乗鞍岳周辺 池ヶ峰 2008年12月20日


 乗鞍周辺の2000m峰は完全制覇しているが、2000m以下で地形図記載ではなく山名事典のみ記載の山については未チェックである(他の山域についても同じだが)。そんな時にDJFが池ヶ峰というピークが山名事典に記載されているのを見つけて登り(いったいどんな手段で発見したのだろうか?)、早速記録が公開された。1900mを越える標高で登らないのはもったいない山と言えよう。記録によると尾根を選べば笹は薄く無雪期でも行けそうだが、今の本格的積雪期直前でも楽しめるだろう。DJFはワカンも使っているのでそこそこ積雪があるようだ。それから1週間経過し、下界では雨が降ったのであの標高は間違いなく雪であろうから、DJFのときより少し雪が増えているはずだ。今年初めてワカンかスノーシューを使う機会があるかも知れない。

 金曜夜は会社の忘年会があったが、わざわざメタボになりに行くよりも早朝から山で健康的な汗を流して脂肪を燃焼させる方がいいのでパス(会社の同僚一同、ゴメンナサイ)。出発時刻を調整して松本ICで午後10時を僅かに経過してから一般道に降り西を目指す。国道158号線の夜間工事はまだ行われているが、いつのまにか4トン以下の車は工事場所を通行可能となっていたし、工事場所は沢渡手前の橋ではなく奈川渡ダム手前のトンネルに変わっていた。

 奈川渡ダムで左に曲がって有料林道の案内を目指して進む。ここは小鉢盛山に来たときに通過しているのでロードマップのお世話にならずに済み、雪が無い舗装された道を標高を上げていくと道路脇に残雪が見られるようになる。まずは黒川に沿って伸びる林道を見送って有料道路のゲートで現在位置を確認してから林道に入った。少し走ると橋で右岸側に林道が移るのは地形図の表記とは異なるがDJFの記事通りだ。ここから廃林道を歩いてもいいが、右岸側の林道をもっと奥に入り、地形図に書かれた橋で左岸に渡って尾根に取り付けば楽できるだろうと判断、奥まで入ったがこちらは除雪されていなくて凍結箇所が多い。林道本道はウネウネしながら標高を上げるところで右に分岐して標高を下げる道があったので入ってみると予想通り橋を渡ったのでここが地形図の橋らしい。ただ、坂は凍結しており、これが日中に半端に融けると低温時より滑りやすくなって私の車では登れなくなる可能性があるので今のうちに安全圏内まで戻っていくことにする。1速に落として慎重に走りどうにか坂を登りきり、結局は最初の橋付近まで逆戻りだ。でも安心には変えられない。ここで酒を飲んで寝た。これでも気温は高めとのことだが完全に氷点下だろう。

 腕時計のアラームを掛けたのだが全く気づかず寝坊してしまい、起床したらラジオ体操をやっていた。DJFの記録によると半日行程なので慌てずのんびりお湯を沸かして朝食を取り、7時半過ぎに出発。雪の装備は悩むところだ。林道周辺は日当たりが悪いところで僅かに雪が残っているが、これから登る南斜面には全く白い物がない。しかしDJFの先週のリポートを考慮するとワカンかスノーシューを持っていった方がいいだろうと判断、積雪増加を考慮して重たいがスノーシューにした。地形図を見ると標高が高いところでヤバそうな傾斜や痩せ尾根はないのでアイゼンは6本歯に後退、その代わりにピッケルを持っていくことにした。スノーシューは2kg以上あるので重いしザックの中に入れるにはでかいのでザックの背にくくりつけた。藪で取られないよう注意が必要だ。

右の林道を下る

牧場近くで黒川を渡る橋


 まずは林道を歩いて橋を渡る。右手には顕著な尾根が伸び、手前には深い谷があるがこれがホソ沢だろうと疑うことはなかった。先ほど渡った橋は地形図で林道の幅が変わる橋に違いないと思いこんでおり、地形も手前に沢、その奥に尾根だから間違いには気づかなかった。だが、実際はその1本上流側の尾根だったのだ。黒川にかかる橋は上流側にもう1本あったのに気づいたのは、下山して地形図を見ながらこの記事を書く段階であった。

短い廃林道終点 廃林道終点から作業道で上セト沢に出る
堰堤から尾根に取り付く えらい急な尾根をよじ登る

 橋を渡ると林道は左に曲がってさらに黒川上流方向に伸びているので林道を外れてホソ沢と誤認した上セト沢沿いの廃林道を辿り、終点から明瞭な作業道?をたどって沢に接近すると砂防ダム上流に出て流れが穏やかになり簡単に渡れた。ちなみに砂防ダムより下流ではゴルジュ状でとても渡れそうにない。砂防ダム付近で尾根末端近くに這い上がり、あとはこのまま尾根を辿ればいい。獣道らしき筋も見られるが藪がないので歩きやすいところを適当に拾っていく。最初は相当な傾斜で地面の水分が凍って靴のエッジで地面を切ることができず、結構滑ってピッケルも取り出す始末だった。

獣道も利用 尾根上は明るい落葉樹林
熊棚がやたらに多かった 木登りした熊の爪痕

 そんな急な登りもすぐ終わって落葉樹林の穏やかな尾根に変身した。境界標識らしき杭も見られ、檜の幼木が植林されているのでたまに人が入るらしい。さっそく熊棚も発見、しかしこの尾根はその後もやたらにたくさんの熊棚があって、おそらく今まで登った山の中ではダントツの個数だろう。100個とは言わないが50個くらいはあったと思う。新潟や立山周辺でも多くの熊棚を見たが、今回ほどは多くなかった。熊が多いのか、それとも地面で木の実を拾うより木登りして実をかき集めて食べる方が好きな熊でもいるのだろうか。

時々檜の植林が混じる 標高1420mで笹登場
尾根北側のみ雪が残る 鹿の足跡

 一面の落ち葉を踏みしめながらグングン高度を上げていき、標高1420mで尾根が左に曲がるところで初めて笹が出現する(ホソ沢左岸尾根の1370m地点と誤認)。それまでは全く無かったのがこの先で尾根上は一面の笹の海だ。密度はさほどではないので漕ぐのも可能だが、笹と同時に尾根右側に残雪が出てきたので雪をつないで歩いていく。この時期のこの標高、山域なので僅かしかないが、それでも笹が寝て雪の下なので雪上を歩く方がずっと楽だ。おまけに良く締まって歩きやすい。昨日は好天で日中に雪が溶けて朝に固まったからだろう。ほとんどの雪は固いがたまに踏み抜きもあるのでスパッツを装着、場所によっては踏み抜き連発区間も出てくるようになったので今シーズン初めてスノーシューの出番だ。さすが接地面積がでかいだけあって装着後は全く沈まなくなり快調に歩ける。ただしスノーシューを履いたままでの笹藪突破はスノーシューが笹に引っかかって余分な体力を搾り取られるので、尾根を外れてでも雪の上を歩く方が楽であるので、以降はできるだけ雪をつなげて歩いた。

振り返ると奈川の町と鉢盛山

四阿山と根子岳


 1470mを越えると傾斜が出てくるがスノーシューは登りには滅法強いのでグングン登るが、今週のお仕事も立ち仕事が多かったのが影響したのか足の疲れが早い。ペースダウンしつつ高度を上げる。尾根上には相変わらず笹が多いがその上は落葉広葉樹林で相変わらず熊棚が多い。右手の尾根にはダケカンバの白い枝が目立つようになってきた。標高1570mを越えるともっと傾斜がきつくなり(ホソ沢左岸尾根も全く同じ)、笹や木の幹に掴まりながら雪の上を歩く。もちろんピッケルも役立つがストックで充分だったなぁ。ここはかなり足にきて頻繁に足を止めて息を整えた。気温は0℃前後でこの標高にしては暖かい。振り返ると眼下には奈川の集落と鉢盛山から野麦峠スキー場にかけての山並みが見えていた。スキー場のゲレンデは真っ白なので、たぶん営業を始めているだろう。

雪が消えて笹藪漕ぎ 鎌ヶ峰(左のピーク)
雪が現れても長続きしない

標高1800mでシラビソ樹林に変貌、雪も増える

 標高が1700mを越えると傾斜が少し緩むが、どういうわけか今までより雪が減って激ではないが笹藪漕ぎとなることもあった。高さは腰から胸ほどなので視界を遮らないのはいい。できるだけ雪の上を歩くがために右斜面を歩くことが多いのだが、傾斜がきつすぎるところは藪だが尾根上を行く。どうせまだ上部は雪が出てくるのだからここでスノーシューを脱ぐのは面倒だ。標高が1800m近くになるとシラビソ樹林に変貌し、日当たりが悪くなって南斜面でも雪が出てくるようになればスノーシュー復活だ。日中溶けたのが凍ったようで表面はガリガリだが厚さは薄くて体重がかかると割れてしまうので、アイゼンを付ける必要は無い。

太い尾根と合流 合流した尾根にはトレースあり(たぶんDJF氏)

 傾斜が緩むと右手から太い尾根が合流、なんとそこには明瞭なトレースが残っていた。新雪に半分埋もれているので昨日今日の足跡ではないと思うが、もしかしたら先週のDJFのものだろうか。ここは地形図に山名が出ているわけではない山なので、登る人がいることは滅多にないはずで、DJFのものである可能性が高い。春先なら気温が高く1週間も足跡が残っていることは考えにくいが、冬の気温なら残っていても不思議ではないかも。トレースは意外と深く潜っているが今の雪質ならスノーシューではほとんど踏みぬかないので、先人のトレースの有無で疲労度が変わることはなさそうだ。

なだらかな稜線を西に進む

ワカンかスノーシューのトレースが続く


 この先はシラビソに覆われたなだらかな尾根が続き、展望が無いのは残念だが今までのような急な尾根ではないので順調に距離が伸ばせる。雪の状態は尾根北側は柔らかいままでラッセル状態の場所もあるが、その他は沈んでも足首程度の雪質が続く。積雪量は全体的には笹が完全に埋もれるような場所は皆無で、やっと地面が隠れる程度のところから数10cm程度と思われるくらいまでであった。もともとこの尾根はシラビソで日当たりが悪く笹の勢いも大したことがなさそうで、下部の尾根より無雪期歩きには適しているようだ。

稜線途中から見た北アの展望(クリックで拡大)


 ほとんど展望が無いが、1箇所だけ北側の視界が開けた場所があり、立ち位置を移動させれば乗鞍から常念くらいまで見ることができた。さすがに穂高は真っ白だった。先人の足跡もこの展望場所では稜線からずれて北斜面に迂回していた。

境界標識あり まだまだ稜線を行く
池ヶ峰山頂 DJFの真新しいリボン。標識、目印はこれしかない

 その後は再び深いシラビソ樹林を進んでいく。このような緩い尾根では現在位置を特定するのに高度計が頼りだが、計画していた尾根と別の尾根を登ってきたことはまだこの時点では気付かず、標高を50mくらい低く設定してしまっており、山頂はまだまだ先だと思っていたが、南側と頭上が開けて明るい小ピークに到着し、ピンクリボンがぶら下がっているのを見ておや?と思った。おそらくDJFのリボンと思うが、彼は山頂以外にこれを残すことは無いのでここが池ヶ峰山頂ということになる。リボンに近寄って文字を見ると間違いなくDJFのものでここが山頂であったし、GPSで位置を確認しても間違いなかった。周囲は雪に覆われて三角点は見当たらず、適当にピッケルで地面を刺してみたがシャフトいっぱいまで雪に刺さったので積雪は50cmはありそうだった。

池ヶ峰から見た中央アルプス方面

きれいな青空


 意外にあっさりと山頂に到着してしまい少し拍子抜けだったが、樹林中ではなく日当たりの良い気持ちいい山頂だったのでしばし休憩。今日は気温が高く日向に座っていれば眠くなってしまうような快適な体感温度だった。ちなみに気温は0度前後で、この時期の2000m近くにしてはかなり高めと言えよう。

 下山も同じルートで戻ることにした。山頂で高度計を校正し、尾根から外れるところの標高を確認したら約1820mだった。ホソ沢左岸尾根なら約1720mのはずであり、地形図と睨めっこして登ってきた尾根が認識していた尾根と違っていた事実をようやく把握できた。どうやらホソ沢左岸尾根よりも笹が濃いようだが、雪がある今の時期なら大した問題にはならないのでこのまま登りで使ったルートを下ることにする。スノーシューは傾斜がきつい下りは苦手で、そんな場所は木や笹に掴まりながらズルズル滑り落ちていく。ワカンと違って私のスノーシューはビンディングで足首より下が自由に動くので、下りではスノーシューがブラブラして歩きにくい。

 標高1420m地点で笹と雪が消え、スノーシューの出番もおしまいとなり、ザックの背面にくくりつけた。あとは熊棚を見ながら落葉樹林帯を下り、最後は急斜面を木に掴まって下り、砂防ダム脇から沢を渡って林道に出た。


所要時間
7:40駐車スペース−−7:52橋−−7:54上セト沢−−8:36標高1420m−−9:45標高1820m−−10:25池ヶ峰11:07−−11:37標高1820m−−12:27尾根末端−−12:42駐車スペース


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