南ア北部 赤薙沢ノ頭 2006年10月19日

 


 赤薙沢ノ頭は早川尾根の白鳳峠〜広河原峠間のピークであり、地形図、コンサイスには記載されていないが日本山名事典で新規記載された山である。早川尾根は私が南ア北部を登り始めた年に(10年近く前)まとめて歩いたのだが、偶然にも赤薙沢ノ頭は通過していない。鳳凰三山縦走の下山路で白鳳峠を歩き、早川尾根縦走の登りで広河原峠を歩いて、その真中は歩いていなかった。

 この程度の中途半端な山は簡単に登れるが、登る前に広河原のマイカー規制が始まってしまい時間的自由が取れなくなって行く機会がなかったが、今回の広河原シリーズでは当然ターゲットとなり、最も標高差が小さいシレイ沢向山を最終日にとっておいて2日目に標高差1000mを登ることにした。あまり早く広河原に降りてもやることがないので、稜線上で写真でも撮って遊ぶのがよかろう。天気予報によると木曜日も好天が期待できそうだった。

 夜中は0度まで気温が下がったが、冬用シュラフにダウンジャケット+ゴアまで着て寝ていたので快適だった。夜中も朝も快晴だったので露が降りてテントはびしょ濡れでテント内も水滴がたくさんついてシュラフが濡れてしまった。そろそろゴアのシュラフカバーが必要か。朝飯を食って出発する頃には6:00を過ぎて十分明るくなっていたが、どうせ今日は急ぐ必要もない行程なので問題なかろう。強いて言えば朝早いほうが空気の透明度が高くて見晴らしがいいくらいか。

 昨日帰りに通過した白鳳峠入口から登り始める。エアリアマップでは当然赤線だが荒廃の文字も書かれており、いったいどんな状態なのか良くわからないが、道がない尾根よりはずいぶんマシなのは確かだろう。登山道入口には何も書かれていなかったので特に問題はないようだが、平日でほとんど歩く人もいなくて熊が出てもおかしくないので鈴を付けて歩き出した。

林道から見る朝焼けの北岳 道をふさぐ倒木

でかい岩。右を巻く 岩を巻くルートの梯子
苔むしたシラビソ樹林を登る 白鳳峠付近で開けた場所に出る

 

 出だしは急傾斜で気温は低いがすぐ体が温まってTシャツ姿に変身、順調に高度を上げていく。登山道はしっかりしておりちゃんと人が入っている雰囲気のごく普通の登山道で、途中に巨大な岩が立ちはだかって右に迂回するルートもしっかりとした梯子がかかっていた。ただ、倒木がルートを塞いで迂回路が自然発生しているところが1箇所だけあったくらいか。気温は登るにしたがって徐々に低下し、車道で5℃くらいだったのが0℃まで下がり、歩いていても腕や手が冷えるので腕カバーと手袋を付ける。緑色に苔むしたシラビソ樹林では上から冷たい風が吹き降りてもっと寒く感じた。そこを抜けると突如として樹林帯が終わり、ゴロゴロの河原のような開けた場所を白鳳峠まで登ることになる。振り返ると北岳が正面に見えて、なかなかいい眺めである。北岳は既に日差しがあるがこの登山道はまだ高嶺に邪魔されて日陰のままで気温は0℃のままだった。

白鳳峠下から見た北岳 白鳳峠
赤薙沢ノ頭山頂 赤薙沢ノ頭から見た北岳
赤薙沢ノ頭から見た小太郎山 赤薙沢ノ頭から見た仙丈ヶ岳
赤薙沢ノ頭から見た早川尾根 赤薙沢ノ頭から見た甲斐駒
赤薙沢ノ頭から見た甲斐駒東部 赤薙沢ノ頭から見た離山

 

 ほどなく白鳳峠に到着、赤薙沢ノ頭は左側なので早川尾根に向かってさらに登るとやっと直射日光が差し込むようになり、体感温度が上がると同時に温度計を見ると5℃を超えていた。白鳳峠から再びシラビソ樹林に入って地面には直接日が差し込まないが、それでも樹林中の気温は大幅に上がるようだ。登りきったところも樹林で山頂は何も見えないのかと思いつつもう少し先に進んでみると同じような高さのコブが並び、もっとも西側のピークで樹林が消えて露岩地帯となり展望が開けた。ここが赤薙沢ノ頭山頂であった。標高から考えてたぶん何も見えないだろうと考えていたのだが意外な展開だ。まずもっとも印象的なのは甲斐駒で、こちらから見ると急角度で立ち上がり花崗岩の絶壁が多く見られ威厳がある。その右には甲斐駒に続くいろいろな尾根で、登り残しの宮ノ頭もよく見えた。坊主山は裏側になるので見えない。甲斐駒の左にはアサヨ峰まで続く早川尾根、その左は昨日途中まで登った仙丈ヶ岳だ。小仙丈ヶ岳から北沢山にかけての東尾根も良く見えている。その中には南に屈曲する部分の左側のダケカンバ帯や、その下のまばらなシラビソ帯などがはっきりと見て取れた。その左は小太郎山から北岳、池山吊尾根が続き、間ノ岳がかろうじて頭を出している。その左には大唐松山が何とか見えているが、ここからだと三角点峰からは水平な稜線だからとがった形にならず、イマイチ格好良さが感じられない。やはり雨池山を越えて唐松植林帯を登っている時に見える姿が一番だろう。真東は高嶺がでかく、地蔵岳のオベリスクへと続いている。八ヶ岳も良く見え、昨日同様に槍穂、白い立山、そして霞んで同定できないがやはり白くなった後立山も見えていた。

 どうせ今日はここに登るだけで他にやることがないので、のんびり日向ぼっこしながら無線を運用した。さすが甲府盆地から長野方面に開けているので楽だった。

赤薙沢ノ頭から見た高嶺。手前の肩が2650m地点 白鳳峠から高嶺方向はハイマツ
白鳳峠を見下ろす 2650m肩から見た高嶺
2650m肩から見た池山吊尾根 2650m肩から見た早川尾根、甲斐駒

2650m肩から見た白峰南嶺

 

 まだ時間があるので、高嶺の方向に少し登って大唐松山のもう少しまともな写真を撮影できないか展望を期待してみることにした。高嶺の稜線は季節風が吹きつけるためか、白鳳峠直上から這松帯が続いており、山頂まで行かなくても展望は得られそうだ。途中に肩があるので、そこがポイントだろう。肩までは稜線が広いので右手にある大唐松山は自分が歩いている尾根に邪魔されて見えないが、肩に到着すると樹林の向こうに見えていたので、南に延びる尾根に付いた薄い踏み跡を辿って先端に出ると視界が開けた。しかし、赤薙沢ノ頭と距離的に大差ないため、同様に大唐松山の形はイマイチなのは残念だった。時間がまだまだあるのでここで早い昼飯を食ってから下山することにした。無風快晴、直射日光の下で快適だった。

 下山も快調に歩き、登山口に立っても誰とも会わない静かな一日だった。



所要時間
広河原山荘−0:14−白鳳峠入口−1:53−白鳳峠−0:16−赤薙沢ノ頭(休憩)−0:12−白鳳峠−0:30−2650m肩(休憩)−0:16−白鳳峠−1:07−白鳳峠入口−0:12−広河原山荘


 

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