奥日光 唐沢山 2008年3月17日

 


 三ヶ峰、峰山から下山後、次は近くの唐沢山に向かう。この山は丸沼北部の四郎岳から西に伸びる尾根上にあるが登山道は無い。ちらとネットで検索を掛けたが登ったという記録は発見できなかったが、後日「群馬の重鎮」のHPを見たところ登っていた。やっぱりこだわる人しか登らないような超マイナーな山だろう。

西側から見た南尾根 南尾根末端は法面で登れない

 

 重鎮氏は南東の林道から登っているが、今回は取り付きの標高は下がるが途中に余分なピークが無く帰りは下り一辺倒で最短コースとなる南尾根から登ることにした。どのみち雪がある時期なのでどこから登っても大差ないだろう。ただ、残雪期にしては早い時機で雪は締まっておらず、南向きの尾根を登ったほうが締まっている可能性はより高いといえる。でも唐沢山のアプローチは車道がある南側しか使えないけど。白根魚苑を通過して大きく国道が2度うねった先が南尾根で、雪が残っているが手前に駐車余地があったのでそこに車を入れた。南尾根末端はコンクリート吹きつけの法面で登れないので、少し手前からフェンスをよじ登って取り付くしかなさそうだ。

 翌朝、気温は高めで車のフロントガラスの水滴は凍ることがなかったが、残雪が固く締まるためには朝の気温は低いほどいいのでうれしいことではない。昨日のように帰りの時間帯には気温が上がって踏み抜きの連続だと下りとはいえ体力を搾り取られるので困る。せめて登りだけでも踏みぬかないといいのだが。ザックの背中にスノーシューを縛り付けて、地形図を見た限りでは使う可能性は非常に低いが念のために12本爪アイゼンとピッケルを持っていくことにした。

この角から取り付く 上部は唐松植林帯
雪が少ない斜面を登る 尾根に乗るとほぼ無雪。藪無し

 

 尾根末端手前でフェンスが終了するところで石垣をよじ登り斜面に取り付いた。まだ標高が低く南向きの尾根なので残雪は斑であるが、唐松植林帯で藪は薄く全く問題ない。それどころか踏み抜く半端な残雪があるよりも無雪期の方が登りやすいくらいだ。斜めに登っていき尾根直上に出ると雪がさらに少なくなり歩きやすくなった。踏跡や作業道は見あたらないが今まで同様藪はなく歩きやすい尾根だ。人間は歩かなくても鹿かカモシカは歩いているようで真新しい足跡が残っていた。できるだけ雪がないところをつないで標高を上げていく。植林帯が続き景色がすっきり見えないのは残念だが、樹林を通して背後には笠ヶ岳が見えていてる。

徐々に雪が増えてくる ここでスノーシュー装着
熊棚多数有り 熊の木登り跡
ここにも熊棚 左の木の熊の爪痕

 

 標高1370m付近で残雪が続くようになったので背負っていたスノーシューを装着、しかし残雪量は少なくて気温も高めのため場所によって踏み抜き、雪が締まっていそうな場所を選んで歩いていく。尾根直上よりも東寄りの方が沈まないようだったが、それでも踏み抜きが多発したので結局は雪が消えた地面を多く歩くようにしてしまった。この付近も笹藪は無く落ち葉の地面なのでスノーシューが壊れる心配はない。雪が増えてくると徐々に雪が締まって快調に登れるようになり一安心だ。昨日の疲労があるのでペースはゆっくりで、時々立ち止まって息を整える。そんな時に上を見ると抜けるような青空の他に熊棚の存在に気づいた。いつの間にか唐松植林帯を抜けてブナ科を中心とした落葉広葉樹林に変貌していたが、こんな尾根は入り込む人間はいないだろうから野生動物の楽園だろう。昨日よりも熊棚の数は多かった。そのうち2本ばかりのミズナラ?の幹を見てみると、ブナのようにスベスベの木肌ではないので熊の爪痕はわかりにくいが、表皮がはげて白っぽくなっている場所が点々と続いている様子が見られたので、間違いなく熊が登った跡だろう。今年は山域に無関係に熊棚をよく見かけるが、たぶん今までも気づかなかっただけで、本当はあちこちの山に熊棚はあるのだろう。

 南向きの尾根なので残雪が増えても地面が顔を出している場所も多く、そんな所は相変わらず笹藪は薄く、少なくとも1582mピークまで無雪期でも笹は問題無さそうだった。それより上部は雪で覆われていたので様子は分からないが、たぶん笹の激藪は無いと見た。誰か無雪期に挑戦してみて欲しい。

1582mピーク 1582mピークから見た唐沢山
1582mピーク北鞍部は唐松植林帯 登っていくとシラビソ中心の自然林に

 

 1582mピークはなだらかでだだっ広く、ここで進路を右に変えるので帰りに直進しないよう紙テープの目印をぶら下げた。樹林が開けて日当たりが良く雪は良く締まって全く沈まない。ここにも熊棚が見られた。緩く下ると左から唐松植林帯が上がってきて尾根上も植林帯になるが、登りにかかって少し高度を上げると再び自然林に変貌、今度は早々と落葉広葉樹林からシラビソが中心の薄暗い樹林帯で、日当たりが悪いので雪の締まりも悪くスノーシューでも踏み抜いて足を抜くのに苦労する。もう山頂まで標高差100mを切っているというのに時々足を止めて心拍数を落とさないと体が持たない。樹林の隙間が広がったところは雪が締まって歩きやすいのだが、尾根上はなかなかそういう場所が長続きしない。

まだ登る 唐沢山山頂
KUMO健在 唐沢山から見た日光白根山
唐沢山から見た錫ヶ岳、笠ヶ岳 唐沢山から見た三ヶ峰

 

 いったん傾斜が緩むがまだここは手前の肩で、この後はダラダラと水平移動から緩く登るが、傾斜が緩い場所の方が雪の締まりが悪かった。我慢しながら登り続けると何となく先が明るくなってきて山頂が近い雰囲気は出てきたが同じような傾斜が続き、突如として傾斜が緩み最高点に出た。そして予想もしなかった木製KUMOが付けられており、間違いなく唐沢山山頂だった。樹林に覆われているが日光白根方向のみ視界が開け、丸沼スキー場の白い帯が伸びていた。笠ヶ岳までは見えているが昨日登った三ケ峰は樹林で邪魔されてすっきり見えなかったのは残念だ。反対側の尾瀬の山々は濃い樹林の向こう側だった。山頂標識はKUMOのみでGさん標識さえないのだから訪問者の少なさがよく分かる。古びた目印は2種類ほどかかっていたが、赤い色がほとんど抜けて年月を感じさせる。KUMOも下手をすれば20年以上前のものだろう。太陽の下でしばし休憩してから下山にかかる。

 帰りは気温の上昇で雪が緩んでスノーシューでも踏み抜き連発、スノーシューに湿った重い雪が乗るので下りとは言え引き抜くのに足の力が必要で予想以上に疲れてしまった。雪が少なくなってからはスノーシューを脱いでツボ足にしたが、潜る深さは格段に深くなっても足を引き抜くのに必要な力は激減でかえって楽になり、膝程度までならスノーシューを脱いだ方が良かったようだ。尾根末端付近では地形が広がり登ってきたときより東に下ってしまったが、こちら側は法面ではなくすんなり国道に降りることができた。唐沢バス停のすぐ横だったが、こんな人家も何も無いところにバス停がある意味があるのだろうか? あるとしたら釣りくらいだろうなぁ。


所要時間
6:20車−(0:35)−6:55 標高1370mでスノーシュー装着−(0:35)−7:30 1582m峰−(0:45)−8:15唐沢山8:42−(0:27)−9:09 1582m峰−(0:29)−9:38国道−(0:05)−9:43車

 

 

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