伊那東部 不動峰、鉢伏山 2008年12月07日


 旧高遠と旧伊那市/箕輪/辰野の境界には1000mを越える山並みが並んでおり、北端は守屋山で南端は高遠市街地手前で消滅する。その主脈上には不動峰と鉢伏山の2山があり、地形図では破線が描かれているが今でも道があるのか不明である。ちなみに帰ってからネットで検索したらどちらも1,2件しか登山記録を発見できないくらいのマイナーな山であった。地域的、山深さ的に特に事前調査は不要と判断し地図だけ持っていったのでそんな現状は知らず、標高及び地域的には少し笹薮が出てくる可能性があるが、あまりにひどい藪では無いだろうと想像した。

 登るルートだが2山は近いので別々に登らずに周遊コースがいいだろう。山脈東側の中条集落もしくは西側の棚沢川沿いの林道の適当な場所から取り付くかどちらかがいいと考えたが、中条からだと集落に近くて車中泊だと怪しまれるので西側から登ることにした。計画では1126m標高点を通る破線からまず不動峰に登り、主尾根を鉢伏山まで縦走して、西側に適当に下って林道に出て車に戻ることとした。

 風巻峠から下山後、高遠で温泉入浴と買い物を済ませ、棚沢沿いの道を北上、種苗栽培所の建物を過ぎると鹿?の食害防止用ゲートがある。昼間は開放されているようだが夜間は閉めておくようにとの注意書きがあり、施錠はされていない。ようは夜間は出入りする時だけゲートを開け、通過したら閉めておけばいいようだ。ゲートは大型動物の侵入は防止できるがサルや狸、狐くらいの大きさの動物は簡単に下から潜れるものなので、きっと鹿の侵入防止用だろう。この付近も鹿の食害がひどいようで、ゲートの両側は電気柵が続いていた。

 ゲートを通過して少し進むと林道は橋を渡って右岸側に移るが、その先に駐車余地があったので今宵の宿と決める。この付近ではここしか車を置けそうな場所はなかった。この夜は前夜と違って冷え込んで車内でも-5℃まで低下し、ペットボトルのウーロン茶が凍っていた。

林道入口。廃林道状態 しかしその先はマシ
林道終点 林道終点から見た右の尾根

 翌朝、よく冷え込んだ中を出発、林道を下って橋を渡って少し下ったところにジムニーなら入れそうな細い林道が分岐しているのでそれに従う。破線は少しの間この林道が通っている谷を歩いてから尾根に取り付いているので、もしかしたら右側に踏跡入口があるかもしれないと期待して注意しながら歩いたがそれらしき筋は確認できなかった。まあ、地形図の道が廃道化していることはよくあることだが。どこか適当なところから右の尾根に這い上がってもいいのだが、斜面には笹が見えているのでできるだけ林道を使って距離を稼いだほうがいいと判断し、そのまま林道を進む。谷に沿って上がっていくがやがて林道終点となり、その先には踏跡はなかった。

灌木藪に覆われた唐松植林を登る 中央に獣道があるが分かるだろうか
小尾根に乗ると藪が薄くなる 西尾根に乗ると薄い踏跡あり

 さて、そうなると右(南)の尾根に適当に上がるしかない。幸い、この辺の斜面は唐松植林帯で笹薮は無く細い潅木の藪なので、隙間を縫って登ればいいだろう。藪はさほど濃くはないが棘付きの木があるのと間伐された唐松があちこちに転がって進路を邪魔するのが鬱陶しい。適当にジグザグに登っていくと明瞭な獣道が右斜めに上がっているのに遭遇し、それを利用させてもらう。野生生物はうまく障害物を避けてルート取りしているので今までより格段に歩きやすくなり、小尾根に登りつく。藪が薄くなって何となく踏跡なのか獣道なのか判断が付かない筋があり、それを辿って破線が描かれている尾根を目指す。ほどなく目的の尾根に出ると笹薮の中に薄い踏跡があるようだがほぼ廃道状態と言えよう。うまい具合に尾根に飛び出た標高から下部は一面の笹薮だが上部は部分的に笹はあっても長続きしないようだ。

笹交じりの尾根を登る

笹の中の踏跡ど真ん中に鹿の角があった


 尾根上にも獣道があるのでそれを拾いながら登っていく。まだこの標高ではほとんど雪は無く、昨日舞った雪がごま塩のように僅かに残っているだけであった。それを予想して今日はアイゼンもピッケルもワカンもスパッツさえも持ってこなかった。獣道を辿ってふと地面を見ると、枯れ枝のようだが微妙に異なる物体を発見。なんと久しぶりの鹿の角だった。尾根のど真ん中に落ちているのだからほとんど登る人がいないことがわかる。そういえばここまで目印類は一切なかった。

1220m肩から上部は藪も薄く目印もある 樹林の隙間から白銀の北アが見えた。これは穂高
樹林の隙間から見た中ア

 1220m肩で突如として目印出現、よく見ると南から踏跡が上がってきているようだ。これは地形図で今いる尾根南側の谷に描かれている破線の続きかもしれないが正確なことは不明だ。でも1220m肩から今まで全く見かけなかった目印が出てきたのは間違いない。この先にも点々と目印が続いているが、実際は見通しが良い顕著な尾根なので目印が無くても下れるだろう。まあ、見通しがいいと言っても唐松植林帯なので落葉したこの時期でもすっきりとは見えない。白い中アも樹林越しなので写真撮影する気分では無く、北アも植林に邪魔されてしまっている。隙間から見えるのは乗鞍、槍穂だった。

信大農学部の標識が出てきたがまだ主稜線ではない

次の太い尾根との合流が主稜線


 この先は笹が出現することは無く、淡々と尾根を上がっていけば良かった。1360m肩では信州大農学部の林班界標識が出現、これを見ててっきり主稜線に到着したのと思い込んでしまう。私が登ってきた尾根から見ると直角に交わるような太い尾根なのでそう思い込みやすいだろう。その先に進むと同じように太い尾根に直角に合流、ここで完全に現在位置が分からなくなった。いったい今いるのはどこだ? 周囲の様子を見るとこの尾根が最も高い場所でありどうみても主稜線だ。太陽の方角からしてもおよそあっている。不動峰は右のはずなのでそちらへと向かう。ただこの稜線は不動峰も含めて顕著なピークがないので地形から現在地を判断するのが非常に難しく、不動峰にあるはずの三角点が最も有望な目印となる。

稜線上はいい道が続く これを登ると不動峰
不動峰山頂。三角点は見当たらず 不動峰の御料三角点

 稜線上は明瞭な道があり藪は皆無だった。信州大の演習林らしく信大の標識が多い。また、麓の小学校が管理する区画もあるようで?小PTA林なる標識もあった。なだらからピークを越えて水平移動し、最後にちょこっと登った盛り上がりに三角点らしき標石があったがよく見ると三角点ではなく境界標石らしかった。もう一つの標石は少し小ぶりでよく見ると御料三角点だった。しかし肝心な三角点が見当たらない。樹林越しに周囲の地形を見るとここより南には高いピークはないし、東に太い尾根が延びているので間違いなく不動峰と思われた。念のためにGPSの電源を入れて確認すると間違いなくここが不動峰山頂だった。三角点があるはずだと周辺を探してみたが発見できなかった。いったいどこに設置されているのだろうか? 山頂標識は無く地元小学校PTAの標識が2つあるだけだった。

藪皆無の歩きやすい尾根が続く 時々目印あり
樹林の隙間から見た鉢伏山 日差しがあって-6℃でも暖かい
樹林の隙間から見た北ア。立ち位置を変えて撮影したので実際はこれだけいっぺんには見えない(クリックで拡大)

 さて、次は鉢伏山だ。稜線は大きなアップダウンはないのでのんびり縦走だろう。この稜線に出た1381m峰を越え、なだらかなピークを通過すると最低鞍部向けて一気に下る。地面は水分が凍りついて固くなっているが表面が氷で覆われているわけではないので滑ることはない。その後は小さなアップダウンを繰り返しながら緩やかに標高を上げていき、どこが最低鞍部なのかよく分からなかった。いつのまにか東斜面は落葉広葉樹の自然林となって日当たりが良くなり体感温度は暖かいが温度計の表示は-6℃に張り付いたままであった。西斜面は赤松の植林帯だ。尾根上は幅は狭いがまるで防火帯のように木が無くて歩きやすい。

鉢伏山山頂 鉢伏山唯一の山頂標識
鉢伏山から見た南ア 西に下る斜面

 登りきったところが意外に狭い鉢伏山山頂で、小さな4等三角点が埋設されており、東側の低いところに古ぼけた手製の山頂標識がかかっていた。山頂を示すものはその1つだけで、尾根上の道の良さを考えると思ったよりも静かな山頂だった。頭上は開けて青空が見えているが周囲は樹林で樹木の隙間を通してどうにか景色が見える程度だ。東側はどうにか入笠山から仙丈ヶ岳が見えている。頭上から南の尾根上は木がないので今の時間は日当たりが良く、気温は相変わらず-6℃のままだったが体感温度は快適だった。

鹿道を横切って西に向かう いきなり笹が始まる
植林帯は笹がなく歩きやすい 再び笹藪に突入

 さて、問題の下りだ。ここは北上して1420mから南西に派生する尾根を下ってもいいのだが、登りの状況から推測するに笹が出てくる可能性が高く、距離が長い尾根は避けた方がいいだろうと考えて、その1本南側の短い尾根を利用することにした。ここなら尾根末端で林道に出るはずで、林道歩きが長いが藪があっても藪漕ぎ区間は短くて済むだろう。最初は尾根の形状を成さず斜面なので方位磁石で西に進路をとって直線的に下っていく。落葉樹林で藪は無く、無数の鹿道が縦横無尽に走っているのを次々と横切る。傾斜が緩むと徐々に尾根が明瞭になり、安心して尾根を辿ることができるようになるが、いきなり笹が登場した。さほど濃くは無いが薄くもないレベルでかき分けながら進んでいく。下りでよかったぁ。植林が濃くなると一時的に笹が切れて快適に下れるようになったが、その後はもっと笹が濃くなり完全に藪漕ぎとなった。僅かな獣道があるが笹の障害は大して軽減されない。笹の背丈は身長以上で視界も悪く、注意深く周囲の地形を探りながら尾根を外さないよう注意して下っていく。時々目印も見られるが肝心な藪が濃い所には存在せず、とにかく尾根を逃さないことだけ気を付けながら微妙に左右に進路を振って地形を確認しつつ進んでいく。

途中で尾根を横切るいい道 そのまま笹藪の尾根を直進
尾根末端に出た 廃林道を下る
林道終点手前の堰堤 林道終点の造林小屋

 途中、刈り払われた明瞭な道が尾根を横切る場面があったが、この道はどこに行くのか不明なので無視してそのまま藪尾根を直進する。同じような笹藪が続くが多少は獣道が濃くなったように感じる。標高がさがると檜の植林帯に突入し、急に笹が減少して歩きやすくなり一安心。最後まで忠実に尾根を辿って下ったのは本当に尾根の末端で廃林道終点だった。ここから明瞭な道が左手の沢に沿って登っているが、これが途中で横切った道に通じているのかは不明だ。廃林道を少し下ると砂防ダムが出現し、右岸を巻いて乗り越えると本当の林道終点があった。造林小屋もあり今でも使われている雰囲気だった。あとは林道を下るのみ。不動峰〜鉢伏山を結ぶ稜線西側についている林道と合流し、そのすぐ下部で不動峰方面に延びる林道と合流、そちらが本道のようで私が歩いてきた林道の入口は施錠された鎖がかかっていた。棚沢川沿いの林道に出ると立派な道になり、地形図と違って右岸についている林道を下って車に戻った。


所要時間
6:37車−−6:40林道入口−−6:56林道終点−−7:15西尾根に乗る−−7:51主稜線−−8:05不動峰8:09−−9:08鉢伏山9:27−−9:54尾根末端−−9:58林道終点−−10:20車
 

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