南ア北部 広河原〜白根三山+広河内岳〜笹山〜奈良田縦走 2012年7月27〜29日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

7/27
6:36 広河原−−8:25 二俣 8:39−−9:40 休憩 9:58−−10:19 稜線−−10:45 肩の小屋

7/28
4:18 肩の小屋−−4:50 北岳 5:23−−5:59 北岳山荘−−6:30 中白根山−−7:20 間ノ岳 7:56−−8:38 農鳥小屋−−9:22 西農鳥岳−−9:50 東農鳥岳 10:25−−10:52 農鳥下降点−−11:15 広河内岳−−11:33 2750m鞍部 11:39−−12:03 標高2500m水場 12:18−−13:02 2750m鞍部−−13:37 テント場

7/29
4:29 テント場−−4:55 大籠岳−−5:31 白河内岳 5:58−−6:56 笹山北峰 7:53−−7:58 笹山南峰−−8:34 標高2320mテント場−−水場探し(見つからず)−−9:08 標高2320mテント場 9:57−−10:38 標高1603m水場入口−−11:33 沢 11:58−−12:07 吊橋−−12:26 奈良田第2駐車場

場所山梨県南アルプス市/南巨摩郡早川町/静岡県静岡市
年月日2012年7月27〜29日 無雪期縦走
天候概ね晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー+バス
駐車場奈良田に2か所ある。広河原行きのバスで座るには第一駐車場を確保するか、第2駐車場に駐車して第一駐車場バス停まで歩くのが良い。第2駐車場は広いが第1駐車場は狭い
登山道の有無あり。南嶺はやや薄いが目印多い
籔の有無ほぼ無し
危険個所の有無無し
山頂の展望各山頂とも森林限界を超えて展望良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント 登山口情報
・奈良田駐車場は2箇所あり、第1駐車(2,30台)近くの奈良田温泉バス停が起点。第2駐車場はもっと奥にありこちらは非常に広い(100台以上)
・混雑する週末はどうなのか不明だが、平日はバスの増発はしないようで始発便は半分くらいは座れずに立ったまま運行していた(私も座れなかった)。曲がりくねって傾斜がある林道を50分も立ちっぱなしはきつい。前夜のうちに第1駐車場に到着して場所を確保するか、第2駐車場利用の場合は第1駐車場まで歩いて行き奈良田温泉バス停で乗るのがよい

・奈良田に駐車し、バスで広河原に入る
・初日は北岳肩の小屋で幕営
・2日目は肩の小屋から大籠岳手前の鞍部まで
・3日目は大籠岳、白河内岳、笹山と縦走し、笹山東尾根で奈良田に直接下る

・肩の小屋は標高差100m下った場所に水場あり。ただし小屋で\100/1リットルで購入可能・北岳山頂は好天に恵まれたが北アルプスは見えなかった
・間ノ岳山頂も快晴
・西農鳥岳は登山道が巻いているが登れる。ごく小さなケルンがあるだけで山頂標識無し
・東農鳥岳は立派な標識あり。甲府盆地側はガスが出てきた
・ほとんどの登山者は大門沢下降点を下っていったが、こちらは白根南嶺に足を踏み入れる。今までより道は細くなるがちゃんと道がある
・広河内岳には東海パルプの立派な山頂標識ができていた
・広河内岳より先も道が続くが薄くなる。ただし、稜線西側は基本的にハイマツが無い砂礫の尾根でどこも歩きやすいので、踏跡を歩かなくても問題なし
・水を求めて広河内岳東側の2730m鞍部から大井川方面の谷を下る。途中から廃道ありだがハイマツが延びて籔漕ぎ区間もある
・標高2530mを切るとダケカンバの樹林帯
・標高2470m地点でやっと沢が登場。ただし本流ではなく左岸側の斜面に出ているので注意
・2772m峰を越えて2700m鞍部東側の凹地で幕営。ハイマツを突破する必要があったが風を避けられて快適だった
・翌朝、大籠岳北側直下でテント発見。ここの方が籔漕ぎ無しで西風を避けられていい場所だった。この人も笹山東尾根を下山するとのことだった
・大籠岳山頂も東海パルプの標識が立っていた
・大籠岳〜白河内岳間は石の稜線で足跡が残りにくくケルンが頼りになる。かなりたくさんある
・白河内岳はやたらとだだっ広くガスられたら下りがかなりやっかい。ここもケルンが多数あるので有効利用
・白河内岳〜笹山間は樹林帯は道は明瞭だが岩稜帯はルート分かりにくい。ケルンや目印を頼りに歩く。周囲はハイマツ藪が多く岩場でルートを外すと岩が終わった途端に藪に突っ込んでしまう
・笹山直下で樹林を抜ける。山頂に人が見えてびっくり。笹山東尾根で幕営し今朝山頂到着とのこと。3人パーティーのうち2人は大籠岳まで往復するため出発した。他に3人パーティーが水場に幕営して登ってきていた。日帰り単独者にも会った
・昨年秋以来の笹山北峰は展望良好。南峰は樹林に囲まれて展望なし。東尾根から笹山に行くなら必ず北峰にも登りたい。その大展望に満足できるはず
・東尾根は昨年秋より目印が増えていた。まだ百名山クラスの登山道には至っていないが、利用者は確実に増えていて道のグレードは年々上がりそう
・白河内を渡る林道は大水で崩壊し、現在は適当に渡渉する。石や流木を利用して靴を脱がずに渡れる(私は足を滑らせて水没してしまった)
・登山口の吊橋前の駐車場は数台の車あり


ルート図。クリックで拡大


金曜朝の奈良田第2駐車場 立ちっぱなしで広河原到着
ゲート 北岳バットレス
吊橋が起点 広河原山荘
大樺沢左岸を登り始める 快晴!
右岸に渡る。昔はずっと左岸を歩いたような 左岸に渡り返す
標高2100m付近が雪渓末端 二俣で休憩
肩の小屋向けて出発 大樺沢。点々と登山者が連なる
ダケカンバ樹林をジグザグに登る 八本場のコル
標高2550m付近の緩斜面で樹林が開けて残雪あり
草原で日当たりが良すぎて暑い!
樹林が切れる直前の木陰で休憩 森林限界を超える
白根御池小屋方面分岐 稜線を目指す
鳳凰三山 周囲はお花畑
稜線に出た。小太郎山は既登山なのでパス 小太郎山
北岳方面 快晴の稜線を行く
仙丈ヶ岳と甲斐駒
肩の小屋 水は\100/1リットル
肩の小屋東のテント場。まだ雪が残っている
肩の小屋水場入口。幕営者専用か お花畑を結構下る
標高差100m下って水場到着 ここで幕営
徐々にテントが増えてくる。最終的には4,50張程度
稜線西側のテント場。連休中はここも満杯だった
まだ暗い時刻に出発 先行者あり
振り返る 両俣小屋方面分岐
北岳山頂が見えた
北岳山頂 日の出
北岳から見た富士山 山頂の気温は8℃
北岳から見た南〜西の展望(クリックで拡大)
北岳から見た間ノ岳とその周辺(クリックで拡大)
北岳から見た中央アルプス(クリックで拡大)
北岳から見た伊那側の山々
北岳から見た仙丈ヶ岳、甲斐駒
北岳から見た早川尾根
北岳から見た大樺沢 間ノ岳に向かう
中白根沢ノ頭 北岳尾を振り返る
どんどん下る
北岳山荘
北岳山荘南側のテント場(凹地)と中白根山
中白根山へ登る 中白根山山頂に人が見える
中白根山山頂
中白根山から見た北岳
中白根山から見た間ノ岳
中白根山から見た伊那側の山々(クリックで拡大)
間ノ岳に向かう
振り返る
大唐松山
もうすぐ間ノ岳
間ノ岳山頂
間ノ岳から見た西半分の展望(クリックで拡大)
間ノ岳から見た北側の展望
農鳥岳に向かう
熊ノ平方面分岐 熊ノ平小屋
農鳥小屋
農鳥小屋から見た間ノ岳
農鳥小屋から見た農鳥岳
西農鳥岳への登り まだまだ登る

間ノ岳を振り返る
間もなく西農鳥岳の西の肩
西農鳥岳の西の肩から見た黒檜山 3050m峰から見た西農鳥岳
西農鳥岳直下 西農鳥岳山頂。標識は無い
西農鳥岳から見た間ノ岳と3050m峰
西農鳥岳から見た東農鳥岳
東農鳥岳に向かう
東農鳥岳直下 東農鳥岳山頂
東農鳥岳から見た西農鳥岳
東農鳥岳から見た白根南嶺 大門沢下降点へと下る
大門沢下降点 広河内岳に向かう。ハイマツが張り出し急に道が細くなる
振り返る 明瞭な道が続くのが見える
農鳥岳
広河内岳へ突き上げる 道は結構まともで目印もある
広河内岳山頂
広河内岳から見た西半分の展望(クリックで拡大)
先へ進む 広河内岳を振り返る
2740m鞍部へ向かう 水を確認するため2740m鞍部から大井川方面へ下る
谷地形だが水は皆無 ケルンあり
広河原岳山頂方面に踏跡がある 目印もある
ハイマツの籔を避けて石の上を歩く ハイマツ藪に突入。でも地面付近に道形あり
標高2530m以下でダケカンバ樹林帯に突入。
でもまだ水が無い
草付き。でも水は無い
またハイマツ登場で突っ切る ハイマツの中に踏跡あり
標高2470m付近の左岸斜面に沢がある。ここで水補給 沢のある左岸から本流の谷に戻る
2740m鞍部に戻る 西風が避けられるテント場適地を探しつつ進む
いくつかテント場があるが稜線上で西風がモロに当たる場所 2722m峰へ登る
2722m峰 2722m峰を越えた。まだテント場適地がないので進む
まだ進む
大籠岳手前の2700m鞍部で稜線東側にテント適地発見!
2700m鞍部。稜線上に砂地のテント場があるが風は避けられない 稜線東側の凹地。ここにたどり着くにはハイマツ藪を突破する必要あり
日の出前に出発 大籠岳に登る
振り返る 大籠岳直下
大籠岳直下の幕営者。ここの方がずっといいテント場だった 大籠岳山頂
大籠岳から見たパノラマ展望(クリックで拡大)
雲の向こうから日が上がる 白河内岳への稜線。ハイマツを避けて岩をつなげて歩く
下りに使う笹山東尾根が見える
大籠岳を振り返る 北岳はガスり気味
何となく続く踏跡を追う。適当に歩いても可 赤っぽい岩とハイマツが続く
こんな標識あり 緩やかな登りにかかる
振り返る
奥の高まりが白河内岳 白河内岳山頂。昔はこの標識は無かった
白河内岳山頂部。やたらとだだっ広くガスられたらやっかいな場所
白河内岳から見た南〜西の展望(クリックで拡大)
白河内岳から見た白根三山(クリックで拡大)
白河内岳から見た荒川三山(クリックで拡大)
笹山へ向かう。道が薄く目印を追う たま〜に標識がある
テント場あり 樹林帯に突入。標高2750m近い
樹林帯突入直前より白河内岳を振り返る
樹林帯の中の方が道が明瞭 シラビソ樹林
標高2700m付近でハイマツの上を歩く 標高が落ちたが森林限界
白河内岳を振り返る
2670m肩から見た笹山
周囲はハイマツの海だが道がある ハイマツの切り開き
再び樹林に突入
樹林中は道がいい 再び森林限界っぽくなる
森林限界を突破すると笹山北峰直下。人がいた! 笹山北峰山頂(笹山最高峰)
笹山北峰から見た西側の展望(クリックで拡大)
笹山北峰から見た笹山南峰。あっちは樹林に囲まれて展望が無い
笹山北峰南直下のテント場。でも西風は避けられない 山頂直下ですぐに樹林帯に入る
シラビソ樹林を進む 笹山南峰。頭上のみ開けている
伝付峠方面入りグと 笹山三角点。伝付峠方面に10mくらい入った場所にある
笹山東尾根入口 東尾根を下り始める。道は明瞭
ハイマツは山頂直下のみ 標高2600m付近
延々とシラビソ樹林が続く 標高2550m付近。頭上が開けて明るい
標高2320m肩手前の2重山稜の谷 標高2320m肩。北峰で会った登山者のテント
2320m肩付近に水が無いか調査のため南に下る 人跡未踏かと思ったらこんな目印が
標高差100mまで下って左右を探したが水の気配は皆無 切り株もある。人の手が入っている
登山道に戻って下山続行
標高2256m標識の先のガレ 良好な道が続く
標高1950m付近のワイヤー
標高1603mの水場入口標識
標高1350m肩。右に屈曲
標高1070m肩の崩壊した祠。山ノ神か?
水力発電所の導水管最上部 尾根を外れて北斜面をジグザグに下る
林道に出た
ここを渡渉したが左足が滑って靴が浸水・・・ 発電所の導水管
導水管右側の杉植林斜面を下ってきた 対岸の林道に乗る
吊橋を渡る
吊橋近くの駐車場 吊橋入口の案内標識
吊橋全景(背景は笹山東尾根)
奈良田第1駐車場 第1駐車場横がバス停
奈良田第2駐車場


 下界はあまりにも暑いのでこんな時は3000m峰に避暑に出かけるのが一番。天候もそこそこ安定するようだが、午後以降の雷雨の可能性は高い。これは夏山ではしかたないことで、安全確保のためには雷雨前に行動を停止するしかない。残雪期の藪山と違ってどうせ夏山はまったり山行だけど。行き先をどうするか考えたが久々に農鳥岳を踏んでみようと言う気になり、金曜日に休みを取って白根三山縦走とした。今の体力ならば2日あれば縦走可能だが、山の上で涼むのが主目的なので短時間で下るのはもったいないので3日を使うことにしたが、通常の白根三山縦走では面白みに欠けるためオプションを追加することに。白根三山縦走時はスタート時の標高を考えて広河原発で最後は奈良田に下山が普通であるが、どうせ奈良田に下るのであれば笹山東尾根がある。昨年秋に日帰りで歩き、まともな登山道であることは確認済み。夏でも籔は皆無だ。問題は2日目の幕営場所。初日はのんびりと北岳肩の小屋か北岳山荘だとすると、2日目は農鳥小屋を越えて大門沢下降点も越えた先となろう。10年以上前に歩いた経験からして広河内岳から先の稜線は広くテントを張る場所には困らないと思うが問題は水場。この問題があって前回歩いた時は5月中旬の残雪期だったが夏の今は雪は無い。農鳥小屋で汲んで歩くか、どこか沢に下って得るしかない。その沢だが、以前読んだ山渓で広河内岳から池ノ沢に下る廃道を途中まで下って水が得られる場所で幕営した記録があったのを思い出した。ネットで検索すると池ノ沢の廃道を歩いた記録が複数見つかり、場所は不明だが池ノ沢池よりも標高が高い位置で水が得られるようだ。後の参考となるように場所を特定するのもいいだろう。

 金曜朝に奈良田駐車場に向かうと路線バスの奈良田バス停近くに第一駐車場が新設されていた。これは初耳だ。しかし収容台数は20台程度で満車状態、通常のシャトルバス乗換用の駐車場に向かう。昨年の大雨の影響か、駐車場は土砂でかさ上げされた高台に新設されていた。平日なのでまだ駐車場はガラガラ。数10台くらいか。既にバスの待ち行列ができていた。そしてやってきたバスは既に乗客が。そうか、今の始発は第一駐車場なのか。明らかにここにいる全員が乗りきれない状況で、てっきり増発があるのかと思いきや、なんと座れない登山者は立たされたまま詰め込まれ、バスの増発はなかった。芦安や旧長谷のシャトルバスではこのような経験は無かったが、平日の奈良田はこんな待遇なのだろうか? これなら第1駐車場まで歩いて始発で乗るのが得策だったな。奈良田〜広河原の林道は舗装されているが傾斜やカーブはきつく、50分も立ったまま揺られているとけっこう膝にくる。それにバスの中はやたら暑かった。最初からこんな状況とは予想外だ。

 やっと広河原で混雑地獄から解放され、トイレを済ませて出発。今回はまだ歩いたことがない右俣コースから肩の小屋を目指すことに。天気は快晴で吊り橋からはバットレスがくっきり。広河原山荘からは樹林帯に突入し大樺沢左岸を緩やかに登っていく。ずっと昔に大樺沢を登った時は確か延々と左岸を歩いて雪渓に乗った記憶があるが、今回は途中で右岸に渡り、しばらく右岸を歩いてから左岸に渡り返すルートになっていた。人気コースであり平日でも賑わっていた。二俣の手前で雪渓に乗り二俣で休憩。ここに来た登山者の2/3くらいが大樺沢を登っていく。涼しさを考えるとこちらも大樺沢を登りたい誘惑にかられるが・・・。

 休憩を終えて右俣を登る。最初は雪渓沿いの草付きを歩くがすぐに樹林に突入。日差しを遮ってくれるが東斜面で全体に日差しがあるため気温は高めだ。標高2550m付近で傾斜が緩み樹林が切れて草付きの中に雪田が出現、視界が開ける。もう少しで森林限界だろう。その前に標高約2700m地点で樹林の日影で休憩。体を動かさなければ日影は快適だ。休憩を終えて歩きだし、すぐに森林限界を突破、白根御池小屋方面の分岐登場。鹿の食害防止柵で囲まれたエリアがあった。こんな高さまで鹿がやってくるようだ。ちょうど今は花盛りの時期。見たことがある花ばかりだが名前を知っているのは数種類だけ。

 やがて小太郎山分岐の稜線に到着。風が抜けるようになり涼しくなる。ここからは楽しい稜線歩き。今年登った最高標高は針ノ木岳だったが既に越えた。稜線上は登りの人より下りの人の方が多くなった。近くにある仙丈ヶ岳や甲斐駒はすっきりと見えているが、八ヶ岳は雲が絡みつき、北アルプスは霞んでしまって影も形も見えない。でも天気はいいから文句は無し。

 割と緩やかな稜線を進んで肩の小屋到着。ここで幕営したのは何年前だったか。前回テントを張った場所はまだ雪の下で、適度な広さの平坦地を確保してから小屋で手続き。\500也。水は\100/1リットルであったが、せっかく水場があるので行ってみることにして購入はパス。もし明日の出発時に不足するようなら購入するか。合計3.5リットルの容器群を小さなアタックザックに入れて出発。水場の案内標識は無いが、テント場から下る明瞭な道が水場へのルートだ。たぶん前回もここを下ったのだと思うが記憶がない。どこまで下れば水が出ているのか確認するためGPSも持っていく。下っていく途中、1匹だけの猿を目撃。普通、猿は群れているものだが単独行動の猿は初めて見た。猿も3000m峰に登るのか。明瞭な道は続き、枯れた小さな沢に出ると岩に「水」と書かれた場所があり、樋から細く水が流れていた。500ccのペットボトルをいっぱいにするのに2,30秒かかるが許容範囲だろう。GPSによるとテント場からの標高差は100mだった。

 テントに戻ってからやることがなく、昼寝しようとしても直射日光で暑く外でゴロゴロそのうち雷の音がしたが甲府盆地方面で稜線はガスがかかり始めたが雨は来なかった。この頃になるとやっと日が陰ってテントに入ることができた。このまま夜まで雨は来なかった。ちなみにこの日のテントの数は正確に数えたわけではないが4,50張くらいだと思う。ちなみにいつぞかの年の海の日の山連休は数百のテントがあって驚いたことがある。

 翌朝は少し西風があって寒いが、体を動かしている間は適度な放熱になってちょうど良かった。真っ暗な時刻から北岳山頂を目指す登山者のライトが稜線上に見えていたが、私は薄明るくなった時刻に出発し、10分ほどでライト不要な明るさになる。山頂到着予定時刻は日の出に間に合わないが、周囲の眺めを楽しむには日の出直後より少し時間が経過した頃の方がいいので問題なし。今日は丸1日森林限界の楽しい稜線歩きが待っている。歩いているうちに体が温まっていつものTシャツ半ズボン姿へ変身。これに麦わら帽子の組み合わせが夏山のデフォルトとなっている。

 山頂手前で偽ピークを越えて山頂が見えた。登山者の数は20人くらいか。まだ雲から日は上がっていない。偽ピークには登山者が1人。こちらの方が静かでいいかもしれない。日の出前に山頂に到着。気温は8℃でちょっと高めか。展望は昨日と同様で空気の透明度は良くなく、八ヶ岳は見えるが北アルプスは全く見えなかった。南ア南部方面はすっきりと見えており、予想外に特徴的な形の大無間山が見えていた。中央アルプスは霞んでいるが2500m以上の山は雲の上だった。鳳凰三山の向こう側の雲海から朝日が登場、少し日が上がってからは北岳の三角形の影が西側に延びていた。

 充分展望を楽しんでから出発。北岳山荘を出発した登山者が続々と上がってくる。皆が昨日以前の入山者のはず=平日入山だがかなり多い。明日の北岳山頂はどのくらいの賑わいになるのだろうか。北岳山荘に到着、テント数は20前後、もう出発した人も多いだろう。土曜日の今日は100張を越えるかな。中白根山へは緩やかに登っていき広い山頂へ到着。休憩する登山者が多いがここは写真だけ撮って通過。休憩は間ノ岳で行う予定だ。間ノ岳に登っている登山者の姿もあるが軽装で下ってくる登山者も少なくない。まさか農鳥岳まで足を伸ばしたのだろうか。間ノ岳の登りもほとんど緩やかな稜線だった。

 間ノ岳山頂は広く、北岳よりも登山者の姿が多かった。ここの標高は3189m、富士山、北岳(3193m)、奥穂高岳(3190m)に次いで国内4位の標高を誇る。振り返れば尖った北岳。南は荒川三山と赤石岳。残念ながら聖岳はそれらの奥に隠れて見えない。小笊、笊、布引山の3連ピークも目立っていた。つい目がいってしまうのは黒檜山や二児山〜小黒山などの伊那の山々。ここからだと黒檜山は意外に近い。熊ノ平方面からもポツリポツリと登山者がやってくる。

 休憩を終えて農鳥岳に向けて出発。ここから笹山までの間は10年以上前に1度歩いたきりだ。間ノ岳の下りは非常に広い稜線でガスられたらイヤらしいが目印、ケルンがあるので迷うことはないだろう。最初にここを歩いた時には見事にガスられた記憶がある。最初の間ノ岳山頂はガスで何も見えずじまいだったな。今日は朝からすっきりと晴れている。岩稜帯を下っていくと熊ノ平方面への巻道分岐を通過して鞍部に農鳥小屋。ここの東側に水場があり、ここで明日の分の水を汲んでおくのもいいのだが、今回は池ノ沢がどこで水が出ているのか確認したいこともあってパス。

 西農鳥岳への登りは急で、何人かの登山者を追い越す。3040mの肩で直角に左に曲がって最初のピークはまだ地形図上の西農鳥岳ではなく3050m峰で登山道がてっぺんを通っている。次の岩峰が3051mの西農鳥岳だがここは登山道が南側を巻いているため空身で往復。ちゃんと登れるようになっており、てっぺんには小さなケルン。山頂標識は無い。東農鳥岳の方が標高が低いのに、一般的には「農鳥岳」と言ったら東農鳥岳を指すのが不思議だ。まあ、地形図で東農鳥岳に「農鳥岳」と書かれているのでしょうがないか。

 西農鳥岳からいったん下り、3000m峰を巻いて登り返すと東農鳥岳山頂。西農鳥岳直下ではなくこちらで休憩している人が多い。既に日が高い時刻で甲府盆地側からガスが湧きあがってきているが、大井川側はまだ晴れている。昨日と同じパターンだ。大門沢から上ってくる人の姿も見られたが、トレイルランナーの姿もあった。話を聞くと奈良田から4時間とのこと! 上には上がいるそうで、同じく奈良田出発で今日中に広河原まで走るランナーもいたとのこと。白根三山日帰り縦走とは恐れ入る。累積標高差は3000mを越えるのではなかろうか。

 農鳥岳を出発し大門沢下降点へ。ここまでの間は稜線上ではなく稜線東側を下っていく。下降点には小さなザックが一つ転がっており、持ち主はたぶん広河内岳を往復しに行っているのだろう。下降点から先は久しぶりの白根南嶺へ足を踏み入れる。前回は残雪期だったが今度は最初から最後まで夏道となる。入口のみハイマツが被って道が怪しげになるがすぐに砂礫の斜面となって明瞭な道が続くようになる。時々ガスが流れるが広河内岳山頂は見えていた。

 最後に突き上げて広河内岳山頂。昔は無かった東海パルプのでかい山頂標識が立っていた。当然ながら森林限界を超えているので360度の大展望。ここまで来ると白河内岳はもう近いが、今日はそこまで歩かずに適当な場所で幕営だ。幕営場所探しもあるが、その前に池ノ沢で水汲みだ。地形図では広河内岳山頂から破線が下りているが、ここまで登り返して稜線をまた下るのはもったいないので、南嶺稜線を2730m鞍部まで下ってから池ノ沢に入ることにして山頂を後にした。山頂から南西に向かって踏跡があるようで入口に×マークがあった。たぶんこれが廃道なのだろう。

 広河内岳から先になるとルートが薄くなるかと思いきや、そうでもなかった。南嶺の地形はなだらかで稜線東側はハイマツ藪、西半分は砂礫の歩きやすい植生が続き、登山道は稜線直上か西側にある。もし道を外しても東側のハイマツ籔に突っ込まなければ問題なしで、とにかく稜線上を進めばいい。立ち木が無いのでテープ類は無いがケルンがあちこちに積んでるのでいい目印になる。下っていると空身の男性が上がってきた。そういえば大門沢下降点のデポ荷物の主が広河内岳にいなかったが、この人がそうであった。なんと大籠岳まで往復してきたとのこと。そこまで歩く人は珍しい。

 2730m鞍部で荷物をデポし、アタックザックに水の容器を入れて出発。最初は砂礫で歩きやすいが一部這ったハイマツを横断。その後はしばし石が積み重なった谷を下っていく。まだ水の気配は皆無だがケルンがあったりして人の気配はある。やがて右手から踏跡が合流、広河内岳からの道だろう。ここには赤ペイントがあった。ここから先が正式な?廃道か。でもしばらくは石が積み重なった河原のような斜面や谷を歩けるので道の有無は無関係。標高2530mでハイマツが登場、強引に突っ切るしかない。確かに昔は道があったようでハイマツの下の空間に道の形跡は残っていた。

 ハイマツ藪が終わると森林限界を割ってダケカンバ樹林に変貌。水がありそうな植生に変わるが水の気配はまだ無い。しかし地面が出ていたり草付きになったりとテントを張れそうな場所があちこちに出てきた。でも水は無し。水は割と近くにあるだろうと考えていたが甘かったようだ。距離は短いながら時々立ったハイマツ籔が登場し、強引に突っ切る。ダケカンバ樹林をどこまでいけば水があるのか心配になった頃、予想もしなかった事態が発生。人がいたのだ! これは熊が出た!よりも驚いた。しかも単独女性。そして女性が休んでいる場所が水場であった。谷の本流ではなく左岸側に小さな沢が流れていた。話を聞くと池の沢池まで行くそうで、やがて熊よけ鈴を鳴らしながら下っていった。水場の標高は約2470m。鞍部から標高差約250mも下ってしまった。道が無いことを考えるとたぶん往復1時間ってところだろう。ここまで下るならテントを背負ってきてこの近くで幕営した方がいいかもしれない。

 3.5リットルの水を調達してハイマツをかき分けつつ稜線に戻る。稜線が近づくとテントを張れそうな場所を探しながらだったが、鞍部直下の窪地が候補地であった。ただ、まだ時間的に先に進むことが可能だし、大籠岳を往復してきた男性の話ではこの先にテント場があると言っていたので先に進むことにした。今は西風が吹いているが、過去の経験からも朝方は西風が強いことが予想され、風を避けるためには稜線東側でテント場を探すしかない。この先も尾根が広いので適地はいくつかあるだろう。

 稜線東からはガスが上がってくるが稜線西側は晴れていて、ルート上の視界が確保されているのは助かる。大きなアップダウンが無い稜線が続き、肝心の稜線東側はほぼハイマツに覆われて藪状態、西側は石と砂礫で歩きやすくテントを張れそうな場所はいくらでもあるが思いっきり風が吹き付ける。2重山稜の個所で登山道から外れた谷筋にテントを張れそうな場所もあったが地面が凸凹だったり狭かったりでパス。なおも進んで2772m峰を越えて2700m鞍部が見えると、ここも2重山稜となっていて中間の谷間には草付きの平坦地が見えた。しめた、あそこなら風もないし凸凹もなさそうでぴったりだ。

 広く緩やかな稜線を下って鞍部到着。稜線上の砂地に2個所ほどテント場があったが西風をまともに受ける位置。やっぱりさっきの場所がいい。しかし谷間に下る道が無い! 谷に下るには立ったハイマツ藪を突っ切る必要があった。朝方は朝露で濡れることが予想され迷ったが、少し濡れるよりこの風を一晩避けて快適に過ごす方が優先と判断、まずは空身で藪に突っ込んで様子見。幸い、ハイマツ藪の距離は10m程度。谷間は砂礫とふかふかの草付きの平坦地でテントを張るのにぴったり。良く見ると錆びた空き缶やペグが落ちていて、少なからずテント場として利用されているらしい。でもたぶん雪のある時期だろうな。案の定、無風状態であった。ここから稜線を見ると北端の籔が最も短距離で、ここだとハイマツ藪は数mであった。今度はザックを背負って谷に下り幕営。快適な一夜を過ごせた。

 翌朝、森林限界の夜明けは早い。テントを片づけてハイマツ藪に潜ったがずっと吹き続けている西風の影響かハイマツは乾いていた。寒さ避けを兼ねて上下ともゴアを着ていたが雨具として使うことはなかった。稜線上に続く薄い踏跡をたまに外すこともあるが、稜線西側はハイマツ藪はほとんどないので植物を踏まないように適当に進めばOK。大籠岳直下の登りは明瞭な道の筋が見えている。2750m肩に出るとテント泊の男性発見。この肩は稜線東側にハイマツが切れたテント場適地があり、ここは籔漕ぎ不要で私の利用した場所よりよさそうだった。この男性も笹山東尾根を下るようで、2泊3日で白根三山縦走では飽き足らない人に対する新たなスタンダードコースになるかもしれない?

 大籠岳付近で雲から太陽が上がった。振り返れば白根三山は農鳥岳は見えているが北岳は東側はガスに覆われ、今日は少し天気が悪いようだ。以前は標識皆無だった大籠岳も広河内岳同様に東海パルプのでかい標識が立っていた。

 広河内岳から大籠岳間もずっと森林限界を超える気持ちのいい稜線歩きだったが、大籠岳から白河内岳間も森林限界の稜線歩きが続く。この間は砂礫よりも石が多く踏跡が残りにくいのでルートも分かりにくいが、以前はあまり見られなかったケルンが多数あり参考になる。まあ、ルートを外しても適当に歩けるが。ハイマツ藪に突っ込まないようある程度長い距離を見てルート判断すればいい。この稜線は非常に広く、尾根上でもガスられたらルート判断に苦しむと思う。前回歩いた時は雪の後で快晴だったな。石が凍りついてツルツルだったなぁ。

 なだらかな白河内岳に登りつめて広大な山頂部に到着。ここにも東海パルプの山頂標識が新設されていた。北西の風が強く岩の陰で休憩。ここから稜線は左に曲がっているが、ケルンは南にまっすぐに続いている。辺り一面石ころの斜面でどこでも歩ける状態なのでケルンに従う必要はないが、所々にあるハイマツ藪を避ける必要がある。ケルンのルートはハイマツの海の中にある踏跡を正確に示していた。標高2750m付近は傾斜が緩くテント場適地も見られた。そしてそこで稜線に合流。

 稜線に乗ると標高は2700mを越えているにもかかわらず樹林帯に突入、そして道は明瞭になる。このまま笹山北峰まで樹林帯が続くと思いきや、2682m峰手前の268m肩付近でハイマツの幹の上を渡る登山道を通過すると樹林が切れて砂礫と岩の積み重なりに変わり展望が開ける。ここは再びルートが不明瞭になるがケルン多数で問題なし。2660m鞍部を通過して再びハイマツの幹を踏んづけて進むとシラビソ樹林に変わって一気に歩きやすくなり、そのまま笹山北峰直下までシラビソ樹林の中に明瞭な道が続く。

 笹山南峰から笹山北峰に登るときと同様に笹山北峰直下で突然森林限界を突破して開けた砂礫の笹山北峰が登場。この時刻は無人だと予想していたがそれに反して3人の登山者の姿があった。これは笹山東尾根で幕営した人達に違いない。山頂に到着して話を聞くと、水を担いで標高2320m肩で幕営したそうだ。そして3人パーティーのうち2人はこれから大籠岳まで往復、東尾根で再び幕営して翌日下るとのこと。そんなルート取りもありか。しかしまあ、山梨百名山の笹山目的で登るのはよくあることだが、南嶺縦走ではなく笹山東尾根往復で白河内岳、大籠岳に登るなんて初めて聞いた。でも、大籠岳まで行くならそのまま広河内岳を抜けて大門沢に下りてもよさそうな・・・。笹山北峰まで来ると塩見岳は大井川東俣を挟んだすぐ横で蝙蝠岳も近い。逆に北岳は遥かに遠い。今日も早川側はガスが上がり始めているが大井川側はすっきりと晴れたままだ。

 2人は大籠岳目指して出発、1人はテントに戻っていった。私は早く下っても下界は暑いだけでなのでしばしここで休憩。おまけに僅かに朝露で濡れたテントの虫干し。北峰山頂南直下にテント場があり、そこを利用した。休憩を終えて南峰に移り三角点を確認。当たり前だが前回と変わらぬ目立たない場所にひっそりと立っていた。三角点があるのは南峰山頂ではなく、伝付峠方面の登山道入口から10mほど入った登山道右脇で、通常の三角点のような白い花崗岩ではなく黒っぽい石でできているので発見しにくい。

 いよいよ下山開始。南峰に戻って伝付峠方面入口のすぐお隣の奈良田方面入口の案内に従って東尾根を下り始める。立ったハイマツを切り開いた区間が終わると長いシラビソ樹林が始まり雲の層に突入する。ここで登ってくる登山者とすれ違う。この時間帯だと奈良田発ではなく、標高1600m付近の水場標識付近で幕営したパーティーだった。その先で先行してテント場目指して下山開始した3人パーティーの1人を追い越した。

 標高2320m肩でテントとツェルトが登場、3人パーティーのものだ。ここでちょっと寄り道。このテント場は平坦でいい場所なのだが水場が無い。本当に無いのか探してみようと言うわけだ。南北どちらの斜面が有望なのか判断に悩んだが、南側に下ってみることにした。標高を下げれば下げるほど水が得られる可能性は高くなるが、許容範囲は標高差で100mくらいまでであろう。これでも往復30分近くかかるはずだ。シラビソの急斜面を下っていくと密林状態から隙間が多い場所に変わり、明らかに伐採された切り株が登場。そして赤ペイントの目印まで。道があるわけではないが人の手が入ったことは間違いない。標高差100m下って左右にトラバースしてそれぞれ谷地形が出てくるまで進んでみたが、谷には水は流れていなかった。谷より先は傾斜が急でトラバースは難しく水探索は打ち切り。少なくとも南斜面では近い場所に水はないようだ。次の機会には北斜面で探してみるか。

 テント場に戻ると男性が帰還していた。しばしおしゃべりして出発。淡々と下っていく。かなり下ったところで男性が上がってきた。奈良田発広河原行きの始発バスではなく次のバスで広河原に入ろうとしたのだが、2番目のバスの出発時刻が8時前後とえらく遅かったので、東尾根から笹山を目指しているとのこと。奈良田のバスの便はあまりよくないんだなぁ。これで本日の登山者は全て。

 杉の植林帯に変わってすぐに発電所の導水管施設が登場し、ここで尾根を離れて北斜面をジグザグに下って白河内右岸へ降り立つ。昨年秋とは水の流れが変わっており、昨年は右岸側に水が流れていたのが今は左岸寄りに変わっていた。適度な石がある場所で対岸に渡ったが、油断のせいか左足が滑って水没してしまった。対岸で水浴びする予定だったが靴まで水浴びするとは。渡渉失敗なんて何年振りだろうか。その昔、甲斐駒から県境尾根を下って熊穴沢を下り戸台川を渡渉するときに飛び石で思いっきり滑って派手に水没したのが最後だと思う。

 タオルで汗をぬぐって吊り橋を渡って奈良田第2駐車場まで徒歩。第1駐車場はほぼ満杯でこの時間に広河原向けて出発する登山者の姿があった。第2駐車場はけっこう埋まっていた。


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