後立山前衛 一難場山、蒲原山、箙岳、岩菅山、横前倉山、風吹岳、フスブリ山 2009年4月18日

広域地図

ルート図。地図クリックで拡大

 後立山北部の乗鞍岳から東に伸びる長野/新潟県境稜線には登山道が無い山がいくつもある。尾根末端から順に一難場山、蒲原山、箙岳、岩菅山、横前倉山、風吹岳、フスブリ山である。風吹大池周辺には岩菅山、横前倉山、風吹岳の3山が集中し、さしずめ「風吹三山」と呼んでよかろう。標高は1900m前後で登らない手はない。「風吹三山」とフスブリ山は近くを登山道が通っているので藪漕ぎ覚悟で無雪期でも登れると思うが、他の3山はたぶん笹薮に覆われて残雪期以外は相当苦労するだろう。いつか残雪期を狙って登ろうと考えていたが、そろそろちょうどいい時期になったので狙ってみることにした。登山口は木地屋集落の除雪終点となる。南側の紙すき牧場起点も考えたが、常識的に考えればこんな時期に道路を除雪することはないと思われ、木地屋集落の方が標高を稼げるとの判断であった。

除雪終点 除雪終点手前の道幅が広い場所に駐車

 豊科ICで降りて国道148号線を延々と北上、県境を越えてトンネル群を抜けて信号で右折、この道は何度も通っているのでロードマップの必要は無い。今年は雪が少なくて集落付近にはほとんど雪は見られず、黒負山に登ったときに除雪終点だった場所も雪は無くてさらに標高差100mを登ったところで除雪終点となった。ここは何やら工事をやっているのでここまで除雪したらしい。それでもやっぱり雪は少なく、南斜面だときれいさっぱり消えている。カーブの道幅の広いところに駐車して寝た。

 翌朝、予定より30分以上寝坊してしまい、目覚めたら日の出の時刻だった。大至急飯を食って支度して出発、もう4月中旬で通常ならスノーシューではなくワカンで大丈夫な時期なのでザックにはワカンをくくりつけた。「風吹三山」間の鞍部と一難場山への登りで急なところがありそうなので12本爪アイゼンも持つ。これにピッケルだ。今日も好天が予想されるので麦藁帽子を被る。さすがに日帰り装備なので先週の丸山岳とは比較にならないくらい軽かった。まだ先週の疲労は抜けきれず、体調も風邪気味でイマイチだが日帰りだからどうにかなるだろう。カシミールの計算によると累積標高差は約1700m、総距離は約23kmと出た。今日も12時間山行となりそうだ。

残雪に覆われた林道が続く 標識の埋もれ方を見るとさほど雪は深くない

 気温は0度前後で先週より冷えて林道の雪も締まってつぼ足で沈まず快調に進めた。ほぼ林道上を歩き、スキー跡がショートカットしているところはそれに従って登っていく。稀に林道上の雪が消えている区間もあるが、全体の99%は雪に覆われていた。一難場山へ取り付くには途中で林道を離れて谷を渡る必要があるが、問題は谷が渡れるかどうかだ。標高950mくらいで渡って尾根に取り付くと一番傾斜が緩い斜面と尾根が使えそうだが、橋無しで対岸に渡れる程度の水量かどうか、スノーブリッジがあるかどうか問題だ。もっと下部には林道があって対岸に渡っているので使えるのだが、この林道のように雪が締まっているとは限らない。なにせここはスキートレースとスノーモービルのトレースが多数あるので圧雪されているから雪が締まっている可能性が高い。だったら林道でもっと標高を上げて水量が減った場所で渡ったほうがいいかもしれない。とりあえず1000mくらいまで歩いてみようと思う。あとはなだらかな場所を探して谷に下りてみよう。

林道を離れ左の緩斜面帯をトラバース 下に谷が見えてきた
渡れそうで微妙に渡れない川幅 この倒木(折れた木)で無事渡れた

 標高1000m付近で林道から離れて等高線に沿って谷を目指す。幸い、ここでも雪は締まってつぼ足で全く沈まず薄い樹林で藪も皆無で歩きやすい。僅かに下って谷筋に出ると微妙な水量で、川の中に出ている石を使えば渡渉できそうだが表面が凍っていそうで水没のリスクがある。乾いた石や幅が狭くなっている場所を探しながら上流に向かうと、ちょうどいい具合に幹が途中から折れて川の上に橋が架かった格好の倒木を発見、太さも充分で人間が乗ってもびくともせず、労せずして渡ることができた。これで心配事を1つクリア。

平坦な雪原が続く 斜面が見えてきた

 渡った先は平らな雪原が続き、進路の掴みようがないので地形図を開いて方向を確認、真東に進めばいいようなので方位磁石で方向を確認して進んでいく。途中、小川があったが幅が狭く簡単に対岸に飛べた。なおも平原を横切りやっと傾斜が出てくる地帯に取り付いたが、地形図どおりで尾根らしい場所はなく、適当に上を目指して登ることにした。雪はかなり残っているが、所によっては斑模様で地面が出ているところも見られるが、この標高ではまだ笹は薄く雪が無くても問題なく歩けそうだった。でも今は締まった雪で歩きやすいので残雪をつないで登っていく。

急な斜面を登る 珍しく野兎撮影成功

 やがて傾斜が出てきたので今シーズン初めてアイゼンを装着、さすがに12本歯は食いつきがよく、今まではキックステップ気味に山靴のエッジを効かせて登ってきたのが適当に足を置くだけでしっかりと雪を掴んでくれる。傾斜がきつくてまっすぐ登ると疲れるのでジグザグを切って登っていった。標高1200m付近を越えると傾斜が緩み、アイゼンをザックにくくりつけてつぼ足に切り替える。雪は締まって全く沈まず快調だ。大きなブナの木の根元を通過するとまだ白い野兎が飛び出して、数m先の雪原で固まってこちらを見ていた。野兎の足跡は良く見るがその姿を見ることは滅多になく、こんなに近くで逃げない兎は非常に珍しい。ウェストポーチからデジカメを出すときに警戒して逃げないか心配だったが大丈夫で、光学倍率最大で撮影できた。私が歩きだすと「脱兎のごとく」走り去った。

やっと尾根らしくなる 白池周辺の平坦地を見下ろす
主稜線も見えてきた 振り返ると日本海!
標高1370m付近から見た展望(クリックで拡大)

 やっと尾根らしき地形に到達し、あとは尾根上を登っていく。時々樹林が薄くなって背後には黒負山から雪倉岳への真っ白な稜線が輝いていた。黒負山はDJFが今年の2月に日帰りスキーで到達しているが、今ならワカンでも大丈夫だろう。標高1370m付近で傾斜が緩んで一時的に樹林が開け大展望を楽しむ。あとは一難場山の稜線西側に沿うように雪堤が連なり、その上を気持ちよく歩いて稜線に合流した。

先に見える稜線が主稜線 主稜線に出ると一難波山への登り
一難波山への登りから振り返る 日本海に佐渡島が浮かぶ
戸隠方面の展望(クリックで拡大)

 稜線はだだっ広くたっぷりの残雪で覆われて、複数のスキー跡が残っていた。風吹大池から下ってきたものだろう。軽くうねった雪庇がなだらかに登っていて、青空に映えて何とも気持ちいい風景だ。その雪庇に沿って高度を上げていくとブナを中心とした落葉広葉樹の平坦地に飛び出し、東側の妙高、火打から戸隠の稜線が連なっていた。じつはここが一難場山の山頂だったのだが、この先の大きくなだらかなピーク(蒲原山北峰)を一難場山と誤認していて、標識等の確認をすることなく通過してしまった。ちょっと残念。

一難波山から蒲原山方面を見る 左手には雨飾山
気付かず通過してしまった一難波山 蒲原山北峰から見た蒲原山
蒲原山北峰から見た箙岳方面 蒲原山山頂。だだっ広い
蒲原山付近から見た八ヶ岳、南ア(クリックで拡大)
蒲原山北峰からの展望(クリックで拡大)

 一難場山からほんの僅か下ってから広い尾根の登りにかかり、スキー跡を追ってなだらかな登りに入る。ピーク直下になると植生はブナからシラビソに変貌し高度感が漂う。登りきっただだっ広いピークは蒲原山北方の1629m峰で、南に見える平たいピークが蒲原山山頂だ。僅かに雪庇ができて段差が2mくらいの壁の緩いところを下り、開けた雪原を歩いていく。こんなだだっ広い地形だとガスられたらやっがいだが、今日のように天気がいい日はとても気持ちがいい場所だ。山頂一帯はとくに高まった場所があるわけではなく、山頂らしき一帯を見渡したが標識等は無かった。ここで休憩とし、ザックを下ろして断熱シートを広げてひっくり返った。日差しが心地よく快適で、季節は完全に春だ。

箙岳へと向かう。最初はブナ林 スキー跡を追う
蒲原山を振り返る こんな標識が点在
箙岳への本格的登り。右を巻いて登る

 次は箙岳だ。地形図を見ると登りが急そうだが、ここから見る限りはそうは見えず、少なくとも右を回り込めば緩斜面帯のようだ。背の高いブナの樹林帯を緩やかに下っていくと左が切れ落ちて展望が開けてくる。尾根が狭まって登りに切り替わるところで樹林が消えて広大な雪面が広がる斜面が出現。なるほど、地形図に描かれているように正面の尾根は上部は猛烈な傾斜で登れそうになく、斜面の途中には雪崩の跡があるし、上部には不気味な雪庇がせり出しているので正面突破は危険だ。ここは右にトラバースして北西尾根から箙岳を目指すのが正解で、スキー跡もそのようになっている。雪面はさほど硬くなく登山靴でキックステップで大部分は大丈夫だが、たまにガチガチに硬い部分が混じりコケそうになる。どうせ上部は急なのでここでアイゼンを付けることにして、数少ない立ち木の根元で座り込んだ。アイゼンがあれば何の問題もなく、トラバースではなく上部目指してジグザグに登り、傾斜が緩めばアイゼンは不要で再びザックの中に。これで足が軽くなった。

斜面をトラバース アイゼンで快調に登る
尾根に出る 古い足跡。かなり苦戦したらしい?
傾斜が緩む 箙岳山頂が見えた

 尾根上は疎らなシラビソ樹林になり、スキー跡とは別にどこからか降って湧いたように大きく凹んだ足跡が現れた。たぶんワカン跡ではなかろうか。私と同じように歩きでこの稜線を登るか下るとは数少ない珍しい人種とみた。足跡は古いもののようで時々消えてしまい、自分なりに歩きやすい適当な場所を進んだ。進路は右に曲がって雪庇のような雪堤が現れ、こいつはなだらかに左に曲がっている。雪堤に上がると先にピークが見え、どうやらそれが箙岳らしい。平らなシラビソ地帯を抜けて再び幅が狭まって尾根らしくなると同時に高度を上げ、雪庇上の山頂に到着した。

箙岳直下の登り。スキーなら快適そう 箙岳山頂。背景は岩菅山
箙岳から見た展望(クリックで拡大)

 南側は切れ落ちて僅かに雪の切れ間があり笹が顔を出していた。ただし高さはそれほどではなく、大木場ノ辻山頂のような背の低い笹だった。まあ、これが山頂一帯を覆っているのか、それとも雪庇の部分だけこんな状態なのかは定かではない。北側のみ僅かにダケカンバが邪魔をしているが、概ね360度の大展望だった。ここまで来ると岩菅山、横前倉岳は目の前だ。ここから見る限りでは両者鞍部はさほど急には見えず、雪庇のみ注意すればよさそうだ。

1820m峰から見た箙岳 岩菅山へと続く稜線
雪がうねって疲れる 左の谷に下って鞍部を目指す

 箙岳から先は尾根が狭まってルート取りは簡単になる。再び足跡が出現し、うねった雪面は右を巻きつつ進んでいく。1820m峰を越えて緩やかに下り、登りにかかったろころでこれまたうねった雪堤で歩きにくく、左に見えている谷にトラバースして鞍部に達した方が歩きやすいと判断し、段差が緩い所を狙って雪庇を下る。やっぱり平坦で上下の無駄な動きを必要としない地形は歩くのが楽で、順調に鞍部に到達した。

岩菅山北鞍部 北斜面を登る
小鞍部が現れ再び北斜面を登る もうすぐ岩菅山の稜線

 左の斜面を登るとなんとその先にも小鞍部があり、小さな雪庇を滑り降りて今度こそ岩菅山本体に取り付いた。しかし北斜面の登りで日当たりが悪いせいか雪がスカスカで、踏み抜き多発でよほどワカンを付けようと思ったが、もうすぐ山頂なので我慢して登っていく。場所によっては腰まで埋もれ、体を支える手を置いた場所も雪が柔らかくて力を入れると雪が抜けて脱出に苦労した。できるだけ木の隙間があって日当たりがある場所を選んで歩いた。

稜線に出る。崩壊しかけの雪庇がうねる 西側の樹林帯を進む
振り返ると箙岳が見える 岩菅山山頂

 やっと稜線に出ると日当たりがいい尾根になったが、雪庇ができた東側は半分崩壊し、危なくて歩けない。しかたないので西側の樹林帯を通ったが、これまた柔雪で難儀した。でも雪が消えた場所では発達したシラビソで笹は皆無で、雪の上を歩くよりずっと楽だった。もしかしたら無雪期でも登山道から楽々登れてしまうかもしれない? 樹林を抜けだした先が最高地点で、開けて日当たりがよく山頂らしい雰囲気の場所だった。もっとも、今は雪庇の上で地面より数m高いのだろうが。目の前には横前倉山が近いが手前の尾根が邪魔して鞍部はまだ見えない。さて、うまく降りられるだろうか。その前に長時間歩いたのでしばし休憩。一応、ここでアイゼンを付けておく。

岩菅山から見た横前倉山、風吹岳 横前倉山鞍部へと下り始める
ジャングル地帯を抜けると開けた雪原に出る 下ってきた尾根。写真の印象よりも急

 さあ、鞍部への地形はどうなっているだろうか。山頂からの下りだしはなだらかだが、すぐにシラビソが生えた急斜面になった。東斜面は雪庇なりかけの急な雪面だがその距離は短く、少しバックで下れば安全地帯に入りそうだが、尾根上は徐々にシラビソが密生してジャングル状態で先が見えない。まさが絶壁じゃないよなぁ。そのままジャングルを進むと突然樹林が切れて雪面が現れると同時に傾斜が緩み、無事に鞍部に降り立った。鞍部付近は西側は木があるが東側は全くなく、振り返ると岩菅山への傾斜はなかなかだった。鞍部付近には古い足跡が残っていたので、この先人も岩菅山から鞍部を通って横前倉山に登ったようだ。

横前倉山へと登り始める 岩菅山を振り返る
北斜面は踏み抜き多発 風吹岳への稜線は難路で岩登り必至

 この先は急傾斜区間は無く、樹林で日当たりが悪くボコボコ踏み抜く雪に苦労しながら高度を上げ、稜線が左に曲がるところで風吹岳へとつながる稜線を覗きこんでみたが、鞍部には巨大な露岩が鎮座して進路を塞ぎ、その先も絶壁の登りとなっていて私の力量では通過は不可能だ。しょうがないので岩菅山−横前倉山鞍部に戻って小敷池に下り、風吹岳南側から山頂を往復するか。
 
風吹岳分岐から見た横前倉山 軟雪の樹林帯を登る
横前倉山山頂 横前倉山から見た箙岳、蒲原山

 最後は日当たりのいい場所を選んで左から回り込むように横前倉山山頂に到着した。一帯はシラビソ樹林だが隙間が多く、展望はまあまあだ。山頂標識は見当たらず、訪問者の数はそう多くはないらしい。

鞍部へ戻る 鞍部から南へと下る。完全に笹が出ている
小尾根を下る 雪原に出る
小敷池から見た鞍部(中央)

 岩菅山で休憩したのでここは写真だけ撮影して鞍部に戻り、だいぶ笹が出てしまっている斜面を南に下り始める。地形図の等高線は込み合って下れるか心配だったが実際はそれほどではなく、雪が消えた小尾根末端で雪が付いた斜面に出たが危険はなく淡々と下ることができた。鞍部より岩菅側に寄った斜面の方が雪が続いて楽に下れたようだ。

小敷池。奥の低い尾根の向こうが風吹大池 風吹大池。一面の雪原

 小敷池は雪に埋もれてほとんど水面は見えず、どこまでが地面なのか判断がつかないので安全のため大回りして歩く。風吹大池との境界は小さな尾根になっており、それを乗り越えると小敷池とは比較にならない大きさの風吹大池にでた。ここも今は雪に埋もれているが6月くらいにはちゃんと池の姿に戻るだろうか。そろそろ雪が緩んでくる時間で、アイゼンを脱いでワカンを履いた。ここも池の上を安全に歩けるか不安なので周囲を迂回して南に向かった。

風吹岳南斜面に取り付く 本格的な登りが始まる
振り返ればフスブリ山 山スキーヤーが下ってきた

 左手の風吹岳へと続く斜面を見ながら進み、適当なところでザックをデポして空身で山頂を往復することに。最初は緩やかなシラビソ樹林の斜面だったが、樹林が開けると急斜面の雪面に変貌し、まっすぐ登れないくらいの傾斜でワカンをけり込みながらジグザグに高度を上げる。背後から人の声が聞こえたので振り返ると大池対岸斜面を数人のスキーヤーが滑り降りてきた。たぶん栂池自然園のリフトで上がってきたのだろう。

登ってきた斜面 風吹岳山頂

 やっと傾斜が緩むと樹林との境界の山頂に到着。意外にも何やら金属の板が雪面に顔を出していた。山頂標柱の頭か、それとも祠の屋根であろうか。帰ってからネットで調べてみたらなんと東屋の屋根のてっぺんだった。ということは積雪は3mくらいということか。こんなちょっとしか見えていないとそんな大きなものが埋もれているとは思えなかった。正面には横前倉山が大きく、鞍部を覗き込むと急激に落ち込んでおり、やっぱ常人ではここはやめた方がよさそうだった。

風吹山荘 スキーヤーが下ってきたトレース
大池南の尾根に乗る 奥にフスブリ山が見えてきた

 計画段階では風吹岳での時刻、疲労度でフスブリ山まで足を延ばすか考えることにしていたが、それなりに疲れたがまだ登りの体力は残っているし、暗くなるまでは十分余裕があるので進まない手はない。同じルートで戻るとスキーヤーは風吹岳を巻いて東に向かったようだ。ザックを背負って池の南端で目の前の尾根に登り、徐々に広がっていく稜線を西へと進む。シラビソが点在して先の地形がイマイチ見通せず、だだっ広い稜線で進路が分かりにくい。まあ、細かいことは気にせず高い所を目指せばいいのだが。

肩に出る 低いシラビソが続く
振り返れば風吹三山(横前倉山は風吹岳の裏側で見えない)
乗鞍岳方面

 どうやらスキーコースに乗ったようで古いスキー跡が登場し、1890m肩への登りにかかる。登りになると足が重く、稜線を正直に歩かず北斜面を斜めに登って少しでも距離を短縮しようとするが、古いスキー跡もそのようについていた。帰りに同じルートを歩いたが、スキーツアーコースを示す標識が多数見られた。登りでは気付かなかったので、栂池ループウェイで天狗原まで登り、そこから滑り降りるスキーヤーのための標識らしい。肩に上がってからは稜線を歩くが、ここで先ほどのスキーヤーの新しいスキー跡に出会った。

熊の足跡。今年初めての目撃 もうすぐ三角点。やたら広い
フスブリ山山頂 フスブリ山から見た乗鞍岳方面

 疎らなシラビソ樹林を緩やかに登るが、さすがにここまで歩くとかなり疲労し速度は遅いが、やっぱ先週の丸山岳と比較するとまだ限界ではない。本当に先週は苦行だったなぁ。荷物の重さの差は大きい。平坦地帯に入ると山頂は近いが、地形図によると最西端が山頂となっているのでそのまま進み、最高地点というよりこれより先は下りになるという場所でGPSは山頂を示した。三角点があるはずだが数mの雪の下だろうから探しようはない。山頂標識は無く、スキーコースから僅かに外れているようでスキー跡もなかった。僅かにシラビソの木が生え、地形がなだらかなこともあって北側の展望はいいとは言えないが、その他の方向は好展望だ。ここまで来ると舟越の頭は近く、森林限界で未だ真っ白だ。小蓮華岳への尾根が邪魔して白馬岳が見えないのが残念だが、当然ながら真っ白であろう。雪倉岳と朝日岳に挟まれて低い赤男山も、今なら藪は雪の下で楽勝だろうな。しばしひっくり返って休憩。

 帰りのコース取りはあまりまじめに考えていなかったが、行きと同じ尾根をそのまま戻るのでは能がないのでどこかから林道に下るのがいいだろう。フスブリ山から直接林道に下れれば一番楽なのだが、そのまま下ると最後はウド川を越えられない。次の岩菅山から北尾根を下った場合、尾根末端でコンタが詰まった急斜面が待っている。そうなると最善の策が箙岳北西尾根だ。末端の地形が複雑で、うまい具合に緩斜面帯を乗り継げるかが腕の見せ所だろうか。まあ、現場で樹林で視界を遮られなければ大丈夫だろう。

スキーコース目印に沿って下る 科鉢池の大きな凹み
途中で見た横前倉山−風吹岳鞍部 雪のうねった区間は東を巻いた
風吹大池北側から見た風吹大池と風吹三山
科鉢池付近から見た朝日岳〜黒負山(クリックで拡大)

 フスブリ山からはしばらくは自分の足跡を追いかけ、風吹大池周囲の稜線に達してからは時計回りに尾根上を行く。火口跡だろうか、あちこちに小さな凹みがあり、無雪期は池になっているのかもしれない。だだっ広い尾根が狭まると大きくうねった雪庇が現れ、そのまま歩くと上下動が激しく無駄な労力を使うので、古いスキー跡に従って稜線東側をトラバース。さほど傾斜がきつくないのでワカンを履いたままでも問題なかった。一部、壁の傾斜がきついとことだけ上部に上がったが、すぐにまたトラバースに戻って岩菅山北方の鞍部に到着した。

岩菅山北稜線に出る 登りで谷にトラバースした自分の足跡
1800m峰先で左にトラバース開始 だだっ広い尾根を下る
やっと尾根がはっきりしてきた カモシカに遭遇。最大望遠で撮影&ピクセル等倍

 稜線に上がるとこれまたうねった雪堤なので北側を巻き、少し下ると登りの自分の足跡に遭遇、ちょうど谷へとトラバースし始めた場所だった。箙岳手前の1800m峰を越えて鞍部からは左にトラバースし、北西尾根へと乗り換える。最初は開けた雪原だったがやがて疎らなシラビソ樹林に突入、地形図どおり傾斜は緩いので等高線に沿って歩いても足への負担は少ない。だだっ広い尾根で中心が掴めず、とりあえず東端まで行って蒲原山が目の前に見えたところで行き過ぎが判明して左に進路を振る。ちょうど正面に黒負山を見ながら下っていく。やがて尾根の幅が狭まり右手の傾斜がきつくなれば地形がはっきりして尾根を追うのも楽になる。この標高ではシラビソからブナを中心とする広葉樹林に変わり、遠くにカモシカの姿も見えた。最大光学倍率で撮影したが等倍でこんな大きさになった。

北西尾根をどんどん下る 点々と存在する目印
北西尾根を振り返る 尾根末端

 いつのまにかポツポツと赤布の目印が見られるようになり、山スキーで歩く人もいるようだ。あまり頻繁には出現しないが正確に北西尾根をトレースしているようだ。尾根下部にいくと地形が読みにくくなり、外さないよう周囲の地形を見渡しなが進んでいく。左隣の尾根が接近してくると右手から大きな水音が聞こえるようになり、尾根が急激に狭まった。どうも予定より下りすぎてしまったらしいが、登り返すのは面倒なのでそのまま末端まで行ってみることにする。一応、地形図では末端は崖マークはなく、多少傾斜はあっても問題ないレベルのはずだ。

下部の緩斜面に強引に下る 下ってきた斜面を振り返る
スキーコース登場 そのままスキーコースを辿る

 いよいよ尾根末端に出ると直下にオレンジ色の標識が付いた木があるではないか。スキーコースがあるようだ。そこまで行けばその後は危険地帯は無いはずで、どうにか降りられそうな場所を探す。末端は予想以上の傾斜で斜面をそのまま下るのは躊躇するくらいだが、僅かに凹んだ谷があり、そこは少しだけ傾斜が緩いので下ることにした。本来ならアイゼンを装着したいところだが、今は日中で雪が緩んでワカンでも蹴りこめるし、ピッケルで支えることもできるので、ワカンを履いたままバックで下った。標高差は10m〜20m程度で簡単にスキーコースに出られた。やれやれ。スキーコースは岩菅山北尾根との間を流れる沢沿いに下ってきており、そっちが正解だったようだ。

無事に林道に到着 先行者のつぼ足とワカン(私のはワカンの方)
一面雪に覆われた白池 そりで滑った跡

 あとはなだらかにトラバースし、スキーコースが登っていくところも水平にトラバースすると眼下に県道が出現、五月池の近くに降り立った。ここで最後の休憩。林道上にはスノーモービルのトレースと2人分の下りのつぼ足トレースがくっきり残っていた。これだけ潜ると歩くのも大変だろう。こちらはワカンなのでほとんど潜らない。それでも日中の柔らかい雪は難儀し、水平移動でも疲れた。白池を通過して下りにかかるとほっとできるが、全体的に傾斜が緩やかであまり楽ではない。スキー用のショートカットコースを歩いて林道のカーブはほとんど突っ切っていく。ショートカットコースには何やら不思議な痕跡があり、スキーではなく何か別のものだ。たびたび登場する痕跡をよ〜く観察するとずっと続いているわけではなく下りの傾斜があるところだけ登場し、この跡がある間はつぼ足が消えて終点ではつぼ足が出現する。これで正体が分かった。それは「そり」であろう。わざわざそりを持ち上げて帰りに滑るとはなかなか気合が入った人らしい。こんなのは初めて見た。

 延々と続く雪に埋もれた無人の林道を黙々と歩き、やっと除雪終点に到着。朝は無人だった場所も工事の車が入って重機が動いていた。それにしても今週も11時間行動で疲れた!! 結局、その後体調が悪くなってしまい、この文章を書いている火曜日現在でも微熱がある状態だ。大型連休までに回復するのか心配だなぁ・・・。


所要時間
 5:26除雪終点−−6:14林道を離れる−−6:26倒木で沢を渡る−−7:42稜線−−7:54一難波山−−8:16蒲原山北峰−−8:25蒲原山8:43−−9:48箙岳9:50−−10:25岩菅山10:53−−11:01鞍部−−11:15横前倉山11:17−−11:21鞍部−−11:25小敷池−−11:30小敷池、風吹大池を分ける尾根11:35−−11:39ザックをデポ−−11:53風吹岳11:55−−12:00ザックデポ地−−12:08風吹山荘前−−12:11稜線−−12:55フスブリ山13:37−−14:34箙岳西1800m峰−−15:23箙岳北西尾根末端−−15:36林道15:44−−16:46除雪終点



2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る