南ア白峰南嶺 大谷崩ノ頭(行田山) 2006年10月21日

 


 間ノ岳に端を発する白峰南嶺は、笊ヶ岳を超えて青薙山で東に進路を振って大笹峠、山伏と続き、大谷崩ノ頭(山梨県側の名称は行田山)が最後の2000m峰となって安倍峠から南下し、太平洋へと落ちて行く。大谷崩ノ頭は以前は三角点があってその標高は1999.7mと四捨五入すると2000mになる。2000mの等高線が通っているピークは他にあるようだが、その場合は最大で±10mの誤差が有り得るわけで、1年単位の西暦の山として扱うにはちと難があると言えよう。標高2000mジャストのピークでは大谷崩ノ頭が唯一の三角点/標高点があるピークであり、武内さんの情報を元に山梨県側の早川町が町おこしを行ったのは記憶に新しい。それからもう6年、いや7年近く経過してブームも去り、静かな山登りができるだろう。本当はもっと早く登る機会があったのだが、その夜は悪天で強い雨が降り林道の崖崩れが心配で夜の間に下ってしまったのだ。その後も畑薙ダムから登った帰りに何度か通過しているが、日曜の午後以降だったので登る時間が無かった。今回は広河原2泊3日の翌日の骨休めだから適度か少し楽すぎくらいかもしれない。なお、ここを登れば白峰南嶺の未踏峰は青薙山から山伏間だけとなり、1〜2日かければ片付けられるはずだ。

行田山登山口駐車場。背景は布引山と笊ヶ岳 行田山登山口

 

 旧白根(現南アルプス市)で買い物を済ませて早川町に入り雨畑方面に左折する。相変わらず集落内の道は狭く、驚くような山奥にも民家があって冬場に生活できるのか不思議に思えるくらいだ。電柱がなくなると民家も無くなり、細いが舗装された林道を延々と走る。ただその舗装はガタガタで穴はあるし段差はあるしで気が抜けない。昼間は対向車も来るのでこれまた要注意だ。何箇所かで舗装のための前処理工事をやって道路が掘り返されており、軽自動車ではスタックしてしまいそうで恐ろしかったがどうにか通ることができた。以前は長かった未舗装区間は年々短くなっており、あと数年もすると山梨側も全線舗装になりそうだ。ダートの中間地点で大きく右カーブするところ、標高約1600m地点に広い残土置き場があり、それより僅かに先に行田山登山口と駐車場がある。入口には小さな沢が横切って段差があるので徐行して乗り入れた。ここは斜面を盛り土で水平に均したようで谷の方向は樹林が無く展望が開け、笊ケ岳と布引山が目をひく。ここから見る布引山は横長ではなく締まった三角形に見える。金曜夕方なので他に車はなく、酒を飲んで静かに寝られた。

最初の橋。崩壊寸前 2つ目の橋。崩壊しているので斜面を横断する

 

 翌朝は薄暗い5時過ぎに起床、思ったよりも冷え込みは弱く快適に眠れた。お湯を沸かして朝食を取り、明るくなってから出発する。駐車場は相変わらず私の車だけだ。しっかりした登山道入口には熊に注意の看板があるが、言われるまでもなく熊避けの鈴は必携だろう。早川町のあちこちで熊は出没しているそうだ。登山道は良く踏まれているが、数カ所沢を横切るところでは木の橋が破損しているところが2カ所、増水等で登山道が荒れているところもあった。1カ所は完全に橋が崩壊して枯れた沢を横切るが、ザレた斜面なのでちょっとだけ嫌らしい。その他は大きな問題は無かった。最初は緩い登りでほとんどトラバースである。古いワイアーロープが顔を出しているので、おそらくは以前から存在した作業道を登山道として整備したのだろう。数箇所で踏跡が分岐し地面に置かれた枯れ枝で通行止めになっていたりするが、それらは作業道なのだろう。それどころか明らかに本道で他に枝道が無い場所でそんな通行止め箇所もあったが、偶然に踏跡上に枯れ枝が落ちただけなのだろうか。どう見てもここしか道は無いと思われる場所は枝は無視して進んだ。まあ、この周辺は笹が無い広葉樹林からシラビソ樹林が広がるので、踏跡を無視して県境稜線を目指しても問題無さそうだが。

シラビソ樹林の踏跡 縦走路に出るところに張られたロープ
縦走路合流点から西側ピークを見る 縦走路合流点から東側ピークを見る

 

 沢の横断が終わると県境稜線上の1890m峰から北に延びる緩やかな尾根の西側を登っていく。この付近も踏跡ははっきりしているが、尾根に乗るとそのまま尾根を巻くようにまっすぐ進む踏跡と、右折して尾根に乗って登るルートに分岐し、尾根を登るルートを指して「行田山」の標識があった。尾根に乗るととたんに踏跡が薄くなるが、藪山に慣れた目なら落ち葉に隠れたルートも雰囲気で判別できる。まあ、もし分からなくてもシラビソ樹林で藪はないから尾根を適当に登ってしまえばいいだろう。ここも昔の作業道だったようで古い切り株が見られた。そのまま尾根を登って稜線に出るのかと思ったら、直進ルートは途中で地面に枯れ枝が置かれて左の踏跡に誘導された。イマイチ薄い踏跡を辿って1890m峰を巻きながら水平に進むと1852m鞍部より僅かに西に上がった場所で県境稜線の登山道に飛び出した。今来た踏跡には登山道から人が入らないようにロープで塞いであり、どうも行田山コースは公式には通行止めとなっているようだ。それとも途中で私がコースを外したのだろうか?

大谷崩をジグザグるザク道 大谷崩ノ頭(行田山)山頂
大谷崩ノ頭から見た山伏への尾根

大谷崩ノ頭から見た南ア南部 その1

大谷崩ノ頭から見た南ア南部 その2

 

 登山道は思ったより太くはっきりしていて利用者の多さがうかがえる。梅ヶ島側から山伏〜八紘嶺を歩く人だろう。稜線南側は大谷崩れのガレが広がり展望が良く、1960m峰直下では山伏から南ア南部が見られた。その後は樹林に入って視界が無くなるが、行田山山頂に到着すると様相が一変した。たぶんシラビソ樹林で何も見えないと予想していたのだが、南はガレで遮る物はないし、南ア方面もある程度視界が開け、展望図によると右端は北岳付近であるが霞んでしまって笹山までしか見えない。聖岳、赤石岳、荒川岳はまだ雪は無く、塩見は荒川に隠れて見えない。失礼して標識によじ登って上に立つと、山伏から青薙山の長い稜線が良く見えるが、ここからでは藪の状態をうかがい知ることはできない。さて、今年中に歩くことができるだろうか。

 日当たりもよく休憩にはいい場所だった。休憩のついでに三角点が無いか南側の笹原を探してみたが見当たらず、やはりガレに飲み込まれてしまったのか。たぶん少しずつガレは拡大しているのだろう。無線のためにしばらく山頂にいたが時間が早かったせいか誰も来なかった。

 帰りも同じルートで戻ったが、駐車場の車は増えることは無かった。やっぱり2000年から6年も経過するとブームは去ってしまうらしい。今頃は山伏西側の大笹峠はどうだろうか。元々賑わうほど多くの人が登る山ではないが、行田山よりは多いだろう。もしかしたら青薙方面を歩く人もいるかもしれない。そのコースは実際に行ってみてからのお楽しみだ。

 土曜日も工事が行われているが路面を塞いでの工事はやっていなかったので、帰りはすんなり工事区間を通過できた。工事車両が何台か上がってきたのですれ違いに苦労する。こんな道でダンプが走るのだから運転しながら退避できそうな場所を常時確認する必要がある。雨畑集落に入っても道が細いので注意が必要で、奈良田への県道に入ってやっと安心できた。


所要時間
駐車場−−県境稜線−−行田山(休憩)−−県境稜線を外れる−−駐車場

 

 

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