中央アルプス中部前衛 黒覆山 2007年11月17日

 


 黒覆山は田切岳から東に続く尾根上にある山で、以前は登山道があったらしいが今は無い。そういえば田切岳に登った時に廃道があったが、あれの続きの道が尾根上にあったらしい。上部は森林限界を超えているので道形も残っているのだろうが、下部の笹地帯は埋もれて無くなっているだろう。ネットで調べると「伊那谷の山」にしっかりとあり、シオジ平自然園から続く林道を歩き、黒覆山南を巻く廃林道から南尾根に乗って登ったとのこと。下りはオンボロ沢を下ったようだが、今の時期は気温が低下して沢沿いの石は凍って渡渉困難な場合があり、往復とも南尾根の笹藪漕ぎを計画した。

 シオジ平の道がどこまで入れるのか飯島町観光関連のHPを見たが通行止めの記述はなく、避難小屋まで入れそうだ。あとは路面凍結が無いのを祈るばかりだ。広域農道で飯島町役場とは反対に西に入り、途中から細くなるがまっすぐ進んでいくとキャンプ場があり、その案内看板にこのまままっすぐでシオジ平に至ることが書かれていて一安心。しかし、工事の標識があって車両通行止めと出ていてどのくらい林道歩きが伸びるのか心配になるが、その箇所は問題なく通過でき、その先で一般車通行止めの標識と車止め、そして駐車場が現れた。シオジ平まで約1.6kmだそうだ。ま、このくらいは許容範囲か。

マイカーはここまで。頻繁に工事大型車両が通る 駐車場から見た黒覆山南尾根

 

 翌朝はそこそこ冷え込んで今シーズン初めてフロントガラスが凍った。お湯を沸かして食事を取って出発。林道を歩いていると工事の車が上がってきて越百山登山口近くの工事現場まで乗せてもらえてラッキーだった。山登りをやっている人で、治山工事の関係でこの一帯は色々行っているらしい。最近は日本鹿やカモシカが増えすぎて食害が酷く、リンゴばかりか松茸も食われてしまうとのことだった。カモシカがキノコを食うとは知らなかった。彼らは松茸のカサの部分だけ食べて茎が残るので松茸があったことは分かるそうで、足跡でカモシカの食害と判明するそうだ。山林は面積が広すぎて電気柵を巡らすわけにもいかず、深刻な被害だそうだ。

林道から見た中ア 中小避難小屋
中小川登山道を過ぎてもいい道が続く 黒覆山を巻く廃林道が見える
工事現場分岐を過ぎても林道が続く ここから廃林道
オンボロ沢で林道が分断されている 小さな橋でオンボロ沢を渡る

 

 再度林道歩きを再開、登山口の工事現場を通過してそのまま林道を歩く。この先でも工事が行われているようで普通車でも問題なく走行できる路面で、やがて右に下る林道が轍が濃く直進が薄くなって最近車があまり入っていない林道歩きになって落ち着く。そしてオンボロ沢を渡る直前でその林道も廃林道に変わり、オンボロ沢はどう林道が横断していたのか分からないくらいの一面の河原だった。たぶん大規模な土石流があって巨岩が埋め尽くしてしまい、車の通過が不可能になってこの先は廃林道化したのだろう。沢はさほど水量は多くなく場所を選べば渡れそうだったが、せっかく木が渡してある橋があったので利用させてもらった。

オンボロ沢より先 明らかに刈り払いされている
廃林道は所々崩壊しているが危険箇所はない 中ア主稜線は雲の中

 

 その先は人が歩ける幅だけ筋がしっかりした廃林道が続く。明らかにここ数ヶ月に刈り払われた形跡があり、何らかの調査等で入ったのだろうか。いくらなんでも黒覆山の登山道ができたわけじゃないよなぁ。林道は崩壊箇所もあるが遠山林道のような危険箇所はなく、踏跡を淡々と歩くことができた。周囲は唐松植林帯でその下は一面の笹で、この分では笹藪漕ぎ確定だ。

黒覆山南尾根に立つ標識 なんと刈り払いがあった!

 

 予定の南尾根が分かるかちょっと心配だったが、現場に着くと顕著な尾根を林道が乗り越えるので間違うはずもなかった。標高は約1680mだった。そしてその尾根上には明瞭な刈り払いと目印があり、尾根上下両方に伸びているではないか! このまま山頂まで続くとは思わないが、意外な展開でこれまたラッキーが続いた。さあ、どこまで楽させてくれるだろうか。

そろそろ刈り払い終点 刈り払い終点。標高差100mを楽させてもらった

 

 ほぼ完璧な刈り払いで体に触れる笹は無く、倒木処理もされ、尾根直上にまっすぐ付けられている。いい傾斜なので快適に標高を上げるが、これが藪だったら大いに苦労するだろう。傾斜が緩む標高約1780mでついに刈り払いが終わったが、ロボット雨量計でもあるかと予想していたが何も無い。ただ周囲の木のあちこちに赤テープが付けられている。この付近を伐採して何か施設を作るのだろうか? 何にせよ林道から標高差100m、残距離600mまで楽をさせてくれたのだから感謝感謝の道だった。


古い目印が時々現れる 獣道も無い笹藪が延々と続く

 

 いよいよ笹藪漕ぎ開始だが、中央アルプスの笹は茎が細く手で簡単に押し分けられるので、茎が絡んでおらずまっすぐ立っている部分を選んで手で押し分けながら登っていく。まだ密度も濃くはないので手を使わなくても充分登れるレベルだ。ただ、笹の上に僅かに雪が付いており、手で押し分けないと体が濡れてしまう。やがて雪が多くなって手でかき分けても濡れるようになったので上だけゴアを着た。基本的に笹は乾いているので足下が濡れることはなかった。

 どこまで登っても唐松+笹の組み合わせが続き、写真を撮ろうにも同じ風景が続いたので2枚しか撮影しなかった。唐松樹林を通して左手の山並みが見えるが樹林ですっきりしないのでこれまた撮影してもしょうがない。古い目印が時々現れるが、自分の目印も頻繁に付けながら上がっていく。そこそこ顕著な尾根なので下りで迷うことはないようにも思えるが、尾根の印象は登りと下りではずいぶん違うので目印は付けておいた方がいいだろうとの判断だった。古い目印は3種類くらいあったが、新しい物は皆無だった。ついでに尾根が広いので踏跡はおろか獣道さえ皆無で、大木場ノ辻のように道無き尾根の藪漕ぎだ。ま、笹藪の濃さは大木場ノ辻には敵わないが、あそこは鞍部周辺だけだったのがこっちは延々と続くのがいやらしい。

黒覆山山頂(1910m等高線ピーク) 三角点峰で見つけた笹に埋もれた人工物

 

 山頂が近づくと傾斜が増して笹の密度も上昇、だんだん歩きにくさも上昇だ。尾根がばらけて下りがやばいので、まじめに目印を付け続ける。とうとう傾斜が無くなって平坦部に出るが、山頂標識はおろか目印の類も皆無で山頂なのか分からない。こういう時のGPSでスイッチを入れると残距離約10mで間違いなく山頂だった。一面の笹の海の中に唐松が点在する今までと全く変わらぬ光景であった。背丈の笹なので展望は全くない。本当に昔登山道があったとは信じられないほどで、痕跡は無かった。地形図を見ると三角点はこの先の微小ピークなので笹をかき分けて行ってみるが、ここも凄い笹藪で、あちこちかき分けて探したが三角点を発見することはできなかった。対空標識でもあれば発見できるのだが。その代わり、メジャーが巻かれた低い木枠を発見。測量に関係する物件だろうか。GPSの示す山頂に戻って笹に埋もれて休憩した。

廃林道を横切って刈り払いが続く南尾根を下る しばらく刈り払いが続くがそのうち消えてしまう

 

 下りは素直に南尾根を下ったが、明瞭な尾根だったので目印を気にせず歩いても外すことなく林道に出た。林道に出てもこの先に刈り払いが続いており、もしかしたらこのまま尾根末端まで続いていて自然園に行けるかも知れないと欲を出して歩いてみたのだが、途中で尾根を外れて右に巻きはじめ、林道途中で見た崩壊地最下部で刈り払いが終わっていた。その先は赤テープは続くものの再び笹藪漕ぎで、巻き気味に登っていくと小さな沢に出て笹藪から解放され、穏やかな沢を登っていくと廃林道に出ることができた。オンボロ沢から2つ目の沢だった。素直に林道を歩けば10分とかで到達できたのが1時間近くかかってしまった。ま、今日はラッキーが2つ続いたから今回のアンラッキーでちょうどバランスがとれるか。

 あとは林道歩きで駐車場に到着。着替えて温泉に入るべく駒ヶ根に向かった。

 

 

所要時間

6:41駐車場−(0:33 ほとんど車同乗時間)−7:14中小川登山口−(0:31)−7:45廃林道化−(0:03)−7:48オンボロ沢−(0:22)−8:10黒覆山南尾根−(0:16)−8:26刈り払い終点−(0:53)−9:19黒覆山(1910m等高線)−(0:07)−9:26黒覆山三角点峰(三角点捜索)−−9:37黒覆山9:55−(0:17)−10:12刈り払い終点−(0:09)−10:21廃林道を横切る−(0:41)−11:02廃林道に出る−(0:08)−11:10オンボロ沢−(0:28)−11:38中小川登山口−(0:10)−11:48中小避難小屋−(0:29)−12:17駐車場

 

 

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