白山北部 薬師山 (2023.5m) 2009年9月6日


 薬師山は白山北部にあり、白山核心部を日帰りしたときには大白川から登った関係で足を伸ばせなかった山だ。南側の白山釈迦岳の翌日に片付けるのにはちょうどいいだろう。登山口は新岩間温泉から分岐する楽々新道か、新岩間温泉よりもっと車道を入った岩間ヒュッテからの岩間新道となるが、たぶん一般車は新岩間温泉までしか入れないだろうと予想した。まじめにネットで調べればどこまで車で入れるか分かるのだろうが・・・・。

駐車場先のゲート。自転車、バイクは横をすり抜け可能 新岩間温泉駐車場

 白山釈迦岳を下山後、白峰で温泉に入って汗を洗い流し、そのまま補給無しで新岩間温泉を目指す(ガソリン、食料は前もって補給済み)。国道から県道に入り、やがて崖っぷちの細い舗装道を進むようになり、対向車に注意しながらソロソロと運転する。もし対向車が来たらこちらが崖側に寄らねばならず、下手に脱輪すれば谷底に真っ逆さまだ。普通、このような道には転落防止にガードレールかガードロープがあるのだが、ここは何もない区間がけっこうあるので要注意だ。幸い、すれ違いに困る狭い場所で対向車がやってくることなく新岩間温泉に到着、宿は休業していた。予想通りここにゲートがあって一般車は入ることはできないようになっており、温泉宿の反対側に駐車場とトイレが設置されていたのでここを今夜の宿とする。駐車している車は登山者かと思ったら岩間ヒュッテの露天風呂が目的の客ばかりで、暗くなる頃には車はみんないなくなってしまい、駐車場ではないゲート近くの駐車余地に1台だけとなった。明日は暗いうちから歩き始める予定なので、早々に晩酌を楽しんで寝た。

林道は状態良好(帰りに撮影) 林道には土石流監視用?カメラが数台あった

 翌朝は3時前に起床し、朝飯を食って3時半過ぎに出発した。上空は快晴のようで星が瞬き月が出ているが、お月様は西斜面の向こう側で林道は真っ暗だった。LEDのヘッドランプで出発、たぶん林道終点に到着してもまだ真っ暗だろうなぁ。今の時期は5時を過ぎないと明るくならない。林道は最初のうちは上り坂で自転車では押して登る区間が続き、後半は水平移動区間が続く。ポツポツ落石が見られるが全般的には良好な道でゲートが無ければ一般車でも終点まで走れる状態だった。

岩間ヒュッテ(避難小屋+トイレ)。水場と温泉あり 噴泉塔&岩間道分岐
分岐の案内標識。岩間道は林道を直進と勘違いした 岩間道入口。思いっきり草っぽい

 林道終点には岩間ヒュッテがあったが、営業小屋かと思ったらトイレに併設された避難小屋であった。どこかに岩間道の標識が無いかライトで探るが見当たらないのでそのまま林道の続きを登っていくと、左手に山道が分岐し、標識が設置してあった。ここに書いてある案内図が微妙で、ちゃんと地図を持っていれば間違えることはないのだが標識だけを頼りにして大失敗してしまった。岩間道はこのまま林道を直進し、少し先で右に分岐するものだと理解して林道を進んだのだが、いつになっても右に分岐は見当たらず、林道終点は藪の中に消えていた。20分ほどかけて2往復して入念に登山道を探したのだが見当たらず、諦めて明るくなるのを待とうと考えかけたが、先ほどの山道分岐の道路を挟んだ反対側の地面に置かれた標識に「噴泉塔、岩間道登山口」と書いてあるのを発見してやっと正確な情報を理解した。岩間道も噴泉塔への遊歩道も入口は同じで林道から左に入る山道であり、岩間道はその入口を入って少し進んだところで右に分岐するのだった。やれやれ、無駄な時間と体力を使ってしまったが、これも地図を忘れた自分が悪いのだからしょうがない。

 登山道兼遊歩道に入って10秒くらいで岩間道分岐が登場したが、噴泉塔への遊歩道と比較してあまりにも貧弱で藪っぽい道で予想外の展開だ。ここも白山への登山道の一つだから昨日の釈迦新道と同程度と思っていたが、こっちはかなり草っぽくて先が心配になるようなレベルだ。もしかしたら今は楽々新道がメインで岩間道はあまり使われないのかもしれないが、いまさら戻るわけにもいかないのでこのまま進むことにする。もちろん、藪に埋もれているわけではなく草が枯れる秋以降ならば明瞭な道になるレベルなので、ヘッドライトだけでも道を外す心配はない。まあ、さっきのタイムロスで周囲は薄明るくなっていたが。

やっと写真撮影可能な明るさに そこそこいい道だが昨日と比較すると・・・

 いきなり最初から露に濡れた草で靴下が濡れ始めるが、気温が高めでスパッツを付けると足が汗をかいて濡れそうなのでこのまま行くことにする。幸い、樹林が深くなると草が薄くなって歩きやすくなってくれた。この標高では樹林が薄くて日当たりがいい場所だけ草が生い茂っていた。登山道は全く整備されていないわけではなく、数年に一度くらいは刈り払いが行われているようだ。標高が上がって笹が出てきてからはその気配が濃い。全く手入れがされない場合、人が踏みつける地面の幅しか笹が芽吹かないはずだが、それより広い範囲で笹が無いのが手入れされている証拠だ。ただし、かなり笹が芽を出しており、これまた露に濡れてズボンを濡らす。まあ、今日は天気がよさそうなので濡れても下山時には乾くだろう。

 この尾根は標高1690mまではいい傾斜が続いて効率よく高度を稼げ、下りは脚力のある人間ならば短時間で下山できるような地形だ。まだ時期的に夏で標高が低いと気温が高く、傾斜があるので相当汗が出てくる。夏場は常時持ち歩いている「うちわ」をザックから取り出して今シーズン初めて使用、やっぱり人工的でも風があると体感温度がぐっと下がって気持ちいい。

標高1690m肩に上がる 木の隙間からようやく薬師山登場

 標高1690m肩に上がって傾斜が緩むといきなり露岩が目立つシラビソ樹林に変貌、今までの明るい広葉樹林とは正反対の暗さだが、こんな薄暗い樹林帯の方が笹が栄えることもなく、歩きやすくていい感じだ。尾根が広がると再び明るい樹林帯に変わって濡れた笹が目立つようになり、斜面をトラバースする場所でまたもやびしょ濡れになった。ここはまだ日が当たらない場所なのでよく濡れたままなのだろう。

笹の刈り払いを登る 薬師山が徐々に近づく

 再び傾斜が出てくると樹林が薄くなって笹原がメインとなり、背後から日差しが当たって暑いくらいとなったが、まだ時刻が早すぎて笹が乾ききっていない。でも盛んに蒸発しているようで眼鏡が曇るくらいだった。尾根の直上に付けられた区間はまだいいが、少しでもトラバースする場所では濡れた笹が道を覆うように豪勢にはみ出していて、またまたズボンを濡らす。

一直線に登る 肩手前はちいと笹がはみ出す

 1810m地点では右の斜面が崩れているが、下部は大した距離をおかずに傾斜が緩い樹林帯になっているので、もし転落しても問題無さそうだ。そこから先は笹の切り開きを上目指して一直線に登るようになり、青空がまぶしい。振り返ると笈ヶ岳の山並みが近い。来年の残雪期に歩いてみるのもよさそうだ。200名山の中でも登山道がない数少ない山なので、たぶん大型連休は賑わっているだろう。その頃に雪がない区間は明瞭な踏跡があってもおかしくないだろう。

1960m付近 薬師山山頂
倒れた案内標識 傾いた三角点

 傾斜が緩んで小ピークに到着、もしかしたらここが山頂かとGPSの電源を入れるとまだ山頂は南西にあると出た。帰ってから地形図を見たが、たぶん1960m付近だったのだろう。シラビソ樹林中の道を僅かに下って緩やかに登り返し、笹とシラビソの平坦地に到着、どこが最高地点なのか明瞭ではなく、登山道脇の枯れたシラビソの木に手製の山頂標識がかかっていた。GPSの残距離もほぼセロでここが薬師山山頂だ。北側に平坦で広いため北の展望はなく、急激に高度を下げる南側の展望がいい。少し進むと倒れた案内標識があり、マジックで薬師山と書き加えられていた。そのすぐ脇に三角点が傾いて立っていた。休憩できそうな広場は皆無で、たぶんみんな気付かずに通過してしまうようだ。

薬師山北側から見た笈ヶ岳
薬師山から見た白山(クリックで拡大)

 白山本体が大きすぎて南側の遠望は効かないが、間名古の頭から北に伸びる稜線は良く見え、間名古の頭のすぐ隣に奥三方岳の丸い頭が見えていた。さすがに今の時期は雪は無いだろうから笹薮漕ぎで苦労するだろう。その手前には赤茶けたガレの地獄尾根。硫黄尾根よりはスケールが小さいのでもしかしたら登れるかもしれない。笹が切れて休めそうな広場が無いので倒れた標識の上に座ってしばし休憩。

 下山のルートだが、同じルートを戻るのは味気ないので、少し無駄な労力を使うが2080mまで登って楽々新道で下山しようとも考えたが、東京までの遠さを考えるとできるだけ早く下山した方がいいと判断し、岩間道を下ることにした。下山時も誰とも会うことなく岩間ヒュッテに到着、まだ時刻が早いので男性が1名露天風呂に浸かっていたのとマウンテンバイクの釣り人が1名いただけだった。しかし林道を歩いていると続々と露天風呂目指して登ってくる観光客の姿が。駐車場から1時間も歩くのによくもまあ。せっかく温泉に入っても帰りに汗をかくぞ。そんなわけで私は風呂には入らず、塩ビパイプから湧き出している熱めの温泉にタオルを浸して体を拭いただけだったが、これでもかなり気持ちよかった。


所要時間
3:40ゲート−−4:32林道終点−−4:34登山口(迷う)4:51−−6:59薬師山7:22−−8:40林道終点(温泉で体を拭く)8:45−−9:25ゲート

 

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