上越国境 巻機山、栂ノ頭、米子頭山、居頭山、柄沢山、檜倉山、大烏帽子山、小烏帽子山  2010年5月15〜16日

所要時間

5/15
 5:22 車(車止めから数分清水集落側)−−5:51 桜坂 5:56−−8:23 休憩 8:38−−9:15 8合目−−9:28 ニセ巻機−−10:10 巻機山 10:40−−10:54 栂ノ頭−−11:52 米子頭山 12:12 −−12:48 居頭山−−13:33 柄沢山−−13:39 休憩 14:00−−15:27 檜倉山(幕営)

5/16
 4:55 檜倉山−−6:00 大烏帽子山−−6:35 小烏帽子山 6:39−−7:19 大烏帽子山−−8:06 檜倉山 8:30−−9:12 国道291号線 9:16−−9:27 登山道−−10:43 車止め−−10:47 車

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概要
 巻機山〜朝日岳の上越国境縦走(完全ではないが)。踏跡があるらしいが残雪期の方が楽に歩けるのは間違いないのでこの時期に行ったが、前日の季節外れの大雪でラッセルを強いられ大幅に体力を消耗した。踏跡がどうのようについているかは不明だが、残雪期は稜線東直下の雪庇を辿って藪を回避する。今回はかなりの部分で雪庇がつながり藪尾根を歩く箇所は少なかったが、残雪量により藪漕ぎの程度は異なると予想される。藪はいずれも背が低い笹、潅木、ハイマツ、石楠花で見通しは良い。危険箇所はなくアイゼンの出番はなかった。下山に使った檜倉山西尾根は上部が残雪が消えた潅木藪で厄介だが1500mより下は残雪と薄い藪で使い勝手は上々だった。


 巻機山〜朝日岳の上越国境はいつか歩きたいと考えていたが、登山道は無いものの踏跡はあるらしく無雪期も歩かれるとのことで難易度は低いのでずっと後回しになっていた。それと日帰りではちと苦しい距離で2日使うのも後回しにしていた理由で、日帰りでないと荷物も多く気軽に行くわけにもいかないし、2日間天気がいい必要もある。途中幕営を考えると水が簡単に得られる残雪期が望ましく、藪も埋もれて楽に歩ける今の時期に足を延ばすことにした。天気予報では2日間とも文句ない好天だ。ところが心配事が一つ。金曜日にこの時期にしては強い寒気が入って関東では雨が降り、標高が高いところでは雪になったらしく草津でも雪だったとか。5月中旬で2000m以下で降雪というのはほとんど考えられず、巻機でも積もっても数cmだろうと予想したが、もし予想を超える積雪だとラッセルがきつい。今回は標高差による体力よりも距離を歩く体力が必要で、ラッセルがおまけに加わると計画遂行が危ぶまれる。でもそれほど積もることはまず考えられず、過去の経験でもこの時期の新雪ラッセルは北ア板戸岳のみだ。この時は新雪は標高2200m以上だったので、巻機の標高ではたぶん雨だっただろう。

 ルートとしては残雪が多いであろう北斜面で登り、雪が少ない南斜面で下りになるよう巻機山を起点にして南下する方向とした。通常なら最後はジャンクションピークに登って清水峠に下るが、ジャンクションピークは既登山だし、清水峠まで行くのも遠回りなので近道を考えてみた。檜倉山西尾根は広くなだらかで危険は無さそうなのでここを下ることにして、檜倉山で荷物をデポして大烏帽子山まで往復し、荷物を背負って檜倉山西尾根を下り、沢沿いの登山道に出て清水集落まで歩く計画だ。西向きの尾根なので残雪はあまり期待できないが、下りなので藪があってもどうにかなるだろうし、ある程度標高が落ちればひどい藪ではなくなるだろう。

 今回はオプションとして大烏帽子山から南東に伸びる尾根上にある小烏帽子山と、檜倉山北から東に伸びる刃物ヶ崎山をオプションとして加えることにした。小烏帽子山は近距離で問題無さそうだが、刃物ヶ崎山は途中で危険箇所が無いかどうか少し不安で、こればかりは現場に行ってみないと分からない。

車止めから少し戻った場所に駐車 この時期にして稜線は真っ白!

 塩沢石打ICで降りてコンビニで酒を調達して巻機山登山口の桜坂に向かう。今回の縦走では巻機山登山口の桜坂に車を置くと帰りに登りが必要になるので、ザックを桜坂に置いて車は集落に下ろし空身で桜坂に登り返すことにしたが、仮眠は桜坂でとることにして夜間に入って寝た。先客は1台で後から数台やってきたようだが朝まで気付かなかった。明るくなってからザックを外に出して集落まで車を走らせ、集落先の車止めでUターンして少し戻った畑近くの路肩に車を置いて歩きだした。ここから見える巻機山は新雪で白くなっているが積雪量はここからでは推測できない。

途中で威守松山登山口があった 桜坂駐車場(有料 \500/日)

 車道を若干ショートカットしながら上がり、桜坂で大ザックを担いで本当の出発だ。もう6時を過ぎているが続々と登山者がやってきていた。タクシー2台で上がってきた学生パーティーもいたが、私みたいに縦走でもやるのか、それとも巻機山往復だけかなぁ。

登山口 直進が沢コース、右が尾根コース
標高1000m付近から新雪が現れる 5合目(標高1128m)

 今の時期は残雪期にしては遅く、沢沿いのコースは雪が割れて流れが出ているだろうから尾根コースで行くことにしていたが、沢沿いの登山道には入山禁止の看板が出ていた。まあ、行って行けないことはないだろうけど。僅かに雪が残って時々寝た木が邪魔をする道を登っていく。標高が1000mに達すると部分的に新雪が見られるようになり、昨日は予想外に低標高でも雪になったようだ。ここからまだ標高1000m近く登るので、稜線上のラッセルが恐ろしくなってきた。この時期にワカンを持ち上げるなんて考えたことはなく、ヘタをすると巻機山往復で終わってしまったりして。天気は申し分なくいいのだが・・・・。1128mで尾根に乗る所が5合目で、何人かが休憩中で賑やかだった。

徐々に積雪が深くなる 標高1300m付近。深さは足首以上

 標高1250mを越えると足首までのラッセルとなり、先人のトレースが無いと山頂までで疲れるのは確実な情勢となってきた。新雪の下には残雪があるようで夏道の形跡は全く感じられず、足跡をそのまま踏んでいくだけだ。まあ、登りはどんなルートでも上を目指せば山頂に到着できるので細かなルートを気にする必要はない。

 1300m付近でトレースが2分されるが、どちらも同じくらい潜っているので稜線に沿ったトレースを上がっていく。1350m肩では3人パーティーが休憩中で、その先の雪面にはほとんど沈んでいない2人分の足跡が続いていた。かなりの軽装なのだろう、私の荷物では足跡の上を踏んでもズボっと踏み抜くことが多く疲れた。やがて右からトレースが合流、こちらは既に沈んでいるので私が踏んでもそれ以上沈むことはなかった。

森林限界を突破 先頭でラッセルを続ける2人組
標高1550m付近から見た西側の展望(クリックで拡大)
標高1550m付近から見た後立山〜火打山(クリックで拡大)

 標高1500mを越えて森林限界を突破、展望のいい尾根に出ると先行する登山者の姿が見えた。2名が先頭で、その後方に6,7名のパーティーだ。このまま歩くと私が先頭になりそうな情勢だし、歩き始めて3時間近く経過しているのでこの辺で休憩を入れることにする。南側の展望が開けるが上越国境の山が大きすぎて関東平野の山々は見ることができない。西に目を向けると意外に近く妙高火打が見え、その左手には少し雲が絡んでいるが朝日岳から唐松岳にかけての後立山の稜線がくっきりと見えていた。1350m肩で休憩していた3人パーティーがやってきたと思ったら再び休憩、おいおい、こんなところで休まないでラッセル頼みまっせ。

休憩を終えて出発 標高1700m付近

 休憩を終えて出発、1600mで夏道は稜線上を行くが先頭の2人は南斜面を巻きながら登っていくのが見えた。後続のパーティーは学生らしき若者が多く引率者と思われる中高年男性が1名、ただしあまり残雪の山は慣れていないようでペースは遅いしルート判断で迷っていることが多い。こちらのパーティーは雪面の凹みで位置が分かる夏道ルートを登っていった。私の方はよりトレースがしっかりした学生パーティーの後ろに付いたがすぐに追いつき、しばらくはそのペースに合わせて若者にラッセルを頑張ってもらう。夏道は吹き溜まっていて単独でラッセルするにはちと苦しい状況だった。

8合目で休憩する若者パーティー 私が先頭でラッセルに。背景は柄沢山への稜線

 標高1750mで傾斜が緩み8合目の標識が立っており、ここで先頭の2人に追いつくが若者パーティーは休憩に入り、私とこの2人で並行して斜面を登っていく。私は夏道と思われる箇所を歩いたが彼らはやや東寄りを上がっていく。どうも稜線直上よりも東側の方が積雪が少ないようで彼らの方の潜り方が少ないのでその後方に付くことにした。ジモティーらしく長靴に小さなザックと至極軽装、冬装備満載の大ザックを背負った私よりもずっと足が軽いだろう。でも長時間先頭でラッセルした疲労もあるだろう、頻繁に立ち止まって短時間の休憩を取っているのでにせ巻機に至る前に追い越すこととなった。

ニセ巻機山頂 鞍部へと下る。シラビソがモンスター化していた
ニセ巻機から見た巻機山

 私が先頭に立ってからは夏道の形跡を追うことは止め、できるだけ積雪が少なくラッセルが楽な場所を選ぶよう心がけた。追い越した2人が歩いたように稜線東側直下辺りが最も積雪が少なく、雪面が真っ白でなかったり明瞭な風紋が描かれた場所が新雪が少ない場所だった。しかし地形的な関係かどこを歩いても膝まで踏み抜くラッセル地獄区間もあり、こればかりは一人でラッセルするのは嫌気がさした。特にニセ巻機を越えた辺りがラッセルが深かった。避難小屋は稜線上でラッセルが深そうなので立ち寄らなかったが、遠めに見た感じでは入口は雪で埋もれて入れないように思えた。

避難小屋。ラッセルきつく入れるか確認しなかった 最後の登り。ラッセルがきつい!
振り向けば群馬/新潟県境稜線が広がる

  1800m鞍部から登りにかかると時々帯状に「ラッセル地獄区間」が現れて苦しめられる。周囲の風景は一面の新雪で真っ白、シラビソも雪を被ったり巨大なエビの尻尾が発達して真っ白で、とても5月中旬の山とは思えない様相だ。上空は文句無い快晴、少し風が強いが行動に支障が出るようなレベルではない。

後を振り向くと点々と人の姿が・・・ 山頂への稜線。これまたラッセルきつし!
越後三山

 稜線上に出るといよいよラッセルがきつくなり積雪が少ない場所を探してトレースがうねるが、ここは全体的には南側が雪が飛ばされてラッセルが楽だった。尾根真上は膝まで潜る重い軟雪で、柔らかすぎて足を抜くのに雪に手を乗せて支えにしようとしても手の方が潜ってしまい蟻地獄だった。

山頂は稜線上を避け南を巻いた 巻機山山頂
巻機山から見た南半分の展望(クリックで拡大)
巻機山から見た後立山〜火打山(クリックで拡大)

 小雪帯を辿ると山頂直下は南を巻いて通過し、山頂東側で稜線に出て少し戻って巻機山最高点に到着。以前登ったときに山頂標識があったかどうか記憶がないが今は何も無い雪原だった。立木は無く360度の大展望で、これから向かう県境稜線もずっと見えていた。大烏帽子山は遥かに遠く、このラッセルが続くと今日はどこまで行けるか心配だ。まあ、テントがあるので疲れたら適当に幕営体制に入ればいいが、早々にダウンすると明日の行動がきつくなって最後は割愛となる可能性が高い。風があって寒いので南斜面に下って休憩していると、後続の2人が上がってきた。山頂に立った後、牛ヶ岳に向かっていく元気者であった。その後もポツリポツリと山頂到着の登山者が増えてきて、こちらはいよいよ一人ラッセルに突入だ。

これから南下する県境稜線
1960m県境峰からのパノラマ展望(クリックで拡大)

 県境稜線分岐峰に立つと利根水源山脈が東へとうねっている。今は真っ白だが実際は残雪が消えて笹の上に新雪が乗っただけの区間も巻機山東斜面では多いだろう。さて、ここは何年後に歩こうか。最近はネタ切れ気味なので数年後には挑戦するだろう。南に目を向けると稜線直上から西側は新雪が乗った藪、東側は真っ白な残雪帯にはっきりと分かれており、雪庇が崩壊していない限りは稜線東側を歩くことになりそうだ。

少し下がるとシラビソ登場 5月中旬でこの姿。信じられない光景
栂ノ頭山頂 栂ノ頭から南を見る

 残雪を蹴散らして斜面を下ると、それまで立木は1本もなかったのがシラビソがわさわさ出現、これは地形的な要因なのだろうか。樹林といっても隙間が多く、木と木の間はさほどラッセルはきつくなった。木と風の影響か場所によって積雪量が極端に異なり、とにかく雪が少ない場所を選んで歩いた。栂ノ頭山頂はなだらかで定かではないが、シラビソ樹林の西端で笹が出た場所辺りが最も高かった。

南へ下ると笹の上に雪が乗った最悪区間 真っ白でない所が笹+新雪の場所
東側の残雪が使えるようになる 鞍部近くから南を見る
鞍部から巻機山方向を見る

 下りになって藪を避けて東よりにルートを変えてシラビソ樹林を下るが、すぐに樹林が消えて広い範囲で雪が乗った笹が出ている斜面になり、雪棚が見当たらなくなった。こうなると面倒でも笹を突っ切るしかなく、膝から股まで潜る雪と笹に進行速度が鈍る。ここは新雪が無く笹だけの方がずっと歩きやすかっただろう。稜線上で真っ白でも真っ黒でもなくごま塩を振ったように斑な黒点が広がる部分が笹や潅木上に新雪が乗った区画で、ここはできるだけ避けて稜線東直下の真っ白な領域を歩くのが得策だ。たとえラッセルでも藪+半端な積雪よりはマシだ。そのうち稜線東に雪庇が現れ、藪+半端な雪から開放された。

 鞍部からの登りも雪庇が使え、部分的に崩壊しかけて稜線の新雪をかぶった藪を歩くところもあるが、大半は残雪帯を利用できた。ラッセルは相変わらず超重雪が足首程度で、これを延々と一人で続けていると疲労が蓄積してくる。まだまだ先は遠く、今日は柄沢山くらいまで歩きたいが体力が持つか心配になってきた。

米子頭山から見た巻機山 米子頭山山頂。背景は利根水源山脈

 ピークを一つ越えてその先の水平な稜線でGPSが米子頭山を示した。山頂は雪を被った低い笹と潅木に覆われ人工物の存在は不明であるが、高い木が無いので展望は良好だ。この先も同じような高さの居頭山が続き、その先には一段高い柄沢山の雪稜が伸びているのが見える。西風が吹き稜線上は寒いし藪で座れる場所がないので、東側に少し下った雪棚で休憩。日差しが強くて夏のような天気だが気温は大型連休中よりずっと低くて10℃だった。なるほど、汗をかかないわけだ。でも相変わらず新雪でラッセルがきつい。

 休憩を終えて出発。さて今の時刻なら柄沢山まではたどり着きそうだが、できればもっと距離を延ばして翌日楽をして早めに下山したいところだ。その前に居頭山を越えなければならない。地形図によるとピークを2つ越えた先のようで標高差はさほど無いがこの雪質だから苦労しそうだ。

さらに南下 米子頭山を振り返る
1790m峰の下りは藪の中を下った 1790m峰を見上げる

 米子頭山南側の1790m峰の下りは雪庇が落ちてしまっており、無雪なら大したことなさそうだが雪が乗ってやっかいな藪の稜線を歩き、鞍部が接近して再び雪が現れたところで藪から開放される。鞍部から先はほぼ快適な雪稜が続き藪漕ぎより楽だが一人ラッセルは続く。

1809m峰を登る 居頭山山頂
居頭山山頂から見たパノラマ展望(クリックで拡大)

 居頭山山頂も米子頭山とほとんど同じで、稜線上は新雪が乗った低い笹と低潅木の藪、東側が残雪帯だった。この尾根の植生はずっとこんな感じらしい。山頂で休もうかとも思ったがまだ休憩するほどの時間ではないし、ここから見る柄沢山までもなだらかな雪稜が続き、このまま先に進むことにした。

居頭山を下る 残雪のなだらかな稜線が続く
このピークが柄沢山 後ろを振り返る

 見た目どおりで居頭山から柄沢山まではずっと残雪帯が続き藪と付き合う必要は無かった。ただし残雪帯にはクレバスが口をあけている箇所があり、新雪に覆われて端が見えないので付近は注意して歩く必要があった。それでもたまにハマることが。

柄沢山最後の登り。苦しい! 柄沢山山頂。背景は朝日岳〜谷川岳
柄沢山から見た南半分の展望

 最後に一気に標高を上げて柄沢山山頂到着。ここもてっぺんは雪が乗った低い藪。三角点は課全に埋もれて跡形もない。展望は言うまでもなく360度の大展望で巻機山が遠く朝日岳はだいぶ近づいた。南に見えるのっぺりしたピークが檜倉山のようで、今の残存体力ならあそこまでは行けそうだ。このラッセルでここまで来られたのだから上々だろう。

鞍部向けて下る 南から見ると柄沢山は立派
柄沢山南斜面から見た県境稜線
柄沢山南斜面から見た利根水源山脈〜尾瀬(クリックで拡大)
鞍部から柄沢山を見上げる こんな重雪ラッセルが延々と続く
鞍部から檜倉山に登り返す 刃物ヶ崎山分岐肩直下
刃物ヶ崎山分岐肩から見た柄沢山

 柄沢山からの下りはずっと残雪が続き、低木藪の稜線上に上がる必要は無く快適な下りだった。北から見る柄沢山は山頂までなだらかな稜線で柔和で女性的な形に見えるが、南から見ると急激に立ち上がって巻機〜朝日間の盟主と呼びたくなる雄姿だ。鞍部から登りにかかって刃物ヶ崎山への尾根が分岐する肩で稜線が右に曲がるが、ここは笹が出ていて少しだけその中を突っ切る。刃物ヶ崎山までたぶん2km程度で山頂は見えているが、このラッセルでは少なくとも今日は檜倉山までが限界で、明日、刃物ヶ崎山を往復するとなるとたぶん時間的、体力的観点で大烏帽子山、小烏帽子山の往復をカットせざるを得ないだろう。新雪さえ無ければたぶんこんなことは無かっただろうが、自然条件だからしょうがない。刃物ヶ崎山はまた別の機会にしよう。

刃物ヶ崎山分岐肩から見た檜倉山 刃物ヶ崎山分岐肩から見た刃物ヶ崎山
ようやく檜倉山が近づく
檜倉山への最後の登り 檜倉山山頂

ここは空白です

山頂東直下で幕営
檜倉山から見た北半分の展望(クリックで拡大)

 尾根が右に曲がって再び稜線東側に残雪帯が復活、トラバースしながら緩やかに登り上げると広い檜倉山山頂だった。のっぺりしていてどこが最高点なのかはっきりしないが、北寄りの笹原が一番高そうに見えた。三角点があるはずだがこの新雪量では見つけるのは不可能、標識も埋もれているのか見当たらなかった。南側の少し下がった平坦地は地面が出ているが、たぶんそこが湿地帯や池塘なのだろう。まだ今は水は溜まっていないが雪が解けるとそれらしくなるのだろう。

 もういい時刻だし、明日はここから西に延びる尾根を下る予定なので檜倉山が今夜の宿だ。さほど強くないが西風が吹いており、風を避けられる場所を探したが山頂直下東斜面の残雪帯と藪の境界付近が最適だった。雪面は斜めだが雪なのでピッケルで掘って整地が可能、ザックを下ろして早速「工事」に取り掛かる。思ったよりも新雪が深く、端の方は3,40cm掘ったがまだ真っ白な新雪の層だった。テントを設営、水を作ったが結構ガスの残量が少ないことが発覚、連休中はこのボンベを使っていたからなぁ。何とか1泊くらいは持ちそうな残量で大事に使う。晩酌用のお湯作りはろうそくで代用、最初の1杯はお湯をこぼしてしまいもったいないことをしてしまった(やけどはなかったが)。

 天気予報では冷え込むとのことで魚沼地方は霜注意報が出ており、翌朝に雪が締まると期待していたが、酒を飲み終わって寝てから6時間後の夜中に起きて温度計を見ると0℃、寝ていて寒さを感じなかったわけだ。さらに悪いことに外はガスって視界無し、残雪期で視界無しの中を歩くのはリスクが高く、出発時刻を1時間ほど遅らせることにした。予報では午前中くらいまでは上空の気圧の谷の影響で雲が多いと言っていたので、山ではその雲がかかっているのかもしれない。雨の心配はなさそうだが先の様子が見えないのは困るなぁ。

ガスが晴れると素晴らしい雲海!
朝日を浴びる朝日岳

 4時過ぎに起床し朝飯を食い終わってテントの外に顔を出すといつの間にかガスが晴れて雲海の上に出ているではないか! 素晴らしい風景で標高1600m以上の山が島のように雲海の上に突き出して朝日を浴びていた。これなら出発に何の問題もなく、気温も高めでこれからさらに上昇するのでアタックザックにはダウンジャケットは入れずに長袖シャツとマフラー、それにアイゼンだけ入れて小烏帽子へと向かった。

テントを出発。雪に締まりはなかった ほとんど残雪が使える
藪稜線で見かけた赤テープ 振り返る
鞍部近くから見た大烏帽子山

 雪質は早朝なのに昨日日中と大差ない感じで足首まで潜り、この分ではアイゼンの出番は無いかもしれない。広い稜線を大きく東に巻いて残雪帯を下っていくと、1箇所だけ残雪帯が後退して東斜面も藪が出ている部分があり、ここは稜線を歩いたが藪が思いっきり濡れておりピッケルで水滴を叩き落しながら進んだ。藪の密度は大したことはなく、乾いていれば何でもない場所といえよう。藪区間は50m位で小ピークを過ぎれば再び残雪が現れて藪から開放された。

燧岳とかすかに見える尾瀬沼 1690m肩は藪が出ていて東を巻いた
再び残雪を歩く 大烏帽子山は近い

 鞍部から見上げる大烏帽子山はずっと雪がつながっていそうで、もしかしたら最後の山頂直下だけは藪に突入するかもしれないがほんの短距離のように見える。烏帽子の名称なので傾斜がきついかと心配したが、見上げた限りではそれほどでもなさそうだ。まあ、多少の傾斜はアイゼン、ピッケルがあるので対応できよう。大烏帽子の登りは1箇所だけ小ピークで稜線直下の雪庇が崩壊して東を大きく巻く部分があり、そこだけ少し傾斜があったがゆきが柔らかくキックステップで問題なかった。それ以外は稜線東直下の歩きやすい部分を辿っていけた。新雪で隠された小さなクレバスに何回かはまったりしたが・・・。

これが山頂 大烏帽子山山頂。背景は朝日岳
大烏帽子山から見た南から西の展望
大烏帽子山から見た北から東の展望(クリックで拡大)

 山頂直下で稜線から雪庇が遠ざかって少し下がった場所で東を巻くような形になり、露岩の斜面を少しだけ登って雪が消えた低い笹と潅木の大烏帽子山山頂に到着した。三角点が出ており近くに手製の標識が取り付けられていた。なだらかな檜倉山と違ってすくっと立ち上がった山頂なのですぐ眼下の眺めから遠望まで楽しめる。意外なのは朝日岳方向の鞍部の笹原には明瞭な踏跡が見えていることで、もしかしたらこのレベルの踏跡が巻機山まで続いているのだろうか。もしそうだとしたら無雪期でも意外に楽に歩けそうだ。ただし途中で水の補給はできないが。

大烏帽子山から見た小烏帽子岳 大烏帽子山から見た清水峠
小烏帽子山の稜線へ下る 鞍部から稜線を離れ西斜面を登る
高度を上げると藪が顔を出す 稜線上は雪が乗った藪

 まだ時間も体力も余裕があるので予定通り小烏帽子山に向かう。いい感じの傾斜が続く雪稜を気持ちよく下るが、これを登り返す時に苦しむので歩幅を狭めてラッセルしておくことは忘れない。傾斜が緩むと稜線上は笹が出てしまっているため南に大きく巻いて残雪帯を歩く。鞍部付近は再び一面の残雪で覆われているが、小烏帽子へと続く尾根の登りになると藪が出てしまっている(正確には藪の上に新雪が乗った状態)。ここも今までの稜線同様、笹と低潅木のさほど濃くない藪なので無雪ならば藪に突っ込んでもいいのだが、半端なスカ雪が乗った状態では苦労するので稜線より下った真っ白な残雪帯をトラバース気味に登ることにした。進むに従って徐々に藪が増えてきて膝まで潜るようになり速度が落ちるが、周囲はどこも同様なので我慢である。稜線と同等の藪密度になれば稜線上の方が歩きやすいので上に登って進む。

1710m峰から振り返る 1710m峰を越えるとやっと残雪登場
手前のこぶが小烏帽子山 小烏帽子山山頂
小烏帽子山から見た朝日岳〜大烏帽子山
小烏帽子山から見た北側の展望(クリックで拡大)

 最初のピークを越えた先は残雪がつながっており一気にスピードアップ。やっぱ残雪期はこれじゃなくちゃ。山頂が近づくと再び低い藪地帯に入ってズボズボ足を潜らせながら歩いていく。そして最高点も同じような低い藪に覆われた山頂だった。ここは主稜線から離れたマイナーピークなので、ほとんど訪問者はいないだろうな。

小烏帽子山を出発し1710m峰へ向かう 大烏帽子山への登り返し
大烏帽子山から鞍部へ下る 檜倉山のテントへ到着

 少し休憩して檜倉山まで戻る。大烏帽子の登り返しは往路で歩幅を狭くしてラッセルした効果もあってかなり楽ができた。下りでは傾斜を利用して靴を滑らせて超スピードで下っていく。檜倉山の登りも往路で登りの歩幅に合わせてラッセルしておいたので楽だった。

檜倉山南にある湿原(と思われる) 湿原から西に下り始める
笹、灌木の低い藪を下る。新雪が邪魔 ハイマツ、シラビソ幼木が混じり出す。尾根広く要注意

 テントを畳んで下山開始。しばらくはなだらかで幅広い尾根なので方向を誤らぬよう注意が必要だ。方位磁石で西に方向を定め、大源太山を目安に下り始める。初めは低い笹原だったがすぐに低潅木や石楠花、ハイマツが混じるようになり、残雪は消えて新雪が乗った状態なので膝まで潜ってやっかいな場所と化していた。樹木よりも笹の方が圧倒的に歩きやすいので、できるだけ笹の部分を探してつないで下っていく。

下方に目的の尾根が見えて一安心 残雪帯が近づくと低いブナに変貌

 やがて下方に真っ白な尾根が見えてきて一安心。あれが下るべき尾根に間違いない。あそこまで行けば潅木藪から開放されて残雪が利用できる。傾斜が緩くなったとたんに残雪が現れて潅木帯が終わっており、地形図を見るとその境界は標高1550mだ。でもそこまでは潅木藪が続き、今回は下りだからいいが登りだともっと厄介だ。ただし、奥秩父の石楠花のように尾根いっぱいに密生しているような藪ではなく隙間が多いので、先を見てルートを選べば激藪漕ぎにはならない。藪山にしてはマシな部類と言える。

標高1550mで残雪帯に出る 下ってきた尾根。だだっ広い
なおも尾根を下る 残雪帯の終点

 残雪帯が近づくと石楠花やハイマツが減ってきて徐々にブナの低木に切り替わり、さらに下るとブナの高さが高くなって木の間隔が広くなり藪ではなくなる。そして待望の残雪帯に出れば天国だ。1470m付近で尾根が狭くなりこの先大丈夫かと心配になるが、1450mで尾根が広がると同時に残雪帯が終わって新雪が薄く積もった低密度の笹と樹林に変わる。もうこの標高では笹の勢いはなく、これより下では無雪期でも苦労せず歩ける植生で一安心。

ブナ林+薄い笹に突入 この笹なら無雪期でも登れるだろう
尾根上に目印点在 下部になると笹も消えてくる

 尾根がバラけて進行方向に注意が必要で、磁石で西を確認しながらできるだけ尾根の左端を意識して下っていく。部分的に残雪帯が現るが短く、すぐに樹林帯へと戻る。尾根がはっきりすればあとは尾根を下るだけ。良く見るとポツリポツリと目印が付いているので、ここを登った人がいるらしい。

国道291号線。国道といっても車道ではなく歩道 下ってきた尾根
国道から尾根を外れて北の谷に下る 雪が現れ始める

 やがて小さな法面上部に出て、下に廃林道のような広い道が現れた。これが国道291号線だろう。エアリアマップでは整備されていないと書かれているし、こいつは傾斜が緩くて等高線に沿って谷や尾根をウネウネ通って距離が長いので最初から歩く考えはなくそのまま突っ切ることにした。ただし、下る前に尾根両側の様子を窺って残雪が使えるようなら尾根を外してそこを下ろうと考えた。尾根の左右を見るとどちらも残雪があるが、右側(北側)の方がちょっとだけ里に近い場所に下れるので右手の残雪目指して斜面を下る。

残雪に乗り快調に下る 傾斜が緩む
下ってきた谷 登山道上部に出た

 残雪に乗れば歩くというより滑るという表現が正しいような、踵は使わず靴底全面を均等に使ってほとんど足を上げずに足を前に出していく。時々「オーバースピード」でコケそうになるとブレーキをかける。平坦地まであっという間に下り、あとは杉の植林帯を緩やかに下っていけばどこかで登山道に出るはずだ。送電線鉄塔を間近に見たその先が小さな法面になっていて、その下に登山道があった。どうにか下れる傾斜で木に掴りながら登山道に出た。これで今回の核心部分はすべて完了した。

登山道 檜倉山、柄沢山鞍部を源流とする沢を渡る(橋がある)
沢を渡ると車道終点 大源太山

 あとは林道を歩くのみ。檜倉山ー柄沢山鞍部を源流とする沢は丸太を束ねた橋があって渡渉せずに楽々渡れ、その先が車道終点だった。除雪されていないので車が入れる状況ではなく、その先でも谷という谷はデブリが押し出して林道を覆っていた。車道はかなりの部分が舗装されており、登山靴では足に負担がかかるので路側の土の分をなるべく歩いた。大きな砂防ダムの下流で謙信尾根経由で清水峠に上がる登山道が合流、この先から案内標識が整備されていた。そして山菜取りの姿がポツポツと見かけられた。ゲートからここまで1時間以上あるだろうに歩いてきたのかと思ったら、最後のデブリ手前に軽トラ2台とバイクがあり、ジモティーは車止めを外してここまで入れるようだ。

清水峠分岐(謙信尾根経由) デブリで地元車もここまで
車止め。施錠されていない 車止め

 なおも歩いて車止めに到着すると駐車余地はいっぱいで路側にも車が止まっていた。たぶん山菜取りがメインで中には釣り人も混じっているかもしれない。そこから私の車まで数分で、テントを乾かしたり寝袋を虫干ししたりと後片付けをしてから車を走らせた。

 

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