北海道 北大雪 平山、比麻良山 2009年7月18日



 ニセイカウシュッペ山に登った翌日は天候は下り坂で、道南から雨が降り始める予報が出ていた。当然、南や西から雨が降り出すわけで、北や東の方ほど降り始めの時間が遅くなると考えられる。そこでこのまま北大雪の山に登ることにしてガイドブックを漁ると平山という山を発見した。地元でも良く登られる山とのことで道はしっかりしているようだし短時間で登れるようで雨が降り始めるであろうお昼までには下山できそうで、今回の気象条件では適当な山だろう。ガイドブックでは平山の北方に比麻良山と比麻奈山の2山があって「登山道」ではなく「踏跡」があると書かれており、山名事典で調べると比麻良山のみ記載されていたのでそちらには天候が持てば登ることにする。

一般車駐車場分岐 左写真で草に埋もれかけた標識
一般車駐車場 林道終点の登山口

 地元でも盛んに登られる山だけあり、国道を走っていると登山口の案内標識が出現、それに従って進んでいくとやがてダートの林道に変貌し、そのまま道なりに進んでいく。要所要所に案内があり終点が登山口のある駐車場だったが、その100mほど手前には草に埋もれかけた看板があり、これより先は関係者以外車の進入禁止と書かれている。しかしこれだけ草に埋もれていては普通は気づかないだろうから車で入っても良さそうに思えたが、気の小さい私は手前の駐車スペースに車を置いた。しかし、下山時に林道終点に出ると駐車場は満杯で地元の人は皆終点まで乗り入れており、今は問題ないようだ。完全に草に埋もれるか撤去して欲しいところだ。出発準備をしていると徳島ナンバーのハッチバック車がやってきて私の後ろに駐車した。天気は雲は多いもののまだ青空が見えるくらいで、しばらくは雨は無さそうだ。ラジオを聴くと既に室蘭まで雨が降り出しているとのことで、上川まで上がったままで正解だった。

登山口 登山口の案内標識
沢には橋がかかっていた しっかりと笹が刈り払われた登山道

 登山口の入林届けに記帳し出発、ガイドブックの情報どおり100名山クラスの非常にいい道が続いており、濡れた笹や木の葉が体に触れることは皆無であった。北海道の山でここまでいい道というのは珍しいような。これなら雨上がり直後でも問題無さそうだ。登山道は沢沿いに上がっていくが、沢から少し距離が離れており沢歩きのような場所も無く増水の影響も無いだろう。枝沢をいくつも越えていくので水の補給も可能だ。一部旧道が崩壊して道を付け替えた区間もあったが、しっかりと整備しなおしてあり、手入れが行き届いていた。

沢沿いに登っていく 冷涼の滝

 沢沿いの道なので冷たい空気が流れ心地よい。もともと北海道は気温が低く、この時期に標高1000mから登りはじめても汗だくになることは無いが(関東近郊では地獄の暑さだ)、それに加えて冷たい風が吹き降りてくると爽快だ。冷涼の滝などとその名の通りの滝もあった。

雪渓を横断する。早朝はアイゼンが欲しいところ 雪渓沿いを登る

 標高が上がると沢の本流は雪渓の下に隠れてしまい、雪渓の左岸を登っていく。そして雪渓を横断して上部の夏道に出るところが登場、これが第2雪渓らしい。この時期ともなるとかなり雪は硬くなっているが、まだ氷にはなっていないのでアイゼンが無くてもどうにか通過できそうだ。ステップは切れていないので、浅いスプーンカットを選んで足を置き、何度が蹴りこんでステップを切り、ステッキをピッケル代わりに雪渓に突き立てて上がっていく。登りはいいが下りはちょっといやらしく、初心者には軽アイゼンがあった方がいいだろう。特に早朝で気温が低く雪が締まった時間帯はキックステップが効きにくい。日中は雪が緩んで蹴り込めるのだが。

小尾根を登る 上部の雪渓。雪の上は歩かない
森林限界を超える 稜線が見えてきた

 雪渓を通過してしまえばステッキの出番はなく、夏道を淡々と上がっていく。雪渓を離れて小さな尾根に乗るが、尾根上なのに小さな沢が流れており不思議に思っていると、傾斜が緩んで2つ目の雪渓が登場した。これが水源だったのだ。そしてこれが第1雪渓だろう。ここは雪の上は歩かず右から夏道を辿った。ここを越えると樹林の高さが低くなって森林限界の様相が濃くなり、立ったハイマツも混じるようになった。斜面を上がっていくとハイマツの高さも低くなっていき、主稜線に飛び出すと同時に森林限界を越えて、寝たハイマツとお花畑、そして砂礫地に変貌し、一気に視界が開けた。やっぱりこれがないとねぇ。

稜線の平山、比麻良山分岐 分岐から見た平山
分岐から見た比麻良山への稜線

 稜線上には標識があり、左に800mで平山、右に1.8kmで比麻良山と出ていた。まだ時刻は7時前なのでまずは距離がある比麻良山へと向かうことにした。この稜線はずっと寝たハイマツに砂礫地で展望がよく、比麻良山と思われる最高点も良く見えていた。ガイドブックでは踏跡と書かれていたが、この植生なら藪は皆無なので問題ないだろうし、そもそも標識で比麻良山が出ているくらいだから登山道クラスの道が続いているのだろう。案の定、薄い植生の中に明瞭な道が延びており、快適な稜線歩きを楽しめた。

コマクサが咲いていた 寝たハイマツの広い稜線
ニセイカウシュッペ山へと続く尾根 山名辞典の比麻良山山頂
山名辞典の比麻良山から見たパノラマ展望写真(クリックで拡大)

 緩やかに登ってニセイカウシュッペ山へとつながる稜線が分岐するピークに到着、西に延びる尾根上には明瞭な踏跡があり、ニセイカウシュッペ山側からもこの尾根に向かって踏跡があったので、たぶん両者はつながっているのだろう。縦走も面白そうだが足が確保できないのが難点だ。その先のピークが最高点のようで、GPSの電源を入れると比麻良山山頂だった。なお、比麻良山の緯度経度は日本山名辞典記載のもので、帰ってから地形図を閲覧すると山名辞典の山頂は1811m標高点、つまり最高峰で、地形図の比麻良山は1796m三角点だった。まあ、最高峰を山頂とするのが妥当だろう。1811m峰には標識は無く狭い山頂で、普通なら通過してしまうだろう。ちょっとだけ休憩して平山へと向かう。

分岐付近ではやたらとホシガラスが多い なだらかな平山へと向かう
平山山頂 平山から見た雄阿寒岳
平山から見た比麻良山方面(クリックで拡大)
平山から見た知床。写真ではかなり薄く画像処理で強調が必要だったが肉眼ではもっとはっきり見えた

 平山へも同じような好展望の稜線が続き、緩やかに登っていく。なぜかこの界隈はやたらとホシガラスが多く、何羽も飛び回って地面をつついていた。個性にバラツキがあるようで警戒心が強く人が近づくとすぐ逃げるのもいれば平然と地面をつつき続けるのもいた。ハイマツが切れた砂礫地にはコマクサが多く見られたが、山頂が近づくと一面のハイマツの海に変貌してお花畑は消えてしまう。そしてなだらかに登ると山名通りの平らな平山山頂に到着。山頂標識が立ち、周囲は低いハイマツの海が広がっていた。ハイマツの高さが低いので見晴らしは良く、360度の展望だが昨日のような晴れではなく曇っており、日高の山並みは見えなかった。それでも東大雪の山並みの鞍部に富士山型の雄阿寒岳が見えたし、東方にはうっすらと知床の山々が見えた。現場では斜里岳かと思ったのだが、帰ってからカシミールで確認すると斜里岳は山蔭に入ってしまうようで見えないことが判明、山並みの形を調査して知床だと分かった。ここは網走支庁に引っ掛かっているので道東と言えば道東だが、けっこう距離があるはずだ。

 山頂には夫婦らしき男女の姿があったが先に下って行った。天候は下り坂でこれ以上展望が良くなることもなさそうだので、こちらもしばらくしてから下山開始。稜線を離れて下っていくと、続々と登ってくる人たちとすれ違う。これから天候が悪化するというのにえらい人気の山だ。まあ、手軽に登れて登山道が整備され、森林限界を超えて展望がいいのだからこうなるか。下部の雪渓の下りが気になったが、朝一と違って何人も登ってきてステップが切れていたのでノーアイゼンでもストックで体を支えながら無事下ることができた。

雪渓を登る人。だいぶステップが切れていた 林道終点にはたくさんの車が。一般車もOKらしい


 登山口に戻るとたくさんの車が止まっており、草に埋もれた「関係車両以外進入禁止」の標識はもう時効らしい。


所要時間
 5:02 一般車駐車場−−5:04 登山口−−6:07 雪渓−−6:47 稜線−−7:17 比麻良山 7:33−−7:57 下降点−−8:11 平山 8:43−−8:57 下降点−−9:22 雪渓−−10:15 登山口−−10:17 一般車駐車場


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