安倍山系 貫ヶ岳 2006年12月31日

 

 

 貫ヶ岳は南部町最南部に近い山で、県境稜線から北に太く張り出した尾根にある。そこそこ有名な山かと思ったが、地形図を見たら登山道の記載がなかったのにはちょっと驚いたが、ネットで調べたらいくつも登山記録が出てきて梅島からちゃんと登山道があることがわかった。そこから登れば何の問題もないが、私の場合は前夜発で夜中に登山口に到着し、そのまま車中泊して朝一で登り始めるので、車中泊する場所が人家に近いと怪しまれて警察に通報されて真夜中に職務質問されることもあるし、犬を飼っている家が近い場合は真夜中に犬が吠え続けるのでこっちもうるさいし周囲の家に多大な迷惑をかける。そんなことがあって登山口が集落の場合は離れた場所に車中泊して飯を食ってから移動することもあるが、それもけっこう面倒だ。それに今回は貫ヶ岳の次に北部にある森山に登ろうと考えていたので、梅島から登ると下山後に車で移動する距離が長く時間もかかる。

 そんなところにネットで調べた記録に、反対側の石合から登ったものが1つだけあった。登山口にはちゃんと標識があると書いてあったが道そのものは踏跡程度で、これを書いた人は途中で2カ所くらい迷ったようなことが書かれていた。こちらとしては道が無い山は慣れているので藪さえなければ大して問題ではない。適当な尾根を登りながら目印を残し、帰りはそれに従って下山すればいい。踏跡が濃かろうが薄かろうが無かろうが尾根を歩けばいいだろう。ただ、問題は地形図を持っていないことである。この付近はあまり登ったことがないので身延までの地形図はあるがそれ以南がないのである。そのためにネットで事前情報収集したわけだが、全く地図が無くてトラブった場合を考えるとちょっとやばい。まあ、最終兵器としてGPSがあるので帰ってこられないことはないだろう。

 というわけで石合側から登ることにした。これなら下山後短時間の移動で森山に取り付ける。

登山口標識より50mくらい下にある駐車スペース

 このエリアに行くには本当ならば東名富士ICが最寄りとなるが、多摩から東名はアプローチが非常に悪いため、いつも奈良田に行くときと同様に中央道甲府南ICから国道52号線を南下することにした。一般道の走行時間が長くなるが、川崎ICまで市街地を突っ切る時間を考えると大差ないだろうし、このルートなら高速の走行距離は100km強で済むし、通勤割引で通行料金は半額だ。年末なので交通量は少なく、中央道を降りて国道52号に入ってもスムーズに流れ、ICから約1時間で福士川沿いの分岐に到着できた。あとは石合への分岐が分かるかどうかだったが案内標識があって無事に左折、集落を過ぎてコンクリート舗装の林道を上がっていく。問題はこの夜の暗闇で登山口が分かるかどうかだった。ネットの記事では集落を過ぎて標高270m以下のところと書かれているが具体的に書かれていなかったし、今回は地図が手元に無く、GPSと10万図のロードマップだけが頼りだ。グングン登って沢を離れてヘアピンカーブがあるところは道筋に特徴があるのでロードマップでも分かるだろうと車を止めてマップを見ると行き過ぎが判明、路面に水が流れている場所があるので凍結に注意してゆっくり下っていくと登りでは見えなかった登山口の標識が林道から僅かに下った道の右側(沢側)に見えた。思ったよりも集落に近く、集落を過ぎてすぐにある工事用資材置場の上の駐車余地に車を置いて歩いて1分もかからない。よって資材置場を過ぎてすぐに林道左に出てくる駐車余地(4,5台駐車可能)に車を止めるのがよろしい。

 翌朝、標高200mなので冷え込みは強くなく、周囲は霜で真っ白だがフロントガラスの水滴は凍っていない。体を温めるためいつものようにラーメンを食べて出発である。今回はGPSと目印が頼りなので忘れないようにした。林道を僅かに歩くと左側に登山口の立派な標識があり、これなら山頂までまともな道だろうと期待させるのに十分だ。石合川には丸太数本でできた橋が渡してあり、心配の種の一つに沢の渡渉があったのだがこれで解決だ。今の時期の水量はさほど多くないので場所を選べば石を飛んで対岸に渡れそうだった(凍っていなければ)。

 しかし対岸に渡って少し歩くと踏跡がかなり薄くなり、尾根に上がらずに沢の右岸を上流方向に歩いていくだけだ。本当にこれでいいの?と心配になるほどだったが立木にはテープもあり、たぶんいいのかなぁと思いながら歩く。山頂はここから真東ではなく少し南なので、今のうちに水平移動することも予想される。小さな沢を渡るとようやく尾根に取り付いて登り始めた。暗い植林帯をジグザグに登っていく。まだ朝早い時間帯だし、西側斜面で日の出の光が届かずデジカメのシャッタースピードは1/10秒を越え手ぶれ無しで撮影は不可能なので、下山時に撮影することにして登りは歩くだけにする。ところが登ると下りでルートが異なってしまい、結局は登りルートの写真はほとんど撮影できなくなってしまった。踏跡の濃さから考えて登山道ではなく林業の作業道と思われる。まだ暗い植林帯をジグザグに登っていく。時々目印のテープが出てくるが道筋を外すほどではないし、どのみち上を目指して歩いていれば山頂に出るので、あまり神経質にならずに歩いた。、

作業道を離れて檜植林帯を登る イバラの薄い場所を登る

 

 地図上の510m肩と思われる場所は岩が転がり小鞍部を形成しており、その真ん中を通過する。一度トラバース気味になってから再び尾根をジグザグに登るようになり、標高を上げていくと暗い植林から徐々に明るくなってきたが、間伐で隙間があるのだろうか。やや傾斜が緩むと道は尾根を外れて右に巻き始める。この道は山頂に到達するのか、それとも作業道でこのまま延々と巻くだけなのか判別が付かない。このまま尾根を直登してもいいのだが、あまりにも巻道がはっきりしているので辿ってみることにした。切れ込んだ谷を横断し、そのうち登りになるかなぁと期待して歩き続けるがいっこうに登る気配がないため、適当な斜面をよじ登り始めた。基本的に植林帯なので深い藪はないが、手入れで間伐されているため日当たりが良く、背の低いイバラが密集してジャージのズボンでは刺が素通りして足がチクチクする。この標高だと刺がある藪もしょうがないか。できるだけイバラが少ない場所を選んでジグザグに登り、やがて笹が出てくるがさほど深くなくイバラよりも相当マシだ。

尾根に出る

樹林を抜けた向こうが山頂

貫ヶ岳山頂 梅島へと続く登山道
貫ヶ岳から見た富士山 貫ヶ岳から見た駿河湾

 

 ほどなく太い尾根に乗るが、現在位置が不明で主尾根なのか枝尾根なのか全く分からず、とにかく高いところを目指して左を登っていく。今度は笹もイバラもなく、何となく踏跡があるような無いようなで軽々と歩ける。傾斜が無くなり、暗い檜植林帯で最高点と思われる場所に出るが山頂標識も目印も無い。梅島からまともな道があるはずなので山頂には山頂標識があって当然だろうから、まだ山頂ではないようだ。GPSで確認すればいいのだが、この樹林では電源を入れても衛星受信はほぼ不可能だろうから自分で探すしかない。よく見ると東に延びる尾根の先が明るくなっており、もしかしたらそっちが山頂かと行ってみると植林が切れてカヤトの藪になり、藪をかき分けると山頂標識が立っていた。地形図を持っていなかったので分からなかったが、帰ってからネットで見てみると三角点は最高点と思われる場所より東側に設置されていたのだ。山頂近辺は樹木が伐採されているが、周囲の木を全部伐採してあるわけではないので展望はいいとは言えず、隙間から真っ白な富士山と久々の駿河湾が見えていた。眼下の梅島集落は遙か下であり、そこへと続く道は笹の切り開きを下っていたが予想よりも道は細く、どれほどの整備状況かは定かではない。

西尾根へと下る目印 笹の中に切り開きがある
尾根を下っていく 作業道(巻き道)に出る

 

 下山は西尾根を直接下ることにする。登ってくるときにピンクリボンが見えたのでそれを辿っていくと明らかに踏跡が存在し、笹も多少は刈られているようだ。ルートが2分するが尾根を直進する左側のルートを選ぶ。踏跡は薄いが目印と一緒に続いているのでグングン下っていく。このまま下れば登りで使った巻き道を突っ切るはずなので、進行方向が西から大きくずれないことだけ気を付けながら歩いていくと、だんだん踏跡は薄くなって最後は消失したが、植林帯で藪はないので踏跡は無くても支障はない。そして予想通り巻き道に出た。これでは逆にこの道を登ってきて踏跡がないこの尾根に取り付くのは難しいだろうと珍しく赤テープを木に巻いておいた。よく見ると尾根上には目印が見えることは見えるが、尾根がばらけているのであまりルートらしく見えないなぁ。右に行くと下りなので右に行ったが、どうも登りで見ない風景である。元に戻って下ってきた尾根の先を見るがやっぱり踏跡はなく、巻き道はかなりまともな道なのでこのまま巻き道を辿ってみることにする。あまりに目的地と離れた場所に降ろされそうになったら適当な尾根を下ればいいだろう。

沢を渡る 杉植林帯を下る
ここは少し道が薄い 少し危なっかしい橋
最後はこの尾根に出る 吊り橋で林道に出る。対岸は資材置場

 

 巻き道は延々と続き、水が流れる谷を渡ってその先でやっと巻き道が終わって下り始めた。そして谷を渡り返して谷に沿って下っていくので、どうやら登山口から少しだけ下流に下ったところ降りられそうだ。このルートは尾根を直線的に登るわけではなく巻き気味に登っていくので距離が長くなって効率が悪いが、登りに使ったルートより踏跡が濃く、ルートファインディングに慣れない人にはこっちの方がいいと思う。最後はまともな吊り橋で沢を渡り、石合集落上部の建設資材置場に出た。車を止めた場所はここから50mくらいしかなく、ちょうどいい場所に降りてこられた。

 帰ってから地形図をしげしげと見たところ、以下のような結論に達した。貫ヶ岳山頂真西よりやや北寄りに下る小さな谷(507m標高点の南側)があるが、登りではこの谷の南側の尾根を登り、下りではこの谷の北側の尾根を下って巻き道でさらに北上、最後は貫ヶ岳山頂より北西に下ってから西に向きを変える水線が書かれた谷に絡みながら林道に下ったらしい。全体的に植林帯なので、たぶんどこの尾根を登っても作業道がありそうなので、適当な尾根を歩けば問題ないと思う。


所要時間
駐車スペース−1:09−巻き道を外れる−0:16−尾根−0:22−貫ヶ岳(休憩)−0:58−駐車スペース

 

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