富士寄生火山 茗荷岳 2009年11月3日

所要時間 高鉢駐車場−0:09−廃林道−0:12−標高1660m合流点−0:29−茗荷岳−0:20−ガレ谷−0:15−スカイライン−0:09−高鉢駐車場

 富士山の寄生火山はだいぶ登って、たぶん地形図記載の山は自衛隊演習地内を除いてはほとんど登ったと思う(御殿場側に残りあり)。しかし山名事典のみ記載の山が新たに発覚し、さらに楽しめることとなった。そのうち、茗荷岳という山が一番標高が高いところにあり、雪が来る前に登らないと道路も冬季規制で入れなくなり楽して登れなくなってしまう。自主4連休最終日は早めに東京に帰る意味でも富士山はちょうどいい場所にある。

 茗荷岳に登るルートだが、常識的に考えれば富士山スカイラインから等高線に沿ってトラバースだが、途中でいくつも谷があっていちいちそれを越えるのは結構疲れることは過去の経験から容易に想像できた。また、最初のガレ谷が越えられるのかどうかが最大の難関だ。安全策はスカイラインからガレ谷沿いをジグザグに下る破線を歩いて山頂から南に延びる尾根まで下って登り返すことだろう。しかしこれでは標高を150m下げて再び150m登るという、何とも非効率的なルートだ。上記2つの中間の考えとして標高1670m付近のガレ谷合流地点まで下り、そこから緩斜面を登るという選択肢も考えられる。しかし、これもガレ谷を横断できるかどうかがカギとなるだろう。富士山の谷はとんでもなく抉れて下れない壁が続くこともある。この標高では笹の出現の可能性は低いと予想された。

高鉢駐車場(上) 駐車場から見た雪煙を上げる富士山頂部

 富士山スカイラインは駐車場が少なく、この場合の最寄り駐車場は高鉢駐車場(上)である。高鉢山に登った時に使ったので位置は知っており問題なし。前夜に駐車場に入ったがこの日は寒気が入って五合目への分岐にある温度表示が0度となっていた。明日朝は氷点下だろう。この時期の夜間は駐車場は無人で、一番奥まったところに車を置いて寝た。夜間に車をパラパラたたく音がしたが、その軽さからして雨ではなく霰だった。積もるほど降らなかったがベンチは真っ白になっていた。

 翌朝、車のガラスはカチカチに凍りついていた。幸い、霰は夜間に溶けたようで路面は白くなっていないが部分的にテカテカに凍っていた。日中になれば溶けるだろうが早朝は路面凍結に注意して運転する必要がある。朝飯を食って外に出ると気温は-5℃、目いっぱい防寒着を着て出発となった。念のため補助ロープもザックに入れた。

廃林道入口。車が通行できる状況ではない 廃林道

 スカイラインをしばし歩いてヘアピンカーブの手前で左に下る廃林道を発見、これが地形図の破線らしい。営林所専用なので一般車通行禁止と書かれた札が掲げられているが、既に車両が通行できる状況ではなくなっていた。キノコ採り以外に歩く人はいないと思うが意外に明瞭な踏跡ができていたのには驚きだ。これだと地形図通り下部の林道まで続いているだろう。

目印あり ガレ谷の左岸の道

 当初計画ではこのまま破線を歩いて3つ目のカーブまで下ってガレ谷合流点に乗り移ろうとしていたが、最初のカーブから見えた谷は予想外に穏やかそうで谷を下った方が近道なので谷に乗り移ることにする。藪は皆無で獣道を辿って左岸に降り立つとこれまた明瞭な道があるではないか。谷の抉れはほとんど無く、谷の中でも安全に下れそうでどこからでも対岸に渡ることは可能だった。もちろん水は全く流れていない。

標高1660m付近谷合流点 合流点から見た本流上流側
合流点から見た北側支流上流側 こんな標識も

 高度計を見ながら左岸を歩き、標高1660m付近で谷の合流点が出現、ここで谷を越えて対岸の斜面に取り付いた。北から合流する支流の谷も危険個所はなかった。谷の右岸側には立木に「歩道」と書かれた鉄板が打ちつけられており、昔は右岸側に遊歩道があったらしい。

最初は歩きやすい植生 最初の尾根を越える
徐々に笹が現れる 濃淡のある笹の島

 斜面に乗ると左斜め上に登っていく。最初の尾根は藪は皆無で歩きやすく、このままの植生が続けば短時間で山頂に到達できそうだったが、尾根を越えると薄いながら枯れた笹が出てきた。最初はほとんど問題ない密度だったが、最初の浅い谷を越えて以降は密度が濃くなってきた。ただし、笹の密度にはムラがあり、まるで島のように濃いブロックが点在し、その間は比較的薄いので島を避けて歩けば激藪漕ぎではない。ここの笹もほとんどが枯れていたがたぶん数年前に一斉開花したのだと思う。

一番大きな谷に下る 最後の尾根が見える

 トラバースしながら少しずつ標高を上げるので谷をいくつか越えるが、そのうち一つが比較的深かったが断崖はなく、問題なく谷に下って対岸を登ることができた。あとは小さな谷で特に問題はなかったが、笹はずっと茂っていた。この標高で笹が出てきたのはここが初めてだ。

もうすぐ尾根上 尾根に乗ると笹が消える

 最後の谷を越えるとやっと目的の大きな尾根が出現し、枯れた笹の中を登っていく。ようやく日のあたる斜面となって体感温度が上がったが、それまではずっと日影が続いて-5℃から気温が上がらず寒くて防寒着のままだった。尾根上に出ると笹が切れて唐松とシラビソの樹林となって格段に歩きやすくなった。どこまで笹が無いのか不明だが、尾根直上はずっと笹が無いのなら標高差で損はしても尾根末端から登った方が笹藪を突っ切るより楽かもしれない。

茗荷岳山頂 茗荷岳から見た富士山頂

 緩やかに登って最高点に達する。ここは唐松植林が中心で少しシラビソ等が混じっていて、どの木も背が高く展望はイマイチだった。枯れた笹が少しあるがおまけ程度だ。ほとんど登る人がいないのは当然で目印等も皆無だった。木の隙間から真っ白な富士山頂部が見えていた。

北鞍部へ下る 鞍部からトラバース開始。笹皆無

 下山は同じルートだとまた笹藪突入になって面倒なので、どうなるか分からないが等高線に沿って東にトラバースしてみることにする。北上して僅かに下って鞍部からトラバース開始。ここも笹が出てくるかと思ったが僅かに標高を上げただけなのに笹は全く無く、発達したシラビソ樹林で非常に歩きやすかった。少し大きめの谷への下りだけ僅かに笹があったが谷を越えると再び笹が消失した。

ガレ谷に下るところだけ笹がある 1660m合流点に下るガレ谷
ガレ谷を越え尾根上から先は笹藪。進むと濃くなる 笹を避けて谷に下った

 地形図のガレ谷を越える個所も特に危険は無く、このまま谷を下っても良さそうだったが、このまま笹が無ければ標高を下げずに楽ができるので等高線に沿ってトラバースを続けることにする。最初の尾根上に出ると尾根東側は一面の笹藪で、少しの間だけトラバースを続けてみたが笹斜面を横切るのは結構苦労し、これなら藪皆無の谷に下って登り返した方が楽だと判断し、斜面を適当に下っていく。すぐにガレ谷に降り立ち、左岸に渡って踏跡を登り返した。対岸には大きな岩屋があって何やらペイントで書かれていたが、遊歩道の一部かもしれない。

右岸の岩屋 軽トラが止まっていた

 廃林道に戻って車道に出ると路肩に軽トラが止まっていたが、ジモティーのキノコ採りだろうか。駐車場に戻ると防寒着をまとった観光客が真っ白な富士山を背景に写真撮影していた。

 

 

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