野麦峠周辺 天ヶ峰、横道 2009年3月7日


 先週末は風邪をひいてひどい目に遭って山に行くどころの話ではなかったが、やっと復調して今週末は出かけられる。しかし天候が問題で金曜日は東京ではまとまった雨が降り、山ではまとまった雪になった可能性が高く、場所の選択が悪ければ激ラッセルの可能性がある。また、土曜日は一時的に冬型の気圧配置になり北西の風が強く、日本海側に近いほど悪天が予想された。本当は群馬方面に行きたかったが雪雲の中に突っ込んで吹雪かれる可能性が高いと判断、雪が降り易いエリアから少し離れた場所を考えた。もちろん杉花粉の少ないエリアが優先だ。悩んだが奈川エリアに足を伸ばすこととした。ここは杉花粉が少なく安心して登れる場所で、日本山名事典記載の山がいくつかある。今回はその中の天ヶ峰、横道を選んだ。DJFが昨年末登った入山、風吹も考えたのだが北向き尾根を登るので強風がもろに吹きつける可能性が高いこと、林道の凍結であまり高度が稼げないだろうからもう少し暖かい時期の方がお得だろうと判断し、もう少し遅い時期にしようと思う。その点、天ヶ峰、横道なら南側に集落があって道は除雪されているだろうし、南尾根を登るので稜線に出るまで、下るときは風を避けられる。ついでに南向きの尾根で早い時期に登らないと雪が消えてしまうのも理由の一つだ。

 東京を出発する頃には雨がだいぶ上がり、西に向かうと雲に隙間が出てきて星も見えるようになった。心配していた積雪だが小淵沢から先の標高1000m地帯でも全く雪はなく、東京は寒かったがこちらは暖気が入ってかなりの標高まで雨だったようだ。松本ICで降りて奈川に向かって走り、国道158号線を外れて西に進むに従って周囲に徐々に白いものが現れてきた。路面は濡れているが凍ってはおらず快調に飛ばしていたが、奈川市街地が近づくと部分的に凍結しているようでタイヤがズズっと滑って大いに焦り、それ以降は坂道やカーブは充分減速しておとなしく走った。木祖方面への分岐から先は野麦峠へ向けて徐々に標高を上げるが、路面上にも雪が残るようになった。まだ凍っていないのでいいが、これが凍ったらツルツルだ。地形図で橋が出てくるところで現在位置が把握できるので天ヶ峰への尾根取り付きを行き過ぎて橋を確認し、Uターンして左側に小さな谷が現れる手前の広場に車を置いて寝た。幸い、風はほとんどないが、稜線はどうだろうか。

 翌朝の冷え込みはさほど強くはなく、気温は-2,3℃だった。少し寝坊してしまったが今日のコースはさほど長くはないので慌てる必要はなく、のんびり飯を食って出発した。今回も過剰装備かもしれないが、スノーシュー、12本歯アイゼン、ピッケルのフル装備とした。昨夜濡れていた路面は完全に凍結しているが、たぶん日中にはきれいに解けて無くなっているだろう。

凍った林道を歩く ここから尾根に取り付く
いきなり笹藪の急斜面 笹藪を突破すると畑に出た

 小さな沢を通過すると左手に地図に無い林道が上がっているが(車止めされていてマイカーでは入れない)、まだ目的の尾根の一つ手前なのでパスし、次の沢を越えた左岸の尾根に取り付いた。道は無く上部はいきなり笹だが、まさかその先もずっと笹じゃないよなぁ。傾斜がきつく少しばかり雪が乗った笹藪は滑りやすく、笹に掴まりながら登っていくと、突如として畑に飛び出した。な〜んだ、藪漕ぎしなくてもここまで登れるルートがあったのか。最初から無駄な労力を使ってしまった。

再び尾根に取り付く 笹藪登場。でもさほど濃くない
林道を突っ切る 笹藪が消えて以降は歩きやすい尾根が続く

 畑の反対側に尾根末端があるので真っ白な畑を突っ切って尾根に取り付く。まずは笹が無い歩きやすい尾根で一安心。ところが少し標高を上げると再び笹がはびこり始めた。うまい具合に尾根直上の笹薮地帯ではなく南を巻くように斜めに上がる踏跡なのか獣道があったのでそれを歩き、笹薮に消滅したところから先で笹が薄くなって尾根を歩いた。今の積雪量では笹が埋もれるは無理で、どこかで笹が消えないかと思いつつ登っていると突然林道が登場、車道脇で見送った林道の続きだろう。法面となっているが垂直ではないのでよじ登ると再び笹薮歩きだが、密度は大したことはないので問題なく登れた。そのうちに笹が消えて歩きやすい自然林になってからは快調に歩けた。雪は僅かにあるがまだまだスノーシューの出番ではないが、標高が上がると新雪の下に古い雪が出てきたようで、僅かに踏み抜くようになったので標高1600mで背負ってきたスノーシューを装着、歩きやすくなった。これ以降は積雪が続くようになり、やっと今の季節らしい風情になった。でも積雪量は少なく、雪質は4月の残雪期のようで沈み込みは少なく快適と言っていいだろう。ま南向きの尾根だからな。

傾斜が緩むと同軸ケーブル登場 シラビソが混じり出す
シラビソの真新しい切り口 朽ち果てたTVアンテナ

 標高1650mを越えて尾根が左に曲がると雪の下から同軸ケーブルと電源用と思われる電線が登場、どうやらこの先に共聴用TVアンテナがあるようだ。おまけに牧場の柵のような有刺鉄線が付いた棒が立っているではないか。ここへきてこんな人間臭いものが出てくるとは思わなかった。もしかしたら雪の下には踏跡程度はあるかもしれない。標高が上がると尾根上にはシラビソが混じるようになるが、明らかに近年伐採された木があり、全く手が入っていないわけではないらしい。もしかしたら本当に道があるのかもしれない。やがて朽ち果てたTVアンテナが登場したが、道があったとしてもここまでだろうか。今は全体が雪に覆われているので道の有無は無関係だが。

山頂への最後の登り 天ヶ峰山頂

 山頂直下で傾斜がきつくなり、スノーシューを効かせてグイグイ登りきると広い平坦地に到着、三角点は雪の下だがGPSはここが天ヶ峰であることを示していた。山名事典にしか記載されていないので目印のテープはあっても山頂標識はなかった。有刺鉄線の柵は山頂で西に曲がり、これから向かう横道方面へと続いていた。こんなところまで人の手が入っているとは。周囲は唐松の植林帯で、落葉はしてるがすっきりとした展望は得られなかった。気温は-5℃くらいだが日差しがあって風を避けられる南斜面に座っていると心地いいくらいだった。少々休憩してから出発する。

なだらかな尾根が続く 唐松植林の中にも大きな自然の木が残る
雪の状態は良好 南方面の展望
木の隙間から見た穂高方面。展望が得られる場所いはほぼ皆無

 この後は横道までアップダウンが少ないなだらかな尾根が続くので、雪の状態さえ悪くなければルンルン気分で歩ける区間だ。気温が低いせいかスノーシューを履いていれば雪はほとんど沈まない。この尾根上にも有刺鉄線が張り巡らされているが、鉄柱の大部分は雪に埋もれているので積雪量は1m前後だろうか。相変わらず唐松植林帯が続いて展望が悪いが、どうにか木の隙間から穂高が見える場所を見つけ出し、本日唯一のパノラマ写真を撮影した。

横道山頂

 緩やかなピークをいくつか越えて、そろそろ横道が近いかと思われる頃にGPSの電源を入れるともう少し先だった。やや雪が柔らかい場所もあるが沈んでも足首程度で、しかも踏み抜きではなくパウダースノーのラッセルなのでずいぶん楽だった。最後に緩やかに登って南側が少し開けた平坦地に到着、ここが横道山頂だった。当然ながら三角点は雪の下で影も形もなく、位置を示す標柱も雪の下だった。境界標識はあるが山頂標識は皆無であったので、赤テープを巻いておいた。こんなマイナーなところに登るのはDJFと武内さんくらいだろう。この雪の下は笹の激藪か、それとも雪など必要としない薄い笹薮か。南斜面で風を避けつつの休憩は日当たりが良くて心地よかった。これで北の展望も開けていたらよかったのだが・・・。

ここから南東尾根に入る 顕著な尾根で迷いにくい
雪が減って笹が出ている 自然林が続く

 帰りは1739m標高点南西の1730m地点から南東に落ちる尾根を下ることにした。横道から南に下る尾根を使ってもいいのだが、下りきった所を流れる奈川は渡渉できそうにない水量なので車から離れる方向の西に進んで県道の橋を使う必要があり、遠回りになるのでやめておく。いきなり間違えて横道のすぐ東の1730m地点から南東に落ちる尾根を下ってしまったが10分も下らないうちに尾根が消失して右に広い尾根が移り、明らかに地形図と地形が異なるので間違いに気付いて登り返し、今度こそ正しい尾根に入った。南斜面なので雪の量はガクッと減って笹も顔を出しているが、地面が出ているわけではないので笹藪漕ぎは無く、穏やかな尾根を順調に下る。この辺りは植林ではなく落葉樹の自然林で、所々に熊棚が見られた。地形図を見ても標高1470m地点までは顕著な尾根なので地形を見ながら一番太い尾根を下れば問題ない。

標高1470mで左の尾根に入る 傾斜が出てくると右手は植林帯になる

 1470m付近では左に分岐する小尾根を探しつつ慎重に歩き、思ったより顕著な尾根を発見して乗り移り下っていく。しばらくは自然林だったが傾斜がきつくなってくると右手の斜面は植林帯となり伐採されて開けた場所になっていた。ここまで下ると傾斜がきつくてスノーシューは邪魔になるし、雪は数cmしかなくつぼ足で問題なくなったのでスノーシューを脱いでザックにくくりつけた。今までよりは歩きやすくなったが、僅か数cmの積雪でも日中で溶け出した状態では良く滑り、木に掴まりながら慎重に下っていった。雪が無いところでも地面が濡れてこれまた良く滑った。

橋の脇が尾根末端 すっかり雪が消えた車道

 急な傾斜区間を下りきって傾斜が緩むと笹が登場するが大した密度ではなく直進。やがて目標地点の奈川を渡る橋が見えてきて、最後は小さな沢を1枚板の小さな橋で渡って車道に出た。計画どおりぴったり尾根末端に出たのだった。あとは少しだけ林道を歩くだけ。朝方はカチカチに凍っていた路面もすっかり雪が消えうせていた。


所要時間
 駐車スペース−0:03−尾根取付−0:09−畑−0:20−林道−0:32−標高約1600mでスノーシュー装着−0:05−1646m肩−0:13−TVアンテナ(標高1740m)−0:09−天ヶ峰−1:02−横道−0:09−間違った尾根を下る−0:06−間違いに気づき引き返す−0:08−主稜線に戻る−0:10−1739m標高点南西の1730mから南東尾根を下る−0:14−標高1470m−0:19−車道−0:09−駐車スペース

 

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