立山剣周辺 大猫山 2008年10月13日


 大猫山の登山道がいつできたのか知らないが、たぶん私が最初にブナクラ峠を歩いたときはまだできていなかったように思う。当時は大猫山に登るには小ブナクラ谷を登るのがパターンだったように思う。数年前には登山道ができていたことは知っていたが、大猫山は地形図にも日本山名事典にも名前が記載されていないので登ろうとは考えていなかったが、いつのまにか地形図に名前が記載されたので登る機会をみつけて出かけたいと考えていた。

車がいっぱいの馬場島 ブナクラ谷への林道入口。一般車通行止めだが黙認状態
林道終点の堰堤下駐車場 駐車場脇の大猫山登山口

 鍬崎山の翌日は大猫山と決めていたので、上市町で食糧調達と燃料補給、おまけに洗車して番場島に向かった。さすが3連休で夕方でも番場島は大賑わいで、その先で左の工事用道路に入り、ダートを進んでいく。ここは基本的に工事用道路なので一般車は通行止めだが、実質上一般車の通行が黙認されている状態なのでそのまま入った。しかし、ここで事故等のトラブルがあると本当に通行止めになってしまうだろうから注意して通行されたい。一般車はおまけで入れると認識し、工事用車両の邪魔にならないようにしたい。なお、この3連休も日曜、祝日とも工事作業をやっていたので、冬以外はほぼ毎日やっているようだ。

 道路を上がっていくとポツポツと駐車している車が見られるようになり、こりゃ今日の日中は堰堤下の駐車場は満杯だったのだろう。しかしもう日没間近の時間であり、今なら空きは充分あるだろうからそのまま進んでいくと、案の定2,3割の入りだった。でも明日も満杯になるだろう。まだポツポツと下ってくる人がおり、真っ暗になった6時半に大猫山方面から下ってきたパーティーが最後だった。残った車は山の上でテント泊の人だろう。

 翌朝は少し風があるが満天の星空で快晴が期待できる天候だった。朝飯を食ってどうにかヘッドランプが不要な明るさの5時半になって出発。続々と車が上がってきてもう駐車場は満杯で林道路肩に並べ始めていた。さて、これらの人が向かう先は大猫山か、ブナクラ峠から猫又山か、それとも赤谷山だろうか。

急だが立派な登山道が続く

ブナクラ谷が低くなっていく


 駐車した車に隠れてしまった登山口から登り始める。道のグレードが不明で朝露に濡れた草に覆われてロングスパッツが必要ではなかろうかと心配していたが、想像とは逆にエアリアマップの赤実線クラスの1級の登山道だった。踏跡の濃さからして利用者の多さが窺える。登山道が付いている尾根はえらい傾斜で、無雪期の今はいいが雪が降り積もったら恐ろしくて登れないだろう。たぶん滑ったら止まらないと思う。しかし、そんな傾斜だからこそ上り下りとも効率はいい。普通に足を動かしていれば普通以上のペースで標高を稼げるだろう。ついでにこの傾斜だったら、膝を支える筋力が強い人ならば下りは登りの半分の時間しかかかりそうにない。

黒部別山でも見たのと同類の目印

立山杉もある


 ブナを中心とする落葉広葉樹が多いが、昨日の鍬崎山と違って小さな木が多い。途中、立山杉の区間があるが、それを過ぎると再び広葉樹林に入る。標高が上がると紅葉が進み、ブナの黄色が鮮やかだ。フィックスロープがかけられた急斜面も混じり、樹林の隙間から見えるブナクラ谷がグングン低くなり、対岸の赤谷尾根も低くなっていく。剣岳から北方稜線のゴツゴツが見えているがモロに逆光で写真はうまく写らず残念だ。大窓から差し込む朝日は窓の名にふさわしい光景だった。

大窓から差し込む朝日。まさに「窓」 1枚岩にはフィックスロープ
1500m付近から見た上方 笹が出てくるがちゃんと道がある

 標高1450〜1500mで細い尾根の水平移動となり現在位置がはっきりするが、今日持ってきた地形図「毛勝山」はこの辺りは範囲外なのであった。これだけ明瞭な道なら途中で迷うことは無いだろうから問題ないが。再び登りにかかると徐々に笹が増えてくるが、刈り払われて邪魔なほどではない。ただ、体に全く触れないほど刈られているわけではないので、Tシャツで歩いていると笹の葉で腕に小さな切り傷がつくので、暑いが腕カバーを装着した。なお、暑いとはいっても気温は10度以下であり、休憩すると寒いくらいだが。標高が1800mを越えると再び傾斜が緩み、笹に覆われた小ピークが点在する肩のような場所に出た。これが大猫平らしいが今のところ草つきは見られない。ここで先行していた夫婦が休憩に入ったので追い越す。この登りで私が追いつけないのだから健脚と言っていいだろう。

1857m峰から見た大猫平と大猫山 大猫平
後立山の唐松岳(左)〜五龍岳(右) 大猫平から先は草付きを登る

 大猫平はもう少し先なのかと思って笹のピークを越えるとその先に草付きと池塘が点在する場所があった。この一帯が大猫平らしい。普通、こういう場所は広い平地なのだが、ここはポコポコと微小な高まりがあって湿地が分断されて小さな区画に分かれている。日影は霜で真っ白のままで小さな水溜りは氷が張っていた。これが今シーズン初めて見えにする氷結であった。池塘があるくらいなので道が湿っているが、鍬崎山よりはずっとマシだ。

大猫平が低くなっていく 2重山稜を西に進む
2重山稜から尾根に乗るポイントに布KUMOがあった ここを登ると一般に大猫山とされる場所
稜線から見た釜谷山〜大明神山

 大猫平まで来れば山頂は近く、森林限界を超えて笹や草付きに変わった斜面を登りきると道は左に曲がり、2重山稜の谷を進んでから北側の尾根に乗る。このまま直進すると三角点方面だろうが踏跡は気付かなかった。そしてこの屈曲点には思いもかけず新しい「布kumo」がかかっていではないか。少なくともここ数ヶ月以内に付けられたもののように見え、たぶんこの秋に武内さんは登ったのだろう。山頂でもないこんなところにあるということは夜に登って下山用の目印として付けた可能性が高い。

大猫山山頂の一番奥 布KUMOがあった
大猫山草付きには紫の布KUMOが 大猫山から見た猫又山への稜線
大猫山から見た大日岳付近 大猫山から見た後立山、坊主山
大猫山から見た鍬崎山 大猫山から見た白山
大猫山から見た赤谷山〜小窓
大猫山から見た立山〜剣岳周辺のパノラマ展望写真(クリックで拡大)

 低いシラビソの中を進むと再び草付きに出て、次に登ったピークが2070m小ピークで一般的に山頂とされている開けた場所だった。突き当たりの矮小なシラビソにいくつも目印の赤布がかかっており「布kumo」も混じっていた。草付き近くにも目印が付けられていて、ここには紫色の「布kumo」がかかっていた。通常はかわいらしいキャラクターが描かれた布地だが、なぜかこれだけは違っていた。今まで使っていた布地を使い切ったのかも? 武内さんが認定したのだからここを山頂としていいだろうが、地形図の山名の書き方は微妙なので標高2100m付近まで尾根を往復した。この辺は顕著なピークは無いが微妙な盛り上がりはありどこが山頂とも決めがたい地形で、付近一帯を大猫山としていいだろう。一般的な山頂に戻ると次のお客が到着、少し休憩して猫又山方面に歩いていった。私も時間があれば周回コースを歩きたいが、それをやってしまうと東京へ帰るのが真夜中になってしまう。途中で追い越した夫婦も到着し、紙に「猫又山」の文字をデカデカと書いて記念写真を撮影していた。そうそう、大猫山には山頂標識が無いので元気がある人は看板を作って担ぎ上げるといいだろう。私は地形図で予め山頂を確認してきたのでここが山頂でもいいかと判断したが、一般的な登山者ではそこまで考えているか不明で、ここを通過してしまうかもしれない。

 なんだかんだで山頂で1時間ほど過ごして下山開始。ポツリポツリと登ってくる人を見かける。その中で剪定ばさみを持ち腰には小型鋸を下げた男性と遭遇、その姿からして登山道のメンテナンスをしている人だと直感したがその通りだった。帰ってからネットで調べたら富山県が発行する冊子に掲載されていた男性の顔写真と同じで「ブナクラ峠修復グループ」の水口さんだった。猫又山、赤谷山、大猫山の登山道だけでなく、私が今年の大型連休に登った駒ケ岳までの登山道も開設したのだという。男性の話では18年経過すると言っていたが、メンバーの高齢化が進んで今では「実働部隊」は水口さんを含めて2名しかいないとのこと。現状では全てのルートの維持をするのもままならず、近い将来は今の状態を保つのも難しくなるだろうとのこと。今までの経験からすれば今の入山者数なら道が消えることはないだろうが、笹が生えた区間は数年も経過すると道の両側から笹が被さるようになり「笹のトンネル」状態になろう。今のような快適な登山道を保つためには絶えずメンテが必要なのだ。私も2000m峰はあらかた登って残った山は気合を入れる必要があるような山ばかりで、毎週そんな山に行くわけにもいかないので、ボランティアで登山道の整備もいいなぁと考えているが(ちなみにうちの会社は有給休暇とは別にボランティア活動等で休暇が取得可能になった)、南アルプス北部なら実現可能だが、いかんせん富山では無理だ。新しいメンバーが加わって今後も良好な登山道の状態が続くことを願いたい。

 立ち話で火照った体が適度に冷えて快調に下り駐車場へ。もう11時近いのでこれから登り始める人はいないし下山する人もいないので駐車場は無人で静かだった。着替えを済ませて林道を下り始めると車2台とすれ違ったがこれから入山であろうか。馬場島も大賑わいが続いており、下ってくる登山者の姿も見られた。

 ここから東京までが遠い。安房トンネル経由だと上高地の帰りの時間帯にぶち当たって狭いトンネルでバスと大型車のすれ違いが困難で渋滞するのは確実なので、距離は長くなるが糸魚川経由とする。こちらは渋滞は無かったが中央道の勝沼から先は渋滞から逃げられない。小仏トンネル先頭で久々に30kmの渋滞で八王子まで3時間以上のアナウンスを聞いて大月で降りて旧秋山経由で迂回し、いつものように大月ICから1時間で相模湖ICへワープ、ここまで来れば比較的車は流れていて渋滞を抜けるのに10分ほどしかかからなかった。約450kmの運転は山歩き以上に疲れた!


所要時間
5:33堰堤下駐車場−−7:35大猫平−−8:10大猫山(2070m小ピーク)9:03−−9:18大猫平−−9:5010:04−−10:38堰堤下駐車場

 

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