剣岳北方稜線 池ノ平山 2007年8月11〜13日

 

 

 今年のお盆休みは9日間あるが、仕事の関係で真ん中付近に3日間の休日出社があり、前半と後半に分かれてしまった。まあ、どのみち私の山登りは縦走ではなくピークに登ることが目的で、おまけに残りの2000m峰ではこんな夏場に登るような藪が少ない山は穂高周辺に限られ、そんなところにお盆休みに入ったら人多すぎで登山道も鎖場もテント場も大渋滞で、時期をずらした方がいいだろう。どこに行くか考えたところ、未だ入ったことがない黒部川周辺の偵察を兼ねて黒四ダムから池ノ平あたりを歩いてみようと考えた。ここには黒部別山や丸山などの残雪期に登るべき山がいくつも残っており、雪が無い時期に歩いて雪がある場合の危険度等を把握するのは重要なことだろう。登れそうな山は池ノ平山と、場合によっては仙人山もターゲットになるかもしれない。

 武内さんの話によると剣北方稜線の中で池ノ平山の南北稜線だけはザイルが必要とのことで、ここを通して縦走しないで南北に分けて歩くことで危険度を低下させることが可能だ。ネットで調べた結果、幸いにも池ノ平山は池ノ平小屋から伸びる尾根で比較的安全に登ることができるようで、今回そのコースで池ノ平山を登っておけば後が楽だ。そんなわけで、今回は池ノ平山をメインターゲットとして、他は偵察程度と考えて入山することにした。

 お盆休みの扇沢駐車場の混雑具合はどれほどなのか想像できないので、できるだけ早く現地に入ることにして、会社が終わってから手早く準備を済ませて中央道を走り、豊科ICから毎度のルートで大町に入り扇沢を目指した。ここは今年6月に爺ヶ岳南尾根から鹿島槍+牛首山を往復しているのでロードマップを見なくても迷うことなく扇沢に到着、無料駐車場は9割以上埋まっていたがまだ空いている場所もあり難なく確保、これで一安心。下界のクソ暑さもここまで入ると無縁で快適な車中泊ができた。

トローリーバス ここが黒部川へと下る駅の出口
最初は林道を歩く 大タテガビンと黒部別山

 

 翌朝、始発は6:30なので1時間前にチケット売り場の列に参戦、始発のトローリーバスに座って乗ることができた。お盆初日なので満員御礼、荷物はバスの後ろにトラックが続き、それに乗せるようなシステムだった。某氏が歩いた5kmのトンネルを15分で抜けると黒四ダムだが、内蔵助平方面はダム堰堤方向ではなくバスを降りてトンネルを直進してから左に曲がると出口があり、林道に出た。ここから黒部川に下って左岸に渡るのだ。

ここで林道と分かれて登山道を下る 黒部川を渡る
黒四ダムは観光放水中 黒部川左岸に歩道が付いている
内蔵助谷に入る 大タテガビン、別山南峰が高い

 

 2度ほどカーブを曲がってから林道を離れて黒部川に下っていく。夏道はジグザグに下るので何でもないが、大型連休頃には雪に覆われていると思われるがはたして安全に下れるのかちょっと不安になる。黒部川にはまともな橋がかかっており苦労なく対岸に渡ることができる。ダムは観光放水の真っ最中で細かな水滴がここまで流れてきて涼しくて気持ちがいい。黒部川左岸の旧日電歩道はよく整備され問題はないが、これも残雪期に安全に通行できるのかちょっと心配だ。ネットでよく調べる必要がありそうだ。黒部川を離れて内蔵助谷へと登るルートも沢の右岸の急斜面に付けられており、雪があったら私ではとても歩けそうにない傾斜で、内蔵助谷が雪に埋もれていないと難しそうだ。この辺を歩く時刻は真っ昼間で気温も上昇し、標高が低いこともあって大汗をかかされた。どこかで休憩したかったが適度な広場もなく、内蔵助平の沢を渡るところまで歩くことになった。道はそこそこしっかりしているが両側から草や笹がはみ出して半ズボンでは足が傷だらけになってしまう。

内蔵助平。休憩に最適 内蔵助平から見た丸山西側鞍部

 

 内蔵助平は豊富な水量の沢が流れ、河原で休憩するのにちょうど良かった。ここから丸山が正面に見えるが、丸山西側鞍部経由で登れば丸山は簡単に登れそうだ。まあ、問題は内蔵助平まで入る方のようだが。今日は調子が悪く、大した標高差を登っていないのにバテバテだ。今年の夏はとんでもない猛暑だが、そんな時にこんな標高の低い場所を歩くのが間違っているのだろうか。本当は今日のうちに池ノ平小屋まで入る予定だったが、これではとても歩けそうにないので今日は真砂沢ロッジに予定を縮小して、明日に池ノ平山を往復することにしよう。

枯れた沢を歩く 両側から草が張り出す

 

 長時間休憩してから出発、すぐに真砂岳分岐に出るが、ハシゴ谷乗越方面の道は草に覆われ何とも頼りない。でも少し進むとはっきりする。やがて枯れた沢に出て草から開放され、再び半ズボンで問題なく歩けるようになった。これがハシゴ谷なのだろうか? 両側は笹の海になり、この沢がなければ登山道は笹がかぶってこのクソ暑い時期に歩きたくない道になったかも? 歩けるのは沢筋だけなので道を間違う心配はないが、目印が少ないので本当にここがコースなのか確信が持てないくらいなので、初心者はもっと心細いだろう。

 このまま沢筋が続くかと思いきや、沢から上がって樹林帯をジグザグに上がり始めると傾斜がきつくなり足が上がらなくなり、たまらず休憩する。気温は25度くらいなので日陰で体を休める分には快適だが体を動かすには高すぎて汗だくになってしまう。完全にバテバテになってしまったのは赤牛岳以来だろうか? あのときはそうなるだけの行程のきつさがあったが、今回の標高差はたかが1000m程度で体力の問題ではなさそうだ。やっぱり暑さかなぁ。この標高を選んだのは大間違いだったのか。明日はできるだけ早朝から行動して涼しい時間に登り切ってしまった方がいいかもしれない。

ハシゴ谷乗越 ハシゴ谷乗越から黒部別山に向かう踏跡
ハシゴ谷乗越上部から見た黒部別山 ハシゴ谷乗越上部から見た内蔵助平と丸山
ハシゴ谷乗越上部から見た池ノ平山〜南仙人山 ハシゴ谷乗越上部から見た八ッ峰

 

 這々の体でハシゴ谷乗越に到着、またしても大休止。別山方面にも踏跡が続いているが、すぐ上の樹林が切れた肩で消えており、その先は笹藪だった。やっぱりここは残雪期に来るべき山だった。エアリアマップでは踏跡があるが立ち入り禁止と書かれているが、これじゃ誰も登ろうとは思わないだろう。

 

ハシゴ谷乗越付近から見た真砂沢ロッジ 剣沢を渡る
雪渓が出現 真砂沢ロッジのテント場

 

 これでやっと登りが終わって剣沢に向かって下っていくが、北斜面で藪が少なくなる影響か道が今までより良くなったように感じた。尾根の急な部分は梯子がかかっているが、これは雪が付いていたら登れるかなぁ。やがて尾根から外れて斜面を横切り谷筋を下って行き剣沢に出た。立派とは言えないがまともな橋が架かっており、対岸に渡ってから上流に向けて登り始める。もう登る体力気力とも残り少なくて、沢を高巻きするのがひどくつらく汗だくになって歩いた。1区間だけ雪渓上を歩く部分だけ涼しくて生き返る心地がしたが、再び高巻きルートで大汗をかいて真砂沢ロッジに到着した。まだお昼なのでテントは少なくどこでも好き勝手に張れるが、どこも同じような条件なので石ころが少ない場所を選んでザックを置いて幕営手続きを済ませた。

 テントを張ればやることは無くなるが、なにせ大汗をかいて肌がべとついて気持ち悪いので、雪渓を渡って支流で水が出ているところで濡れタオルで水浴び、これができるから水が豊富な場所は大好きだ。午後になってもなかなか稜線に雲がかからずテントも直射日光に晒されてテント内は暑苦しかったが、とにかく今日は疲れたので入口を開けてテント内で昼寝した。夕方になって酒を飲んで眠りについたが、暗くなってからポツリポツリと弱い雨が降っただけで済んでくれた。

 翌朝、まだ暗いうちに出発、前日歩いていなければ沢沿いのルートを正しく辿るのは難しいが、前日歩いた私でも迷って高巻きルートを見失って沢沿いを歩いた箇所があったくらいだ。明るくなればなんということはないのだが、沢沿いは足跡が残らないので暗闇では難しい。二股に向けて剣沢左岸を下るルートも河原を歩く場所と高巻きする場所とが現れて暗い中では道に迷ってしまう。まあ、高巻きする場所は左岸を歩けない場所なので、歩けなくなったら上を目指して登るとルートが出てくるし、歩けるようなら突破してしばらくすればルートが出てくる。増水する時期はへつる場所もあるようだが今はそんなルートは使わなくて済む。

三の窓へ続く沢を渡る 三の窓に向かって歩く
北俣に入ると雪が消え歩きにくい 北俣を登っていくと待望の雪渓出現

 

 二股に到着、立派な橋で沢を渡ると仙人峠に登るルートと北俣ルートに分かれるが、無駄がない北俣ルートとする。ただエアリアマップでは危険マークがありちょっと心配だが赤点線だから大丈夫だろうと判断した。水が流れる沢の左岸を上がると三の窓雪渓との分岐で雪渓登場、登りが急なのでせっかくだから持ってきた6本歯アイゼンを装着した。しかし三の窓と分かれるとすぐに雪が消えて石ころの河原が待ちうけてアイゼンの出番が無くなると同時に左岸は水が迫って歩けず右岸に渡渉することに。おまけにここから先はほとんど目印が無く忘れた頃に出てくる始末だ。もしかしたら例年なら残雪で河原は埋もれているのかもしれない。500mくらい遡ると雪渓が出てきて渡渉の必要は無くなるしゴロゴロして歩きにくい岩から解放されるし涼しく快適で大助かりだ。でも相変わらず目印は少なくて正しいルートなのか判断できない。地図では沢の中に赤点線が書かれているのでいいはずだが・・・。男女のペアが雪渓を下ってくるのとすれ違って、やっとルートが正しいことが確認できて安心できた。これで池ノ平への取り付き口も大丈夫だろう。

ここから雪渓を抜けて尾根に取り付く 北俣雪渓を見下ろす
池ノ平 池ノ平から見た八ッ峰
池ノ平を見下ろす 池ノ平小屋

 

 その取り付き口は小窓雪渓へと左に曲がるところで、ちゃんと案内が書いてあった。まさか沢を遡るのかと思ったら左の小尾根をグングン登っていき、傾斜が緩むと池ノ平の池と湿原だ。さらに登ると池ノ平小屋とテント場に到着、本当は今日ここに幕営する予定だったのだが・・・・。テントは2張りだけで、小屋泊まりの人だろうか、小さなザックで出発していったので、たぶん池ノ平山だろう。昨日の疲労困憊を考えると、荷が軽いにしても今日は足が軽くすこぶる快調で、ここで荷物をデポしてアタックザックにスイッチして休憩なしで池ノ平山を目指すことにした。水が少ないがエアリアマップでは水場があるはずなので帰りに補充しよう。上部は草付きなのか緑の絨毯が広がっていた。

池ノ平小屋から見た池ノ平山 東を振り返る。少し登ると気持ちいい草付きに

 

 踏跡の濃さが心配だったが小屋前から西に向かう道は立派で赤点線とは思えなかった。ところがすぐに道は尾根を左に巻くようになり、尾根上を行くと思われる細い踏跡が右に分岐していた。エアリアマップでは稜線上に赤点線があるので右手の道を登る。歩いてみると思ったよりはっきりした道で藪漕ぎの必要はなく、背の低い樹林を登っていくと突如として広大な草付きに飛び出して視界が広がる。目の前は緑の草原に真っ青な空、その中の一筋の踏跡は天国への階段か。先行した男性の姿は見えず、どうも巻き道をそのまま行ったらしい。山頂は私一人かな。ドピーカンで直射日光の下だが風があって気温も低くほとんど汗をかかずに快適に登っていく。

東端ピークが目前 東端ピークから西へと続く稜線

 

 やがて傾斜が緩んで山頂かと思いきや、西に向かって緩やかに山稜が続きハイマツが出てくるが踏跡もちゃんと続いている。そしてとうとう山頂に到着、GPSで場所を確認すると、なんと山頂はまだ先で北西となっているではないか! 今回は珍しく池ノ平山山頂の標高も入れてきたが2561mとなっている。今いるピークは2555m峰なので、まだこの先のピークが本物なのだ。さあ、そうなるとそこまで行けるかが問題だ。山頂渉猟ではここの下りで1枚岩が現れて、本物山頂から2555m峰にやってきたパーティーメンバーが「今までで最悪」と言っていた場所だ。著者は簡単にクリアしたようだが私とは岩の練度が月とすっぽんなのであてにはならず、私の力で行けるかどうか現場での判断となろう。こういう場合を想定して15mのロープを持ってきたが必要になるだろうか。

 

池ノ平山2555m峰から見た2561m峰(山頂)

2555m峰巨岩東から薄い踏跡が下る

先にある岩の右を急降下する

 

 まず、今のピークからどう下るかが問題だ。周囲をよく見ると山頂の大岩の東側から右に迂回するように薄い踏跡が下っているのでそれを下るとすぐに稜線に出たが、岩が邪魔して尾根は進めない右は奈落の底に落ちるようなハイマツの急な谷でとても下れそうにないので西側のザレを下ってみたが、こちらはもっと下れそうにないのが分かって途中で引き返した。稜線西側はとても下方を巻くのは無理なガレ方だった。そうなると稜線東側のハイマツの谷を下るしかないので覚悟を決めて踏み込むと薄いながら踏跡があってフィックスロープも垂れていて正しいルートであることが分かった。

踏跡は薄く枯れた時期がルート判別しやすい この下が岩だが残置ロープに掴まらないと写真撮影できない

 

 ハイマツ帯が終わると核心の岩が出てきた。高さは3mくらいで大したことはないのだが、いかんせんいい場所にホールドスタンスが無く、右に回り込めれば簡単に下れそうだが、そこまでの移動にこそフィックスが必要なのだが残置された2本のロープの取付位置がイマイチでその手も危険だ。しばし考えたが、ロープはまだ劣化していなくて頑丈そうだったので、ロープに全体重を預けて岩の上を1mくらいズリ落ちればテラスに足が届くので、ロープにぶら下がることにした。今まで登ってきた山の中でも全体重を残置ロープに預ける場面に遭遇したことはなく勇気が要ったが、やってみると僅かな距離で足が届き一安心だった。でもこれを登るのはやだなぁ。でも降りちゃったのだから登らないと帰れないなぁ。

岩を下ってからはトラバース 2555m峰下りのルート

 

 しかしこの直後にルートを外してしまい、ヤバいトラバースになってしまって岩よりヒヤヒヤした。岩を降りたらそのまままっすぐ下るのが正しいルートで、よく見れば踏跡を発見できたはずだ。帰り道は正解ルートで安全に岩の直下までやってこられた。踏跡を見分けるのが不得意な人は草が枯れた秋に挑戦するのがいいだろう。やっと尾根に出ると傾斜が緩んで安心できる。鞍部でほっとするが、この先の稜線も見上げるような急な登りだ。

鞍部から草付きを急登 この岩は直登が正解
ここは右を巻いたような? ハイマツの藪地帯もある

 

 まずは尾根西側の草付きを草に掴まりながら急登、踏跡はわりとしっかりしている。再び尾根に出ると急な岩場でまっすぐ登るのは難しいと判断して右から回り込んで草付きを登ったが、これがまた猛烈な傾斜で草に掴まって慎重に登った。尾根に出ると今度はハイマツが登場、踏跡がはっきりしないが右手を迂回しているような気もするが、落ちたらイヤなのでハイマツを漕いでまっすぐ尾根を進んだ。小鞍部から再び登りにかかり、薄い踏跡を辿って岩混じりの尾根を登りやすい所、というかこれしか登るルートは無いんじゃないか?という場所を選んで登っていく。ロープは要らないがどこも落ちたら一発アウトなのでずっと緊張が続く。

山頂までもう少し。薄い踏跡を追う 山頂直下から2555m峰を振り返る
池ノ平山山頂(2561m峰)。背景は2555m峰 池ノ平山から見た後立山(クリックで拡大)
池ノ平山から見た北に続く稜線

 

 最後も急な岩混じりのルートを迂回も交えて登り切ると待望の池ノ平山山頂だった。岩に赤ペイントで何か書いてあるが解読不能だった。おそらくこのピークは北方稜線を剣から赤谷山まで通して歩いた人しか登っていないだろう。ネットの池ノ平山の記事は半分くらいは2555m峰のことを山頂と書いているのではないだろうか。地形図を見ると微妙な位置に山名が書かれているし、たぶん地元でも一連の岩峰群を指して池ノ平山と呼んでいるのではなかろうか。目くじらを立てるほどのことではないのかもしれないが、池ノ平から登った場合の難易度は天と地ほどの差がある。ちなみに「日本の山岳標高一覧 1003山」では2561m峰を池ノ平山としている。どうにか本物の山頂に立つことができ、今回の山行の第1目的達成だ。

池ノ平小屋へ下る途中から見た仙人山 池ノ平小屋から見た赤ハゲ、白ハゲ

 

 帰りも全く気が抜けないので慎重に下っていくが、登りでは迂回した岩も下ってみると問題なくてまっすぐ降りた場所もあった。鞍部までは登りよりも緊張せずにやってこられたがこれから先が難関だ。岩直下までは正確に踏跡を辿れたので安全にアプローチでき、ロープを使って下った岩は登りならば残置ロープで安全確保しつつ右に回り込みながら簡単に登れてしまって拍子抜けだった。今回の核心は2555m峰からの下りだった。これさえ通過すれば問題なく2555m峰に到着、やっと心おきなく休憩できた。先行していたと思ったら姿が見えなかった男性が登ってきたので話をしたが、彼は昨日、室堂から入って剣沢雪渓を下って池ノ平まで歩いて小屋泊まり。お盆だがガラガラで静かだったとのことで、さすが黒部奥地だ。今日はこのまま小屋に泊まってマッタリし、明日は黒四ダムに出るとのこと。本当の池ノ平山頂はここではなくあちらに見えるピークだと教えたが、何せルートがルートなので現場を見て行けるかどうか判断してちょうだいと言っておいた。ありゃ一般人が歩けるルートではない。たぶん剣から小窓の稜線よりもずっと人が少ないだろう。小屋から西に延びる道は小窓への道だと教えてもらった。その途中に水場があるのか聞いたが小屋泊まりなので分からないとのことだった。

 池ノ平小屋に戻って小窓への道を行くと谷筋に残雪があって雪解け水が得られ大助かり。これで仙人池ヒュッテまで行っても大丈夫だ。おまけに登れるようなら仙人山も行こうと思う。怪しげな踏跡が池ノ平小屋から尾根を上がっているが、小屋では建物の工事中で屋外に人がいて、こんなルートを歩くと咎められそうで、仙人峠まで登ってから往復できるか様子を伺うことにした。峠に向けて斜面を巻くが、その途中で沢が流れており水が得られた。小屋の水源はこっちであった。

仙人峠に向かう途中に水場がある 仙人峠から見た池ノ平山、赤ハゲ、白ハゲ
仙人峠から見た南仙人山 峠から2190m峰を見る
2190m峰てっぺん。雨量計がある。踏跡はここまで 2190m峰から見た仙人山

 

 峠に到着すると、なんと稜線東側に明瞭な踏跡があるではないか。おそらく冬道だろう。ロープで止められているがこれは一般人が間違って入るのを防止するためだろう。これなら楽勝で仙人山に行けるだろうと楽観視したのだが・・・・。踏跡はずっとはっきりしていて藪をかき分けるような場所はなく順調に高度を上げてピークに到着、すると雨量計が設置されていた。この道はこれの巡視路だったらしい。そしてこの先は笹藪が広がっているだけで踏跡はなかった。漕いでいけない藪ではないが、このクソ暑さでの藪漕ぎはごめんだし、どうせ坊主山目指すときに通過することになるのだから今回はここまでの偵察としておいた。

2190m峰から見た坊主山 仙人峠下から見た白馬岳周辺
仙人池ヒュッテ 仙人池と剣北方稜線。ガイドブックで見る風景

 

 峠に戻って仙人池ヒュッテに向かう。ヒュッテの裏には南仙人山があるが、どうせ藪に覆われて夏場は地獄を見るだろうから今回はパスだ。ヒュッテの前には仙人池があり、写真で見たような池の向こうに剣岳北方稜線のギザギザした姿が並んでいた。よく地図を見ていなかったのでヒュッテから二股に下る道があるのかと思ったら池から南に下る道が無く、地図を開いて見たら仙人峠からだった。これが分かっていれば峠にザックをデポして空身で往復したのに。変なところでミスってしまった。直射日光で暑い登山道を登り返して峠から二股に下る道に入り、思ったより展望がいい尾根を順調に下って二股に到着、沢を渡って水浴びして日陰で休んだ。あとは真砂沢ロッジまで歩くだけなのでのんびりする時間はたっぷりあった。

 あまり汗をかかないようのんびり歩いて真砂沢ロッジのテントに到着、再び支流で水浴び。今日も夕方になっても稜線に雲が湧くことはなく、稜線の向こう側に日が入るまで暑くてたまらなかった。雨が降ることもなく満天の星空が楽しめた。偶然にもこの日がペルセウス流星群の極大日で、明け方には1分に1個くらいのペースで流星を見ることができた。

 最終日は黒四ダムから扇沢に下る日だ。日中の暑い時間に上り坂は歩きたくないので、早朝にハシゴ谷乗越を越えてしまうことにして暗いうちに出発、涼しければ大ザックでも快調に登れる。来年春に戻ってくるぞと誓いながら峠から黒部別山を眺めた。水がないハシゴ谷を下っていくと本日初めてのお客登場、ここは人が少ないなぁ、というか、この時間にここまで来るということは黒四ダム付近で宿泊したということか。その後もポツポツと登ってくる人の姿が続いた。

 黒部川を渡ると関西電力の巡視路監視小屋があって、そこに詰めているオジサンとしばし話した。毎日内蔵助沢出合まで巡視するとのことで、この小屋には毎朝6時にやってくるとのこと。ただし、一般登山者と違って黒四ダムに設置された管理用エレベータを使用するとのことだった。内蔵助沢出合までの間では丸山沢が最後まで雪が残るとのことで、雪が多い年は7月くらいまで雪があり、渡れずにロープで黒部川河原に下って再び登り返すのだそうだ。ネットで記録を調べると大型連休にここを歩く人もそれなりにいるが、丸山谷の雪渓を渡るのに怖い思いをしたという記述は見たことが無く、雪慣れた人には問題ない程度なのだろうか。10分以上立ち話して体を休めてから駅まで登り返した。


所要時間
8/11
 黒四ダム−0:17−黒部川を渡る−2:03−内蔵助平(休憩)−0:03−真砂岳分岐−0:44−標高約1800mで休憩−0:25−ハシゴ谷乗越(休憩)−0:37−剣沢−0:23−真砂沢ロッジ(幕営)

8/12
 真砂沢ロッジ−0:49−二股−0:54−池ノ平取り付き−0:33−池ノ平小屋−0:59−2555m峰−0:27−池ノ平山頂(休憩)−0:19−2555m峰(休憩)−0:28−池ノ平小屋(休憩)−0:29−仙人峠−0:10−2190m峰−0:06−仙人峠−0:12−仙人池ヒュッテ−0:11−仙人峠−0:42−二股(休憩)−0:48−真砂沢ロッジ(幕営)

8/13
 真砂沢ロッジ−1:25−ハシゴ谷乗越−0:58−内蔵助平(休憩)−1:04−黒部川−0:12−休憩−0:35−黒部川を渡る−0:36−黒四ダム

 

 

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