大菩薩前衛 白草ノ頭、カネツケノ頭 2008年11月30日


 大菩薩連嶺から東に延びる長い尾根は何本かあるが、今年冬に登った長峰のある尾根と以前登った大マテイ山のある尾根に挟まれた尾根は未踏であった。ここには地形図記載の白草ノ頭と山名事典記載のカネツケノ頭の2山があるが、地形図には破線は描かれていない。ここはダム建設により尾根末端付近はダムに沈んでしまい、尾根に取り付く手段は限られている。国道の位置も付け替えられており、様子がかなり変わってしまったようだ。私が持っている地形図は古いのでネットで地形図を閲覧すると、葛野川ダムと深城ダムに挟まれたところに葛野川を渡る橋が2か所書かれており、上流側の橋から枝尾根の一つに取り付けそうだ。この尾根以外は急すぎて登るのが大変そうであるので検討しなかった。

 近場で時間がかからない山なので後回しにしていたが、今週は土曜日が出勤日で休みは1日だけであり、半日で戻ってこられるこの尾根がちょうどいいだろう。明日から12月で山間部では場所によっては道路の凍結が考えられるので冬タイヤに履き替えたいところだが、作業時間がとれなくて夏タイヤのままなので気温が下がる早朝を避けて前夜に現場に入った。目的の橋はすぐに分かり、頑丈なゲートで塞がれていた。国道を少し上がったところに駐車場があったのでそこで寝たが、予想よりも気温が高く窓の水滴は明け方になっても凍りつくことはなかった。

取り付いた尾根
頑丈なゲートからスタート 橋を渡ると携帯基地局
携帯基地局横から裏手の尾根に取り付く 最初は笹があるがすぐに薄くなり消える


 朝飯を食って出発。谷あいなので日差しはまだ山の向こうだが霜が降りないくらいの気温なので寒くはない。橋を渡った先には携帯電話の基地局があり、その裏から斜面に取り付いた。最初から笹がお出ましでこの先どうなることかと心配したが、すぐに笹が消えて下草の無い落葉広葉樹林帯になり歩きやすくなった。落葉には縦横無尽に鹿の足跡が付いている。

尾根に乗る

広い道が尾根を横断


 尾根に乗ると露岩交じりだが特に危険箇所はなくグングン標高を上げると等高線に沿うような形で立派な道が尾根を横断する。これがどこから上がってきているのか不明だが、帰りに調べてみよう。ただ、この道をそのまま進んでも最終的に尾根に上がるのか不明なので、このまま突っ切って尾根を直登することにする。今まで皆無だった目印もここを起点に尾根上に点々と見えているので、通常はここから尾根に取り付くようだ。

落ち葉に覆われた歩きやすい尾根を登る

尾根が広いので下りは注意


 落ち葉に覆われた尾根を踏み跡とも獣道とも判別が付かない薄い足跡を辿っていくが、藪があるわけではないので筋は無視して歩きやすいところを歩けばいい。尾根は広く筋はジグザグに上がっているが、時々尾根から外れて等高線に沿って巻いたままの箇所もあり、あまり当てにせずに尾根を登る。この尾根は広く、獣が歩くルートも分散してしまうようだ。登りはいいが広いので下りはいやらしいが、目印があるので迷うことはなさそうだ。傾斜がきついぶん効率よく高度を稼ぎ、そろそろ東尾根に出るかというところで再び尾根が広がるが、目印が適度にあるので下山も心配なさそうだ。今日は目印が必要になるような山ではないと考えて目印はほとんど持ってこなかった。

東尾根に乗る 939.6m三角点峰
植林帯に入る 熊棚
熊の木登りした爪痕 山の神


 東尾根に乗ると踏跡が出てくるかと思ったが、今まで同様藪が無い落ち葉に覆われた落葉広葉樹林が続いていた。左に曲がって小ピークに立つと939.6m三角点が埋まっていた。ここで植林帯に入り、間伐された檜が横たわったまま放置されて歩きにくいので少し尾根を外して歩く。何となくあるような無いような踏跡は無視して歩きやすいところを拾いながら進む。植林の中に自然林も交じり、この付近の山域でよくみられる熊棚が目に付いた。緩やかに高度を上げると祠があり、ここから先で急に道がはっきりしている。どうやらここが山の神らしい。右手から踏跡が上がってきているが、ダム堰堤辺りから登ってくるのか、それとも今は水没してしまった道なのか。

明瞭な道が登場 1143m峰へと登る
1143m峰 笹藪登場。しかし数分の距離


 しばらく道らしい道が続くが傾斜が出てくる頃にはいつの間にか消失して再び落ち葉に覆われた自然の尾根道に変わるが、ネットで調べると正式な?道は尾根上ではなく北側を巻くようにつけられているようだった。まあ、尾根上を辿っても別に問題は無いが。1143m峰を通過すると再び植林帯に入り、僅かに下って水平移動になると笹がお出ましだ。北から迂回すれば笹は消えるだろうと思ったら広範囲で笹が繁茂しており、仕方ないので藪に突入する。狭い尾根なら獣道が期待できるが広い尾根なのでルートが分散して細い獣道が入り乱れ、適当につなぎながら進む。最初はけっこう密度が濃かったがすぐに低密度になり、数分で笹区間を突破すると右手から刈り払われた道が尾根上に合流してきた。いったいどこから登ってきたのだろうか?と疑問だったが、ネットで調べたらこれが山の神に続く道だったのだ。わざわざ無駄な藪漕ぎをしたことになるが、まあそれも楽しみの一つか。

尾根北斜面から立派な道が上がってきた そのまま刈り払いが続く
熊棚が多い これも熊棚


 この後はずっと刈り払われた道が続き、ルートファインディングとはおさらばで淡々と歩けばいいだけだった。ただし現在位置を把握するためにたまに地形図を見たり高度計を確認してカネツケノ頭を通過してしまわないよう注意する。GPSがあるので心配なら使ってもいいのだが、さほど複雑な地形でもないし道もしっかりしているので読図だけでいいだろう。この尾根はブナやコナラ、ミズナラを中心とした落葉広葉樹林が続き、上空を見上げながら歩いているとたくさんの熊棚を発見できた。木の幹を見るとつめを引っ掛けて木登りした跡もくっきり残っており、ダムのような人工物のすぐ近くの山でも熊の生活圏というのが何だかアンバランスだ。おそらくまだ冬眠に入っていないと思うが、この高さでは木の実も無くなっているだろうからもっと低い場所に下りているだろう。

カネツケノ頭

まだ刈り払われた道が続く


 緩やかに登りきったピークがカネツケノ頭でピンクリボンが巻かれた木が立っているだけで標識類はなく、僭越ながら赤テープにマジックで書き込んでおいた。濃い樹林では無いが木が邪魔で展望は悪い。少し進むと唐松植林帯になって北側の展望が少し良くなり、僅かに白くなった雲取から小雲の稜線、雪が見えない石尾根や飛龍などが大きかった。まだ奥多摩の2000m弱の高さでは雪はほとんど無いようだ。

カネツケノ頭付近から見た奥多摩の稜線

白草ノ頭へと高度を上げる ワイヤーが多数かかった木
山頂直下で道は南に巻くので尾根を直進 白草ノ頭山頂
白草ノ頭から見た南方面の展望


 僅かに下って刈り払われた道を緩やかに登り登り返すと何本ものワイヤーロープが結びつけられた木があり、唐松植林作業当時のものだろう。本格的に登りにかかると刈り払いは左に巻くように尾根を逃げていくので、こちらは尾根を直進する。南側は自然林、北側は植林で下は薄い笹でさほど問題なく進むことができ、笹と植林のピークに出たがあるはずの三角点が見当たらない。よ〜く地形を見ると南に飛び出した笹藪が僅かに高いように見えたので笹を掻き分けてそちらに出ると笹の中にぽっかりと空間が出現し、真中に三角点が埋もれていた。山頂標識はなくテープにマジックで山名が書かれているだけだったが、もしかしたらここは最近地形図に山名が記載されたのだろうか。藪に囲まれているが南側だけ視界が開け、黒岳から大樺ノ頭にかけての稜線が見えていた。ここで少々休憩。

南へ下る踏跡

巻道から山頂方面を振り返る


 帰りは南に続く踏跡から刈り払われた道に出てみた。山頂直下ははっきりした道だったが少し下ると藪が消えてどこでも歩ける植生になるので踏跡ははっきりせず、歩きやすいところを適当に下ると明瞭な道に出た。ここから山頂まで1分程度だろうから、立ち寄っても大した手間も時間もかからない。あとは登ってきた道をそのまま戻る。刈り払いが尾根から外れて左に逃げるところは笹薮の尾根をそのまま突っ切り、笹が消えれば面倒なところはもうない。多くの目印に導かれて尾根分岐を見落とすこともなく、携帯基地局裏手の尾根に入り、明瞭な巻き道が尾根を横断するところで巻き道を右に進み、その後は道なりに下山するとジグザグに斜面を下って最後は携帯基地局に出た。登りでは基地局裏から尾根に取り付いたが、この道は基地局から南に向かって斜めに登っており、よく見るといくつかの目印が付けられていた。まあ、尾根を登っても大した藪は無いので問題なかったが。

 駐車場に戻ろうと橋を進むとゲートは開いていた。着替えを済ませて車を走らせるとあちこちで銃猟の軽トラを見かけた。あ、もうそういう時期なんだな。禁猟区以外ではそっちに気をつけないと。

所要時間
6:39駐車場−−6:42携帯基地局−−6:51巻き道を横切る−−7:13東尾根に乗る−−7:18 939.6m三角点−−7:38山の神(標高980m)−−7:59 1143m峰−−8:22カネツケノ頭−−8:42白草ノ頭8:56−−9:09カネツケノ頭−−9:27 1143m峰−−9:37山の神−−9:52 939.6m三角点−−10:07携帯基地局−−10:11駐車場

 

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