天子山塊前衛 白水山 2006年01月01日

 


 この付近の山では白の付く山が2つあり、この白水山と富士川対岸の白鳥山である。両方とも静岡/山梨県境に位置し富士川の近くにある山だが、白鳥山は安倍山系の尾根末端であり、白水山は天子山塊の尾根末端付近に位置するため稜線はつながっておらず全く別の山系といえるだろう。地形図ではどちらも登山道は無いことになっているが白鳥山は山頂直下まで公園ができて車で入れた。白水山はガイドブックにも出ているしネットで検索してもいくつか出てきたので特に問題は無いと思われたが、記事を読んでいて北ヶ谷戸集落の登山口の位置がイマイチはっきりしなかった。ガイドブックではバス停からまっすぐ山に入っているように見えるが、ネットの記事では集落北側のコンクリート舗装の林道だと書かれている。どちらもあまり詳しい文章説明は無く、現地に行って調べてみるしかなさそうだ。最悪、適当に尾根に取り付いて登ればいいだろう。どうせ一帯は植林で藪は無いだろう。

 買い物を済ませてから日帰り温泉施設「ユートリオ」の案内看板を目印に谷あいを上流に向かう。地形図で上稲子から山に向かって伸びている車道は採石場の道で、一般車は入れないだろう。年末年始は採石場も休業で入口は閉まっていた。もしここが使えれば車で標高を稼げるのだが・・・。北ヶ谷戸集落に入り、こじんまりとした集落が終って一番北側の車道を山に向けて入ると車止めの鎖がかかったコンクリート舗装の林道につきあたった。ここが登山口なら案内の標識があって当然かと思うがそれらしきものは皆無で、それどころか車止めには立入禁止の文字。さて、ここが本当に登山口なのか確証がもてないが、集落の細い路地を通ってみても登山口の案内標識は発見できなかったので、この林道しか怪しいところがないので明日はここから登ることにする。集落の反対側にあるユートリオの駐車場に車を突っ込み(大晦日と元日は休業)一夜を明かした。こうして2007年の新年は静岡で迎えた。

登山口の林道入口。案内標識、目印は無い 林道終点の砂防ダム。左の斜面を登る

 

 朝方は標高の割りに冷え込んで車の中でも-5℃まで下がり、窓の露はガチガチに凍って車のボディーは霜で真っ白になった。帰ってくるころには日が当たって溶けているといいのだが。まだ薄暗い中を歩いて林道入口の鎖横から入り、舗装された急な林道を歩いていく。小さな谷沿いに道が付けられており左手の尾根に乗ればそのうち県境稜線に出られるはずだが、まずは登山口の案内があるところか林道終点を目指して歩く。林道は右手の尾根を乗り越えて一つ北側の谷の右岸に沿って標高を上げていき、最後は砂防ダムで道が無くなり、踏跡が出てくるかと思ったらそんなものは無かった。あ〜あ、登山道があるはずの山で元旦から藪漕ぎか。我ながら私らしい新年の山登りになりそうだ。

斜面に取り付く(暗くてシャッター速度が遅くブレてる) アオキが茂る杉の植林帯を登る

 

 道が無いならどこから登っても同じだが、道があるとしたら集落につながる左手(南側)の尾根に間違いないだろうし、ここからその尾根に向かう斜面は北向きで藪が少ないと考えられるため、南を目指すことにして藪が茂る斜面を適当に登って行く。しかしすぐに植林帯になり棘付きの藪はきれいさっぱり消えてなくなったが、なぜかこの斜面は常緑樹のアオキがやたら多く、立った石楠花の様な藪とまではいかないが時々隙間をかいくぐる必要があるし、視界をさえぎって邪魔な存在だ。杉や檜以外はアオキしか生えていないから、照葉樹のくせにアオキは日当たりが悪いところでも大丈夫らしい。

小尾根を登る 「作業道」かと思ったら登山道だった

 

 樹林の中には獣道があちこちにあるので、できるだけ西に向かうものを拾って徐々に標高をあげていこうとするが、獣道は等高線に沿った巻き道が多く、なかなか標高が上がらないのでルートを外してまっすぐ上を目指し、また出てきた獣道を西に辿って上を目指して外れるの繰り返しだ。やがてアオキが少なくなって植林帯になり、獣道が小尾根を乗り越えるところで尾根に乗り換え、今度は尾根をまっすぐ登ることにする。傾斜は緩やかで一面杉の植林が続き、踏跡皆無だったがそのうちに何となく獣道が現れた。なぜか植林の中に1本だけ大きな桜の木があり、根元には石碑ではないただの石が立っていた。山ノ神といったところだろうか。そしてその先で太い作業道が尾根を横切ったので、今度はそれを辿ることにする。少し行くと杉の木に黄色い目印が巻きつけられており、よーく見るとテープの下にはテプラで「ユートリオ 白水山」と書かれているではないか。どうもこれが登山道らしいが、エアリアマップで言えば赤破線程度で登山道というより作業道の表現がピッタリだろう。

登山道というより作業道 樹林隙間から見た元旦の富士山

 

 この道は尾根上を行くのではなく北側を巻くように付けられているのでどの辺を歩いているのか全く分からないが、このまま行けば白水山山頂に到着するのは間違い無さそうなので安心して歩ける。杉の落ち葉でふかふかの道を辿っていくので、花粉シーズンは歩きたくない山だ。樹林で視界は無いが1箇所だけ隙間を通じて元旦の富士山を望むことができた。本日はじめてまともな案内標識を見てからすぐに県境稜線と思われる尾根に出た。主稜線には踏跡は無く立ち入らないようテープで通行止めにされていたが、ピンクリボンが巻かれた杉があったので全く歩かれないわけではなさそうだ。地形図が正しければここは644m標高点なので県境稜線上も破線が通っているはずだが、実際は利用者が少なく道が薄くなっているのかもしれない。ま、おそらく今まで同様杉の植林帯が続くのだろうから藪は無いだろう。

県境稜線南方向はテープで塞がれている 県境稜線を北上する。まともな道になった
白水山山頂付近だけ腰くらいの笹 白水山山頂

 

 県境稜線上は道がはっきりして登山道らしくなるが、相変わらず杉の植林が続いて全く展望が得られないのが残念だ。なだらかに登った最初の790mピークのてっぺん付近は強風で杉がなぎ倒されて藪っぽくなっており、道も倒木に埋もれて左側を巻いて先に進む。僅かに登ると少し笹が出てくるが藪というほどではなく、その笹原の真中が駆り払われた白水山山頂だった。三角点は無く、標識と倒木を切って作ったベンチが無ければあまり山頂の雰囲気が無い展望皆無の場所だった。正月最初の山は展望がある山がよかったかなぁ。何も調べてこなかったので何も見えない山とは思わなかった。本当ならば真正面にドーンと富士山が聳えているはずなのだが・・・。

 低かった気温も0度前後まで上昇、日当たりが無いのが痛いが、それでも猛烈に寒いほどではなくのんびり休憩できた。元旦に誰か登ってくるかと期待したが、展望皆無で人気が無いようで誰も登ってくる人はいなかったし、下山時も誰とも会わなかった。

県境稜線を僅かに外れると唯一の標識がある 登山道にもアオキが

TVアンテナ

尾根末端で道が薄くなる
砂防ダムを渡る この標識で石垣を登って砂防ダムへ

 

 下山は正しい登山道を最後まで辿って、登山口がどこにあるのか確認することにして、道がジグザグってもショートカットしないでちゃんと歩くことにして下り始める。登りでこの道に出てきた場所を通過、その後も道の濃さはほとんど変わらずに標高を下げ、やっと麓が見えてきた。途中、下の集落までケーブルを引いてあるのだろうか、TVアンテナ群が立っていた。最後は少し踏跡が薄くなって小さな砂防ダムに出て、苔むした橋で対岸に渡って開けた場所に出ると、なんと登るときに歩いた林道だった。出た場所は車止めが見えるくらいの距離で(100mくらい)、最初の右カーブだった。ここには治山事業の看板が立っており、よーく見ると消えかけたマジックで登山口の文字が・・・。赤テープも他の目印も無いし、これじゃ分かるわけが無い。普通は下山後の温泉を考えてこのルートは下りに使うのだろうからこれでも問題ないが、登りに使うときにはみんな見落とすだろうな。せっかくなので標識に赤テープを巻いておいた。この標識の裏の石垣を登った谷沿い奥に砂防ダムがある。

 林道を少しだけ歩いてユートリオ駐車場に戻り、今日も休業のユートリオを後にして御殿山に向かった。


所要時間
ユートリオ−0:06−林道入口−0:21−林道終点−0:28−登山道−0:23−県境稜線−0:22−白水山(休憩)−0:30−TVアンテナ−0:19−林道−0:10−ユートリオ

 

 

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