中ア中部前衛(木曾) 糸瀬山 2007年11月14日

 


 糸瀬山は三沢岳を起点として蕎麦粒岳で風越山への尾根と分かれて南西に伸びる尾根の末端近くにある。登山道の有無は知らないがネットで見たことがあるので、少なくとも全く登られない山ではないようだ。大川入山の翌日に、東京に戻る途中に位置するので登ることにした。本当は黒覆山を考えていたが、駒ヶ根近くなので東京からのアプローチは悪くは無く別の機会でいいやとパスした。

糸瀬山登山口 登山口前路肩に駐車した

 

 この付近の地形図は持っていないのでエアリアマップを見てみると、糸瀬山の登山口は南西尾根途中の林道らしく駐車場マークもあり、思ったより登られている山のようだ。ここへは田光、越坂、上郷の3方向から車道があるらしいが、まずは最も近い越坂から入ることにした。国道を離れて伊那川沿いに走り、橋を渡ったところで右に入って進むが、なかなか越坂へ入る左の道がない。そのまま発電所まで達してしまい、これじゃ田光から入るのが早いと方針変更で工事中の道を上がっていくが、いつまでたっても斜面を右に巻く道のままだ。地図を見るとこのままでは越百山登山口まで行ってしまうではないか。どこかで分岐を見落としたはずで、注意しながら戻るとそれらしき林道入口を発見したが、工事中で通行止めとのこと。地図を良く見て読図で位置確認するとこの林道で間違いないようだが、通行できないのでは戻るしかない。再び地図を見て発電所を過ぎてから右の細い道に入って進むと自然に右に曲がって太い道に変貌、峠を越えて下っていく。ここが越坂に違いなく峠から右に林道が上がっているので入ると集落を通過して舗装が切れ、やがて雨で溝が掘れて普通車で通過は難しくなった。このまま車を置いて歩こうかとも思ったが、まだ寝るには早いので最後の上郷からの道を上がってみることにした。いったん国道に出てから右に入る場所を探しながら走ったら右斜めに上がる道を発見、しかし気づくのが遅れて行き過ぎてしまいUターン、なんとここには糸瀬山登山口の案内標識があるではないか。これは思ったよりもまともな登山道がありそうだ。あとは標識に沿って標高を上げていくと、標高860m付近で左手に登山口の標識を発見、道路の反対側に登山届けの箱があった。エアリアマップでは駐車場があるはずだが見当たらず、林道の幅が広いので路側に駐車して寝た。ここまで舗装が続き、このルートがメインのようだった。あとで分かったことだが、地形図表記と異なり登山口は越坂林道合流点付近ではなく、大きなS字カーブを上がった先の標高860m付近にあった。

暗い植林帯を登り始める はっきりした登山道がある
自然林に変わり尾根を越える こんな看板が続く

 

 翌朝、朝飯を食べて出発、これだけまともな標識があるのだから登山道は心配なさそうだ。最初から少し笹があったがわずかで無くなり、暗い檜植林帯を登っていく。これだけ密生していると日が差し込まないので笹どころか草も生えない。ルートはしっかりしていて見失う心配は無く、植林帯を抜けると紅葉した自然林となって周囲が明るくなった。頻繁に「イトセ」と釘で穴を開けた文字が書かれた鉄板がぶら下がっており、ますます安心できる登山道だ。

巻き道 1070m鞍部

 

 小さな尾根を乗り越えると、そのまま尾根を進むのではなく、緩やかに登りながら巻き始めた。どこまで巻き道が続くのか、まさか知らないうちに作業道に入り込んでしまったのではないかと疑い始めたが、例の「イトセ」の看板が時々登場するので間違ってはいないらしい。やがて小さな尾根が登場し、ここでトラバースが終わって尾根を登り始めた。もちろん左折の案内看板もあった。尾根が終わりに近づき主稜線付近になると右にトラバースして鞍部手前に出た。地図を見ると1090.5m三角点峰は通らずに南から巻いて1070m鞍部に直接出たらしい。鞍部付近は紅葉真っ盛りであった。

最初は笹はない 雲海に覆われた木曽谷。背景は阿寺山、奥三界岳
視界が開けた場所で南側が見える 樹林の隙間から見た木曽御嶽
樹林の隙間から見た乗鞍 樹林の隙間から見た穂高連峰

 

 ここからはほぼ主稜線上を歩くことになる。標識はあちこちにあるので心配無いが、入山者数は予想よりも多くはないようで登山道というより踏跡に近い濃さである。まあ、これだけ顕著な尾根なら外す心配は無いだろうが。標高が上がると落葉した樹林の隙間から遠くの山並みが見えるようになり、真っ白な木曾御嶽や乗鞍岳、穂高が見えていた。南方向のみ樹林が開けた場所は1,2箇所あって、南木曽岳や恵那山が見えていた。

笹が登場するがほんの序の口 落葉樹林帯を登る

 

 さらに標高を上げると徐々に低い笹が現れるが、明瞭な踏跡が続いているので藪漕ぎではない。しかし刈り払いの形跡は無いので、人間や動物が歩いて地面が踏み固められて笹が生えられない広さのみ笹が消えているようだ。刈り払いをしなくてもこれくらいの筋が保てる程度の入山者数はいるようだ。しかし標高が上がるに従って徐々に笹が濃くなり、踏跡の幅は変わっていないと思うが、上から笹が覆いかぶってルートが不明瞭な場所が多くなってきた。それでもちゃんと踏跡はあるので、昨日の黒覆山と違って足への抵抗の大きさは大したことはない。しかし、朝露で微妙に濡れているので黒覆山よりもズボンがよく濡れた。

笹が深くなるが踏跡は続く 東側がガレた場所で中アの展望が開ける
ガレから見た安平路山 ガレから見た空木岳、西岳

ガレから見た中ア

 

 尾根が左に曲がって傾斜が緩んだ後、再び登りがきつくなると右手の視界が開け中アの展望が広がった。地形図の標高1800m付近のガレマークのようで、今回のコースで唯一展望を楽しめる場所であった。なおも笹原を登ると時々雪が現れるようになるが、昨日の大川入山より格段に少なく、申し訳程度しか残っていなかった。

糸瀬山山頂 巨岩に三角点が埋まっていた

山頂北側に立つ「のろし岩」 ハシゴ+タイアチェーン+鎖でてっぺんまで行ける
山頂直下展望台から見た木曽谷 山頂直下展望台から見た白山

 

 ガレが終わると再び展望皆無の樹林帯になり、傾斜が緩むと苔むした巨岩が点在する場所に出た。この付近は笹が無くなって登山道がどこについているのか分からないが、逆に言えばどこでも歩けるので適当に進んだ。すると花崗岩の巨岩の一つに三角点が設置されていた。通常、三角点は地面に埋められているが、ここは地面より高い岩をくりぬいて穴を開け、そこに三角点が埋まっているという、珍しいパターンだった。山頂標識は無く、展望も無くちょっと寂しい場所だった。そこから少し西に「展望台」と書かれた場所があったが、木曾谷を見下ろすことができるが、御嶽や乗鞍、北ア方面は樹林で見ることはできなかった。北に進むと高さ10mくらいの巨大な花崗岩があり、はしごがかかっていたので登ったが、途中からは車のチェーンの縄梯子、その先は1本の鎖がてっぺんに伸びていた。鎖は岩にへばりついて握りにくく、ここで落ちたらタダではすまないので登るのは途中で諦めた。安全確保用の短いロープでも持っていって挑戦したい場所だ。たぶんこの岩の上なら360度の大展望だろう。

 山頂一帯は展望が無いし日当たりも無く露で濡れたズボンが冷たいので、日差しがいっぱいのガレまで下って休憩することにした。下り始めてすぐに単独行の男性が上がってきたのにはちょっとビックリ。こんな平日の早朝に登る人がいるんだなぁ。しかも私より出発が後で私とほとんど変わらない時間にてっぺんまで登るのだから、相当の健脚だろう。いろいろ聞きたいこともあったが、挨拶を交わしただけですれ違った。

 ガレで日差しを浴びながらの休憩は気持ちよかった。一番近くに見えるのは南駒から空木岳であったが、空木から西に飛び出した目立たない尾根の西岳が懐かしかった。あそこも最近武内さんが登ったらしい。武内さんは中三沢岳も登ったようで、たぶん中ア2000m峰は完全制覇したのではなかろうか。

 下りでもしかしたらルートを外すかもと心配したが、尾根も踏跡も明瞭で無事登山口に戻ることができた。帰りの温泉は権兵衛トンネルを抜けて伊那市の羽広温泉「みはらしの湯」。その名の通り正面に南アルプスがずらりと並ぶ風景は良かった。


所要時間
6:43登山口−(0:31)−7:14 1070m鞍部−(1:36)−8:50糸瀬山−(0:02)−8:52のろし岩9:03−(0:04)−9:07ガレ9:37−(1:08)−10:45登山口

 

 

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