大菩薩前衛 大峰 2008年3月1日

 


 今週も引き続いて大菩薩の東へ続く稜線へと向かうことにする。そろそろこのエリアの杉花粉も飛散し始める頃で、今週辺りが最後のチャンスかもしれない。花粉シーズンは雪山にでも行かないと死んでしまう。残ったピークでは白草ノ頭と大峰の稜線があるが、まずは大峰から攻めることにした。地形図では北東側の上和田集落から破線があるのが最短コースであるが、これが尾根上を行くのではなく北側斜面を巻くように登っていくルートなので、例のごとくラッセルが心配だが、それ以前にこの道が今でも存在するかの方が心配だ。まあ、道が無かった場合はこの尾根の一つ北側の尾根、つまり1400m峰から東に伸びる尾根に取り付いて登るのが効率的だろう。破線のように巻いているルートの場合、どこを歩いているのか現在地を把握するのはほぼ不可能なので、道が無い場合は早い段階で尾根に取り付くのが得策だ。

 今回は中央道で大月まで行き、松姫峠から小菅村へと抜ける国道を北上、地形図を見ながら上和田集落を探しながら走行、すると道の右側に特徴のある形の学校が登場しすぐに分かった。ただし集落の中は道が狭く車を置く場所が無いので、集落を過ぎて広くなったカーブの余地に車を置いて歩きだした。幸いにして朝方で気温が低く杉花粉はまだ飛んでいないようだ。ここは麓なのでオレンジ色に染まった杉の木があちこち見られた。

尾根末端の神社入口から登り始める 神社
畑を横切って尾根に向かう 明瞭な道が登場

 

 集落入口まで戻って右手の階段を登ると地形図に描いてあると思われる神社に到着、このまま尾根を上がろうとしたがすぐ上部は人家なので左に巻いて畑の中から尾根に取り付いた。すると明瞭な巻き道が出てきた。この道の終点は人家前の道路のようで、どうやら地形図に出ている破線らしいので辿ってみることにする。もし間違っていたとしてもこの上部に道があるはずなので適当に斜面を登って尾根を目指せばいいだろう。塩ビパイプが出てくるところまでは明瞭な道だったがその先があやふやになり、杉の植林帯に入ると再びはっきりしてくる。そして地形図とは異なり沢を横切ってお隣の尾根に乗り移っている。この尾根を登っても山頂には行けるが少し遠回りになるので、道を離れて沢沿いの薄い踏跡を辿ることにした。

道はこの丸木を渡って右の尾根に移るが沢を直進した アイズクリームの置物があるワサビ畑
東尾根末端先から左の斜面を登る 地形図の破線と思われる道に出た

 

 石垣があり以前はワサビ畑があったらしいところを通過、薄い踏跡はなおも続き今度はまだ生きているワサビ畑が登場した。意味不明のアイスクリームの置物が場違いだ。まだ先に踏跡が続いており遡っていくと沢が2分するところに再びワサビ畑が登場、地形図を見ると標高700m付近らしい。ということは目の前の尾根が東尾根末端であるが、ここからでは超急傾斜で露岩もあって登れない。適当なところから東尾根を登るか、それとも適当なところから道があるはずの尾根に登ってみるか考えたが、とりあえずは正式な道を探してみることにして左手の斜面に取り付いた。檜の植林帯で間伐をしてからさほど日数が経っていないようで、枝を伸ばした伐採された木があちらこちらで行く手を塞いでいる。迂回したり頭から枯葉を浴びたりしながら突っ切ったりと藪漕ぎ並みの苦労を強いられて標高を上げていくと、斜面を巻く明瞭な道が出てきた。どうやらこれが地図の破線らしい。


1400m峰南側が見える 道が怪しくなってきた

 

 地形図の表記どおりに緩やかに登りながらも延々と巻いていくので現在地の把握ができないが、雰囲気的には予定の方向に向かっているようだ。しかし小さな枯れた沢で道がはっきりしなくなり、雪が積もっているせいかその先に道の雰囲気は感じられなかった。少し戻って左上に分岐する細い踏跡を辿ったが進むに従って今までより格段に頼りなくなり、雪が積もって地面が見えない影響が大きいがほとんど地形や木の間隔からルートを見出すような状態になってしまった。

道が消えてから東尾根へと水平移動 東尾根。唐松植林が中心だが藪っぽい

 

 沢を過ぎて右手の杉植林帯の尾根を巻きながら登っていくといよいよ道の雰囲気が怪しくなり、傾斜が緩んだ一帯でとうとう消えてしまった。こうなれば東尾根に乗り移るタイミングなので、進路を右手に変えてトラバース、谷を一つ越えて急斜面をよじ登って植林帯に取り付き、さらに右へと進路を変えていくと、今までの杉や檜の植林帯から唐松の植林帯へと変貌し、無事に東尾根直上へと出た。

 これでやっとまともなルートを歩けると思ったら、唐松帯は日当たりがいいようで今までのように足元には草木が無い状態とは反対に、背の低い潅木類が生えて進路を妨害している。できるだけ樹木の隙間を選んで高度を上げる。雪は尾根直上と北斜面にはあるが南斜面はきれいに消えているので、できるだけ南斜面を選んで歩いた。北側の雪の上には人間の足跡はないが鹿や小動物の足跡がたくさん残っており、餌の少ない冬でも活発に動いているらしい。姿は見えないけど。

東尾根を登る 1400m峰
 大月市の標識では1400m峰を大峰山頂としている 1400m峰に布KUMOがあった

 

 灌木に邪魔されながらも登りつつけるが休憩無しで歩き続けているのでさすがに足が重く、雪が続く場所では頻繁に立ち止まって息を整える。山頂まではさほど遠くないのでここで休憩するのもなんだから、山頂まで頑張ろう。傾斜が緩むと灌木が切れて標識が登場、やっと主稜線に到着して登山道に出たようだ。地形図では今いる1400m峰まで破線が書いてあるが、今回のルートのように本当に道があるかどうか現地に行かないと分からないので1400m峰で道が出てくるとは期待していなかったので大助かりだ。大月市で設置したと思われる標識まであるのでまともな道に違いない。標識を見る限りでは大樺ノ頭からずっと登山道が続いているようだ。

なだらかな尾根に鹿の足跡が続く 1400m峰を振り返る

 

 ここの西隣の大峰への下りにかかる直前に傾いた標識があり、そこにはこの1400m峰が大峰となっていた。地形図とは異なり地元ではそうなのだろうか? こっちは山名事典や地形図準拠の山登りなので先に向かう。鞍部から先は稜線上でもコンスタントに雪が続くようになり、表面はクラストしているが中は締まりきっておらず一歩踏み出すとズボッと踏み抜いて疲れるので、今まで出番がなかったワカンを装着。この時期では毎週ワカンの出番があるな。もちろんワカンがないと歩けないわけではないが、ワカンがあった方が楽に歩けるのは間違いない。登山道はあっても人間の足跡はなく、代わりに1頭の鹿の足跡が山頂に向かって点々と続いており完全なラッセルではないのも助けとなった。ただ、やっぱり鹿の蹄の面積と人間の足の面積は違うので帰りに自分の足跡の上を歩くのよりはずっと足が重い。

 山頂まではなだらかな稜線が続き積雪量が増える。一面の銀世界なので無雪期の道の付き方は不明であるが、稜線が広い場所では木の間隔からして稜線直上ではなく北側に寄ったところに付いているらしい。しかし北斜面は日当たりが悪く潜り方が深いためできるだけ南寄りを歩いた。部分的に笹が生えているところもあったが大した密度ではない。しかし、これだけ平坦な稜線だと結果的にはどこを歩いてもボコボコ踏み抜いた。

稜線真上は笹の部分もあるがルートは北を巻いている 地形図の大峰山頂。三角点は雪の下

 

 なだらかなピークを登り切ったところに標識が立っており、山頂名は記されていなかったが棒の部分に手書きで「泣坂ノ頭」と書かれていた。また、1400m峰方向を指して「大峰」と書かれている部分に「ここが」と「三角点もあるよ」の文字を追加して「ここが 大峰 三角点もあるよ」との案内になっていた。樹林で展望は無いが少し広くなって雪が消えた部分もあって休憩にはちょうど良かった。土曜日なので誰か登ってくるかと思ったが山頂は無人のままだった。

 下山は東尾根をまっすぐ下ることにした。帰りに気づいたが1400m峰に「布KUMO」がぶらさがっていた。武内さんもここを歩いたようだが、私のように大峰しか歩かないようなケチなことはやらないで、楢の木尾根を全部縦走するくらいのことをやっているだろう。

東尾根を下る 熊棚あり
1頭の熊が作ったのか? 熊が木登りした爪痕

 

 1400m峰からしばらくは登りで体験した低い灌木が邪魔して腕のあちこちに擦り傷が追加された。やがて唐松樹林が終了し、南斜面は杉や檜の植林帯、北斜面は自然林の尾根に変貌すると藪から解放されて歩きやすくなった。標高が下がると雪は徐々に減っていくが下りは雪がある方が膝への負担は少ないので、北側に寄った場所を歩いて滑りながら下っていった。その北側は自然林であるが、見上げると芦沢山で見たような熊棚があちこちにあるのが見える。熊棚がある木の1本の幹を見ると熊が登った爪痕が残っていた。でもやっぱり雪の上には熊の足跡は無いからまだお昼寝中のようだ。でも3月中には復活するかな。

露岩も混じるが危険箇所はなかった 下部は自然林。でも傾斜がきつくなる
最後は尾根を左に逃げる 東尾根末端。写真では緩やかに見えるが実際は歩くのは無理

 

 歩きやすい尾根も途中から傾斜がきつくなり、下部になると複雑に分岐して本当の末端を見つけるのが難しくなってくる。地形図を見ると左手(北側)の谷へ下る斜面の方が傾斜が緩いので、逃げるなら左だ。それに登ってくるときに尾根末端は露岩混じりで下るのは無理そうだと思えたので、最後は尾根を離れた方がいい。適当なところで左の谷へと下ると僅かで尾根の末端にあるワサビ畑に出た。やっぱ最後は尾根を下るのは無理そうだった。この先は登りで歩いたルートなので問題なく下り車に到着、まだ花粉は飛んでいないようで鼻水が出ることも眼のかゆみが出ることもなかったが、来週はもうダメだろうな。まだ雪が締まってないこの時期にどこへ逃げるか考えなくては。


所要時間
 7:15上和田−(0:28)−7:43沢筋を登る−(0:11)−7:54東尾根末端−(0:05)−7:59左の斜面を登る−(0:11)−8:10道に出る−(0:22)−8:32道が消失−(0:45)−9:17東尾根に乗る−(0:36)−9:53 1400m峰−(0:26)−10:19大峰10:41−(0:22)−11:03 1400m峰−(0:45)−11:48東尾根末端−(0:16)−12:04上和田

 

 

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