八ヶ岳 赤岳(県界尾根ルート) 2009年7月25日



 関東は既に梅雨が明けたはずだが、梅雨明け宣言直後以外は再び雲が多く梅雨に逆戻りしてしまった。今週末も予報では曇りや雨で、予報の天気図が現実となれば下界はともかく山の上は南西の強風でガスって何も見えないし、大気の状態が不安定で午後は雷雨の可能性もあるだろう。今週末は山に行くのはやめようかと思ったが、土曜午前中だけならガスっても雨はどうにかなりそうなので出かけることにしたが、好天は全く期待できない中で金と時間をかけて遠くまで行くのは得策でない。気温も高いので3000m級でないと暑そうだしということで、近場で手軽に登れる八ヶ岳に向かうことにした。東京から近い野辺山側からまだ歩いたことが無い県界尾根から直接赤岳を目指す。これだと車で標高1650mまで入れるので標高差は1300mを切っているので楽々日帰り可能だろう。

施錠されたゲート。左に登山口がある 草ぶれた登山口

 中央道八王子料金所からだと韮崎ICまでは通勤割引が効くので土曜日まで時間待ちする必要はなく、韮崎ICを降りて一般道で清里、野辺山と走って八ヶ岳牧場へと向かう。志木市立八ヶ岳自然の家の標識がいい道しるべで、舗装が切れてダートになってからも直進を続けると右カーブのところで自然の家は直進、登山口は林道をまだ進む。かなり雨が強いが水はけのよい砂利道で泥だらけでスタックするような個所もなくゲート前の駐車場に到着、ここで仮眠した。天気が悪いしここはマイナーな登山口なので他に車が来ることは無かった。

最初からこんな道。でも足元にはちゃんと道がある 防火帯が最も笹の海が濃いが道はある

 翌朝、早朝はまだ雨が降っていたのでゆっくり起きて出発、ガスって僅かに雨が降っているがたぶん上がるだろう。登山口は登山届のポストがあるが、その先は最初から笹が被った道で笹は雨でたっぷりと濡れており、先日の1839峰の濡れたハイマツと同様にろくでもない目に遭いあそうなので、足元はスパッツとゴアで固めておく。歩いてみると笹の下には明瞭な踏跡があるのだが、防火帯のような広く樹木が存在しない場所では両側から笹が被って一見したのではどこにルートがあるのか分からないくらいだった。私の場合はこんな場所も慣れているので僅かな笹のへこみや「足探り」でトレースを見つけて進んで行けたが不慣れな人では道を探せないかもしれない。防火帯?ではこんな状態が続き、靴の中には予想通り浸水してしまった。笹の高さは私の身長で腰くらいで、ゴアの上着は付けなくてもどうにか上半身は濡れなかったが、小柄な人だと上も防水しないとびしょ濡れになってしまうだろう。

樹林に入ると少し笹が薄くなるが体に触れる 防火線の頭
途中に石仏があった 徐々にシラビソが濃くなってくる

 樹林に入ると少し笹が薄くなり道を失う心配は無くなったが、やっぱり濡れた笹のはみ出しはあるのでスパッツ、ゴアは必需品だ。まあ、今日は曇って日差しが無いのでゴアのズボンを履いていてもあまり暑さは感じずに済んでいるが。曇ってガスって樹林の中は暗く、液晶画面が壊れて設定が見えないデジカメでは感度を上げることもできず、ブレた写真も多かった。早いところ修理に出さないとなぁ。1806.8m三角点には「防火線の頭」との標識があった。ここも樹林で展望は無く、鹿の食害で皮を食われて立ち枯れたシラビソも多い。八ッも鹿が増えているようだ。いよいよシラビソが濃くなってきて八ヶ岳らしい風景だが、鹿に皮を食われて白い幹がむき出しのシラビソが痛々しい。鹿の足跡も多く、登山道には人間の足跡は無いが新しい鹿の足跡はあった。本日初のお客は鹿だったらしい。登山道脇のガレにも無数の鹿の足跡が残っており、鹿の多さがうかがえた。

美し森方面からの登山道が合流 小天狗山頂
小天狗西側から見た赤岳(中央付近)。右は横岳

 樹林帯を登ると美し森方面からの登山道が合流、僅かで久しぶりの小天狗山頂だった。西方面と南方向に僅かに展望があるが、下界は雲に覆われていた。この標高まで登ると下の雲の層を抜けており、上空は雲が多いが切れ目から少しだけ青空が見えていた。ここから緩やかに高度を上げる県境尾根に乗り、火山らしく場所によっては樹林が切れて火山岩と砂礫が広がる展望地がある。進行方向には赤岳が聳えているはずだが、横岳と赤岳の鞍部は見えているが、そこから少しでも標高が上がった場所はガスの中だった。これからこのガスの層が上がってくれるのか、それとも下がってくるのか。明け方は降っていた雨がやんでいるので回復傾向と考えたい。

ずっとこんな道ならゴアは不要だが・・・ 時々縞枯帯がある
大天狗山頂 いよいよガスの層が近い

 傾斜が増して効率よく高度を上げて傾斜が緩んだ場所が大天狗で、ここも数年ぶりの場所だ。小天狗と違って完全にシラビソ樹林に囲まれて展望皆無だが、標高は2400mを越えているし日差しが遮られて夏は涼しくていいだろう。登山道から数秒程度だけ外れているがちゃんとルートはあるので簡単に山頂に立てる。少しの間、なだらかな尾根を歩いた跡は再び傾斜が出てきてシラビソ樹林を登っていると、標高2600mくらいでとうとうガスの層に突入した。まあ、この辺はまだ樹林で風景は見えないのでガスっていてもいいが、もうちょっとで森林限界だが何も見えないなぁ。もっとも、そのことは出発前から覚悟していたことだが。雨が降っていないだけマシだろう。

ハイマツが混じり始める 足場板で右に巻く
岩屋 鎖場の1つ

 ハイマツがみられるようになると森林限界間近で、高山植物も見られるようになる。この辺りでは標高2600〜2700mが森林限界であるが、これが北海道だと1000m低い標高1600〜1700mで森林限界となる。本州の山よりも標高は低くとも気候は+1000mと考えなければならない。先日大量遭難事故が発生したトムラウシ山は標高約2100mだから、本州の山でいえば標高3100mに相当する植生と気候だ。装備が貧弱で悪天候なら夏でも凍死しておかしくない。気温もこの付近で10℃程度だったが、北海道の2000m弱の山でも10℃かそれ以下だった。

 緩やかな尾根が終わると急に立ち上がった稜線になり、梯子や鎖が出てくる。とくに痩せた尾根ではないので恐怖感はなく、鎖場も危険個所というほどではないので特に上り下りで問題は無かった。鎖が無いと登れないような場所ではない。ただ、傾斜はきついので残雪期はイヤらしいルートだろう。

そろそろ森林限界 赤岳展望荘への巻道分岐
鉄梯子を登る 鹿の足跡

 鎖場が終わると赤岳展望荘への巻き道分岐で、今回は赤岳山頂目指すのでここは直進だ。上へと登っていくとガスの中から意外とあっさり赤岳頂上小屋が出現、ここまでは稜線が盾となって南西の風を防いでくれたが、この先は風が強くて体が冷えるので小屋の前でゴアの上着を着た。いつもなら小屋から間近に見えるはずの山頂は霧に埋没して影も形も見えない。

赤岳頂上小屋 赤岳山頂。視界皆無

 稜線に出るとウペペサンケ山のような猛烈な強風かと思ったが、風は強いものの行動に支障は無い程度で岩稜帯でも問題なく歩けた。ガスで視界皆無の中を南に進むとボーっと霞んだ赤岳が姿を現した。この天気なので無人かと思ったがカラフルなゴアを着た数人の姿が・・・。いやはや、物好きは他にもいるもんだ。山頂は風が強く、山頂東直下にザックを置いて休憩している。山頂の男性4人組は三脚を出して記念写真撮影中だったが、カメラを取り付けたトップヘビーの三脚は強風でコケそうだった。私も少々休憩したが、この天候が回復する見込みもなく、時間が経過するほど雷雨の可能性が高くなるので短時間で下山を開始した。

 県界尾根コースを下るとポツポツと下りの登山者が見られたが、時刻から考えて前日泊の人達だろう。登ってくる人もいて、こんな天気でも八ヶ岳は賑わっていた。小天狗より標高が高い部分の笹は乾いてたが、防火線の頭周辺から下は濃いガス帯で笹は雨が降った時のようにびしょ濡れで、靴の中はさらに浸水してしまった。ゲート前の登山口は相変わらず私の車しか無く、着替えているとポツポツ雨が落ちてきた。やっぱ今日は天気ダメだったなぁ。


所要時間
6:05登山口−−6:30防火線の頭−−7:18小天狗−−8:06大天狗−−8:43巻道分岐−−9:06赤岳9:12−−9:30巻道分岐−−9:55大天狗−−10:31小天狗(休憩)10:43−−11:21防火線の頭−−11:37登山口

 

 

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