白山 白山釈迦岳 2009年9月5日


 白山釈迦岳は今年の大型連休に別山、焼滑と登った後に行こうかと考えていたのだが、天候がイマイチで登らなかった山である。まあ、夏道があるのでわざわざ残雪期に登る必要はないのだが、真夏に登るには標高不足でそろそろ涼しくなってきた9月になって足を伸ばすことにした。

 東京から加賀白山は遠い。睡眠時間を確保するために会社を午後休んで関越道に乗り、上信越道から北陸道に入り、金沢東IC手前のパーキングエリアで仮眠に突入。もちろん、これは土日\1000の恩恵にあずかるためであるが、練馬から東松山間の近郊区間は別料金なので必ず\1000を越える。今回は\1500であった。

 4時過ぎに起きて金沢西ICで降りてまずは新岩間温泉を目指した。当初は先に薬師山を登り、日曜日に釈迦岳を登ろうと考えていたわけであるが、国道157号線を南下していると電光表示板に「県道白山公園線は土曜PM8:00〜日曜正午まで登山規制中」と出ているではないか。この時期なら市ノ瀬から別当出合までマイカー規制されていて当然だと思ったが「通行」規制ではなく「登山」規制の文言が気になった。まさかこの時間に登りはじめてはいけないのだろうか? 常識的にそれはありえないだろうが「登山規制」の中身がはっきりせず、まさに規制時間中に市ノ瀬から歩き始めることもあり、現場に行ってもし登れない事態になったらもったいないので、土曜日に釈迦岳に登ってしまうことにして市ノ瀬まで車を走らせた。

ガラガラの市ノ瀬駐車場 土曜20:00〜日曜12:00を除き別当出合まで進入可

 確かエアリアマップでは釈迦岳に向かう林道は一般者通行止めと書かれていたし、市ノ瀬から先は駐車禁止の看板も出ていたので最初から素直に市ノ瀬から歩き始めることにして、大型連休中にもお世話になった駐車場に車を突っ込んで朝飯を食い、日帰り装備を背負って歩き出した。どうせ今日は釈迦岳しか登らないし、その後は新岩間温泉まで移動すればいいので出発が遅くなっても問題なし。もう6時を過ぎてすっかり明るくなっていたが雲は多めだった。出発に際して車に積みっぱなしのエアリアマップをゴソゴソやって白山を探したのだが見当たらない。まあ、ここは有名どころだから大丈夫だろう。おおよそのコースはロードマップで頭に入れておく。

釈迦新道&禅定道共通登山口 杉木立を登る。春じゃなくてよかったぁ

 舗装道路を歩いてオープンしているゲートを通過、最初のヘアピンカーブで釈迦新道登山口の標識があり杉の植林帯に入った。ただしここには釈迦岳ではなく「釈迦前峰」の名前があり、地図が無いとどこを指しているのか不明だ。ロードマップでは治山用林道を歩くように書かれていたが、たぶんエアリアマップならこの道も書かれていたのだろう。

林道に出た。禅定道は直進、釈迦新道は林道 治山林道を歩く

 杉木立の中に良く踏まれた登山道を登ると未舗装の林道に出た。林道を横切ってなおも直進する登山道は「禅定道」と書かれており、釈迦岳方面は林道を左に進むよう標識が立っている。左手は深い谷(湯の谷川)で、林道でこれを渡ってから山道になるだろうからしばしの林道歩きだ。栃の木が多い山で林道に実が多く落ちていた。

湯の谷川を渡る 登山口直下の遭難慰霊碑。水場あり
釈迦新道登山口 登山口前に駐車していた林野庁の車

 湯の谷川は頑丈そうだが小さな橋で渡り、右にカーブして少し登ったところに登山口があり、駐車余地に林野庁の車が止まっていた。やっとここから本格的な登山の開始だ。入口には登山者数をカウントする機械が設置されていたが、ここは少ないだろうなぁ。さすがに刈り払われたいい道ではあるが、僅かに草が足に触れて雨露に濡れた草で靴下が徐々に濡れてくる。スパッツを付ければいいのだが、気温が高めで暑いのでこのまま進んだ。

明瞭な登山道が続く 標高1420m付近の水場入口
笹もきれいに刈払われている 標高約1850mを越えると笹原化

 積雪が多い地域なのでブナが多く、地面付近は笹も多いので登山道は大変助かる。樹林の隙間から別山付近が見えたが雲が多く、天気予報のようにすっきり晴れていないようだ。まあ、雨が降りそうな雰囲気は無いので問題ないが、山頂に達したときに展望があるだろうか。ジグザグを繰り返しながら標高をあげるとブナからダケカンバが優勢となる。標高が1850mを越えると突如として樹林が切れて広い笹原の斜面に変貌、青空が顔を出すとすばらしい光景だ。まだ森林限界の高さではないので地質か気象的な要因だろうか。左前方には同様に樹林が切れて緑の笹原に覆われた大きなピークがあり、あれが釈迦岳だろうか?

これが釈迦岳と思ったら西方の1980m峰 春に登った別山と三ノ峰が見えた
湯の谷の大規模治山工事現場 釈迦前峰(2020m峰)

 笹の斜面をジグザグに登ると尾根が明瞭となり、そのピークで釈迦前峰の標識が登場した。地図がないので不明だが、奥にはもう少し高いピークが見えており、たぶんそっちが本物の釈迦岳なのだろうと先に進む。今日はGPSも持ってこなかったので山頂標識だけが頼りだ。

シラビソの実。初めて見た 釈迦岳山頂分岐。右下の物体が案内標識

 小さな鞍部に下ると右手が切れ落ちて険しい谷が目に入る。そこは大規模な治山工事が進行中で、林道歩きの最中に大型車両に何台も抜かれたがここが工事現場のようだ。土曜日なのにお仕事ご苦労様。この尾根は小ぶりのシラビソが主体だが、てっぺん付近に大きな松ぼっくりが鈴なりの木があった。考えてみればシラビソの松ぼっくりが木についているのは初めて見たような。紫がかって巨大な実はちょっとグロテスクな印象だった。

ここで左折し、笹に埋もれた踏跡を登る 白山釈迦岳山頂
白山釈迦岳から見た白山核心部

 小広い場所に出ると直進するルートと右に曲がるルートが分岐、道端の標柱では直進は「室道」と書かれているが右折ルートの記載がない。さて、どこに行く道なのか? 無視して直進しようとしたら地面付近に文字が霞んだ手製の「釈迦岳」の標識を発見、こっちが山頂への道らしい。エアリアマップの記載はよく覚えていないが登山道が山頂を通っていたような気がするが、実際は縦走路は山頂を巻いてしまうらしい。

 道が細くなると濡れた草のはみ出しが増え、手で押しのけて進む。すぐに道が左に分岐し、ここにも釈迦岳の標識が立っていて助かった。今度は腰の高さの笹の中に踏跡があり、これまた濡れていて掻き分けながら登っていくが、ズボンはびしょ濡れになってしまった。乾いていればどうということがない笹なのだが。

 傾斜が緩むと笹が切れた小さなスペースが登場し、三角点と地面に置かれた山頂標識があった。山頂付近は矮小なシラビソで展望はいいとは言えないが、山頂手前の笹原は絶好の展望地だ。白山へと続くなだらかな稜線から白山山頂、剣が峰がすっきりと並んでいたが、別山周辺は雲が沸いて沈んでしまっていた。濡れた笹の中では休憩もままならないので釈迦前峰まで登り、石の上に座って休憩した。休んでいるうちに頭上に雲が広がり青空が見えなくなってしまったが、日差しが遮られて涼しくてちょうど良かった。

林道脇の栃の実 ゲート先の斜面にいたカモシカ

 下山を始めるとガスが上がってきたようで途中で霧の層に突入、これも涼をもたらしてくれた。今日は思ったよりも気温が上がって直射日光があると暑いのだが、季節は確実に秋に向かっているようだ。それを顕著に感じさせるのが蛇の日向ぼっこだ。夏の間は蛇を見かける機会は少ないが、気温が低下してくると日差しが得られる開けた登山道に蛇が集まってくるので遭遇確率が高くなる。今回も直射日光が当たる登山道脇にたくさん蛇がたむろしていた。あ、忘れるところだった、細谷川にかかる橋を渡る手前のカーブの山側斜面は深い草つきになっているが、そこにカモシカが立っていた。全く動かないので普通の人は気付かないだろうが、私の場合は熊かカモシカがいないかと草付き斜面をキョロキョロしながら歩いていたので気付くことができた。

 林道に下りたが今日は登山道では誰とも会わなかった。やっぱ釈迦岳経由で登るのは少数派だろう。大型車両が何台も通過する林道の端を歩き、市ノ瀬に下った。市ノ瀬ではお隣の車の主としばし歓談。明日白山に登るとのことで、今日はここで車中泊とのこと。100名山を中心に登っているとのことで、年齢は70才だというがもっと若く見えた。ほとんど単独行でしかも日帰りで、ガイドブックのコースタイムより短い時間で登るというのだから、年齢を考えると驚異的だ。藪山はやらないとのことだが、一般登山道がある山に関しては年齢が近いKUMO氏よりも足が速そうだ。まあ、KUMO氏の場合は速さではなく持久力が驚異的なのだが。これから天気はもっと良くなるはずで、明日は白山山頂から大展望を楽しめるだろう。デジカメに収められた数々の写真も青空をバックにしたものが多かった。私の時はガスって何も見えなかった幌尻岳もすっきり晴れた写真だった。


所要時間
 6:16市ノ瀬−−6:43治山林道−−7:14釈迦新道登山口−−9:01釈迦前峰−−9:13白山釈迦岳−−9:22釈迦前峰9:41−−10:51釈迦新道登山口−−11:21治山林道を離れる−−11:47市ノ瀬  

 

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