剣岳周辺 南仙人山 2009年9月21日

所要時間
 5:22 池ノ平−−5:48 仙人峠−−5:59 仙人池ヒュッテ−−6:01 お花畑−−6:09 踏跡入口発見−−6:17 1つ目の池−−6:20 2つ目の池−−6:43 最低鞍部−−6:53 南仙人山 6:59−−7:30 仙人池ヒュッテ 7:34−− 7:45 仙人峠−−8:39 二股 8:45−−9:18 真砂沢ロッジ分岐 9:45−−10:46 梯子谷乗越−−11:34 内蔵助平 12:30−−13:29 内蔵助出合−−14:14堰堤−−14:43 黒四ダム



 本日は入山3日目、南仙人山に立ち寄ってから下山する日だ。昨夜の天気予報では今日の夕方まで晴れとのことで、好天の最終日に山から出られるのだから今回は運がいい。真っ暗な時間に起床して空を見上げると今日も星空だ。テントは乾いており今日も藪は乾いたままだろう。昨日に引き続いて藪漕ぎ日和となりそうだ。

夜明け直前の池ノ平小屋を出発 朝日がチンネを照らし始める

 飯を食ってテントを畳み、真っ黒ネコさんのお仲間に挨拶して仙人峠を目指す。峠から下ってきて小窓から北方稜線を目指すらしいパ−ティーも多い。峠では朝日に輝く八ッ峰にレンズを向ける人もいた。ここでメインザックをデポし、小さなディーパックで南仙人山を目指す。既にいくつかのザックが地面に転がっていたが、仙人池に向かった人のものだろう。坊主山よりは格段に多いだろうが、南仙人山に足を延ばす人はそう多くはなかろう。

南仙人山の向こうから日が昇る 仙人池ヒュッテ
発電機小屋の横からヒュッテ裏に回る ヒュッテ裏のお花畑。もちろん今は花は皆無

 仙人池ヒュッテ前を通過し、発電機が入った建物の横の通路からヒュッテ裏のお花畑に入った。予想通り道があるが、最初のうちは踏跡なのか水が流れた跡なのか微妙なところだ。小さな谷から「台地」に上がると踏跡らしくなる。問題はこの先で、稜線へと続く踏跡の入口がどこにあるのかだ。まずは踏跡を一番奥まで辿ってみて行き先を確認したが、いつの間にか自然消滅してしまう。お花畑と山肌の境界をじっと見たが、入口らしきものは確認できず藪が広がるだけだ。小屋方面に戻って少し深い谷を越え、お花畑と樹林の境界に何か目印が無いか探していると白い布を発見! これが踏跡入口だろう。小屋から行くと右手に伸びる最初の谷の続きで、不明瞭ながら草が踏まれたような形跡は残っているが、とても踏跡には見えない。この目印が無ければ入口は分からなかっただろう。

これが踏跡入口。よ〜く探そう 枯れた浅い沢状の踏跡
分かりにくいがちゃんと踏跡がある このような目印が点在
稜線から見た坊主山の稜線

 これで安心して藪に突っ込めるので、この先は邪魔になるであろう麦藁帽子を脱いで草の上に置いた。今日は無風なので飛ばされることはなかろう。目印から樹林帯に入ると明瞭な踏跡が水が枯れた小さな沢を登っていく。北斜面の樹林帯なので笹も薄くとても歩きやすく、このままの踏跡が山頂まで続けば楽勝だな。すぐに稜線に到着し、踏跡は自然に左(東)に曲がる。逆に下山時は稜線の踏跡を下ると自然に北側に曲がってさっきのお花畑に出るわけだ。稜線に出てからは背の高い樹林が消えるので少し藪っぽいが、坊主山のように幹や枝を横に伸ばした潅木藪が無いし、相変わらず明瞭な踏跡が続いているので歩くのは楽である。笹や潅木は背が低く周囲の展望も良好で、昨日登った坊主尾根が仙人峠〜坊主山までずらりと並んでいた。まさか今日あそこを歩いているヤツなんていないだろうなぁ。

2160m西峰直下でこんな枯れ沢を歩く 2160m西峰の南東直下?にある池

 踏跡を辿っていくと徐々に薄くなってきて、左に屈曲するところでかなり不明瞭になり、藪に手馴れた人でないと追いかけるのは難しいレベルになった。笹の背が高くなり密度も上がって藪らしくなり、踏跡を見失わないよう慎重に進んでいく。この辺りは地形が平坦なこと、ルートがまっすぐではなく微妙に曲がっていることもあってルートファインディングが難しい。1箇所だけ深く抉れた沢のような地形を通ったので、ルートは基本的に水の道を選んでいるように思えた。踏跡を外すとかなりの笹薮なので、歩きやすいところを選んで進めば自然に踏跡に乗っていると思う。

2160m西峰の東鞍部の池 池から北に草付きの谷が下る
ここが2160m東峰の北側をトラバースする入口 潅木藪に突っ込むことなくトラバース
稜線を越えて南側に入る またまた鞍部で草付き登場

 踏跡を辿って進むと突如として藪地帯を抜け草付きに出て小さな池が出現した。この付近が2160m西峰のてっぺんから少し南東に下った場所だろうか。まだ薄い踏跡が右へと緩く下っていて、小鞍部が同じように草付きと池があった。まあまあの踏跡はここまでで、この先は草付きからどこにルートがあるのか分からない。道がありそうなのは北に下る沢沿いだが、どう見てもそのまま直進して稜線から離れてしまう。かといって稜線上は踏跡らしきものは見当たらない。やっぱり谷がくさいと考え、谷を少しだけ下ってトラバースするような踏跡が無いか探したところ、非常に薄いがそれらしき筋を発見できた。辿ってみると稜線直上の潅木藪を避けて北側直下の笹や草付帯をトラバースするようにルート取りされており、草付帯が終わると稜線を乗り越えて南側へと下り、再び谷状の草付帯に出たところで踏跡の続きが分からなくなった。ここは2160m東峰のすぐ東側の、北東方向に浅い谷が描かれた場所のようだ。

南の谷に入るがNGで戻る 潅木藪をかいくぐって山頂が目前

 さっきは谷を北に下ったところからルートを見出せたが、今回はそれらしきところがない。南側に笹に埋もれた浅い谷があったので下ってみたが、どうも踏跡の雰囲気は無いし、稜線はずっと北側にあるのが見え、このまま進んだら斜面の根曲がり潅木藪のトラバースとなってしまい、最悪の状況だろう。ここは藪を分けてピークに登って尾根を正直に下るのがベストと判断し、笹と潅木の藪に突入、四方に枝を広げて進路を塞ぐ木を乗り越えて、葉っぱの隙間から見える南仙人山ピークの方向へと下っていく。尾根が広くてどこが直上なのか皆目分からず、とにかく下部に見える明瞭な尾根目指して適当に下るしかない。この区間が南仙人山へのルートで一番藪が深い場所だった。

鞍部付近は稜線北側に踏跡あり 急傾斜はごく薄い踏跡を追って直登

 どうにか鞍部の稜線にたどり着くと、稜線北側に明瞭な踏跡が出てきた。人間のものなのか獣道なのか分からないが、北側斜面で藪が薄く合理的な場所にルート設定されていた。踏跡はやがて稜線を乗り越えて南側直下に移動し、急な登りになってからは尾根がバラけて踏跡も分散するようでごく薄くなるが、全く消えたわけではない。まあ、この薄さでは踏跡を辿っても藪を行っても大差ないだろうけど。密度はさほど高くない根曲がり竹が中心の藪で潅木が無いので傾斜がきつくても地獄を見るほどではなかった。ただ、尾根がはっきりせず踏跡も薄く、下りでルートを失いやすい状況なので紙テープの目印を付けながら進んだ。

南仙人山山頂 DJFのリンクリボンしか見当たらず
南仙人山から見た北方稜線 南仙人山から見た坊主山

 傾斜が緩んで山頂かと思いきや、もう一段登らされて傾斜が無くなり、僅かに東に水平移動して山頂に到着した。山頂も笹薮に沈んでいるかと思ったら三角点の周囲2m四方くらいの広さだけ笹が刈り払われており、休憩できるスペースがあったのは意外だ。これだけ明瞭に刈り払ってあるのなら、ここまで来るルートが整備されていてもおかしくないように思えるのだが。周囲は樹林に囲まれていて山頂の展望は良くないのはしょうがないだろう。近くの木にDJFのピンクリボンがぶら下がっているだけで、良く探したわけではないが他には目印類は気付かなかった。ルート上で目印が続くのは2つ目の池までだったと思う。

踏跡からお花畑に出た 仙人池でお決まりの写真を撮影

 今日のコースは短く、薄い踏跡のおかげで藪の状態も大したことはなく疲労は感じなかったため、短時間の滞在で山頂を出発した。行きで踏跡が見当たらなかった2160m東峰への登りはどこかルートが無いかと念入りに探したが見当たらず、草付きから適当に斜面に取り付いて藪を漕いで上へと登って次の草付きに出た。その先は踏跡を外すことなく仙人池ヒュッテ裏のお花畑に出ることができた。入口には私の赤いビニールテープを追加しておいたので、少しは分かりやすくなっただろうか。

 これでもう藪漕ぎの必要はなく、一般登山道で黒四ダムまで下る(最後は登りだが)だけだ。最終便の時刻は確認してこなかったが18時くらいだろうか。いくらなんでもそこまで遅くなることはなさそうで、のんびり行けばいい。仙人池でお約束の写真を撮影、まさに絵になる風景だ。

二股でちょっと水浴び 南仙人山が高い

 仙人新道を下っていくと、真砂沢ロッジを今朝出発した組だと思うが続々と尾根を登ってきて、道を譲って少し進んではまた道を譲る繰り返しで、けっこう時間がかかった。ポツポツと下山組も交じり、連休3日目で登山道は大いに賑わっていた。二股から真砂沢ロッジ分岐へと緩やかに遡上し、橋を渡ったところで再び水浴びして梯子谷乗越へ。ここまでくると同じ方向に向かう人はいるが反対側からやってくる人は見かけない。

無人の梯子谷乗越 梯子谷乗越のすぐ東の展望台。南北とも展望良好
梯子谷乗越近くから見た黒部別山

 乗越から下って枯れ沢地帯へ入ると下山者の姿が多くなってくるが、普通の登山者にとってはゴロタ石で歩きにくいようで、どんどん追い越して先行する。これも晴れて石が乾いているからできる芸当だろう。内蔵助谷の沢を渡る箇所で大休止。この時間ならのんびり歩いても午後3時くらいにはダムに到着できそうなので、大きな石の上でお昼寝。しかしガンガン日が当たる真昼間では少々暑かった。

真砂岳分岐は幕営可能 内蔵助谷を渡る橋で休憩
内蔵助谷を下る 岩屋さんのテントだろうか

 午後になって日が西に移動したおかげで、内蔵助谷右岸の登山道は日陰に入って涼しく歩けたのは助かった。途中、河原にテントが張ってあったが丸山東壁に張り付いている岩屋さんだろうか。黒部川沿いに出ると日電歩道を歩いている登山者の姿が見られるようになり、堰堤で川を渡るところでは何人もがダム方面にカメラを向けていた。

黒部川を渡る 旧日電歩道の案内標識
黒四ダム駅入口 扇沢は駐車場に入れない車の大行列!

 最後の登りも内蔵助平で充分休憩をとったせいか、ほとんど疲れることなく淡々と登りきり、駅への入口で着替えてトンネルに入った。連休中の午後3時なので予想通りの大混雑で、定刻15分前に列に加わったがその便に乗ることはできずに30分後の便となったが、そのおかげで座席に座ることができた。扇沢に出ると凄い車の数で、未だ駐車場に入れない車の列がスノーシェッドの中まで延々と続いている。市営駐車場も満杯だが、その下の林道?も駐車の列でいっぱい。着替え終わって駐車場から出るにも、出入口には交通整理員が立って駐車場入口付近で車の列が止まらないように手前でストップさせ、上方の舗装された駐車場から下ってくる車列が途切れたタイミングで市営駐車場の車を外に誘導していた。確かにこうやってくれないと、ここより下の駐車場から出るのが難しいだろう。この下の駐車場出入口にも交通整理員が配置されていた。駐車場が満杯で登りの車列はほとんど動かず、路肩に車を止めて歩いている人の姿も多く、爺ヶ岳の柏原新道からもっと下ったヘアピンカーブの下でも駐車された車を見かけた。これだけ混雑した様子はお盆でも見たことがなく、秋の連休恐ろしや・・・。

 大町付近で山登りの後は、いつも「上原の湯」(旧大町市民浴場)に立ち寄っている。ここのいいところはいつもガラガラでのんびりできることなのだが、今日は初めて駐車場が満杯になっているのを見た。洗い場も満杯でしばしの待ち時間。ここでこの状況だと大町温泉郷はどれほど混雑しているのやら。

 このまま中央道経由で帰ると大渋滞に捕まってしまうので、大町で寝て早朝に出発することにし、コンビニで買い物をして高瀬川の河原でお休み。夜中の2時過ぎに起きて朝飯を食いながらラジオの交通情報を聞くと、こんな時刻なのに中央道は小仏トンネル付近で計12kmの渋滞だった。嘘だろうと思いたくなるような・・・。でも交通量はこれから明け方に最も落ちるはずで、私が通過する頃には渋滞は解消しているだろうと予定通り走り出し、その予想通り渋滞無しで夜明けの小仏トンネルを通過できた。


 こうして念願の坊主山、南仙人山を打ち落とせた。坊主山は本格的な藪漕ぎで読図力より体力勝負で、私の体力でさえ下山後3日たっても疲労が抜けないレベルだった。南川さんが坊主山から池ノ平に戻ってテント泊まりをやめて小屋泊まりに切り替えた心境は良くわかるし、あのDJFも翌日の南仙人山で疲労を感じるほど前日の疲労が抜け切らない山だから、挑戦する人は心してかかった方がいい。そもそも、池ノ平まで入るだけで体力を使うので、時間に余裕があるのなら初日に真砂沢ロッジ泊まりとし、2日目に南仙人山を往復してから池ノ平に入り、3日目に坊主山往復、4日目に下山がいいと思う。仙人峠から坊主山まで相当時間がかかり、秋の涼しくなった時期では気温は下がって藪漕ぎにはいいのだが日が短く、体力に自信が無い人では時間制限がきついかもしれない。その場合、真夏になる前の6月下旬や7月上旬の日が長い時期の方がいいかもしれないが、小屋が開く前なので各橋がかかっておらず、雪渓が残っていないと沢を渡るのがきついだろう。また、その時期に坊主尾根にどれくらいの残雪があるのかは全く不明なのもリスク要因となる。2140mピークへの登りさえ雪が無ければ、あとは反対に雪があった方が藪が埋もれて歩きやすいだろう。また、部分的(たぶん各鞍部付近)でも雪が残っていれば藪が埋もれて稜線上で幕営可能となるので、体力、スピードに自信が無い人は2日かけての挑戦が可能となり、確実性が高まろう。なお、無雪期では2040m二重山稜の谷以外は笹、潅木、露岩に覆われ、幕営できそうな場所は無い。

 このように、坊主山の山行記録はDJFと私、それに本として南川さんの計3つが公開されてそれなりに情報が得られるが、気力、体力は皆さんと同じとは言えず、結局は各人の状況に合わせて戦略を練る必要がありそうだ。何度も言うが無雪期なら何よりも体力、気力が必要である。あの藪の中で帰りがけに夜になったら、往路で目印を付けていかないと先に進むのは難しいだろう。気力を充実させる意味でも、天気がいい日を選んで尾根の先が見える状態で藪に突入するのが吉であろう。各人の健闘を祈る。


 

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