男鹿山塊(栃木県) 小佐飛山 2009年2月21日


矢板から見た小佐飛山。雪雲で大佐飛山より奥は見えない


 今年の杉花粉飛散開始は例年より早く、私の経験上初めて2月中に症状が出た。既に南関東や関東中部の中低山では盛んに花粉が飛んでおり、地獄が待っているので恐ろしくてこのエリアの山には登る気にはなれない。ネットで調べると花粉が飛んでいないのは長野北部から中部、群馬県西部から北部、栃木県北部で、既に近場の山では花粉から逃げることはできない。

 金曜日に降った雪も問題だ。南関東では冷たい雨だったが宇都宮では雪で、北の方や内陸、標高が高いところは確実に新雪が積もっただろう。車でどこまで入れるかが問題になるし、ラッセルによる体力消耗も心配だ。それに土曜日は猛烈な冬型の気圧配置になって吹雪が予想された。おまけに少し風邪気味であまり無理はしたくない。どこに行くのか散々悩んだが、市街地から近く車で入れる確率が高いこと、標高がそこそこで雪の量も2000m峰より少なそうなこと、標高差約1000mで通常なら日帰り楽勝圏内なことなどから、男鹿山塊の小佐飛山を目指すことにした。本来ならその先の長者岳まで行きたいところだが、まだ残雪期と呼ぶには早すぎて雪が締まっていないだろうし、新雪が多ければラッセルに時間がかかって届かない可能性が高く、別の機会に挑戦した方がよさそうだ。男鹿山塊は昨年の残雪期に登って以来である。参考に烏ヶ森さんの小佐飛山往復の記録をプリントアウトした。

 高速道路の深夜割引が有効な午後10時を過ぎに那須塩原ICを通過するように出発時間を調整し、東北道を北上する。矢板ICを過ぎると道端に雪が見られるようになり、なんと那須塩原ICに近づくと雪が降り始めたではないか。まさかここなら雪は無かろうと想像したのだが甘かったようだ。これから積もりそうな勢いの降りでもっと里に近い山に切り替えたいところだが、用意してきた地形図はこの近辺しかない。とりあえず萩平まで行ってみることにして、地形図上でできるだけ太い道を選んで入っていく。東電の電力研究所を通過して鋭角に右折して橋を渡り、左に入る舗装道路を進んでいくとどん詰まりの広場で除雪が終わっていた。どうやらここが萩平の駐車場らしい。除雪は道路上しかなされておらず、そこに車を置くわけにはいかないので、できるだけ雪が少なそうな場所を選んで突っ込み、何度か車を前後に動かして「ラッセル」しておく。これで少しくらい積もっても脱出できるだろう。

雪に覆われた萩平駐車場

東京電力取水堰方面

 翌朝、腕時計のアラームをかけたにもかかわらず寝坊して6時に目が覚めたが、残念ながら雪が降りしきっていた。今日の行動をどうするか本気で悩んだが、天候はこれから回復傾向のはずなので出発することにして飯を食い、車の中でゴアに着替えて出発する。出発時からゴアを着るような天候はここ数年なかったような気がする。昨夜は除雪して路面が出ていた部分も真っ白になっていたが、靴で踏んでみると新たな積雪は1cmも無かったので、これならスタックして脱出できないことはありえないだろう。

 最近は小ぶりな山を1日何山も回る形式が多く、小さなアタックザックだけ持って行くことがほとんどだったが、久しぶりに40リットルのザックを担ぎ、スノーシュー、12本歯アイゼン、ピッケルを持っていく。アイゼンとピッケルは過剰かもしれないが、久しぶりの雪山で勘も鈍っているだろうから安全対策は多いほうが良かろうし、体力トレーニングの意味もある。水の代わりにテルモスにお湯を入れた。

取水堰の橋入口 橋から見た小佐飛山の尾根
蛇尾川右岸の巡視路 小蛇尾川にかかる橋

 駐車場の西側に東京電力の取水堰があり、保守用巡視路と思われる橋がかかっているが、立入禁止の札がかかってフェンスに囲まれている。橋を利用せず蛇尾川を@渡渉できないか河原に下ったが、今の時期は雪解けで水量が多く渡れそうな場所がなかったので、申し訳無いがフェンスを乗り越えて橋を利用させてもらった。対岸には等高線に沿って巡視路が続いており、斜面の傾斜が緩むと道幅が広くなって立派な作業道になった。小蛇尾川右岸から左岸へは底が金属網になった橋で渡れる。その後も立派な道が続くがどこかで右の尾根に取り付くはずで、見落としが無い様注意しながら歩くと、上流に見える砂防ダムから100mくらい下流で明瞭な作業道が右に鋭角に上がっているのを発見。手すり代わりのトラロープまで張ってあるので見落とす心配はないだろう。さて、これがどこまで続くやら。

尾根に取り付く作業道入口 トラロープまで張ってある道が続く
尾根に乗る 植林帯を登っていく

 尾根に上がってからも明瞭な道が続き、稜線東側直下を縫うように上がっていく。周囲は杉や檜の植林帯で林業作業用の道らしい。気温は0℃を切っており、杉花粉が飛ぶ心配は無く鼻も目も調子がいい。まだ積雪は1,2cmといったところで歩くのに全く支障はない。この標高では思ったよりも積雪は少なかったようだ。まあ、葉が茂った樹林の中なので地面まで達する雪が少なかっただけかもしれないが。

ルート上唯一の標識が登場 作業道が尾根を越えて西側を巻き始める場所。ここで尾根に乗るのがいい
尾根上の踏跡は東側を大きく巻き始める 適当に尾根に這い上がる

 尾根上を歩いたり尾根東直下をジグザグったりして高度を上げていくと、本日始めて標識が登場、上を指して「小蛇尾川上流」、今来た方向は「萩平」となっていた。もしかしたらこの道は八汐ダムを高巻きしてダム上流の小蛇尾川に降りるための道なのだろうか。この標識のすぐ上で道は尾根を乗り越えて尾根西側を巻くようになり、本当に下りそうなので尾根上の踏跡に乗り移った。このまま尾根上を行くのかと思ったら再び東斜面を巻き始めるが、今までよりかなり下を巻くようなルートで尾根に戻るのか不安になったので間伐材の転がる植林帯を適当に登って尾根に復帰する。尾根上は数cmの積雪があるので踏跡の有無は不明だが踝程度の低い笹が薄く生えた植生で歩きやすく、西側斜面は自然林、東斜面は植林帯だった。この後は尾根上を歩くことにする。

低い笹の尾根が続く

露岩登場。真ん中の隙間を登った

 傾斜が急な区間も特に危険箇所は無く、凍っているわけでもないのでアイゼン無しでどんどん登っていくが、下りの時は滑るかな。傾斜が緩んでも右手は植林帯だが、少し進むと尾根全体が自然林となり、大きな露岩が現れた。露岩といっても尾根全体を岩が覆っているわけではなく、中央付近は地面が出ているし、傾斜が緩いので左右から巻くのも可能で岩登りする必要はない。この後もポツリポツリと露岩が現れるが障害となる箇所は無かった。

 傾斜が緩むと積雪量が増え、新雪の下の古い雪を僅かに踏み抜くようになったのでスノーシューを着用する。新雪の積雪はまだ5cm程度だろうか。さすがにつぼ足と比較して接地面積が増えて沈まなくなり歩きやすくなった。落葉樹林帯に入ったので多少視界は開けたはずだが、今日は天候が悪く雲の中に入ってしまい吹雪いているので遠くは見えず、お隣の鴫内山の尾根も霞んでしまった。風は強烈でゴアのような風通しがない服装でないと相当寒いだろう。いつのまにか気温は-5℃を下回っていた。手袋は1枚では指先が冷えるので久しぶりにオーバーミトンを付けたがこれは効果てきめんで指先まで温まった。

こんな目印が点在する

1110m峰

 落葉樹林に覆われた狭い1110m峰を越えてなだらかな尾根をめぐる。ここに来ても適度な間隔で控えめな目印が出現するので心強い。下りのために自分で目印を付ける必要が無く、今日のような悪天時は大助かりだ。もっとも、今の時期なら雪の上に自分の足跡が残るので、足跡が風にかき消されなければ目印を付ける必要はないが、今日の天候だと消えてしまうかなぁ。

緩やかな尾根を登る 1310m肩の登りで笹登場
古い目印も点在 反射板登場

 1230m肩にかけては登っていくうちにだだっ広い尾根になるが、登りは適当に登ってもルートを外すことはないので歩きやすいところを進む。まだこの辺も背の高い邪魔な笹はなく、背の低い笹原らしい。そんな笹が雪面に顔を出しているので積雪量は10cm程度だろうか。木の根元を見ても雪の少なさが分かるくらいしか積もっていない。

 1275m小ピークを越えて1310m肩の登りにかかったところで本日始めて背の高さを越える笹が出現した。しかし密生しておらず隙間が多く、空いたところを拾いつつ登っていけばいい。傾斜がきつい区間が終わりに近くなると露岩が出現、その奥で傾斜が緩んでいい目印となる反射板が登場だ。反射板一帯は伐採されて展望がよさそうだがいまだ雲の中で展望は開けないし、風が強く地吹雪状態だ。

かなり笹が出ているが問題なし 1440m峰の登り
やっと小佐飛山登場 稜線は暴風で雪煙が上がる

 その先のなだらかな尾根も立った笹が出ているが尾根全体を覆っているわけではないので藪漕ぎの出番はない。1440m峰の登りも立った笹が出ているが隙間が多く真中を歩いたが、烏ヶ森さんの記録によると本来は笹の密藪とのことなので、こんな積雪量でも寝ている笹があるらしい。ここは南向きの尾根で風がないので帰りに休憩場所とした。1440m峰で左に進路を振り、僅かに雪庇ができかかった稜線を歩くが、ここが一番風が強く鼻が千切れそうな体感温度だった。風上側(北側)は雪が飛ばされて積雪が少なくて歩きやすいが、風がもろに吹きつけるので吹き溜まった南側を歩いたが、スノーシューでも脛くらいまで潜った。これが硬く締まった時期なら快適なんだけどなぁ。さすが2月中旬だった。いつのまにか天候が回復し雲から抜け出したようで背後から日差しがでてきた。

小佐飛山山頂 小佐飛山三角点が出ていた
3D標識も健在 登ってきた方向を振り返る

 最後に緩やかに登りきると待望の小佐飛山山頂に到着。なだらかで広い山頂だが積雪は多くても50cm程度で、平均すれば2,30cmではなかろうか。スノーシューで潜る深さは10cm程度だ。地面が出ている部分は無いが、驚いたことに三角点の頭が顔を出していたのは予想外だった。山頂標識は3つで、山部さんの3D、黒羽山の会、栃木の山紀行であった。出発から3時間強かかったが休憩なしで歩ききったので、最近の山行状況を考えるとまあまあだろう。

雪庇なりかけは軟雪

つぼ足登場

 上空は薄雲程度で基本的には晴れのエリアに入ったようだが気温は-10℃、猛烈な風が吹きぬけて地吹雪状態であり、とてものんびり休憩できる場所ではないので早々に退散して1440m峰南斜面で休憩。ここでも気温は-10℃のままだが日差しがあってほぼ無風なので防寒着を目いっぱい着ていれば寒さは感じなかった。自分の足跡を追って下っていったが、やはり強風のためトレースがかき消されている場所も多かった。複雑な地形の尾根では無かったし目印もあるのでほとんど問題はなかったが、オーバーミトンまでしていると紙をめくって地図を開くのは無理なので地図は見ず地形を見ながら歩いていたら、1230m肩の下の広い斜面では尾根を直進して北東に行き過ぎてしまってから気付いて正しい尾根に乗り換えたが、登ってきた自分のスノーシューのトレースを発見したらその上に別の人のつぼ足のトレースが重なっていた。こんな時期に私の他に登る人がいるとは驚きだ。さっきのルートを外した場所以外は尾根上を正確に辿ってきたがすれ違った人はいなかったので、尾根を外した区間で行き違いになってしまったらしい。いったいどんな人だったのか話してみたかったのに残念。

下山は尾根をまっすぐ辿った

下界は快晴!

 その先は迷うような場所はなく淡々と尾根を下り、傾斜が急な区間は雪が少ないのでスノーシューを脱いで登山靴で下るが、日差しと気温で雪が緩んでズルズル滑り、ピッケルで支えたり木に掴まりながら下った。傾斜が緩めば鼻歌気分で下れ、最後の緩斜面帯で作業道に出た。ここまで来ると日向の雪はかなり溶けており、場所によっては地面が出ているところも見られた。小蛇尾川沿いに出て蛇尾川の橋を渡ろうとしたら雪が溶けてその下の氷が顔を出しており、川上側から吹きつける強風で足をすくわれそうになり、ここだけはアイゼンが欲しいくらいであった。幸い、両側に手すりがあったのでそれに掴まって進み、最後はフェンスを越えて駐車場に戻った。

 駐車場の雪もかなり溶けており、私の車のほかには足立ナンバーの青いレガシーが止まっていた。残念ながら顔を拝めなかった人物が持ち主だろう。もう小佐飛山山頂まで達しているだろうか。ここでも車が揺れるほどの強風で、外では寒すぎるので車内で着替えを済ませ、矢板市内で温泉に入ってから東京を目指した。


所要時間
 萩平−0:11−小蛇尾川の橋−0:02−尾根取り付き−0:41−「小蛇尾川上流」標識−0:20−尾根に出る−0:35−1110m峰−0:54−反射板−0:38−小佐飛山−0:13−休憩−0:12−反射板−0:40−1110m峰−0:23−「小蛇尾川上流」標識−0:18−尾根取り付き−0:10−萩平

 

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