進むとハイマツ帯からダケカンバの樹林に変貌し、最初の幕営適地でザックを降ろした。確かにここの方がハイマツ帯よりずっといい幕営地だろう。幹が横に寝たでかいダケカンバの樹林帯で、頭上は葉に覆われているので雨が直接テントをたたくこともない。

 水場はもっと先にあるようなので容器とタオルだけもって出発、さらに右に巻きながら緩やかに下ると1つ枯れた沢を横断して本流に出た。水量は充分で手を入れていられないほど冷たい水で2リットルを補給し、タオルを濡らして全身を拭いてさっぱりできた。テントに戻ってまだ時間があるので昼寝をし、夕方から酒を飲んで寝た。この日は他に水場に行く人の気配はなく、私一人だけだったようだ。

 早く寝たので目が覚めたら夜中の1時。1時間ほどウトウトしたがもういいかと2時過ぎに起床して朝飯を食って3時過ぎにヘッドライトをつけて出発、天候は無風快晴で星空が広がっていた。上部のハイマツ帯にもテントはなく、尾根に出ても周囲にはライトの光はなく、塩見小屋と思われる場所に光の点が見えるだけだった。

 蝙蝠岳分岐まで登り返し、アタックザックに切り替えて四郎作ノ頭まで往復だ。エアリアマップでは蝙蝠岳まで片道3時間となっているが、距離、標高差から常識的に考えてそれほど時間はかからないと判断、休憩込みで4時間程度と見積もり昼飯は置いていくことにした。出発は4時でまだ真っ暗、歩き出してすぐにGPSを置いてきたことに気づいて取りに戻った。四郎作ノ頭の正確な場所を知らないのでGPSはあった方がいい。

 北俣岳周辺の岩場の通過は真っ暗な中で、昼間なら先が見えてルート判断は簡単だろうが夜間は見える範囲が狭く、目の前の岩をまっすぐ登るのか巻くのか判断するのにちょっと時間がかかる。左右を探して踏跡がなければ岩を登ったが、うまい具合にルートを外さなくて済んだようで、薄明るくなった頃に岩場を通過して広々とした気持ちのいい砂礫の尾根を歩くようになった。蝙蝠尾根はこのおおらかさがいい。

塩見岳と北俣岳を振り返る まだ蝙蝠岳は遠い

 

 東の空が徐々に明るくなり4時半でやっとヘッドライトが不要になった。緩やかに標高を下げると鞍部付近のピークを挟んだ区間は樹林帯で、鞍部は2重山稜になっていた。ハイマツは乾いているもの、濡れているものが混合しているが、ナナカマドだけはどれもたっぷりと朝露に濡れていて触るとびしょ濡れになってしまう。やはり蝙蝠尾根は歩く人は多くなく、刈り払いは完璧ではないが、道があるだけでもありがたいことだ。鞍部をすぎて登りにかかると再び森林限界を超えて見通しが利くようになり、ハイマツ帯を歩いている時に日の出を迎えた。そして5時を過ぎて蝙蝠岳山頂に到着した。

白峰南嶺から日の出を迎える 蝙蝠岳山頂
蝙蝠岳から見た塩見岳 蝙蝠岳から見た荒川岳
蝙蝠岳から見た富士山 蝙蝠岳から見た南を見る

 

 以前、蝙蝠岳に来たときには三角点にKUMOが巻き付けられていたが今は無くなっており、代わりに昔はなかった立派な山頂標識が立っていた。振り返ると塩見岳が立派だ。荒川東岳が割と近く、西小石岳の尾根がよく見えるがどれが山頂なのかわからない。正面には二軒小屋へと続く長い尾根で、樹林に覆われたこんもりとしたピークが徳右衛門岳だろう。その向こうには双耳峰の笊ヶ岳から周辺の山が同定できる。

四郎作ノ頭山頂 四郎作ノ頭から見た蝙蝠岳

 

 GPSのスイッチを入れて四郎作ノ頭までの距離を見ると約700mで、その間には大したピークはなく、四郎作ノ頭はほんのちょっとの盛り上がりらしい。まだ疲労は感じないのでそのまま進み、平たい岩くずが散乱する稜線を下って僅かに登り返したところがGPSが指し示した四郎作ノ頭だった。標識等は無く南北に長いハイマツが点在するピークで、GPSはその北端が山頂とのお告げだったが、念のため南の端まで行って標識等が無いことを確認した。この夏に武内さんも登ったのだが形跡はなかった。これでようやく懸案の山の一つが片づいたことになる。早朝なので無線の相手確保に苦労したが、どうにか関東地方の局と交信できた。

 蝙蝠岳に戻って休憩がてら展望を楽しみ塩見岳に戻る。今日はこの尾根を下ってくる登山者がいるか気になっていたが、中間地点を過ぎて登りにかかると小屋泊まりと思われる荷物を背負った老夫婦が下ってきた。私のように往復するのではなく二軒小屋泊まりだろう。北俣岳近くの岩稜帯になると団体様がやってきたが、先の2名は「先遣隊」のようだった。仙塩尾根縦走路に合流するところでは3名ほどが蝙蝠岳方面に踏み出すところで、以前よりも歩く人が増えたようだ。まあ、登山道があるからなぁ。

塩見岳東峰から見た西峰 塩見岳西峰から見た東峰
塩見岳東峰から見た白峰三山 塩見岳東峰から見た仙丈ヶ岳と黒檜山
塩見岳東峰から見た地蔵尾根 塩見岳東峰から見た小日影山、奥茶臼山
塩見岳東峰から見た小黒山〜笹山 蝙蝠岳分岐付近から見た塩見岳

 

 本格的な休憩は塩見山頂でとることにして大ザックを背負って登り返し、東峰山頂で大休止。幸い、まだガスが上がってきていなくて大展望が広がり、先ほどまで歩いていた蝙蝠尾根がゆったりと横たわっている。赤石岳は前岳に隠れてしまい見えないが、代わりに百軒平から大沢岳が見えていた。明日、明後日くらいまで好天が続くとの予報だからあの尾根を歩いている人も多いだろう。その右側には奥茶臼山と、その左には頭だけ出した大沢丸山だ。こんなの判別できる登山者は滅多にいないだろう。北に目を向けると白峰三山が堂々としているが、肝心の北岳は間ノ岳に半分重なってしまい、鋭く尖った姿は目立たないのが残念だ。甲斐駒は白いドーム状の特異な姿なので非常に目立つ。そして仙丈ヶ岳の手前には孤高の黒檜山が聳えているのが懐かしい。標高は2500mを越えるのに周囲の山と比較すると低くて目立たず、伊那盆地から見えないのはもちろんだがこうして周囲の高い山からでないとその姿を拝むことはできない。そして、南アルプスの登山道を歩く登山者でこんな山に注目するのは私くらいではなかろうか。その左は小瀬戸山の尾根で、丸山は見えているのか判別できないが小瀬戸山は見えている。もっと左に眼を向けると小黒山から二児山の長い稜線だ。特に尾根末端の二児山は大変立派なピークに見えるのは意外だったが、ここも南ア登山者にとっては黒檜山と同等に注目されない不遇な山だろう。展望を楽しむ登山者の言葉は100名山クラスの山しか聞くことはなかった。

 いよいよ下山だがまだまだアップダウンが待ちかまえている。やっぱり塩見新道の方が良かったかなぁとも考えるが、先日の長野集中豪雨で林道が通行可能か保証がないのではリスクはとれないからしょうがない。本谷山と三伏山を越えるしかない。昨日はガスで視界がない中を登ったが、今日は大展望を楽しみながら歩くことができて楽しさ倍増である。西峰からの下りはガラ場で落石を落とさないように注意しながら下っていく。おっかなびっくり歩く登山者が多いが、岩登りのゲレンデではないのでホールド、スタンスともしっかりあって傾斜がとんでもないところもなく、特に危険はなかった。岩場を通過して塩見小屋付近で振り返ると山頂は遙か高かった。

 どこかで休憩を取ろうとタイミングを計っていたが、もっとも快適そうな鞍部樹林帯を通過してからは矮小な樹林で風の吹き抜けが悪くて虫が多かったり、道の両側は樹木が密生して休憩する隙間がないなどして本谷山まで来てしまったが、こんな日影がないクソ暑い場所では休憩する気になれないので先に進み、もうじき三伏山が近いという場所でひっくり返って休憩するのにちょうどいい場所を発見して休憩。この後は林道まで休憩無しで歩くつもりなのでまとめて休憩してしまう。ひっくり返って足を延ばして休むと疲労が取れていいし、なんていっても気持ちいい。

 充分休んでから歩き出すとすぐに三伏山山頂を通過、荒川岳への縦走路を合わせると三伏小屋でたくさんの登山者がたむろしているのは登ってきたときと同じで、まだお昼前だというのにテントを設営する人が何組もいたのにはちょっと驚いた。これが健全な姿だろうけど、時間からする熊ノ平や荒川小屋宿泊ではなく、たぶん鳥倉林道を出発した人だろうから、初日でこれではちと楽しすぎか? まあ、無謀な計画で遅い時刻にテント場に着くよりずっといいが。小屋から下るとチラホラと登ってくる人とすれ違うが、朝出発した人はとっくに小屋に到着している時刻なので人数は少ない。水場で顔と腕を洗ってさっぱりし、豊口山への尾根と分かれてグングン下り林道に出たところで最後の休憩。バスを待つ数人の登山者がおり、登ってくる人もポツポツと見かけた。林道を歩き始めてもまだまだ登山者が上がってきて、駐車場に到着するともう午後2時を過ぎたというのに団体様のバスが2台やってきて20人くらいのパーティーが次々と出発していったのには驚いた。今から歩いたら夕方の遅い時間に小屋到着になるだろうし、このガスが上がっている時間だといつにわか雨や雷に遭遇してもおかしくない。いくらなんでも無謀だよなぁ。百名山ともなるとこういうツアーもあるんだなぁ。

 着替えながらテントを虫干し、車内整理が終わって出発したら大粒の雨が落ちてきたがちょっと降っただけで止んでくれたが山の上はどうだったであろうか。大鹿村の集落に降りるに連れて気温が上昇、天気情報通り今日も暑い。赤石荘(\500、木曜定休)で汗を洗い流し、小渋川沿いに伊那盆地を目指した。


所要時間

8/3

鳥倉ゲート−0:37−鳥倉登山口−0:52−豊口山尾根入口−0:34−水場(休憩)−0:24−塩川分岐−0:19−三伏峠−0:05−荒川分岐−0:08−三伏山(休憩)−0:43−921本谷山−0:33−休憩−0:32−塩見新道−0:14−塩見小屋−0:54−塩見西峰−0:03−塩見東峰(休憩)−0:20−蝙蝠尾根分岐−0:17−雪投沢分岐−0:06−テント場−0:03−水場−0:04−テント場

 

8/4

雪投沢テント場−0:10−縦走路−0:44−蝙蝠尾根分岐−0:05−GPSを取りに戻って再び出発−0:40−鞍部−0:23−蝙蝠岳−0:17−四郎作ノ頭(休憩)−0:23−蝙蝠岳(休憩)−1:14−蝙蝠尾根分岐−0:25−塩見東峰(休憩)−0:39−塩見小屋−0:07−塩見新道−0:59−本谷山−0:25−休憩−0:13−三伏山−0:07−荒川分岐−0:03−三伏峠−0:13−塩川分岐−0:14−水場−0:51−鳥倉登山口(休憩)−0:35−鳥倉ゲート

 

 

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